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神ゲーしようと思ったらクソピーキー性能のチート詰め合わせの初期限定特典に当選したので悪役に徹することにする  作者: セクシー大根教教区長ミニ丸語
Chapter1 終わりの始まり

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No.4  初手エンドコンテンツ

(´・ω・`)22世紀には通販番組って存在しているのかな?某社長をAI化した売り子さんとかいたら売り上げ伸びるだろうなぁ


「っと、戻ってきたか」


 其処は開会式前に転移させられた洞窟。非常に薄暗く、ジメジメしていて、如何にも怪しい場所だ。


「そうだねぇ、それでさ、早速やってみない!?」

「何を?」


「死霊召喚だよぉ!気になるでしょう?せっかくネクロノミコンが強化されたんだし!」


 まるで大昔の通販番組のようにニヤニヤしながら詰め寄るユリン。だがノートは首を横に振った。


「うーん、残念ながら無理だな。さっきは気づいてなかったけどイベント中だから出来ない。さっさと進めってことだろ」


「む、じゃあ仕方ないねぇ。サクッとイベント終わらせちゃおう!」


 ノートの手をとると再び突っ走るユリン。いつになくハイテンションなユリンに対して苦笑しながらノートは追走する。


 やがて道はぐんぐんと傾斜し、一気に下りへと転じていく。坂の先には半径50mほどの広大なドーム状空間が広がっていた。

 地下空間ではあるが真っ暗ではなく、神秘的な白い光を放つ石が幾つも辺りを照らしている。だが、一か所だけ局所的に暗い空間があった────まるで、全ての光が拒絶された様に。


 近づいてみれば何か奇妙な記号がびっしりと刻まれた金属製の塊に固定された枷によって全身を拘束された“何か”が待ち構えていた。


「鑑定不能…………種族も分からん」


「え、うそ、これは死にイベント?」


 気づいた時にはすでに遅く。引き返そうにも見えない壁でその異形の怪物の前まで強制的にノート達は運ばれる。


『クハハハハハハハハハハ……!ようこそ我が牢獄へ。我を解き放つ者がいかなる存在かと思えば、秘忌人に堕天使とは──────ああ、実に好ましき歪みよ。カカカカカカッ!傾聴せよ。これは声にあらず、ただ世界の綻びに響く残響である。我が名は獄吏バルバリッチャ。その頭蓋の内に此の名を深く刻みつけよ』



 

 その異形は、よく見れば一応は人型と言えた。


 しかしそれは骨格の配置が人間に似ているというだけの話であり、それ以外のあらゆる要素は人間という概念から逸脱していた。


 まず視線を奪うのは、背中から左右へと広がる巨大な翼だった。

 元の身体の三倍はあろうかというその異様な広がりは、遠目には確かに飛翔器官のように見える。だがその印象は、近付くにつれてゆっくりと、しかし不可逆に崩壊していくことになる。


 それは羽毛ではない。膜でもない。ましてや骨格でもない。

 そこにあるのは、夥しい数の牙だった。


 一本一本が独立した器官でありながら、互いに噛み合うことで辛うじて『翼』という形状を強引に成している。牙はただ鋭いというだけではなく、それぞれが異なる形状と湾曲を持ち、まるで異種の捕食生物から抜き取られた顎を無理やり再構成したかのように不均質である。


 表層に並ぶ牙は細長く、剣のように反り返りながら鈍い光沢を帯び、内側へ潜るほど太く、根元が肥大した獣骨のような質感へと変質していく。

 更にその隙間には、噛み砕かれた断片のような小さな牙が無数に埋め込まれ、全体として「噛む」という機能そのものが翼の形に転写されているかのようだった。


 そして、その翼の狭間。

 首が存在するはずの場所には、明確な輪郭としての“頭部”が見当たらない。


 ただそこには、認識を拒む空隙だけがあった。


 否、それは空ではない。

 視線を向けた瞬間、奥行きだけが異常に深く沈み込む、底のない黒だった。

 覗き込めば吸い込まれるような錯覚とともに、そのさらに奥に星々の残光のような揺らぎが一瞬だけ浮かび上がる。しかしそれが宇宙なのか、宇宙に似た何かなのかは判断できない。

 ただ一つ確かなのは、その中心に“縮退星”にも似た圧縮された何かが存在しているという事実だけである。


 それは光を放たない。

 むしろ周囲の光そのものを落下させ、曲げ、引き裂き、観測という行為自体を途中で折り曲げてしまうかのように見えた。


 それは眼球のようにも見える。

 しかし眼球が世界を見ているのではない。

 世界の側が、その存在によって強制的に“見られてしまっている”という逆転した感覚だけが残る。


 右腕部は数多に分かれた漆黒の蔓だった。

 しかしそれを植物と断定する者は存在しないだろう。

 それらは深海の軟体生物を思わせる粘性と光沢を帯び、一本ごとが人の胴体ほどもある太さでうねりながら蠢いている。その表面には棘のような突起が密生しているが、それは植物的な棘ではない。むしろ“牙の未成形態”のように見える異様な突起群であった。


 そして狂気の行きつく先は、その先端に宿る。

 そこには金属質の器官が複数、生体組織と癒着するように生えていた。

 それは刃物のようにも見える。

 だが刃にしては形状が歪で、切断という単一機能では説明できない複雑さを持っている。

 よく見ればそれらは、単なる器具ではない。

 噛み砕く為の、抉る為の、深く貫く為の、骨を穿つ為の、肉を磨り下ろす為の、剝ぐ為の、焼く為の、絞り切る為の────肉をあらゆる形で傷付ける構造物が、金属というより生体の延長として融合していた。


 つまりそれらは武器ではない。

 殺傷のための道具ですらない。

 生かしたまま、破壊と維持を同時に成立させるための、用途未定義の器官である。


 左腕部は赤黒く肥大し、異常な密度を持っていた。

 その表層には無数の刃状構造が重なり合い、あるものは鋸のように歯を並べ、あるものは槌のように鈍く膨らみ、またあるものは牙そのものの形状を持って突き出している。だがそれらはいずれも「武器」というより、暴力という概念が肉体へ直接癒着した結果のように見えた。


 外皮は一様ではない。

 ある部分は湿り気を帯びた軟体のように脈動し、ある部分は乾いた巨獣の皮膚のように硬質化している。その境界は意味を持たず、異なる生物の肉体を無秩序に接合した痕跡だけが残されている。


 脚は胴の大きさに比べて短く、そして重い。

 逆関節の構造は辛うじて生物的な均衡を保っているように見えるが、膝より先は幾つにも分岐し、その末端は巨獣の蹄に似た形状へと変異していた。歩行のたびに地面が踏み締められるのではなく、何か巨大な存在が世界そのものを圧迫しているかのような錯覚が生じる。

 その股関節周辺からは、脚にも見える腕が生えている。

 太く、筋肉質でありながら、どこか構造的に異なるそれは三つの関節と七本の指を持ち、それぞれが独立した生物のように微かに蠢いていた。


 胴は不気味に膨れ上がり、骨格を見定めるには難しい。

 そして全身には、赤黒い液体で満たされた腫瘤が散在している。

 それは水ぶくれにも腫瘍にも見える。

 しかしその被膜の奥を覗いた者は気付くことになる。

 そこにあるのは液体ではない。

 大小様々な“眼球の断片”である。

 それらは互いに干渉することなく漂い、時折、明確な意志を持つかのように外界へと視線を向ける。


 そしてその視線に気付いた瞬間、見ている側の認識だけが確実に歪んでいく。

 よく見れば、常に細部がブレて見える。何か違うものを覆い隠している様に、視点の中心から離れるほど色や形が違って見える。

 まるで、何かより悍ましいものを脳が認識する事が拒む様に。


 本能的に真の姿の追求への危険を察知し、話しかけられた事を受けて声の発生源を辿った時、ようやくその異形の顔に行き着く。

 胸骨の中央。

 そこには深海の怪魚を思わせる金色に濁った瞳──大きさは人間の其れに近く、巨体からすれば小さい────が存在していた。

 その下には同じように人間の大きさの口がある。

 人間の構造に似ているという意味では確かにそうだが、そこに『人間性』が強く残っている事が逆に不気味さを感じさせる。剣にも見紛う長すぎる犬歯を除けば、残りの歯は人の歯にしか見えない。


 その人間らしい口は、嗤っていた。

 濁った瞳には感情が無いが、口元だけは確かに歪み、まるでこちらの恐怖を理解したうえで、それを噛み砕いて味わっているかのような気配を帯びていた。



「…………ネームドなのか?」


『クハハハハハハハハハハ!我は名を持つ大悪魔だ!貴様ら、名を述べよ』


「えっと、ユリンです。こっちが……」

「ノートです」


『ユリンとノートか。悪の極み、我と同じ業を感じるぞ。素晴らしきことだ!』


「は、はあ。ありがとう、ございます?」


 困惑しっぱなしのノートとユリンは御構い無し、バルバリッチャと名乗る悪魔は高笑いをする。


『嗚呼、素晴らしきかな。呪いは解かれたが、封印の時が長すぎたようだな。本来ならばもう一度暴れ回り、ここに迎えた者どもの悪意に歪む顔を見て消え失せるはずであったが────────よもや同じ匂いの者が、それも二人とは!我は今、満ち足りている!故に貴様らが我を滅ぼすがいい!我が至高の悪意を継ぐに相応しいのは貴様らだ!』

 

 バルバリッチャと名乗った異形がそう叫ぶと、ノートとユリンの目の前に巨大な一振りの剣が忽然と現れた。


『一度しか使えぬが、我が全てを込めた剣である!ゆえに矮小な貴様らであろうと、我を滅ぼすことはできよう!さあ、やってみせよ!』


 なんだこの急展開は…………と呆然として顔を見合わせるノートとユリン。

 しかし未だに見えない壁があり逃げられない。やるしか無いのか……と2人は迷うが、其処でノートはあることを考える。そして剣に手を伸ばしかけたユリンの手をつかんで止める。


『なんだ貴様、よもや我の好意を受けぬとは言うまいな?』


 怪訝そうな表情のユリン。一方でバルバリッチャは不機嫌そうな顔になるが、ノートは任せてくれ、とユリンにアイコンタクト。

 ユリンが頷くのを確認すると、ノートはバルバリッチャに向き直り深々と一礼する。


「いえいえ、多大なるご厚意、まさに恐悦至極に存じます。されど──故にこそ、あまりにも勿体のうございます。バルバリッチャ様は我らを『至高の悪意を継ぐに相応しき者』と仰せられました。しかしながら、いかがでしょうか。我らは未だバルバリッチャ様の足元にも遥か及ばぬ矮小なる未熟者。されど、同じく“悪”に連なる者でございます。三つの極悪が揃えば、なお一層の悪意へと至るやもしれませぬ。まだ見ぬ悪意を、生み出すことも叶いましょう。どうかバルバリッチャ様──今一度、ご再考を賜れませぬでしょうか」


 ALLFOは事前告知で、セールスポイントとして幾度となく知らせていた。

 ALLFOのAIの自由度は、今までの全てのゲームの一線を画すと。

 プレイヤー達が如何なる道を歩み、如何に会話をしたかで、NPC達の反応も人間と同様に大きく変化するのだと。

 その変化は、予定されていたシナリオの結末さえも変えることが可能なのだと。


 故に、ノートはその売り文句を信じて賭けに出た。


 バルバリッチャにつられ、過剰なまでに演技チックに返答するノート。

 それを見てバルバリッチャは今までになく大きな声で高笑いした。


『ククク、クハハハハハハハハハハ!まさか我に進言する者が現れようとは!剣を持てば呪いが解けぬ遊戯を弄していたが────これは愉快を超える!更なる悪意だと!?良い!実に良い!主は(まこと)の悪意を知る者よ!されど我が器は既に限界に近い。それでもなお、主は何を我に見せるというのだ?』


 心底愉快そうなバルバリッチャ。

 愉快、と言えど、優しくなったわけではない。

 本質は悪。その目は、ピンに穿たれた虫を見る様な。同じ土俵の存在を見る目ではない。

 一度(ひとたび)。一度でも、僅かでも意にそぐわなければ、期待をさせた分だけ理不尽な悪意はより重く圧し掛かる事は想像に難くない。

 

 ノートはゴクリと生唾を飲み込み、更に賭け金をレイズした。

 ここが、自分のALLFOでのプレイスタイルを決定づける大一番だと確信していた。していたからこそ、ノートは敢えてアクセルを全力で踏み込む。

 

「私は死霊術士にございます。御期待に添えぬこと、百も承知にございます。されど──僭越ながら申し上げます。私が召喚せし死霊を“器”としてご利用いただければ、再び御身に生を得ることも不可能ではないと、愚考した次第でございます。御満足には遠く及ばぬやもしれませんが、かつての御力を取り戻すための手立てにつきましては、可能な限り尽力いたします。何卒──ご一考賜れますようお願い申し上げます」


 跪き、臣下の様に慇懃に提案をするノート。

 バルバリッチャは愉快そうにノートを見下ろす。

 

『……ほぅ。主、虚言はないようだな。その身に何かを宿しているか。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!無礼は万死に値する。だが、その意志は認める。我は今、機嫌が良い故に赦す。だが────その程度の見すぼらしい死霊で我を受け止められるとでも?あまりに傲慢が過ぎれば、半死の存在と謂えどただでは済まさぬぞ。矮小なる貴様に、それが成し得るか?』


 引き戻す最後のポイント。最終勧告。

 ────だからどうした。ここでリスクをとれるから、ゲームは楽しいだ。リアルを超えるのだ。 

 

「どうか一度、この場で機会を頂戴できればと存じます」


『……面白い。出まかせではないようだな。良かろう、示してみよ!』


「望外の光栄、痛み入ります」


 ALLFOを管理するAIは非常に高度でNPCも人と遜色無い会話ができる。それは事前にも告知されていた通りだ。

 ノートはバルバリッチャに引っ張られ、過剰なまでに演技じみた慇懃な口調になってしまっていたが、もしタメ口で話しかけようものなら既にノートもユリンもポリゴン片になっている。

 バルバリッチャという大悪魔はその様に設定されたNPCなのだ。

 図らずもこれはノートのスーパーファインプレーだったりする。


 ノートは呼吸を整えると、脳内で死霊術のリストを引っ張り出す。

 ランク3に到達したことによりノートは多くの死霊術用の魔法を会得していたのだ。

 そのリストをつらつらと眺め、其処で興味深い魔法を探し当てた。


「…………まずは《召喚霊再召喚・シールドファングスケルトン》」


 地面に浮かび上がる巨大な魔法陣。先程は共に転移し損ねたシールドファングスケルトンがドーム内に現れる。このシールドファングスケルトンは使い切りの簡易召喚ではなく、何度でも召喚できるようにしてある本召喚の死霊の為、こうして再召喚が可能なのだ。


『ほぅ、面白いアンデッドだ。されど、これでは話にならぬぞ?』


「はい、重々承知しております。ゆえに、ここより証明いたします」


 ノートはユリンに声をかけると、先程の戦闘でドロップした全てのアイテムを譲渡してもらう。


「(えっと…………必要な物は、ノーマルスカル×100、希少種スケルトンのドロップであるクリスタルスカル×1・呪腐肉×50・上質呪腐肉×1・屍鬼人の表皮×5・怒屍鬼人の牙×1…………え、レア度の高いアイテムを生贄にしろ?これは不味いぞ…………)」


 出し惜しみして失敗すれば、この悪魔が何をするかわからない。だが現状、容易に手放せるレアリティの高いアイテムなど────────


 ノートは激しい葛藤を抑え、ネクロノミコンの限定課金アイテムで二度と再購入できない『呪われた(いにしえ)の深緑のローブ』と『古の呪いのロケット』を半泣きで生贄に捧げることに決めた。

 半ば自棄である。


「(…………これで失敗したら絶対バルバリッチャなんかぶっ殺してやる。さあ、虎の子のシールドファングスケルトンそのものも生贄にするぞ)」


 指定された物を全て生贄に設定すると、シールドファングスケルトンの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「(そして触媒のアイテムを選ぶのか。消滅しないが耐久値はほぼ0になるわけだな。それって触媒って言うのか?まあいいか。しかも出来るだけレア度が高い方がいいって…………もうネクロノミコン一択だろ)」


 耐久値が減らないオンリーワンのぶっ壊れアイテムを具現化し、ノートは祈るように魔法陣の上に置く。藁にも縋る思いで、お前だけが今は頼りだとネクロノミコンに深く願う。


「(使用魂魄枠はスケルトンの魂×100・ゾンビ×50・屍鬼人×5・アンデッド系希少種×2か。知らないうちにスケルトンとゾンビの希少種を倒してたのは超ラッキーだな。だがこれだと…………ええい、寝袋とテントも生贄に捧げよう!ユリンのミニホームがあれば多分大丈夫!さらば合計4000円強!)」


 折角手にした課金アイテムを手放す徒労感。4000円。されど4000円。一昔前の名作ゲーがセール中なら3本買えてしまう4000円。

 膝から崩れ落ちたくなるほど虚しいが、ノートは必死に耐える。


「(よし、もう迷いはない。これだけやって失敗したらマジでゲームやめちゃるぞー!)さぁ、出でよ相応しき器よ!応えろネクロミコン!!《特殊変級死霊召喚・Modeランダム》!!!」


 かなり痛い出費を用いた魔法《特殊変級死霊召喚・modeランダム》────級指定も死霊指定もない故に、何が誕生するかは一切不明。

 一歩間違えれば何も得られずに全部を失い兼ねない、あまりに危険な賭けの魔法だ。成功しても失敗しても使用したアイテムや死霊全てがロストする。もう一度生贄に必要な素材を貯めなおすのは、この現状では無理に違いない。


 最初はシールドファングスケルトンを中級の死霊に進化させようと思っていたノート。だが、失敗すれば変な呪いをかけられそうなのは確か。この大いなる悪魔にとって、ありきたりで、予想の範疇の事はあまりにも興ざめに過ぎる。

 故にここで一世一代の大博打に打って出たのだ。


「(頼む、頼む、頼む…………!)」


 黒や紫、赤と点滅する魔法陣。弾けるスパークと雷。魔法陣自体もグネグネと変動する中、ノートの全MPを掻っ攫ったところで魔法陣が金色に強く発光した。


「(お、マジ!?マジか!?こい!こいッ!)」


 魔法陣が目が焼けるほどの金色の光を爆発させる。

 しばらく急な明暗の変化で何も見えなかったが、徐々に視力が戻り────


──────────────────────────────────

▇≫死霊階級(アンデッド・クラス):上級

▇≫魔物種族(スピーシーズ):レッサーヴァンパイア

▇≫固有特性(オプション):[(UNQ)

──────────────────────────────────

▇≫外来追加技能(エクストラアドオン):裁縫【特】


──────────────────────────────────


 現れたのは、ちょっと目がイってる感じの浮浪者。

 ただし目が真っ赤で犬歯が異常に鋭く長い。


 よっしゃぁぁぁぁぁ!!上級!と心の中でガッツポーズと歓喜の絶叫。

 ノートはバルバリッチャの反応を伺う。


『ふん、矮小な主にしてはよくやったものだ。到底満足には程遠いが────その努力と献身だけは認め、合格としてやろう』


 次の瞬間、バルバリッチャがスライム状になってレッサーヴァンパイアの口にズルンと飛び込んだ。


 レッサーヴァンパイアはもがき苦しむが、もはやどうしようもない。ノートとユリンがハラハラしながらジッと見守っていると、レッサーヴァンパイアが唐突に発光して再びノートとユリンの目をつぶしてくる。


 そしてその強烈な光が収まると、そこには────


──────────────────────────────────

▇≫死霊階級(アンデッド・クラス):特上級

▇≫魔物種族(スピーシーズ):ノーブルデーモンヴァンパイア

▇≫固有特性(オプション):[ (SP)][ (POT)][(UNQ)

──────────────────────────────────

▇≫概念真名(ネームド)バルバリッチャ(▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇)

──────────────────────────────────

【所有技能】

>変幻自在

>闇魔法

>呪魔法

>拷鞭打

>広範囲探知

>看破

>裁縫【特】

>拒否権


【常時効果】

>自動HP回復【極大】

>自動MP回復【極大】

>HPドレイン【極大】

>MPドレイン【極大】

>物耐上昇【極大】

>魔耐上昇【極大】

>高貴なる威圧

──────────────────────────────────


「…………え?は?え?超強いじゃん。てか俺より絶対強い」


「カカカカカッ!我、復活ッ!予想よりこの身体、悪くないようだな。主よ、惚けておるでない。仮にも我の主であることを忘れるな。改めて名乗ろう────我はバルバリッチャ!主よ、感謝するぞ。今は全盛期の一割にも満たぬが、後に取り戻せばよいことよ』


 まさに尊大が服を着ているのではないかと言いたくなる立ち振る舞い。ノーブルデーモンヴァンパイアに新生したバルバリッチャは完全に見違えた。


 真紅の腰まで届く長髪をツインテールに。眼も燃え盛るように紅い。漆黒を基調とし、深紅をアクセントに使ったド派手なゴスロリドレス。その下にはまさしくボンキュッボンと形容すべき、素晴らしい黄金比のプロポーション。

 腕を覆うは真っ黒できめ細やかなオペラグローブ、そこには赤く細長い盾が付属している。もしかしたらそれはシールドファングスケルトンの名残かもしれない。なんだか自然と膝をつきたくなる美貌とオーラを兼ね備えた、まさしく女王という概念を体現した様な完全無欠の美女だった。


「そ、そうですか」


「待て主人よ。一応貴様は主人だ。特別に敬語を使わずとも許してやろう。それに、主人と心を同じくするユリンとやらも特例中の特例として赦そうではないか」


「ん、そうか、ありがとう。で、一つ聞きたいんだが、この『拒否権』ってなに?」


「ハハハハハハハ!主人よ、拒否権は拒否権である!

我ほどの大悪魔ともなれば、主人の命とて拒むことができるのだ!能無しのそこらの死霊どもとは格が違うのであるぞ!カカカカッ!されど安心するがよい!悪意に満ちた頼み事であれば、我は喜んで力を貸してくれよう!例えば────我が領地の上にて、忌まわしき墓を荒らし回る痴れ者どもを鏖殺せよと言うのであれば!今この場で、一人残らず血祭りに上げてくれようぞ!」


 ───────正気度値を全力に削りにきていると思えないクリーチャーモードの時はただただ不気味だったが、なんか美女だと許してしまう俺が心の何処かにいる。下心じゃなく、女王オーラのせいだろう。だからユリン、俺を抓らないで。VRの痛覚制限があるはずなのに結構痛いです。


 ノートは心の中で訴えるが、ユリンはジト目でノートを見つめ続けていた。長く寄り添っているのだ。相方の兄貴分の性的嗜好も御見通しである。


 どうやら機嫌が直ることはなさそうなので、ノートはユリンのことを後回しにしてバルバリッチャと会話を続ける。


「その痴れ者ってスケルトンか?」


「違うな。主らと似た気配ではある。だが主らに比べれば、蚤にも劣る魅力よ。ただただ不快である。主人らならばともかく、それ以外の者が我が頭上を闊歩するなど─────万死に値する」


 今の状況を鑑みて推測するに、その痴れ者とは“プレイヤー”のようだ。

 ゲームが開始してから今までの経過時間、最初に見た街との距離感を考え得るに、偶然でこの墓地に辿り着いたとは考え難い。


 とりあえず命令を下す前に自分たちで確認すべく、急かすバルバリッチャを宥めながら、ノートはユリンと3人で今まで来た道を引き返していく────その間、ローブをバルバリッチャの為に捧げたノートは『主人が村人Aみたいな格好をしていると情けない』というバルバリッチャの親切なんだが自分のプライドの為かわからないニュアンスの主張を受けて、バルバリッチャが何処からともなく取り出した黒いローブを受け取っていた。

 手触りこそ良いが捧げたローブの様に特殊効果もない、邪教徒のリーダーみたいなキャラが着ていそうなデザインのローブである。

 

 そんな一幕を挟みながら歩いていると、再び魔法陣が出現。あの大きな墓跡群の手前に急に転移した。


 ノートとユリンはちょっとビックリ。

 それ以上に、破壊され尽くした墓地を前に慄きながら調査をしていただろうプレイヤー達は発光と同時に出現した謎のトリオに更にビックリ。

 プレイヤー?いや装備が違い過ぎる。

 何かの特殊イベントか。

 とりあえず様子見を────


 ざっと見て10人以上はいるだろう。誰もかれもが安っぽい装備をつけている事から、まだゲームを始めて間もないPLの集団であることまでノートには理解できる。

 ゲームが始まってからそう時間も経たずに10人規模の集団を結成し、街から離れて行動している事からゲーム慣れしている連中だと推察するのは難しくない。

 同じゲーマーだからこそ、ノートは表情を見ているだけでプレイヤー達の思考が手に取るように推測できる。半端な初心者より、上級者ほど定石があるから読み易い。


 急に現れたノート達はそんなプレイヤーたちとは姿形が一切違う。何かレアイベントを引いたに違いないとにわかに色めき立ちざわつくプレイヤーたちに、ノートがアクションを起こす前にバルバリッチャが一歩前に出る。


「喚くな、下郎ども。許しもなく声を発するな。その口を閉ざし、『跪け』」


 バルバリッチャが強く尊大な口調で命じると、バルバリッチャから金色のオーラが膨れ上がった。


 それは効果不明な【高貴なる威圧】の効果なのかもしれない。

 驚くことにプレイヤー達は、まるで誰かに強引に抑え込まれたように不格好ながら跪いた。


「その不快な眼を向けるな」


だが、皆が跪いたその刹那。バルバリッチャは一人のプレイヤーを鋭く睨み据えた。


「我が内を、断りもなく覗こうとしたか。その無礼────とくと後悔するがよい」


 チラッと此方に目を向けるバルバリッチャ。攻撃の許可をノートに取っているのだろう。


 正直、理不尽なイベントに巻き込まれたプレイヤーは可哀想だ。自分が同じ立場だったら、ノートも小一時間ほど運営に文句を言っていただろう。

 だが、プレイヤーへの同情心よりもバルバリッチャへの好奇心が圧倒的に優ってしまうのがノートである。

 頭の中で算盤を弾き問題ないと確信すると、ノートは許可を促すように頷いてみる。


「《クラスドバイン》!」


 バルバリッチャが指差すと、その人差し指から紅い蛇が飛び出してそのプレイヤーに噛み付き、すぐさま霧散する。

 尊大な存在の技としては静かで、シンプル。一瞬、何が起きたのか皆理解出来ずに空白が生まれる。

 だが、実際に魔法を受けたプレイヤーだけは違った。そのプレイヤーの手の甲に紅い蛇の刺青が刻まれ、何かに気づいたように目を丸くする。

 目に見えない、彼だけにわかる何かが起きた。単なるステータス変化ではなく、本気で錯乱していた。


『貴様らは実に不愉快よ。されど新生の身、気分は悪くない。主人らへの手前もある。我が力の試し相手となるがよい。──〔ダークサブード〕!』


 バルバリッチャがそう高らかに詠唱すれば、バルバリッチャの指が黒ずみ太い注射器のような物に変化する。


 プレイヤーの首にバルバリッチャが漆黒の針を容赦なく突き刺すとHPとMPが目に見えて減っていき、身体中の体液を抜き取られた様に萎びる。その肉体が枯木も如く痩せ、自重に耐えかねた様に身体が崩壊。一切の抵抗を許されず、プレイヤーはポリゴン片になった。


 HPとMPが補給されるのが思いの外嬉しかったのか、バルバリッチャはそのまま5本の指を全て注射器に変化させ、指を伸ばして5人をまとめて吸い殺した。


 次々に殺されていくプレイヤーたちは身を捩り、閉じられた口でくぐもった悲鳴を上げ、必死に逃げようとする。許しを乞う。

 だが、残念ながらバルバリッチャの前では何の意味も無い。むしろ嫌がれば嫌がるほど逆効果だ。


 プレイヤーたちは首をプルプルと横に振り、従者の様に見守っているノート達に一縷の望みをかけて視線を送る。

 送ったが、送られたノートにはどうしようもなく、南無三、と心の中でつぶやいていた。


「そろそろ別の攻撃も見せてほしいな」


「ふむ、確かに補給は済んだ。別の術を見せても構うまい。さて、これは如何なる結果を見せるか……《イービルトレイル》」


 バルバリッチャは眉をひそめながらその謎の魔法を繰り返すし、残り五人もその魔法でさっくりまとめて殺された。

 結果はバルバリッチャにとって満足のいくものであったのだろう。その目が愉快げに弓なりとなる。


「ほぅ、成功か。だが、やはり力は大きく衰えておるようだな。全盛には程遠い」


 そう言って鼻を鳴らすと、バルバリッチャは何かを放るように差し出した。


「ほれ、受け取るがよい」


 バルバリッチャはアイテムを具現化すると、ノートに前触れもなく放り、ノートは慌ててそれをキャッチする。


「これは…………初級錬金術セット?回復薬?魔物のドロップまであるじゃん。これはバルバリッチャが使うのか?」


「たわけ。我がそのような物を使うか」


バルバリッチャは鼻で笑った。


「《イービルトレイル》は呪い殺した相手から持ち物を抜き取る即死魔法だ。全盛期に比べれば成功率は随分落ちてしまったがな。カカカカッ!命を奪うのみならず、財まで奪う!これぞ大いなる悪意に満ちた素晴らしき魔法よ!」


「なるほど、凄え魔法だな」


 ま、今は使えないけど一応持っておくか、とアイテムをインベントリにしまおうとするノート。


 そこで入れた覚えのないアイテムがいくつもインベントリに入っていることに気づく。加えて所持金もいきなり増えていた。


「ユリン、なんか身に覚えのないアイテムがいくつもあるが、ユリンはどうだ?」


「ん〜〜?ボクはそんなことないけど、内訳はぁ?」


「えーっと、初級ライフポーションが2つ、初級マジックポーションが1つ、研磨剤が1つ、蜂蜜が1つ、普通の矢の1ダースセットが1つ、ブラックゴブリンの表皮が1つ、ゴブリンの牙が1つ、レザーコートが1つ、黒密のターバンが1つ…………規則性が感じられないな」


「あ、アレじゃない?PKのドロップだよ。バルバリッチャが殺したプレイヤーとアイテムの数が釣り合ってるしさ」


「ああ、成る程。《イービルトレイル》と重複してないのか。じゃあとりあえず初級のライフポーションとマジックポーションはほとんどユリンに渡すぞ。俺は後衛だから、ユリン優先で」


「うん、ありがとう。でも考えてみると困りものだよねぇ。うちはヒーラーがいないからジリ貧になっちゃうかも。安定した回復手段を何処かでゲットしなきゃねぇ」


 どうしようか、とノートとユリンが額を付き合わせて考えていると、その様子を遮るようにバルバリッチャが鼻を鳴らす。


「戯けが。奪えばよいだけのことよ。二時の方角より六人、九時の方角より十二人。わざわざ貢ぎ物を持って此方へ向かってくるのだ。手厚く持て成してやろうではないか────無論、我々の流儀でな」


 ニタリと嗤うバルバリッチャ。

 美女のガワで隠し切れない、醜悪な悪意が滲み出る笑みだ。


「ノート兄、ボクはバルバリッチャの案でもいいよ!」


 ユリンは双剣を既に抜刀し目をキラキラさせている。PKプレイヤーキルがしたいと全身で訴えていた。どうやらバルバリッチャにまかせっきりなのはユリンとしてもつまらなかったようだ。


「そうだな、これを選んだ時点で悪役一直線だからな。この世界でもやってやろうじゃないの。PK万歳だ」


 そう言ってノートが盗品の黒いレザーコートを装備すると、バルバリッチャは愉快そうに高笑いする。


「それでこそ我が主人よ。されど、何も彼も我が手を貸していては、主人らの成長は望めぬ。それでは我が完全復活も遠のこう。故に──まず六人の方は、主人らのみで片付けるがよい。我は九時の方角より来たる者どもが、そちらへ向かわぬよう取り計らってくれよう。感謝するがよい」


「おう、サンキューな。でも相手の強さとかがわかるなら教えてくれるとありがたいんだが」


「ふむ、残念ながら【看破】は【鑑定】より精細に相手を暴くが、如何せん有効範囲が狭い。故に今は、ただ【広範囲探知】で存在のみを読み取っているに過ぎぬ。無論、本来の力を取り戻せば何ら問題は無いのだが、現状では不可能だ」


「そっか。でも不意打ちを喰らわずに済んだだけ助かったよ、じゃあ行ってくる」


「いってきまーす!」



「本当にこっちなのか?」


「さあな、NPCが言うには『ファーストシティの東門から出たらまっすぐ進む。森にちょっと入ったらそのまま右へ進む』だったはずだ。かなりでっかい墓地だから、よほど大きく逸れない限りすぐに見つかるって言ってたぜ」


 森の中を多少警戒しつつ進むのは、6人組のプレイヤー。


 彼らはまだALLFOも始まって間もなくだというのに意気投合し、とりあえずお試しで、とパーティーを組んでいた。森の中といえど、振り返れば角度次第では街の外壁が見える距離。まだモンスターも強くないので、ちょっとしたピクニック気分で和気藹々と森の中を進んでいる。

 その先に待ち受ける理不尽など、微塵も予測できるはずもなく。


「しっかし俺たちも運が良かったよな。森の中の墓地を見て、軽く様子を見て帰ってくるだけのクエストなのに、そこそこ報酬がいい。きっとチュートリアルのクエストなんだろうな」


「番犬がいるらしいが、この匂い付きの鳴子を鳴らせば警戒を解いてくれるって話だったよな?これじゃガキでもできるお使いだぜ。それで報酬は旨いってんだから最高だな」


「全くだ。ギルドの姉さんNPCがクエスト発行したちょうどその時にいるなんて、マジで運がよかったな!」


 ガハハハハハハハハハハ!と笑い合う6人。


 森の脇道から現れるのはせいぜい最弱モンスターの一角であるゴブリン程度で、危険も何もないのどかな森を彼らは楽しげに歩いていた。


 だがその中で1人だけ、役割故に口数少なく警戒していた斥候役がピタッと立ち止まる。


「待て、何か近づいてる。【感知】スキルに引っかかった」


「ん?まーたゴブリンか?でもあいつらぎゃあぎゃあうるさいからすぐにわか───「〔墜空双絶〕!!!!」」


 耳に叩きつけられたのは可愛らしい声。

 しかしやってのけたことは可愛らしくない。


 上空からの完全な奇襲。そこから落下時に攻撃力に補正のかかるスキルを、完全に油断しているプレイヤーの頭上から延髄目掛けて正確に叩き込んだ。


 そのプレイヤーはタンク役で最も防御力が高く、またリーダー格でもあった。そんな人物の首がたった一太刀で絶たれ、ポリゴン片となる。


 残りの5人はあまりのことに即座に動けない。

 その隙を、襲撃者は見逃さない。


「〔転黒双天舞〕!」


 森の中の足場が優れていると言い難い地面の上、グルンとフィギュアスケーターの様に回転しながら発動する範囲攻撃。


 堕天法双剣士はスキルによるMP効率は良いが、その分足さばきが重要だ。足運びを少し誤れば次の攻撃に数テンポ遅れる、そんな高度なプレイヤースキルを要求される職だ。

 そんな中でも〔転黒双天舞〕のMP消費は10。序盤のスキルにしては重いコスト。高速で三回転し、5人のHPを半分以上一気に削る。


「なん────!?」

「PKかよ!?」

「てか強すぎだろ!?」



 慌てて体勢を立て直そうとする5人。

 お手本の様に組み立て直しを図るからこそ、読まれる。追撃が来る。


「《エクスパンド・ダークブラインド》!」


 全員が新しく響いた声に気を取られて振り向くと─────そこには真っ黒な目、病的に白い肌、黒い血管が浮き上がる異形の人型が佇み、ニタァと笑っていた。

 スキルでも魔法でもない、リアルの知識に基づくプレイヤースキル。どんなシチュエーションで、人が如何な表情を浮かべれば集中が乱れるか熟知している男の作る表情にプレイヤーは完全に釣られた。

 視界はそこで途切れる。


「《ダークショットバレット》!」


 目つぶしの魔法からクールタイムゼロで叩き込まれる闇属性の散弾。


 本来は牽制用の魔法だが、ネクロノミコンによって闇属性魔法が強化され、さらに敵対プレイヤーは闇属性耐性が大きく低下する。

 結果として、牽制用の魔法ですら目に見えてHPを削る。


 前衛の2人はそれだけでポリゴン片に。残りの3人も瀕死のまま耐えるが、盾にしていた1人目が崩れ、続く凶刃で首を斬り飛ばされる。


 こうして6人のプレイヤーは、あまりにもあっけなく理不尽に散った。



「うーん、思ったより呆気ないな」


「あははは!それもそうだよ。ボクの双剣だって初期段階で持てるような武器じゃないし、種族的にも人間じゃ太刀打ちできないポテンシャルがあるからねぇ。同ランクでも差が大きいのに、こっちはランク3。それにノート兄のネクロノミコンで闇属性が効きやすいから、ボクのスキルと相性がすごくいいんだよ」


「なるほど、だからやけに火力高いのか。耐性下げが想像より悪さしてそうだな………………まあ、そこは要検証だな。そんで、ドロップはどうだった?」


「んーっとね、『風鼠の耳』と『初級ライフポーション』、『寄餌肉』……うへぇ、『ゴブリンの脳味噌』だって。なにこれぇ?」


「え、脳味噌あんの?それ使えるから貰えるか?」


「えぇ!?何に使うの……?」


 兄貴分が急にテンションを上げ、その気味の悪いアイテムを所望するので、思わず目が点になるユリン。


 それでも兄貴分の言葉に誤りはないと全幅の信頼を置いているので素直に譲渡すると、ノートは嬉しそうに笑う。


「ありがとな。死霊術でより高知能なやつを召喚するときに必要みたいなんだよ。ゴブリン程度だと気休めだろうが、それでもレアドロップには違いない」


「へぇ、そういう用途なんだ。脳みそ捧げたら頭が良くなるってぇ、安直といえば安直?」


「ははは、確かにな。あ、ちなみに俺は初級ライフポーションと研磨剤だった。どっちもユリンに渡しとくぞ」


「ありがと〜」


 アッサリと狩りを終了させて、ノート達は念の為やや急足で墓地へ戻る。懸念は当たり、バルバリッチャはすでに墓地で待っていた。


「ただいま〜」

「戻ったぞ。6人は片付けた」


 報告を聞くと、バルバリッチャは満足げに頷く。


「良きかな、良きかな。だが宴はまだ終わっておらぬ。次は十二人だ」

「そうだな。新生した肉体の試しも兼ねて、バルバリッチャ、援護頼めるか?」


「ふむ、吝かではない。だが改めて忠告しておこう。主らのような“異界の民”は成長しやすい。されど、我のような強大な存在が手を貸し過ぎれば、その芽は育たぬ。

ゆめゆめ忘れるでない。主らが強くならねば、巡り巡って我もまた成長できぬのだ。故に我がするのは援護のみ。手違いで主らが敗北しようとも我は助けぬ」


 睨む様な眼力、強い口調で警告をするバルバリッチャ。

 ノートは僅かに苦笑して頷く。


「わかった。基本は俺達でやるよ。今は手持ちも少ないから特別対応って事で。援護だけでも助かるよ」


「ふん、弱者が嫌いなだけだ。主人らが弱者に身を落としたままなのは、我が沽券に関わる。それだけのことよ。勘違いするでないぞ。……なんだその顔は、だらしない。ニヤつくな!さっさと殺しに行くぞ!」


 22世紀には化石の様な概念のツンデレっぽさを感じさせるバルバリッチャ。不機嫌そうに顔を背けるが、同時にその態度は妙に親しみやすく見えた。


 ノートとユリンは顔を見合わせ、同じように生暖かい笑みを浮かべるのだった。


 

解説


【召喚された死霊の表記に関して】


例として

──────────────────────────────────

▇≫死霊階級(アンデッド・クラス):特上級

▇≫魔物種族(スピーシーズ):ノーブルデーモンヴァンパイア

▇≫固有特性(オプション):[ (SP)][ (POT)][(UNQ)

──────────────────────────────────

▇≫概念真名(ネームド)バルバリッチャ(▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇)

────────────────────────────────── を挙げて説明する。




まず死霊階級は単純に召喚する死霊の格。

格は、

最下級→下級→中級→上級→

丙上級→乙上級→甲上級→

特上級→最上級→[削除済み]

[削除済み][削除済み][削除済み][削除済み]──────

(加えてネコロノミコンによる召喚されるアンデッドは『特殊』と格の前に表記されやすい)

の順となっている。

 隔離施設で説明しているクリーチャー型・特殊型アンデッドは軒並み上級以上に該当する。ただし格の高さはそのまま強さに直結するわけではないことに留意されたし(当然格が高いほど強い傾向にはあるが例外もいる。 まさにバルバリッチャがその最たる例。あくまで階級は死霊としての格)。

 じゃあ階級ってそもそもなんなのって話に関しては…………


魔物種族(スピーシーズ)

 その次の『ノーブルデーモンヴァンパイア』は魔物の種族としての名前。

 尚、“ノーブル”の名を冠する種族は支配系の能力を持っており極めて優秀。ただし絶対数が極めて少ないので遭遇自体がレア(というより本来ボスモンスターしか持たない名前)。

 召喚でノーブルクラスを喚びだすのは至難の業で、喚び出した後も逆らってくる確率が高い。

 地味に“デーモン”系も珍しかったりする…………


固有特性(オプション)について。

 召喚した魔物や調教(テイム)に成功した魔物の中には稀に通常種とは異なる特徴を有している存在がいる。その場合はこのオプション欄にどんな特徴があるか記号表記される。

 ここのオプション欄になんらかの記載があったら基本的に当たりを引いたと思っていい。

 つまりバルバリッチャの素体となったレッサー君は、単なる上級死霊ってだけじゃなく、なんらかのオプションがあったんですよね。お披露目する前に死んでますが。

 実はこのレッサー君のオプションの御蔭でバルバリッチャが受肉できたことをノートは知らない…………


 では今回バルバリッチャが持っているオプションだけ軽く解説。


+[ (SP)]────Special

 このオプションは早々お目にかかれない表記。

 なぜならそれは『本来存在していなかった魔物』である事を表しているから。つまり遍くフィールドを探し回っても、あまたの召喚を試そうとも『ノーブルデーモンヴァンパイア』という存在には遭遇することはできない。

 つまりALLFO世界に於ける“新種”であることを示す。

このオプション付きの魔物に出会うには、従魔(テイマーが使役する魔物)や、召喚獣の卵などに何らかの極めて特殊なアイテム(イベント報酬など)を使用する────などの特殊な行為を行った場合のみ。

 或いはノートが召喚時に本召喚で召喚したシールドファングスケルトンを生贄にしたように何か特殊な物を生贄に捧げた場合の“事故”として誕生する。

 どちらも発生確率は極めて稀。

 ただしこちらも留意してほしいが、新種だからといって強い保証は一切ない。

 言葉通り、あくまで既存の種とは全く別の特性を有している存在でしかない。



+[ (POT)]────Potential

 『強』は魔物に解放されていないポテンシャルがあることを示す。進化先がまだありますよ、という意味ではない事に注意。

 このポテンシャルが完全解放されたとき、その表記は▇▇に変化する。『特』同様に『強』もまた早々お目にかかることはない表記。召喚される魔物であれば、むしろ特よりも更に極めて珍しい特性。

 なんせ基本的に召喚従魔って召喚された時点で種として完成されているはずなので、召喚の基礎理論的に言えば何かしらの縛りがかかった状態で出現する事ってない。

 簡単に言えば、部分的に色付けをしていないソシャゲのキャラみたいなもの。召喚される物は基本的に【正式製品版イラスト】なわけで、そこに色がついてないなんてまずあり得ないんですよ。

 フィールドにいて調教で従えるタイプだと、エリア相性とか何かしらの外的な影響で未発揮のポテンシャルがあるケースはあるんですけどね…………。



+[(UNQ) ]────Unique

 何度も繰り返すように、これもまた『ユニーク』だからといって絶対に強いわけではない。

 ユニーク表記になるのは、その魔物の種の中でも豊富な隠しパラメータを持っていて、ステ振りを何かしらに極端に偏らせている個体。

 なので育てれば育ててるほどその真価を発揮するという点では通常の魔物より優秀である。※詳しい説明は後程。


+おまけ

 ちょくちょくでてくる希少種(レア)は、アルビノやメラニズム、オッドアイなどの身体的特異性を持つ個体の事。ゲーム的に通常の魔物より強化されてはいるが、使用する技能自体はまったく変化しない。ただし、『変質を誘引しやすい』特性があるので召喚や使い魔の交配時に効果を示す場合もあったりなかったり…………



概念真名(ネームド)

今までと違い、ネームド個体はそれだけで絶対的強者であることを保証してくれる。ネームドはただ単に“名前のある存在”であるわけではない。その名が[削除済み]に刻まれており[削除済み]に干渉する、ある種の『概念的な存在』まで到達した存在、それが『ネームド』である。殺しても其の身を一変たりとも残さず消滅させようと決してその存在を滅ぼすことは不可能である。

特に『地獄の獄吏』とは[削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み][削除済み]──────







裏話

Q:もしバルバリッチャの言うままに攻撃してたらどうなったの?

A:『14』+『バルバリッチャ討伐まで解けない強力な呪いをノートとユリンに付加』+『周囲のフィールド全域にヤバい異常が発生してワールドクエストクラスの強制イベント』が始まりかねなかった。運営がめちゃんこ焦ってたのはこれのせい


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― 新着の感想 ―
クトゥルフとSPC財団が混ざってそこにハイファンタジーが無理やり融合してきたみたいな展開だな最高だぜ
>>ランダム付加技能・裁縫 ランダムとありますが、これはある程度召喚対象に関連する能力から選ばれるのですか? アンデッドが浄化系みたいな能力を得るとかあり得るのでしょうか? >>主人よ、拒否権は…
[良い点] 他の作品にはない視点からの話でとても面白かったです。即興で話作れるAI凄い。 [気になる点] SCP好きそう。私はカンテサンスが好きです。 [一言] 受験の息抜きに楽しませてもらっています…
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