No.41ex 天性の喧嘩師
お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ん!(歓喜のファンファーレ)
ㇾ゛ビューが増えてるにゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!(誠に感謝申し上げます)
み゛ぃ゛は約束をきちんとま゛も゛る゛にゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛(断末魔)
「アハハハハハハ!ペーター、見てるかこれ!?」
「ん?あぁ!噂の彼らじゃないか!」
「…………愉快に見ていられるほど、彼らのしていることは生易しくない。やはりナーフをしないという宣言は失敗だった」
「ヤオ、君は相変わらずかったいなぁ。ママのお腹にスマイルを忘れてきたんじゃないかい?」
「んんん、現場もかなり混乱してるね。詫びアイテムを彼らに撒きすぎてる」
「同感。提供した詫びアイテムのランクが高すぎる。正直ビビりすぎ」
そこはALLFOの根幹を創りし者達が集まるVIPルーム。勿論メンバーが全員揃っているわけでもなく、創立者は既に隠居するぐらいではあるが、第2世代の天才達は先輩達の遺してくれたものを参考にALLFOとして一つの世界として創り出した。
ALLFOに詰め込まれた設定などは、設定厨な日本のとある同人サークルが、
『こんなゲームがあったらいいな』と1人の女性が創り出した大まかなメインストーリーに、クトゥルフ神話の様に各々が設定やキャラクターをどんどん付け足していき、大百科辞典か何かかと思うぐらいの設定集に『Golden Pear』の子会社が製作途中だったゲームを組み込んだものが原型となっている。
ALLFOのAIは設定やステータスなどを超厳密に定めてデータを預けると、それを元に自在にシナリオなどを創り出してくれる。それ故に設定だけでもおかしな量と質を実現しており、社内ですらその全てを把握している人はいないのでは、と言われるほどだ。
その中でも特に貢献度の高いものだけが立ち入り可能なVR空間。
まごうことなき天才達のみしか立ち入れない部屋は、ALLFOの全てを自由に見渡すことができる機能が付いている。
そして彼等は幾人かのプレイヤーに注目していたが、特に注目している一団が存在した。ラスボスに近い相手と友誼を結び続けて大規模PK祭り。隔離されても嬉々としてALLFOを楽しみ、馬車で大ジャンプを決める様なカッ飛んだ連中は早々いる訳がない。
「彼らなら、初期限定特典の“本当の意味”に気付くんじゃないかい?」
「いや、ストーリー進めていけば絶対わかるあんなシンプルなメッセージに気づかなかったら彼らの脳味噌はトロールと取り替えっこした方が良いんじゃない?」
「アナント、相変わらず君は口が悪過ぎる。ミスリードを誘う様な実装をしているんだ。いつ彼らが本格的に動き始めるか見ていよう」
「ハイハイ喧嘩しないで画面を………あらら〜、魔王を従えちゃったし」
「オリジナルスキルをこの段階で習得とは、ますます楽しくなってきたぞぉ」
「ああ、そしてこのプレイヤー達がもしクランでも組んだら、絶対に楽しくなってくるね!ジャパンの第1期はいい意味でクレイジーがいっぱいだ!」
「プレイヤーネーム、スピリタス、トン2、鎌鼬、か…………」
◆
「Goaaaaa!」
「オラァ!死ねえぇ!」
上段から殴りかかってきた相手に対して、少し身を後ろに下げながら回し蹴りを顎に叩き込む。顎に横から強烈な衝撃を叩き込まれた相手は脳が激しく揺れ綺麗に錐揉みして地面に倒れる。
そして回し蹴りした脚をターンしながらグッと自分の方に引き込み、素早く頭を下げつつ足を地につける。
それにより彼女を後ろから殴ろうとしていた相手の手は髪を掠めて空振り。
予想外の空振りに身体のバランスが崩れて、下でニヤァと獰猛な笑みを浮かべる彼女に腰が引けた次の瞬間、強烈なアッパーカットが顎に突き刺さり吹っ飛んで気絶する。
だがそこで終わりではない。横から迫り来る脚を彼女は素早く抱え込み脚が来た方向へ抱え込んだまま体重をグンッとかける。不意打ち狙いで蹴ってきた相手は重心が崩れて思わず背中から倒れこむ。
そこへ馬乗りになると彼女は容赦なく顔面にラッシュを叩き込む。
「死ね!死ね!ヌルい攻撃しやがって!」
相手がポリゴン片になるほど殴り続けた後、野生の勘のみで背後から忍び寄り振り下ろされた角材を手の甲を合わせて横へ受け流す。逸れた角材は地面に砂煙をあげて落ちる。
その隙に立ち上がりつつ回し膝蹴りを手首にいれる。
たまらず敵は角材から手を離す。その角材が地面に落ちる前に掴み取ると、相手の顎へ向かって彼女は木材を振り抜く。
「死ねやぁ!」
ゴキッ!と首ごとおかしな方向へ曲がりポリゴン片になる敵。
だがまだ終わりではない。振り向けばまだまだたくさんこちらに敵は向かってきている。
そこは世紀末の世なのか、空は黒灰に染まり石畳で舗装されていない地面とボロボロの家屋が立ち並ぶ。
そこに潜むは人間か、否、角の生えた狼頭、角の二本生えた豹頭、角の3本生えた鰐頭、犀頭、牛頭などの筋骨隆々の人型の異形ども。
だがこの世界のすぐ“裏”には安全な世界がある。そうここは別のゲームではない。ALLFOの中である。街の中でありながら戦闘ができる…………ただしスキルも魔法も使えない。試されるのは野生の勘と獣性と、度胸と喧嘩殺法で独り生き残る力だ。
170cmを超えるスラッとした肉体は全身しなやかな筋肉質。女性プレイヤーである“スピリタス”はユニーククエストを開始してから一種の裏世界の様な場所でスキルなし魔法無しで延々と闘争に身を投じている。
きっと常人なら既に音を上げてリタイアを選んでいるだろう。そしてそれでもしょうがないと思うだろう。
筋骨隆々の2mもの人型の異形が次々と襲いかかってくる世界で嬉々として戦闘ができる様な人物など頭のネジが一本二本で済まない数吹き飛んでいる。
「かかってこいやっ!全員ぶちのめしてやるよっ!」
幾ら攻撃を食らおうと怯まず、笑顔で殴り返し、蹴り飛ばし、野性味溢れる喧嘩殺法で人間離れした戦闘における直感で敵の攻撃を見切り予測して反撃する。
そこには理性はなく、考えるより速く身体が自動的に迎撃態勢になるという、ある人曰く「生まれる時代を間違えてるよねぇ、ほんとに」といわれた人物…………まさしく戦闘に特化したその身のこなしは見る人にも恐怖を植え付けるほどである。
ユニーククエストを発生させてからリタイアせず、その戦闘を延々とし続けるあたりもなかなかぶっ壊れているだろう。角材の耐久がなくなるまで敵をぶん殴り続け、獰猛な笑みを浮かべて彼女は次の闘争へ身を投じる。
それはボス級に見える4mほどの牛頭の巨人などと相対した時でも変わらない。天性の喧嘩師である彼女は止まらない。その歩みに、拳に、迷いはない。
大振りの拳を躱すと初手で容赦なく金的をする。続けざまに執拗に膝を蹴り続ける。
「オラァ!オラァ!さっさと頭下げろや!」
まるで金属の様な手応えしか返してこない脚だろうが関係ない、と言わんばかりに蹴り、蹴り、蹴り。流れるようにそして荒々しく蹴りが炸裂し続ける。
「HPが減ってるってことはダメージは通ってんだろ!?膝ァ砕けろやッ!」
「VUOOOOOOOO!」
そして10分に渡る執拗な膝への攻撃に、遂に姿勢が揺らぐ牛頭。その隙を見逃さず前蹴りを腹部にめり込む様に蹴り込む。それにより身体がくの字になる牛頭。下がった頭に続けて飛び回し蹴り。
完全にぐらついて頭が下がった牛頭の身体の肩に手をかけると、腕の力だけで体を持ち上げて遂に牛頭の二つの角に手がかかる。
「よしきたああああああ!」
角にかけた手を一気に引き寄せ、全体重をかけた鋭い膝蹴りが牛頭の顎に叩き込まれる。肘鉄を脳天に突き刺す。目を思いっきり貫手で刺す。
一切迷いのない極めて残忍なラッシュ。今までの鬱憤を晴らすように牛頭巨人に対して頭部集中攻撃でダメージを増やしていく。
「さっさとくたばれっ!オラァ!オラァ!」
「Vuoooooo!?」
たまらず顔面から引き摺り下ろそうと手を伸ばす牛頭の手をヒョイッと躱すと、頭の後ろに回り込み首に脚を胡座をかく様にかける。気管をしっかり封じる様にかけた脚、脳天肘打ちして目に手をかけながら後ろへ逸らす体。頭部へのダメージラッシュで朦朧としている状態から気管を封じ後ろへ引っ張られ、牛頭の巨体が背中から倒れる。
そして素早く先に立ち上がったのはスピリタス。すかさず牛頭のこめかみにローキック。立ち上がりを強制キャンセルされて牛頭巨人が再び背を地面についたところで、その顔面に容赦なく全体重を乗せた踵落とし。
そのまま顔面を踏み台にジャンプ、続けて空中で溜めた両脚で蹴り込む様に着地するフットスタンプ。
本来腹部に行う、プロレス技でもかなり危険な技をためらいなく顔面に、力加減など一切せずに歯をむき出しにして笑いながらする様はまさしく悪鬼。
続けて大ジャンプからトドメとばかりにヒールドロップを喉へ叩き込む。
「VuBO!?」
「へぇ、顔面と喉は弱いんだ。教えてくれてありがとなぁぁぁぁ!」
絶対に立ち上がらせず、スピリタスは執拗に頭部と喉の弱点に強烈な蹴り技を繰り出し続ける。
「死ねえぇ!眉間も人中も喉仏もこめかみも全部おしゃかにしてやるよ!」
スキルも魔法もないということは、PL本人の純粋な技術が求められるのには違いなく、本来このクエストはクリア出来るような代物ではない。だがダウンを取ってからはほぼ一方的な試合運びで30分も続くリンチの末に遂に巨大牛頭はポリゴン片になる。
「ランク3…………あと何体ぶっ殺せばいいんだっけか?」
ある変人バキューム曰く『それ以上のインパクトを与える人はいなかった』と太鼓判を押されているそんな彼女は、昔より更に悪化した凶暴性で高笑いしながら道を駆け抜けていく。
本当にスケジュールがシャレにならなくなりそうなのでレビュー感謝ゲリラは以後少し見合わせていただきます。まことに申し訳ありません。
ちょっと火を噴きすぎて香ばしくなってにゃ〇ちゅうになるぐらいのでお察しくださいませ。
(´・ω・`)じゅあわくるくる
追記:いよいよ本格的に前座は終わりでございます。