No.Ex 第六章補完話/迷壺
冗談抜きでWifiが100倍速になって非常に快適である
「な、なにが、どうなって…………」
凄まじい物音がして、駆けつけたノート達が部屋の扉を開ける。
部屋に転がっていたのは、悪魔聖女と呼べそうな服を着て地面に転がっている女性と、クラシックながら華々しさも併せ持つ、いわばメイド服ドレスとも呼べそうな服を身にまとい、丸焦げになって仰向けに倒れている少女と、黒すすだらけのモップみたいな何か。白目をむいて倒れているサキュバス達。そして、何かが消し炭になった痕と、ひんひんと情けない泣き声を響かせる真っ黒な金属の壺がそこにあった。
事件だった。
◆
ことの起こりは、レクイエム召喚後。決闘時の動きについての作戦会議をミニホームの情報戦略室でしている時の事だった。
「悪魔を召喚しなさい!」
折角作った爆弾をここで一斉に使ってみたい。爆弾はグレゴリの下位互換死霊と、グレゴリのギフトを使って運び込めばいい。しかし、そのままグレゴリの下位互換死霊に爆撃まで任せようとするとコストが重くなりすぎる。
ではレクイエムを分身させて爆弾を撒かせるか?しかし万が一に備えてレクイエムのリソースを無駄に減らすのは避けたい。分身もノーリスクではないのだ。
爆撃をしなくても、時間をかければ倒せなくはない。だが、面白くない。一手欲しい。さてどうするか。ノート達が額を突き合わせて考えていたそんな時だった。
スポンサーとして作戦会議を聞いていたアグラットが急に発言した。
それを聞いて確かにその手があったなとノート達は顔を見合わせる。
「…………なるほど、召喚か。けど、一体だけ召喚してもなぁ。分身能力を持った悪魔が欲しいけど、強すぎてもまた制限がかかるだろ?」
「あふぁふぃのおふふめのあふまはいるわ!」
「なんて?シュークリームを飲み込んでからもう一度お願い」
例の如く、アグラットの隣にはおやつが山積みになっていて、会議中だろうか好き勝手バクバク食べている。アグラットのせいで、タナトスはやたらとお菓子を作る技術が伸び続けていた。
「あたしのおすすめの子がいるわ!」
「アグちゃんのおススメか」
「ザガンだけズルい!あたしも部下をよびたい!」
「それが本音か」
現在、『祭り拍子』の勢力図に於いて、バルバリッチャが絶対的な王であることは間違いないのだが、その直下の部下であるアグラットとザガンの勢力図は少し微妙な事になっていた。
アグラットは元々単独を貫いていたのだが、最近は勝手にサキュバスを作り出して雑用を押し付けたりしていることは『祭り拍子』の面々にとっては周知の事実だった。
どうやら、ザガンがけものっ子サーバンツという優秀な部下を連れて傘下に加わったことに思うところがあったようだ。それに対抗するように生み出されたサキュバス達なのだが、命令されているのか基本的に能動的にノート達へと干渉してくることが無く、時折ザガン勢力に攻撃を仕掛けては丸焦げ頭アフロ状態で床に転がっていたり、羽子板の罰ゲームの様に顔に落書きされて泣いている姿が目撃されていた。
であれば、アグラットが勝手にもっと強い臣下を生み出したり、地獄から部下を連れてくればいいのでは?と思われたが、ノートが見ている限りアグラットにはそれができないらしい。能力的にできないというよりは、作戦会議も我関せずと聞き流しているように見えてしっかり見張っている大悪魔の影がチラつくからというのが原因なようだった(補足すると、ギャグ要因にしか見えないサキュバス達も単騎でノート達を倒せる程度の性能を持っているので実は弱くはない)。
ノートがチラリと目線をやれば、バルバリッチャと目が合う。目が合うが何も言ってこないということは、まだ介入するほどではないようだ。実質的にまだ許されていると言える。
はてさて、この様な勢力バランスになると、勢力図的には新顔のはずのザガン勢力の方が目立ってくる。
製薬という戦闘に於いてかなり重要な部分を担っているし、ノート達が笹の民との接触する際にけものっ子サーバンツから派遣があったのも、アグラットにとっては思うところがあったらしい。ここぞとばかりに自分の勢力を増やそうと主張してきた。
『『マスター、それならば私からも推薦できる「うるさい!うるさいうるさいうるさい!昔から余計なとこで口挟む陰険バカ!」』』
だが、この場にはザガンもスポンサーとして同席している。普段は地獄に居る事が多いザガンだが、お祭り騒ぎの打ち合わせと聞いて顔を出したようだ。アグラットが幼稚だが単純明快なやり方で自分の手駒を増やしているところを邪魔しようとしたのか同じ提案をノートにしようとするが、アグラットは赤ちゃん返りした駄々っ子の様に騒ぎ始め、ザガンも面喰ったように口をつぐんだ。
叫ぶたびに軽くワイヤーの入ったメイド服風ドレスの裾が威嚇するようにバサバサ動く。ザガンがドン引きするように見えるほど、アグラットは必死に見えた。
「ふむ…………2人の提案は嬉しく思う。その上で、アグちゃんには悪いけど、双方の候補をまず聞きたい。万が一のリスクは避けたいし、ネオンが悪魔召喚するにしても、悪魔の枠は貴重だ。慎重になるに越した事はない」
悪魔の召喚は、死霊の召喚と似ているようで全く同じわけではない。
重要なのは“契約”というシステム。悪魔は従える数を増やそうとすればするほど、各悪魔の提示してくる契約がデメリットとして付きまとう。悪魔同士の反りが合わないのは当たり前で、既に契約している内容と、新規の悪魔が提示した契約内容で矛盾や達成不可能な契約になった場合、せっかく召喚した悪魔も無駄になる。
心情的には、ノートもアグラットに味方してあげたいとは思う。だが、情だけで判断する上司では、ザガンからの評価は下がる。少なくとも、話を聞くだけはただだろうとノートは2人に自分の希望を伝える。
『『ふむ。私は構いませんよ』』
「う゛っ!?そ、そんなぁ…………」
対して、ザガンとアグラットの反応は対象的だった。
「いや、なんで説明前から負け犬ムードなの。え、まともに説明しようとすると俺達が弾くような悪魔を呼ばせようとしてたの?」
「ちがっ……!くはないかもしれなくはなくはないかもしれなくないことはないけど!」
「どっちなのよ。まぁ、とりあえず説明するだけ説明してみようよ。うまく説明する自信がないなら俺達も助け船は出すし。じゃあ提案者として先攻後攻は選んでいいよ」
「う、うん。じゃ、じゃぁ、えっと、後がいい」
ザガンが纏う空気は、エリート商社サラリーマンかインテリヤクザ。
対してアグラットは小学校低学年のメスガキまっ盛り。
プレゼン対決をアグラットが嫌がるのは、ノートもわからなくはないと思った。 もしプレゼン対決をしなくちゃいけない時、ザガンは絶対に敵に回したくないと思うくらいにはノートもザガンの頭の良さは評価しているのだ。
『『では、私から始めても?』』
「頼む」
無茶ぶりされてもなんのその。ザガンは事前準備もなく、魔法を使って幻影として資料を見せながら流暢に自分の配下の悪魔を紹介し、おススメの悪魔が如何に『祭り拍子』に貢献できるか、性能は、性格は、予測される契約内容は、と通販番組の様に自分の配下の魅力を非常にわかりやすく語ってくれた。
非ネームド、力はけものっ子サーバンツよりかなり下回るが、そのお陰で普段使いはでき、自分の配下に付くような悪魔なので腕っぷしよりも知能重視でそこらの悪魔より話が通じる。契約に関しても、今の『祭り拍子』なら困る内容は提示されないだろう、などなど。ノートが研究発表時の教授の様な質問をしても、ザガンは動揺することなく語り、むしろ魅力的な存在であることを補強してきた。
プレゼンが終わると、拍手喝采の音が響く。いつの間にか集合したけものっ子サーバンツ達がラジカセの様な道具を使って、拍手喝采のSEを流しているのだ。あの道具欲しいなぁと思いながら、ノートもザガンに拍手をする。
ザガンにとっては大したことはないようで、表情に変化はない(そもそもペストマスクなのでわからないともいう)。平然とした様子で着席するが、一方でアグラットは青ざめつつ親の仇でも見るようにザガンを睨んでいた。
「アグちゃん、まだ勝敗決まってないから。ね?やればできるって!どうしてやる前から諦めるんだ!できないこと、無理だってあきらめてるんじゃないですか?駄目だ駄目だ!あきらめちゃダメだ!できる!できる!絶対にできるんだから!崖っぷちが最高のチャンスなんだ!Never Give Up!!」
「ノート兄さんになにか乗り移った」
「この部屋妙に熱く感じるのだけれど、気のせいかしら?」
「体感気温が3度くらい上がってる気がするね~」
「たまにアイツ何の前触れもなくおかしくなるよな」
「ノート兄、割とノリで生きてるときあるし…………というか、最終的にはネオンが決めるんじゃないの?」
「え、あ、私は、皆さんが選んだ方で…………」
いきなりノートがおかしくなったことにアグラットはちょっと面食らったような顔をしたが、笑うのを誤魔化すように鼻からフッと息を吐くパチンと自分の頬を両手で叩いた。
「きあいだ!」
「それでよし!」
伝説の熱血トレーナーみたいなノートの言葉に乗せられてアグラットが手を突きあげて立ち上がる。
「え、えっとね、あたしが召喚してほしいのはね…………」
事前に予想していた感じと比べて、アグラットの説明は意外とまともだった。少なくとも、教授からされて嫌な質問ベスト10に入ってくる「私の理解不足、知識不足かもしれないですが(嫌味)、結局何が言いたいんですか?(威圧)」「このプレゼン(研究)をなぜしようと思ったのですか?(嫌味)」「聞き逃したのかもしれないのですが(嫌味)、主張を裏付ける根拠をもう一度説明していただけますか?(もう一度寝ぼけたこと言ってみろ)」
という質問が質疑応答開始開幕から飛び出すレベルではなかった。
拙いが、自分なりに、なんとかノート達を納得させられるようにアグラットはノート達を説得していた。お世辞にもザガンに匹敵するレベルとは言えなかったが、最低限プレゼンにはなっていた。
ユリン達もいっぱいいっぱいになりながら頑張って発表したアグラットに少なからずなごんでいた。
だが、本当の地獄はそれからだった。
重箱の隅を箱ごと粉砕するレベルで、アグラットの発言一つ一つで少しでも引っかかる部分は徹底してノートは質問した。曖昧な言葉で濁すことを絶対に許さず、ハッキリとした回答が出るまで問い詰めた。むしろ後半を選んだせいで、ザガンの紹介した悪魔と比較したような質問も多く、最初は頑張って答えようとしていたアグラットの目に涙が浮かび、終いにはノートが手をあげるたびにビクッと震えていた。
さっきあれだけ応援しておいて今度は泣かせ始めたぞこの男…………とユリン達にヤバいモノを見る目で見られてもノートは容赦がなく、バルバリッチャだけが面白い見世物を見たようにケラケラと笑っていた。
質疑応答が終わると同時に泣き崩れるアグラットには流石に思うところがあったのか、意外なことにけものっ子サーバンツ達がアグラットに駆け寄り「もぉええ」「おまえは頑張った」と言わんばかりにアグラットの背中を撫でて慰めていた。普段散々嫌がらせに余念がないけものっ子サーバンツ達も同情するような態度を見せるくらいには、プレゼン後のアグラットはもうボロボロだった。
「お前………普段アグラットに優しいくせに容赦ねぇな…………」
スピリタスのこのコメントが、『祭り拍子』の総意だった。
「そうか?カウンセリング系の発表会こんなもんじゃないぞ?『その理論を提唱したのは私なのですが、貴方の解釈は間違っています。それを踏まえて質問を~』みたいな死体蹴りしてないし、『そのデータはひと月前に間違いがあると指摘されたはずですが、それについてどうお考えですか?』とか、『素人質問で恐縮だが、その理論について説明するのになぜ前提となるA理論と反対の結論に帰着しているのは何故か?』とか『その意見が貴方の主観でないことを客観的に説明できますか?』みたいな質問してないぞ?」
対して、ノートは至極真面目な顔で答えた。その目は感情のこもってない昆虫の様な目をしていて、初めてノートさんが怖いと思った、とネオンは後に語った。
色々な地獄を見てきたせいで感覚が麻痺してしまった悲しきモンスターが、そこにいた。
「別に優しくするだけなら簡単だが、俺はアグラットとザガンが対等な立場であることを前提に接した。ザガンを召喚して思ったけど、マジで悪魔達はバランスブレイカーだ。話の分かるザガンだから今は上手くいってるだけで、次は違うかもしれない。俺達はもっと悪魔に対して慎重にあるべきだと俺は考えてる。だから妥協しなかった」
曲がりなりにも魔王が推薦する悪魔だ。さらに言えば、その悪魔が決闘でしくじった時の救世主になるかもしれないのだ。今まで悪魔召喚を薦めてこなかった悪魔勢が急にそれを推し進め、バルバリッチャが何も言わずに見ているという事態が、ノートを何よりも警戒させていた。
バルバリッチャは単純な味方ではない。『祭り拍子』というパーティーが一つの会社ならば、立ち位置は言わば、契約に関係にある大企業の社長だ。バルバリッチャという絶対的な社長が君臨し、その下にザガンとアグラットがいる。契約の都合上、バルバリッチャはノート達に手を貸すが、バルバリッチャもバルバリッチャなりの意向がある。
求められれば条件付きである程度応えてくれるが、バルバリッチャは基本的にノート達が地雷を踏もうとしても止めないし、むしろ面白がるように見ているタイプだ。他の大悪魔復活に消極的だったり、復活していても悪魔達にそれを伝える事も無い。かと思えばアグラット召喚の為に暗躍していた疑惑もあり、ノートでも行動理念が理解しきれていない。
それでも、ノート達が不相応な力を得ることは止めようとする所と、教会に対しての敵対的な態度は揺らいだことが無い。そのバルバリッチャが魔王推薦の悪魔召喚に何もコメントしないということが、ノートは自分でもビビりすぎとは思いつつ気になったのだ。もしかしてどこからに地雷が埋まってないかと怪しい所は丹念に掘り返した。
とは、ノートもバルバリッチャの前でユリンには言えなかった。ただ、察してくれと幽かに見えないようにハンドサインを出した。
「……色んな事を踏まえて総合的に考えたが、俺はアグちゃんに一票だな」
「え?えぇぇぇ!?」
うつ伏せで泣き崩れるアグラット。大悪魔だけが楽しそうないたたまれない空気。もはや結果を言うまでもない様な状況の中、ノートが今までの様子とはまた真反対に見える意見を言ったことで、アグラットがガバッと起きて叫ぶ。
「いや、別にイジメるために質問してたわけじゃないからね?どっちがいいか真面目に迷ってたから質問が詳しくなっただけでさ。ザガンの工作員特化の悪魔も凄く魅力的だとは思った。喉から手が出るほど欲しい能力も持ってたし、安定性も高い。誰かとポジションが大きく被ることもないし、この作戦以外にも今後とも大活躍することだろう。悪魔のレベルも俺達にしっかり合わせていたという点も非常に良い。ケチの付けどころかなかった」
『『お褒めに預かり恐悦至極、と言いたいどころですが、その上でなぜアグラットの意見を採用したのでしょう?』』
ノートの評価通り、ザガンのプレゼンした悪魔は思い付きで出してきたとは思えないほどよく考えられていて、欠点らしい欠点がなかった。ザガンは嫌味ではなく、純粋に理解ができていないと言った様子でノートに問いかけた。
それはアグラットも同じ。絶対に負けたと思っていたのか号泣していたのに、驚きと疑問で全部吹っ飛んだらしく、ポカーンとしていた。
「これを言うことは、ザガンからすると凄い納得できないことだと思うけど…………完璧すぎたから、俺はザガンの提案を蹴った。アグちゃんは提案の根底には自分の派閥強化があるし、そのせいで細部までメリットを詳しく詰めていくと割とあやふやだったり、やってみないとわからない、みたいな発言も多くなっていた。ぶっちゃけお粗末な提案だった。でも最低限必要なポイントは抑えていたんだ。その上で、俺はアグラット提案の悪魔に興味が湧いた。確かに上手く使うには俺達の技量によるところが多いような悪魔だが、だから気に入った」
散々バルバリッチャ周りを警戒している癖に、結局ノートが取った理由を率直に言えば、それは面白いかどうか、だった。情緒不安定なレベルで脳内主張がブレるノートだが、ノートの直感はアグラットの悪魔を選んでいた。このアンビバレント的な思考回路が、ノートの根幹とも言えた。
『『…………フフフ、なるほど。確かに、マスターは完全にお膳立てされた物を喜んで受け取るような人ではありませんでしたね。ある程度は求めても、重要な部分は自分の力で切り開く人だ。そう考えると、私の提案した悪魔には遊びがありませんでしたね』』
「すまないな。せっかく提案してくれたのに」
『『いえ、いい勉強になりました。次回に何かを提案する時に参考にしましょう。マスターは時に我々悪魔より悪魔らしい思考をしますね。』』
「そうか?」
『『私達の方が悪魔の中では少数派ですからね。ヒィレイ達も、悪魔の中ではかなり落ち着いてる方ですよ。私達を一般的な悪魔とは見ない方がいいですよ』』
「その上で俺が悪魔より悪魔してると」
『『ええ。刹那的な快楽主義で破滅的で落ち着きがないじゃないですか』』
ノートがスッと視線をユリン達の方に向けると、ユリン達もうんうんと頷いた。
その後方で座っていたバルバリッチャもウンウンと頷いていた。
「…………いや、俺が悪魔っぽいとかは諸説あるから今は置いておこう。どうでもいいし。みんな忘れてると思うけど、別に俺の意見で全部決まるわけじゃないからな?」
「ノート兄、正直僕たちもうお腹いっぱい」
「オレはどっちでもいいぜ」
「スピちゃんに同じく~」
「貴方が色々と考えた上でその決断をするなら、私は止めないわよ」
「身もふたもないことを言うと、どっちが召喚されてもメインで面倒を見るのはノート兄さんだと思うし、ノート兄さんが好きな方を選んでいいと思う」
「…………」
ノートが実質的な最終決定権を持つネオンに視線を送れば、ネオンはヌコォの言葉に少し気まずそうにしつつも同意するように頷いた。
「じゃ、じゃじゃじゃぁ決まりね!あたしの案で決まり!すぐにやるわよ!!」
「うひぁぁぁぁぁぁぁ!?」
すると、水を得た魚の様に急に元気を取り戻したアグラットがネオンの手を引き部屋から駆け出して行った。そのスピードは興奮した小学生に手を引かれる大人何て可愛らしいものではなく、暴走する列車に紐で繋がれたおもちゃの様な凄まじい勢いだった。ネオンの悲鳴が、ノート達を置き去りにした。
「ここでやればいいのに、なぜ移動を?」
ノートの呟きに答える人は、誰もいなかった。
唐突設定ゲロコーナー/パラメータの揺らぎ
パラメータで表される筋力などは絶対的な指標ではない。正式には出力の可変度と考えるべきである。
パラメータランクが上がるほど、出力の振れ幅は大きくなる。前提条件に於ける影響度もこの揺らぎに大きく関わってくる。
筋力が有っても、寝不足であれば全力のパフォーマンスが出せないように、普段は非常に気丈な人物でも、愛する者の死に面した直後はナイーブになりやすいように、全てを数値としてパラメータで表すことは不可能である。
パラメータがIからSへ近づいていくのは、ある意味パラメータの収束を表しており、上限の『S』というのは出力が極めて安定した状態になったことを示す。ランクの上昇とはその出力上限値の更新を示す出来事であり[削除済み]




