No.221 あっ
投稿開始から2周年です。
すごい飽き性な私がよく続いてるもんです。
これからもよろしくお願いします。
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「ネオンの魔法のチャージ待ちだが、しかしなんか嫌な予感がする。グレゴリ」
『(´・ω・`)お?』
「シロコウ達大丈夫だよな?海賊が全滅しそうになったらハーピーとマーメイドを皆殺しにしろって命令しといたけど」
『(。-`ω-)そこまではばかじゃないお』
『( ˘•ω•˘ )いちおうみる?』
『(; ・`д・´)あっ』
「あっ、てなんだ!おい!視界早く!」
あ、というシンプルな単語は汎用性が高いが、言ってはいけない時というものがある。例えば髪を切ってもらっている時とか、診察中とか、旅行に出発した後に改めて忘れ物がないかチェックしている時とか(なお散髪や診療はロボットに殆ど取って代わられているのでノート達がその様な経験をすることはないのだが)、兎に角あっと言ってはいけないタイミングがある。
グレゴリの『あっ』はまさにその類の『あっ』だった。
ノートは慌ててグレゴリの視界共有で船の方を確認したが、船の方は予想外の展開となっていた。
「(…………まるでラスボスだな)」
シロコウも出来るだけヘイト管理を行い、そして海賊が0にならない様に立ち回っていたのだろう。結果、生き残ったハーピー・マーメイド&海賊臨時連合による対シロコウレイド戦が展開されていた。
どうやらハーピー達も海賊達も無駄に殴りあってる場合じゃないと気づいたらしい。お互いのヘイトに対し、自分達を好き勝手に操っているシロコウへの脅威度判定が上回ったのだ。
それでもシロコウは特にダメージを受けている様子はない。好都合と言わんばかりに群体を集結させ完全体になると生かさず殺さず即席連合を甚振っていた。
「となると問題ってのは……………なるほど?なんかトリガー引いたかハメられたか?」
『((((;゜Д゜)))))))ニョロニョロ』
島と船の中間あたりで周囲一帯を監視しているグレゴリから見えるのは魚影とは違う影。その影が島に向けて集結しつつあり、グレゴリの感知スキルが脅威であると警告を発する。
「(どーりでマーメイドの断末魔が聞こえなくなってメギドの咆哮が絶好調なわけだ)」
グレゴリにもう少し島に寄る様に指示して確認すると、形状は1m程度の蛇に近い青白い皮をした紐状の寄生虫の様な物が島に次々と上陸していた。そのテラテラと光る体には目がなく、イソギンチャクの様な口だけがあり、それが目撃者の正気度を着実に削っていく。
水がバシャバシャと上がり、何かがもがいている様に動いてる所には殊更寄生虫どもが群がっており、その下を想像したくはなかった。
ノートは即座に青白寄生虫を元気に踏みつぶしていたメギドの召喚を解除。死霊以外には岩の柱に上って身を守る様に指示する。
「のっくんなんかあった~?」
「割とヤバいな。グレゴリの視界借りてみ」
「うげぇ。ゾワってしたぁ!」
「凄い数ですね」
「どうすんだこれ?ネオンの魔法で焼き払うかっ!?」
「一体一体の強さは脅威ではないけど、スキルで感知している個体数がおかしい」
「上から油などを降らせて、火をつければある程度時間稼ぎはできるかもしれないけれど、不安は残るわね」
「死霊達でヘイト誘導かけるから全員身を守ってくれよ」
『了解』
もう少しでどちらかはおとせるだろう。そう思っての猛攻であってが、ノートの指示を受けると全員が即座に攻撃を中止し、岩の柱に上る。ネオンは少し苦戦していたが、ノートがグレゴリの下位互換死霊を召喚し協力させ、なんとか登らせることに成功した。
ノートは右目をずっとグレゴリの視界と共有し続けているが、島に近づいてくるグレゴリの視界からは様々な方向から島に集結する何千もの青白寄生虫の姿が見える。奴らは魚を飲み込み、マーメイドを飲み込み、島に上陸すると岩の柱の間を這って進んでくる。
目標は間違いなく島の中央、つまりここだ。
ノート達が岩の柱の上に避難し、猛攻を受けていたクイーン達がダメージによるダウンから復帰した数秒後、ゾワワワワっと一気に青白寄生虫が円形のステージになだれ込んできた。
「の、ノートさん、魔法は使いますか?」
「まだ保留!」
一瞬にして青白寄生虫共はクイーン達に集ると、クイーン達は大暴れしてなんとか青白寄生虫たちを振り切ろうとする。だが、寄生虫たちが何らかの魔法かスキルを使ったのか動きが鈍くなっていき、寄生虫の群れに飲み込まれていく。
「キモッ」
「確かにあまり直視していたい光景ではないわね」
白い蓋の下から聞こえるクイーンの悲鳴。必死にのたうち回るがそれ以上のスピードで寄生虫の数が増加し、白い波の下でクイーンハーピーとクイーンマーメイドの形をした何かが動くだけとなり、その距離が勝手に縮んでいき、二つの白い山が一つの大きな白い寄生虫の山となる。
「クイーン達の感知の反応がおかしくなってる」
「死んでるわけじゃないのかっ?」
「違う。反応はあるけど重なってる」
「ネオン!」
「はい!《熾荒禍貪焦》!」
再度広域継続炎上魔法を発動。寄生虫たちがのたうち回るが、白い山は崩れない。
ノートはシロコウにハーピーとマーメイドの殲滅を死霊術師の能力で遠隔指示。クロキュウの召喚を解除し島の外周にまだいる寄生虫共の殲滅を指示する。
寄生虫は頭数が多いが耐久自体は高くない。つまりそれは眷属を増やす能力を持つクロキュウにとって非常に良い状況であり、ノートの横に現れたクロキュウが眷属の黒鼠を解き放ち、呪い込みの広域殲滅魔法を行使。寄生虫たちは圧倒的な物量で罠も鼠も飲み込んでしまうが、白い波にポツポツと黒い斑点が浮かび上がり始める。
「よし!クロキュウのゾンビ化攻撃が効いてる!」
物量には物量を。黒い斑点の見える範囲が徐々に増え、黒斑点の波と白い波が押し合い始める。
ゾンビ化した寄生虫は仲間を噛んで病を伝染させ、一方、正常な寄生虫はゾンビ化寄生虫を食い殺し自滅することで病を封じようとする。
「爆弾投げてもいい?」
「いいぞ。とりあえずあの山がヤバそうだな。各自自己判断であの白山に攻撃!」
炎に呑まれながらも新たな個体がその上を這いずり、弱った個体を食ってクイーン達をひとまとめにした山を崩させない。続いてグレゴリ経由でシロコウの任務遂行も確認。シロコウもこちらに呼び、クロキュウの援護をさせる。シロコウは一気に分裂し、寄生虫たちに取り憑いて次々と新たな個体を羽化させる。寄生VS寄生の勝負はシロコウの有利で進んでいる。
それでも崩れない山に対しノートは攻撃を指示。ユリン達が一斉に虎の子の爆弾を投げると寄生虫たちが吹き飛んでいくが、それでも尚崩せない。
そして山の形が徐々に変わり、寄生されたりゾンビ化した寄生虫を除き白い波が引いていく。厳密には海へ戻っていくというより、勢いよく山の中に吸い込まれているのだ。それと同時にいよいよ空の雲は厚くなり、か細い月光ですらうまく見えず、寄生虫にまだへばり付いてる炎だけが島の中央を煌々と照らす。
やがて寄生虫同士が癒着し、白い大きな塊は明確に一つの姿を取り始めた。
青肌寄生虫を髪の毛の様に頭から伸ばし、大きなハーピーのシルエットにマーメイドの魚脚。フランケンシュタインように継ぎ接ぎだらけで、その縫い目も縫う糸も寄生虫が担っており、皮同士が縫い切れておらず半端に見えてる中身からはぎっしりと詰まった寄生虫の群れが見える。なんとも奇妙にして気色悪いボスの誕生だ。
突如前触れもなく登場した寄生虫。そして飲まれ食われたクイーン達。新たに生み出されたクイーン寄生体はいきなり灰色の光線を周囲に解き放った。
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おめでとうございますミスチル30周年




