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No.44 こんにちは、死ね!


(´・ω・`)くそげ



追記:レビューありがございまああああああああ(昇天する音)





「…………敵感知に反応は?」


「斥候系プレイヤーからは異常なしとしか返答はありません」


 『金犬の盗賊団』掃討戦の計画が立ち上がってから5日後の決行日。その日が休日だけあってほぼ全員がクエストに参加しており、テンシティの近くの森で部隊を分けて討伐隊は進んでいく。途中に魔物はいたが、各部隊で余裕をもって返り討ちにでき、予想より順調に進んだドラク達は盗賊団の根城まで近づいていた。

 事前の情報の通りそこには巨大な丘があり、所々に出入口をカモフラージュしたと思しき窪みが見える。

 しかし事前の情報と違うのは見張りの野盗がいないところだ。


「相手側に付いたプレイヤーの入れ知恵で拠点を放棄して奇襲か?だが反応はあるんだろ?」


「はい。斥候系のプレイヤーからは丘の中から確かに大量の敵を感知していると。探知ができない距離ですので正確な情報は不明ですが、居ることには間違いないそうです」


「恐らく相手プレイヤー側の狙いは、点在する狭い出入り口を利用した各個撃破だろうな。本隊と9番隊を残して奇襲を警戒しつつDプランでいく。伝達を」


「了解しました」


『DragonSabreCorps』の副クラン長から各部隊に1人以上配置した『DragonSabreCorps』のメンバーに一斉メッセージの送信。初のレイド戦とは思えぬ連携で各部隊が動き始める。


 100人を10の分隊に分割。それぞれの隊に『DragonSabreCorps』に所属している者を1人以上、斥候系のプレイヤーを1人以上配置。これにより情報の伝達をスムーズに実行し、不意打ちや罠による瓦解を警戒する。

 このドラクの提案した案は、VRMMOの攻城型レイド戦で取られる基本的な戦法故に皆もすぐに承諾した。

 Dプラン決行が全隊に通達され、丘を取り囲む様に配置されていた第1隊から第8隊が森から出て丘に近寄っていく。


 彼らの目的は丘の狭い出入り口ではない。

 作戦通り斥候系のプレイヤー達が出入り口の付近に罠を設置して、侵入するどころか逆に出入りできない様にバリケードを築いていく。それが終われば彼らは丘の“上”へ登っていく。


「中のやつらぜってえ慌てるぜぇ」


「だろうな、丘を上から掘ってくなんて馬鹿な話だけど、被害を抑えて攻略するには1番早い。ALLFOの自由度の高さには感服するよ」


 Dプラン……要するに土木(“D”oboku)プランである。


 三度号令。その号令を合図に戦士系の筋力と体力に優れる奴等が武器の代わりに店売りのスコップで丘そのものを凄い勢いで掘りさげていく。バケツに溜まった土はリレー方式で運ばれ、丘の出入り口へドサドサと勢いよく投棄。出入り口をさらに土で塞いでいく。


 盗賊側は誘い受けをしようとするあまりに判断を誤り見張りを1人も置かなかったようだ。

 そしてそんな彼らが変な物音に気づいた時には既に遅し。ここから出られないのだ。


 盗賊団を一網打尽にする為のプラン。掃討戦ゆえに1人も逃してはいけないので、彼らは何度も実験を行い超安全策へ走った。

 最初は本当にそんなことが可能なのか、という意見もあったが実際に実験を行い可能なことは判明している。相手方にPLがいて入れ知恵を行い引きこもることを選択した結果、この作戦はより効力を発揮するのだ。

 ドラクたちの読み通り、各個撃破を恐れた盗賊は誰一人として外へでてくる気配がない。


「これ放置しても窒息死するんじゃね?」


「いや、それで脱出されても面倒だし、って話だ」


「それもそうか」


 最初は大きい丘だったのだが、その丘が徐々に平らになっていく。ある程度の高さまで掘ればあとは魔法をガンガン打ち込んで崩落。そのまま生き埋めにしようというエグいプランだ。


 彼らはある程度の高さまで丘を削ると、ロケット鉛筆の要領でデカい木の柱を木槌でドンドン打ち込んでいく。オブジェクトとして具現化したアイテムは所有者を明確に定めていない限り一定時間放置されるとロストする。

 等間隔で打ち込んだ柱。魔法のラッシュを受ける丘…………一定時間経過し木の柱がロストした瞬間、魔法のラッシュが物理衝撃に換算され丘がドカッ!と勢いよく沈む。


「よし!斥候系、反応は!?」


「少々お待ちを…………ほぼ全て反応消失。中央に僅かな反応あり、だそうです」


「一番守りの固い最奥にいたプレイヤーや幹部たちだろう。しかしいくら引きこもってももう虫の息だ。ここから掘り出して討伐しよう」


 ドラクの指示で再び崩落した丘に登っていくプレイヤー達。だが次の瞬間、その弛緩しきった瞬間を待っていたかの様に丘を覆い尽くす様な超巨大な魔法陣が展開される。


「なに!?全員撤退を……!」


 丘から噴き出た半径60mに及ぶ強力な呪いを具現化せし漆黒の炎柱。それは一瞬にして1番隊から8番隊の計80人を効果範囲に捉えて、その悉くを一切の抵抗を許すことなく瞬時にポリゴン片に変えた。


「な、なんだあれ…………!?あんなのおかしいだろ!?」


「おかしくないよぉ〜。君たちが馬鹿なだけでしょ?」


 そんなありえない光景を見て思わず絶叫するドラク。

 呆然とする彼ら本隊の目の前に甲高い声と共に“空から”漆黒の翼を生やした者が悠然と降りてくる。

 それは『嘲笑を浮かべた黄檗(きわだ)色のピエロマスク』を被った小柄な堕天使だった。


「提案してあげるよ、確か攻める側は全滅すると全体に大きなペナルティがあるんでしょう?だから親切なボクはここで一つ提案。

 ここで『全てのアイテムをボクに差し出して裸一貫でオメオメ帰還する』か、『ボクに挑んで瞬殺されて全員仲良くペナルティをもらう』か。

 ちなみに向かい側にいる9番隊だっけ?あれはもう…………うん、ボコボコに殴殺されたんじゃないかな?あの人昔より更にネジ数本飛んでたし…………ま、それはいいや。とにかくどっちがいい?好きな方選んでいいよ!」


「ふ、ふざけるな!どうせお前らも大量に死なせてるから防衛自体は失敗、俺たちの勝ちだよ!」


 甲高い少女の声に煽られドラクが返答するより先に噛み付く他のメンバー。だがその堕天使はその叫びに対して極めて馬鹿にしたニュアンスを込めて鼻で嗤った。


「ばっかじゃないのぉ?全員生きてるしぃ!現にクエストクリアって表示された?されてないでしょぉ?」


「は、はったりだ!反応がなくなってるのは知ってるんだぞ!」


 他のメンバーも堪らず叫ぶが、次の瞬間そのプレイヤーの首がスパンッと吹き飛び赤いポリゴン片が舞う。そしてそこにはいつのまにかククリナイフを振りぬいた状態の『無表情の乳白色なピエロマスク』を付けた殊更小柄な、しかし見事な胸部装甲を持つ少女が静かに佇んでいた。


 ドラク達はギョッとして跳びのき、堕天使は嘲りの感情を濃厚に煮詰めたような高笑いする。


「アハハハハハハハ!!あーっおっかしぃ!!作戦全部筒抜けですけど、何かぁ?そっちの斥候職、この至近距離でずっと情報収集されてたのに気づかないなんて、てんで使えないねえ!つまりは全部フェイク、ぬか喜びご苦労様でしたぁ」


 煽りに煽られるドラク達。だが今の今までずっと近くで全ての情報を収集され筒抜けだったことは事実らしく、ショックを受けて言い返す言葉が出ない。


 それに追い打ちをかける様に丘の向こうから大ジャンプして上から降ってきてガガガガガガガッ!と脚でブレーキをかけながら堕天使の隣でストップしたのは、特攻服をきた『憤怒の表情の真紅のピエロマスク』の女性だ。


「おい!いつまでやってんだよ!」


「そっちはもう終わったの?」


「全員アイテム出せ、って言って出させた後ボコって殺した。出し渋る奴が悪いよな。早くしろって言ってんのにコソコソ連絡取ろうとしたりログアウトしようとしやがったりよ」


「あ〜……ネタバレしたし。ま、そういうことで、死んで?」


 構えられた双剣と拳。再び消える謎の少女。次の瞬間、堕天使と特攻服に飛びかかられたドラク達は何が起きたかも分からないまま、まるで赤子の手をひねるようにあっさりと首を斬り飛ばされ、撲殺され、シティの大教会でリスポーンした。








「おおおおおお〜!全員返り討ちか!やっぱり凄いんだなあんたら!」


「まあ、それ程でも。丘は削れましたが此方であとで補填させていただきますよ」


「いや、命あっての物種だ!あれほど攻めて来るとは思わなかったから俺たちも救われたのさ!」


 そこは丘から離れた小山。その小山から丘を見下ろしていた野盗達からどよめきがあり、団長が自分たちを救ってくれた者たちのリーダーである男の背をバンバン叩く。


「約束通り、全滅させてくれたから報酬は「あ、それに関してですが」」


 上機嫌な団長は大量の貴金属を渡そうとするが、それを途中で遮った『垂涙の表情の蒼いピエロマスク』の男は仮面越しにその本性を剥き出しにした獰猛な笑みでニッと笑って朝の挨拶をするように告げる。



 ―――――些か報酬が足りないので貴方方のお命も頂戴します。



 盗賊団相手にも比較的礼儀正しく接していた人物のいきなりの言葉に理解が及ばない盗賊達。

 彼等を包囲する様に9つの魔法陣が急に現れ、ゾンビ化した巨大な半人半蠍の異形の化け物が、背筋の凍りつくような雄叫びを上げながら現れる。

 これだけでも絶望的だというのに、その男の後ろに現れた魔法陣は更に一際大きく、キメラ化した半人半蠍が巨大なハルバードと盾を装備して召喚され、9つの魔法陣から生まれ出た異形の怪物が一瞬で霞むほどの咆哮を放つ。


「全死霊共!盗賊全てを“殲滅”せよ!!」


 宣誓とともに無詠唱で発動した男のデバフ魔法に対応が完全に遅れた盗賊達は全員が麻痺状態に。なにもできずに怪物どもに踏みつぶされ、引きちぎられ、切り裂かれ、一方的に蹂躙されていく。


「だ、騙しやがったのかテメエ!?」


「騙した?はて、なんのことでしょう?俺達が請け負ったのは『侵略者の撃退』。侵略者を殲滅した今、私と貴方の間に結ばれた契約は履行済みと相成った。それだけのことですよ?」


 強力な麻痺のデバフで動けないところをひと際恐ろしき異形の無慈悲なるハルバードの一撃で真っ二つにされ、ポリゴン片になって砕け散る『金犬の盗賊団』団長。一方的な蹂躙劇はたった3分で幕を閉じた。


「NPCの魂、一応PLの魂と同カウントだから300以上のカモ逃すわけないじゃん」


 簡易召喚された死霊が役目を終えて消えていき、ただ一匹残った怪物にタランチュラの素揚げや上質な木材などを餌に与えて頭を撫でてやる男は独り呟く。


 斯くして盗賊討伐戦は決着。1サイドのみが多大な戦果を挙げて完全勝利するのだった。








(´・ω・`)80にんまるごとじゅあわ(蒸発)くるくる


ま さ に 外 道 

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― 新着の感想 ―
[一言] プレイヤーからも盗賊達からも もっと搾り取れただろうにもったいない… 最高に上手くやれればこれより消費を少し減らして より確実により安定性も確保した上で 利益を2~3倍以上は得る事が出来たは…
[気になる点] 2番隊から8番隊だと70人になると思いますがどうでしょうか
[一言] 大規模戦闘ってなんだろう 依頼主も殺すっていう発想はなかったです。ノート君えげつないですね
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