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No.42 執事の献身


(´・ω・`)どこまでも強かで狡猾で打算的なノートさんです。さすが外道。






「ちょ、これ凄ぉ!?」


「ユリン、早く倒す」


「ミニホームの中で定期的にバトルしてんの俺らぐらいだよな、ほんと」


「あわわわわわわ」


 その場所はどこか、ミニホームの中にあるタナトスの農場とは別の“実験室”である。

 ではでは、ノート達が戦っているのは何か。もちろん敵性MOBである。


 そう、敵が侵入不可能なミニホームで、ノートたちは敵性MOBと戦闘を繰り広げているのだ。



 では何故そんな事態に陥っているのか、いや、どうすればそのような事態を引き起こせるのかといえば、その立役者はネオンとアグラットだ。


 ネオンが初期限定特典『パンドラの箱』に付随して取得できた『禁忌合成生物学者』は、錬金術でも生物に特化し禁忌の領域まで踏み込んだものが取得できる職業である。生きている物だろうがその場で合成できてしまう恐ろしい職業だ。「勘のいいガキは嫌いだよ」で有名な博士が専門としていた例のアレである


 だが生半可な個体では合成に耐えきれず共倒れ。それ以外はテイムできず連れて来れない。そんな問題を図らずもクリアしたのがアグラットの悪魔創造だ。アグラットは多種多様な悪魔を創り出すことができ、その悪魔と収穫してきたファンタジックな植物を合成することで新たなクリーチャーを作り出すのだ。勿論毎回成功するわけではなく失敗するとかなり痛い目にあうが、素体が合成に耐えうるので今のところはほぼ成功している。


 例として


朽赤の薔薇×蛸足の邪悪な感じの人型=薔薇の蔦が脚に置き換わった蛸植物


狂痺蕈×ピエロっぽい爆弾魔=麻痺系のガスが詰まった爆弾を投げる人面キノコ


緑泥草×影でできたアサシンっぽいヤツ=緑の泥を地面にばら撒いて そこから自由に出入りしてくる緑泥草塗れのアサシン


向滅葵×狼人間の獣化度1.5倍状態の悪魔=灰色のライオンの頭をくっつけた人狼(なお向日葵の種の様な物を口から弾丸の様に撃ってくる)


幻豊胡瓜×鰐に犬の脚をくっつけて背中に棘を生やしたモノ=鰐のような噛み付いてくる瓜っぽい身を持った植物


巨大ハエトリグサ×手足が生えた鮟鱇=自走するお腹すかせまくった超巨大食人植物


などが挙げられるが、あくまで例でありまだまだバリエーションがある。


 合成してできた悪魔型生命体は強い。加えて悪魔の性質を大きく引き継いでいるので自分より遥かに強い物でないと支配権を打ち破り暴れまわる。魔王から見ての悪魔は創造の最低値の“最下級”の悪魔ですらノート達にとっては全力で戦わなければならないほどに強い。それを未だにランク帯の分からない腐森で収穫した植物類と合成すれば100%暴走するという寸法である。


 暴走すると悪魔召喚同様、本来絶対的な安全圏であるミニホームの中でも戦闘モードに切り替わる。だが裏を返すと『外乱要因がなく、瀕死で逃走もされない空間で安全に強敵と戦えるのでは?』とノートが気づいてしまったが運の尽き。


 “闘技場”というコロッセオの様な部屋を課金で購入し、悪魔を合成、100%暴走するので戦闘、という流れを繰り返している。倒した植物系悪魔からドロップは無いものの、パラメータは成長するしノートの魂ストックはちゃんと溜まっていく。


「勝ったな!ガハハッ!」


「あの……ノートさん?」


「ネオン、ノート兄さんはテンションがある程度高くなってくると一度壊れる持病がある。ほっておくが吉」


 これは完全に裏技だゼェ、と外道な笑いが抑えきれないノート。

 ネオンのお陰でアテナとゴヴニュから要望があった『付与術師問題』もクリアされ、昆虫などの管理はアグラットが解決してくれた。お陰で優先順位が色々と変動したために、ノートはある死霊を召喚しようと植物悪魔狩りをアグラットが参入してから3日間続けていた。





「そして集まったのがこれらの魂です」


「サクッと飛ばせるほど簡単じゃなかった」


「流石に疲れたねぇ」


 まるで3分クッキングのようなノートの言葉にユリンとヌコォからすかさず苦情が入る。

 なにせ植物系悪魔は一体一体が般若面蟷螂人に近い性能を持っている。ランク10になったから多少はマシとはいえ、少しの油断で1人2人簡単に殺してくるのだ。それを毎回毎回攻撃方法の違う相手に周回するのは、ユリンやヌコォたちといえどもとてもキツイことだった。


「うん、協力ありがとう。てかパラメータが順調に伸びてるあたり強さがうかがえるよな」


「悉くが状態異常系の攻撃を持ってるから面倒。初見殺しな技も多かった」


「でも逆に考えてくれ。それだけクソ面倒な相手を周回して倒さないと召喚できない死霊のスペックをさ」


「一体何を召喚しようとしてるの?」


「それはお楽しみという奴だ。(素材は植物系のボスドロップ全部ブッ込んで脳味噌ぶち込んで…………PLの魂10、植物系の魂100、上位の植物系悪魔の魂30、植物系人型の魂15、アンデッド系の魂……目下1番足りない魂が1つ…………生贄はハーブや薬草、毒草のバラエティーを豊富に突っ込み、ユニーク化チケット、そして…………呪具化した樹護の木盾!さあこれが吉と出るか凶と出るか…………触媒はやっぱりネクロノミコン)…………《特殊下級死霊召喚ルナティックドライアドファントム》」



 恒例と化したメンバー全員集合状態での召喚。

 バルバリッチャやアグラットも見守る中、金色の魔法陣から生まれた金色の沼からズズズズズズッと新たな死霊が出てくる。


「召喚していただきありがとうございまっすぅ。わたしはぁニンサールドライアドファントムでっすぅ。植物に関してはぜぇ〜んぶお任せよん。御主人様ぁよろしっくねぇ」


 透き通る様なエメラルドのウェーブのかかった髪と瞳。頭には黒い月桂樹の冠。服はトーガの様な物で、脚は非人間であるかの様に樹木の様になっている。そして全体的に透けている。

 だが何よりも目を惹くのは豊穣の証と言わんばかりのデカイ2つの双丘。ちょっと激しく動けばトーガから脱走しそうなボディなのだ。

 柔和で緩そうなおっとり系美人の顔立ちと頭脳レベルを下げてきそうな、踊る様なゆったりゆるりとした口調もなかなか印象に残る。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


特殊下級召喚死霊ニンサールドライアドファントム特・ユニーク

ランダム追加技能:治療師

 

所有技能

・農耕

・栽培促成

・品種改良

・植物保全

・環境調整

・希種作成

・樹木魔法

・薬剤師

・園芸学者

・物理攻撃無効

・森傷怨災化

――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「(キャラ濃いな、コイツ。てか『森傷怨災化』って説明聞かずともわかる危険さだな)……おう、よろしくな。それでお前にも名前を与えようと思うが……実はこれももう考えてきた。お前はネモフィラからとってネモだ」


「お名前ありがたくちょうだいいたしまっす、御主人様ぁ〜。ネモフィラなんて、御主人様ったら照れちゃうわぁっ」


 どゆこと?とノートに集まる視線。頬を手で押さえ(わざ)とらしいほどに身体をくねくねするネモを見てノートは苦笑する。


「ネモフィラの花言葉は『可憐』『どこでも成功』だ。いい感じだろ?タナトスは前々からオーバーワークだったし、ネモに農耕関係でかなり援助してもらえるならタナトスの負担軽減になって得意な料理などにウェイトをかける。適材適所だ」


『御主人様、私めにその様なお気遣いをしてくださりこのタナトス、感謝の極みでございます』


「ま、バルちゃんも少し例外的だったし、それを除けば1番最初からこうやって仕えてくれてるのはタナトスだし、感謝してるんだ。ついつい頼りがちになってしまうぐらいには有能で。こんな臣下がもてて俺は幸せだよ。アテナやゴヴニュには悪いけど、やっぱりお前を少し優遇したくなるぐらい貢献度では他の追随を許さないし」


『お、恐れ多い御言葉でございます』


 声を震わせながら跪き深々と頭を下げるタナトス。アテナ達の眼に映るのは悔しさと憧憬、熱意……そして納得だった。


 ノートは優しく笑うと、タナトスの肩にポンと手を乗せる。


「だからお前を進化させようと思う」


 PLの魂や集めていた悪魔系の魂やその他諸々の希少素材を投げうつノート。ネモを喚び出す前からノートはタナトスを進化させようと決心していたのだ。


「《死霊進化・タナトス》」


 ノートが静かに呟くと、タナトスから7色の光の奔流が噴き出しその脚元に展開された魔法陣からその光を覆う様な暗雲が出てくる。それはタナトスを包み硬化すると、蝶の蛹が羽化するように殻が剥けて消えていく。

 中から現れ出たのは今までのボロボロの執事服から立派な執事服に代わり、そこらのスケルトンと変わらなかった見た目から水晶化したスケルトンとなったタナトスだった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

特殊下級死霊・エキスパートバトラークリスタルリッチ特・ユニーク

ランダム追加技能:代行

所持技能

・創作料理・給仕

・植専錬金

・調理錬金

・清掃・整備

・念話

・生活魔法

・施設管理

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 新生したタナトス。

 それは『戦闘に関してはもう全部捨てました』と言わんばかりの特化技能型だ。


『お、おぉ〜〜……この想いをなんと申しましょうか。このタナトスの感謝の念をどうお伝えすればよろしいのか…………』


 タナトスの手の中が光り輝き、ノートにうやうやしく差し出される。


『この感謝を表すには遠く及びませぬが、これをお納めさせていただきたく』


「これは………………」


 それは正方形の不思議な紋様が刻まれ、真ん中に小さな水晶の髑髏がはめ込まれたもの。髑髏の部分に手を翳すと縮小率を自在に変えられるミニホームのジオラマが空中に投影される。

 ミニホーム内は拡張しても外見のサイズは変わらない不思議空間だが、そのジオラマは縮小のかかってない仕様で『畑』や『作業室』『鍛治室』『調理室』『倉庫』『闘技場』なども精巧に再現されている。

 しかもその内部にある道具などのオブジェクトも全てが再現されていた。


 だがノートが驚いたのはそれだけではない。『リビング』の部分にはタナトス達をデフォルメした様な『駒』があり、部屋それぞれに吹き出しが表示され、それに触れるとその部屋にいるメンバーやその状態などが詳細に表示されるのだ。

 農場などは特に詳しく、何が育てられているとかその育成状態まで閲覧できた。


『施設管理のお役に立てるのなら、と思いまして』


「『本拠点(Headquarte)実景(rDiorama)/ギフト・タナトス』……いや、本当に凄えなこれ。ありがとう、タナトス。これからも頼むよ」


 これは好感度爆上げした甲斐があったか?とジオラマをしげしげと眺めながらノートは嬉しそうに笑うのだった。




次回予告「ステンバーイ、ステンバーイ…………」



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― 新着の感想 ―
[一言] >>森傷怨災化 なんか、30話を思い出す。
[気になる点] タナトスの進化後のステータスの区切ってるところがおかしくないですか? 誤字報告だと修正部分のテストが全部消せないみたいなのでこっちに報告しときます 上位の植物系悪魔というのは悪魔…
[一言] 次が楽しみになる話運び、キャラ一人一人に愛着が湧く物語。 応援してます。
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