No.34 自覚アリでやってるから極めてタチの悪い奴
皆様そろそろお昼休憩でございますか?では食休みのお供になるようにゲリラ投稿しますね。
「ぁの……え、えっと…………」
「一文字ずつゆっくりとどうぞ。ちゃんと待ちますから」
泣き腫らして真っ赤になった目を拭う女性プレイヤー。相変わらず言葉はつっかえるが挙動不審ではなくなったので、ノートはようやくステージに立てたと心の中でホッと溜息をつく。それと同時に泣きはらした目を忠実に再現できるALLFOの再現力に感心すると同時にあきれていた。
「わ、私は、私の名前は、霜月 あ「はいストップ。ゲームの中でリアルネームはダメですよ。あー、プレイヤーネームはNeonさんでいいですよね?
ははは、そんな驚いた顔しないでください。実はプレイヤー同士って名前が見れるんですよ。俺の頭の上にうっすらと逆三角形付いてません?それをジッと見つめると……まあ今の俺はプライバシーモードなので[UNKNOWN]って表示されるはずですよ」
「UNKNOWN……見え、ました!あっ、またやっちゃった……」
初めてゲーム的なことができてうれしかったのか急に大きな声を出すネオン。それと同時にネオンの顔が羞恥で赤く染まり、さらに軽く青ざめて奇妙な顔色になっていた。
「興奮したら叫びたくなるのはおかしくないですよ。俺相手では構いませんからドンドン叫んじゃってください。それと、Neonさん、ゲーム内のルールについて完全な初心者のようですので、ちょっと説明しますね」
ノートはそういうと、ALLFO内に限らずMMOに共通して言える基本的なマナーなどをゆっくり説明した。
「全然、知らないことばかり、でした……」
「まあ、ある程度はプレイしていけば自然と身につきますよ。ですから、今回の俺が「現実ではカウンセラーをしている」ことは、ネオンさんと俺だけの秘密ってことで。特例ですよ」
「はい!絶対言いません!」
元気よく答える女性プレイヤー改めネオン。やっぱり元の性格は明るいんだろうな、とノートはユリンにも通じる犬成分をネオンから感じ取り頭を撫でたくてうずうずする。
「ではついでにALLFOについての基本事項についてもおさらいしましょうか。質問用紙にも結構システムに関する疑問が多いみたいだし」
そうしてノートは、初期限定特典から始まりAIやVR型ゲームに共通する戦闘のハウツー、パーティーやフレンド登録まで、自分が現状では話せることを親しみが持てるように徐々に言葉を崩しながら全て説明した。
「実は……私、本当に全くの初心者で。ま、魔法とか使えるはずなんですけど、びっくりすると魔法とかどうすればいいか全然わかんなくて逃げ回ってたんです」
その中で、彼女の行っていたモンスタートレインの理由も判明した。
簡単な話、テンパるとどの魔法を使えばいいかわからなくなってしまい、MPの管理なども全然わかっていないという致命的な状態だったのだ。そしてあまりにギタギタの初心者なのでGMしたり掲示板で聞いてみるという発想もなく、自分のやり方がおかしいとずっと思い込んでいた、ということだったらしい。
「周りの人も近づくと逃げてしまうので、誰にも、どうしたらいいか、聞けなかったんです………」
シュンとしてうなだれるネオンにノートは優しくフォローを入れる。
「しゃーないね、それは。初期特典自体が初心者に対して致命的に合わない要素だし。ゲーム慣れてても難しいと思いますよ」
「でも、ノートさんたちは、初期限定特典を持ってて、私に声をかけてくれたのも、初期限定特典があったからですよね?」
どこかすがるようなネオンの目。その目を見返しながら、ノートは首肯する。
「正直に言ってしまえばその通りだね。ネオンさんはさ、あれだけモンスター連れて走り回ってるから掲示板でちょっと有名なんだよ。他のプレイヤーはピンときてなかったみたいだけど、それで俺たちはもしかして初期特典もちじゃないかなぁ〜?って思って見にきたんだ。結果的には大当たりだったけど。
でも今まで説明してきたように、初期限定特典はぶっちゃけ初心者に全く向いてない。GMに交渉してアカウント作り直したほうがいいよ。どうも特典持ちはそれができるみたいだし。特典持ちは、街にも入れないわ、モンスターはガンガン襲ってくるわ、NPCも基本的に敵対状態だし踏んだり蹴ったりなんだよ。街にはどうやら初心者用の施設もあるみたいだから、俺はそっちをオススメするよ」
「で、ですけど!……ですけど、私は…………」
思わず伸ばされる手。それは力なく落ち、再びネオンの膝の上に戻る。
「うん、先にはっきり言っておくよ。初期特典持ち以外が俺たちのパーティーに加わるのは相当難しい。ましてや初心者じゃ、極めて厳しいだろうね。自慢になっちゃうけど、現時点で俺たちは一番強いプレイヤーだと思うし」
ノートは変な希望を持たせないようにはっきり実状を伝えると、ネオンは悲痛そうな表情で深く俯く。
「そんな捨てられた犬みたいな顔しないでよ。俺のフレンドコードをメモして現実でも取っておけば、アカウント作り直してもフレンドになれるし、フレンドだと街とかにいるとALLFO内でメッセージのやりとりができるからある程度頼ってもいいし、気軽に質問してもらってもいいよ。ここまで面倒見て『はいさようなら!』ってほど薄情じゃないからさ」
ノートはネオンをなだめるようにやさしく言うが、ネオンの表情は未だ暗いままだった。
「でも……でも…………」
俯いて、正座した脚の上でギュウゥと拳を握りこむネオン。
ノートは困ったように頭を掻いて苦笑する。
「あのね、ネオンさん。言っておくけど、俺はオススメするって言っただけで、『必ず破棄しろ』なんて一度も言ってないからね。ネオンさんに根気よく付き合ってくれる人がいるなら別だけど」
「私、私は……!」
ネオンは必死に言葉を絞り出そうとするが、今まで自由意志を与えてもらえなかった故に言葉が詰まる。『また頭ごなしに欲求を退けられてしまうのでは』という恐れと諦めが、ネオンの口を鎖のように堅く縛るのだ。
「ネオンさん…………いいんだよ、自分のしたいこと、自分の願いを口にしても。ネオンさんの第一歩、自分で踏み出さなきゃ。はい、深呼吸…………吸って〜吐いて〜吸って〜吐いて〜、はい、どうぞ」
だがノートはその鎖をゆっくりと解いていく。ネオンの背を優しく押す。
「私っ…………わ、私はっ!ノートさんについて、いきたいです!お願いします!」
頭をガバッと深く下げるネオン。だが、ノートからの返事がなくネオンが恐る恐る顔を上げると、ノートはメニューをいじっており、ピロンという軽い電子音と共にネオンの前にホログラムの画面が浮かび上がる。
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PL:NOTOよりパーティー『祭り拍子』への勧誘がありました
承諾しますか?
Yes/No
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PL:NOTOよりフレンド申請がありました
承諾しますか?
Yes/No
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「良くできました。ちゃんと自分で壁を超えたね」
「ううぅううう、う、うううううう……」
「そんな泣かんでいいよ。よろしくね、ネオンさん」
緊張の糸が切れて再び大泣きし始めるネオン。
暇な間ユリンを連れてファイブシティ周辺の地理調査をしていたヌコォはその頃には戻ってきており、のちに「昔はああやって宗教にハマっていく女性が増えていたのかも、と思った」という感想を述べ、ノートからお叱りの拳骨を頂戴するのだった。
(´・ω・`)鈍感系主人公?なにそれおいしいの?
(´・ω・`)らんらんは豚だから難しいことはわからないよ
(´・ω・`)フツメンって言いながらAPP14以上で、人の心をほとんど読めてないのに人の心を的確に動かす言いくるめ(99)、説得(99)の存在?
(´・ω・`)なにそれ怖い
※主人公の説明ではないですからご注意を。全然鈍感じゃないです。心理学(90)持ちですよ。