No.43ex 曇天
(´・ω・`)出荷よー
「オラァ!これで、終わりだぁぁぁぁぁ!」
ユニーククエストを発生させてから十数日間、毎日の様に殴り合いを続け、各ブロックのボスだった角の生えた狼頭、角の二本生えた豹頭、角の3本生えた鰐頭、犀頭、牛頭の巨大版を撃破。
そして最後に現れたのは仁王像に角を生やし阿修羅像化させた様なおどろおどろしいBOSSだ。
死角がない上に全方位攻撃を仕掛けられる三面六腕にはスピリタスも大苦戦を強いられ数十と死ぬ羽目になったが『コイツはぜってぇ潰す!』という怒りのヒートアップで“合計4時間”に渡る激闘を制し、膝をついた阿修羅仁王像の顎をスピリタスは前蹴りで蹴り上げる。
ズドォオオオンと砂煙をあげて倒れる巨体。
アドレナリンが急速に引いていき、悪鬼と称されるほどのスピリタスも息を荒くし疲労から流石に座り込む。
『挑戦者よ、よくぞ我を倒した』
『天晴れ、誠に天晴れ』
『主は修羅を知り修羅に通じ喧嘩師たるその意味を理解せし者』
『闘うこと修羅道を征く悪鬼の如し』
『主は闘いを越え、その身は既に人の身に非ず』
『嗚呼素晴らしきや』
『主よ、我等を継承せよ』
『さすらば我が生涯に一片の悔いは在るまいて』
3つの頭が順繰りに話した後、阿修羅仁王像はポリゴン片となり消えていく。
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ユニーククエスト:修羅道悪鬼喧嘩祭り クリア
クリア評価:S
クリア報酬
種族:悪鬼 へ進化可能
主職業:修羅道喧嘩師 へ転職可能
獲得ユニークスキル
❶金剛頑強
❷修羅の道
❸覇道阿修羅憑き
獲得“オリジナルスキル”
❶戦覇真拳勝負
称号
❶真の喧嘩師・原初
❷蛮勇
❸悪道・原初
❹特異なる秘求を乗り越えし者・原初
❺真醒の戦技・原初
❻ジャイアントキリング
❼アローンファイター
❽ドラマチックサプライズ
❾唯一無二の戦技 獲得
アイテム
❶殴殺木刀
❷喧嘩上等特攻服 獲得
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スピリタスはその場で獲得した物全てを有効化する。
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名前:スピリタス
種族:悪鬼
ランク:9
性質:悪人
正職業
❶修羅道喧嘩師:Ⅰ
❷挑戦者:Ⅰ
❸
副職業
❶
HP:817/817
MP:243/243
筋力:B
体力:B
敏捷:C
器用:D
物耐:B
魔耐:I
精神:E
称号
・悪への道を・原初(最も早くPKをした者の称号:悪性上昇率増加・PK時成長性上昇)
・殺人マニア
・殺人鬼
・悪道・原初(悪人に到達した者の称号:悪性上昇率増加)
・真の喧嘩師・原初(スキル・魔法を一切使用せず、挑まれた勝負にどんな敵であろうと真っ向から立ち向かった狂気の格闘家の称号:筋力成長性上昇)
・蛮勇
・特異なる秘求を乗り越えし者・原初(ユニーククエストをクリアした者の称号:ユニーククエスト発生率微上昇)
・真醒の戦技・原初(戦闘型“オリジナルスキル”を習得せし者の称号:オリジナルスキル習得率上昇)
・ジャイアントキリング
・アローンファイター
・ドラマチックサプライズ
・唯一無二の戦技
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赤い一対の阿修羅型仁王像の中間に『喧嘩上等』と金色で背中に刺繍された漆黒の特攻服。額からは10cm大の黒い鬼の角。腰に漆黒の木刀を佩く姿はまさしく22世紀では絶滅した暴走族の様な格好。ギラつく様な金髪相まって凄まじい威圧感を放っていた。
「こりゃいいや。しっくりくる」
装備を切り替えシャドウボクシングをしながらその感覚を身体にインプットしていると輝く空間。
スピリタスが思わず目を瞑り、次に目を開けるとそこはクエストを受けた場所から少し外れた路地裏だった。
「ん、久しぶりに戻ってきたのか。さて外で試しにひと暴れすっかな」
首をゴキゴキ鳴らし表通りへ足を進めていくスピリタス。
一般のフィールドから十数日も離されたために自分が何をしようとしていたのかも覚えていない。とりあえず外でもうひと暴れしてやらぁ、と考えつつ街の外に出ると、それを待っていたように急にボロボロのマントを頭からかぶった者が近寄ってきた。
「ヘッヘッヘッ…………わかる、わかるぜぇ。あんた、俺達と似た気を放ってやがるぜぇ………」
「なんだァ?てめェ………」
よくわからないことをほざきながら近づいてきた男を威嚇するようにスピリタスはにらみつけるが、男はひるんだ様子もなく話し出す。
「へっへっへ、そう睨むなよ。俺は『金犬の盗賊団』の副団長。俺たちはここらで幅を利かせていた盗賊団だったが、最近俺たちの根城があんたの様に最近この世界に現れた異界人にバレちまったんだ。団長は迎え撃つ気だが、あんたらの数を見てると俺たちだけでは厳しそうだ。
だから頭数をそろえる必要がある。そこで筋金入りの悪党たるあんたを見込んで頼みがある。俺たちに少し雇われてみないかい?報酬はたんまり、成果に応じてさらに加算させてもらうゼェ!」
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特殊傭兵クエスト:『金犬の盗賊団』の拠点防衛
クエストを受注しますか?
Yes/No
[詳細]
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そして歪な運命の歯車は回り出す。
◆
「これはレイド級のクエストだ。盗賊団の規模は偵察隊の情報ではその数は300以上は確実と予想されている。よってここで動いていてもクエストのクリアは困難だろう。そこで、今回の『金犬の盗賊団』掃討戦は俺、“ドラク”が率いるクラン『DragonSabreCorps』が主導で進めさせてもらうがいいだろうか?」
そこは冒険者ギルドで借りることのできる大会議室。円卓の上座には“公式”で最も早くユニークスキルを手に入れクランまで立ち上げたPL:ドラクが座り他のプレイヤー達に問いかけた。
集められたプレイヤー達は『金犬の盗賊団』掃討戦のクエストが発生し受注したパーティーやクランの長。挨拶をそこそこに1番勢力のあるドラクがいきなり切り出すが、誰も不満は出さなかった。
座っている場所からもわかる通り、ここに座る者たちはこうなることは予想していたのだ。
ALLFOの自由度の高すぎる世界、完全没入型VRでのレイド戦がどの様になるかは皆もまだ正確には把握できていない。面倒なリーダーを率先してやってくれるなら押し付けたい、そうPL達は考えているのでドラクに対し異議などなかった。
他のプレイヤー達が関心を持っているのは報酬の分け方と各々が抱えている情報だけだ。
報酬の分け方に関しては少し揉めたものの、そこはドラクが高いカリスマ性で仲裁。会議は一応まとまり作戦立案の段階(本来は順番が逆な方が正しいが、モチベーションを上げるためにドラクが断行した)になったが、そこで情報屋系のパーティー『ヘルメス』が重要な情報を齎す。
「あ〜、皆さんちょっといいかな。思ったより大規模なんで、今回は俺たちの情報屋としての腕の宣伝も兼ねてビッグニュースだ。どうやらこのクエスト、盗賊団側も活発に動いている可能性がある」
わざとぼかした言い方で一度皆の興味を集めると、『ヘルメス』のリーダーは特ダネを披露する。
「今回俺たちにクエスト発行をしたのは各ナンバーズシティの冒険者ギルドのNPCだと聞いている。当然、俺たちもだ。
だが……情報源は売り物なので言えないが、盗賊団側もプレイヤーを雇えるらしい。今現在既に猛威を奮っているPKクラン『赤牙』へ盗賊団側から傭兵依頼があったとのことだ。『赤牙』は受けなかったらしいがな。どうもPKを率先してやる『赤牙』共もそのクエストはわりに合わないと判断したんだろうよ。
しかし、だ。恐らく盗賊団側に付いたプレイヤーがいる可能性は0じゃない。ただのNPCを相手にするつもりだと痛い目に合う…………いや、本拠地に攻め入る前に奇襲される可能性がある。それを留意してほしい。『ヘルメス』からは以上だ」
「そうか、それはとても重要な情報だった。もし聞いていなければこちらが大損害を被った可能性もあるのか。情報提供、感謝する」
「そのかし、報酬の余剰の分け前は期待しとくわ」
「そうだな、皆もこの情報の有用性は理解してくれているだろう。ただし、こちら側はクエスト参加上限の100人を既に揃えている。
現在トップの側をいく俺たちが大々的に参加すると言っているのに、ことを構えるような物好きは多くはないはず。警戒はすべきだが、やるべきことは変わっていない。さあ、作戦を立てて行こうか。まず俺としては———————————」
決戦まであと5日。
(´・ω・`)さあもりあがってまいりました