No.Ex 外伝/それ逝毛!主任マン〜魔法少女きえた⭐︎マジカ〜⑨
やったねたえちゃんゲリラが増えるよ!()
※本日2話目。チェンソーマンが面白かったので。みんなも好きな作品があったら(書籍ゲームなど問わず)教えてくださいまし
「お?マジ?」
「『運び屋』を探してたんですね」
腕をいきなり掴まれたのは純朴そうな少女のプレイヤーで、彼女が掲げていた看板には【運び屋です!20分3000MONでお運びします!!3人までOKです!!速さに超自信アリです!!】とThe女の子の文字と言いたくなる丸文字で書かれていた。
【運び屋】とは移動手段があまりに貧困なALLFOという世界故に自己発生した商売で、端的に言えばテイマーの使い魔を利用したタクシーだ。ただしどこまで移動できるのか、魔物にどれだけ対処できるのか、それはテイマーによってよりけりでそこそこの頻度でトラブルになることも多く、運営側も『運び屋』関係のトラブル対応表みたいなものまで作成して対応に当たるほどだった。
因みに20分3000MONは相場から考えるとかなり高いし、時間の区切り方も少し短い。
例えば、【運び屋】もやむにやまれぬ事情で運び屋業務中でも急にログアウトする必要が起きる時はなくはない。それは仕方がない。ゲームより優先すべきことはいくらでもある。
しかし、1時間契約で行動している最中に急に運び屋にログアウトされたら【運び屋】と契約としていたプレイヤーは当然不満を感じるし、それでトラブルになることが多い。
なので【運び屋】側も万が一に備えて契約時間を短めに区切る。その間隔が短いほど『もしかしたら、急用で抜ける可能性が高いのです』というわけだ。
逆に2時間区切りOKなどという条件だった場合はそれだけ途中抜けのリスクが少ないという事。その手の運び屋は当然人気で料金もお高めだ。
一方、ソロでちょっと小遣い稼ぎしたい学生プレイヤーなどは大体30分区切りなどにしておいて、長期契約より少し安めの値段設定にする。こうすることで棲み分けをするのだ。その相場は大体30分500MON程度。今のシティ周辺で狩りをした時の利益率と比べると、それでも十分利益が出る。パーティー単位での客なら確実に黒字だ。
パーティーとしてもあまり長期の移動を考えてない場合は30分で十分だ。この価格と時間区切りが大体と現状のALLFOでは需要と供給の一致ラインになっている。
それを踏まえると少女の提示している料金は分単価が相場の10倍。まともなプレイヤーなら契約しない暴利な金額だ。
しかし余程急いでいるのか、それともあまりに通常のプレイヤーとの接触が無さ過ぎて相場を全く知らないのか。いきなり腕を捕まえられ少女が挙動不審になっている間に一方的に話を進めすぐさま契約。しかも料金を先払いした。
話は済んだと言わんばかりに化物コンビはそのまま少女を担ぎ街の外へ運んでいく。本当に急いでいるらしい。その動きを見てT君はこのコンビが女性であることに初めて気づいた。
でなければ女性である少女のプレイヤーをガッツリ掴んで運ぶことなどできない。そんなことをしたら即刻警告アラートが出る。
無論、同性間であっても注意のメッセージは届くが、相手がGMコールで訴えてこない限りは問題ない。その点、このコンビはまるで神輿を担ぐように少女を運んでいる。もし男性プレイヤーが少女の同意なしにこれをやったら10秒絶たずに一時的に強制的なログアウト、一定期間ログインできなくなる上、相手の反応次第では更なるペナルティが課せられるのだ。
最悪は裁判沙汰なので当然である。
少女が悲鳴を上げながら運ばれていくがそれもほんの少しの間。シティを走る馬車を捕まえると少女を担ぎこみシティの門近くまで飛ばすように御者NPCに指示する。
シティはかなり広いのでNPCがこのようにシティの中を馬車で運んでくれるサービスがある。結構割高なのでプレイヤーからは余り好評とは言えないが、街の中をスムーズに移動することに特化しているので金に余裕のあるプレイヤーはよく使っていた。
その馬車の中でもタクシータイプはかなり高い。それでも彼ら、もとい彼女たちはためらうことなく少女の分まで料金を支払い、シティの出入り口付近まで来るとまた少女を担ぎシティから飛び出す。
少女は人使い荒すぎる客にベソかいていたが、もうできるだけ早く終わらせることに方針を切り替えたのか、街の外に出ると胸にかけていたネックレスをぎゅっと握る。するとその傍らに3匹の馬型の魔物が出現した。
テイマーの使い魔は基本的に本召喚の死霊と扱いが似ており、街などで連れ歩かない場合は基本的に調教師ギルドでもらえる特殊な宝石で待機してもらうことになる。
ただし、召喚術師がノーコストで待機や召喚を行えるのに対し、テイマーは待機状態にしたりするのにMPなどを消費しなければならない。
また、呼びだすのも、待機状態にするときも、テイマー本人が使い魔に触れている時、テイマーが触れられる距離の中でしかできないので召喚術師ほど自由度が無い。その上、使い魔を待機させられる宝石は基本的にインベントリに入れることができない上に、破壊されると使い魔の性能が一時的に極端な減少を起こすという大きなリスクも抱えていた。
これだけだと召喚術師の方が圧倒的に強く感じるが、テイマーの使い魔はプレイヤー同様に成長し、進化するので、大事に育てればプレイヤーに匹敵する非常に心強い味方となる。
故にテイマーたちもどんな魔物をテイムするか非常に慎重になる。基本的にテイマーはテイムできる枠が少ないのだ。なのでより強い魔物を狙いたい。
その点、少女の馬型の魔物はサイズも強さも兼ね備えた理想的な個体で、しかも移動にまで特化している。
そんな激レア馬型使い魔をテイムしている彼女の名は[DevilMask]。
初期限定特典に当選したものの、怪しげな風体なせいで敵と勘違いした蛮族にボコボコにされ、泣きながら初期限定特典をリタイアした不運な子である。
彼女は後に運営から対応が遅れたことを謝罪され、その時にノート達が以前に受け取ったようなわびアイテムを受け取る権利が与えられた。
そんな彼女が選んだアイテムは『黄金の卵』。強力な従魔・召喚獣・召喚霊を得られる極めてレアなアイテムである。
彼女はとある戦闘民族にボコボコにされたトラウマから戦闘とは距離を置いて生産に振り切るつもりだったが、それでも尚トラウマを克服する為の癒しが欲しかった。メンタルに入ったダメージを癒してくれる何かが欲しかった。
結果、彼女は自分に寄り添ってくれるペットの様な存在を望み、これ幸いと『黄金の卵』を選択した。
しかし、『黄金の卵』はすぐに孵化しなかった。なんと卵が孵るには時間とMONが必要だというのだ。
なので彼女はせっせとアクセサリーを作ってお金を貯め、地道に『黄金の卵』に貯金して大事に大事に扱ってきた。やがて彼女のアクセサリーは高く評価されるようになり、どんどんアクセサリーが売れるようになってMONも順調に貯まっていった。
そして数週間の時間をかけて、親切な他のプレイヤーや生産組仲間や、ちょっとした寄付の感覚でカンパしてくれたプレイヤーなどの手も借りて孵化の最低ラインである100万MONを貯め、卵を孵すことに成功した。
その卵から生まれたのが三つ子の馬型MOB。今、彼女が呼び出した馬型MOBがまさにそれだ。
この馬は3体で一匹という極めて特殊な性質を有しており、三匹だが一枠分しかテイム枠を消費しないという破格の性能を持っていた。そう、彼女は激レアの中でも更に大当たりをリアルラックで引き当てたのである。
そんな馬型使い魔の踏破能力は極めて優秀で、生まれたての段階でも周囲のプレイヤーのかなり育った使い魔を圧倒するほどの性能を見せた。
それを知るころには彼女もようやくトラウマの傷が癒え、その使い魔と一緒に自分でも魔物を狩り、素材を取りに行くようにもなった。そんな彼女が最近やり始めたのが【運び屋】である。
馬型使い魔の性能を見込んでの強気の価格だが、逆にその価格帯でも乗ってくるプレイヤーは大体お金がある、つまり強いプレイヤーということ。彼女の売る高品質なアクセサリーの需要層とマッチしており、実は自分のアクセサリーの顧客を増やすための宣伝も兼ねているのだ。
そんな彼女は今日も今日とてアクセサリーの製作がひと段落したところで中央広場で募集をかけてみたのだが、まさかの開始20秒でヒット。だが客はあまりに手荒でいきなりドナドナされてしまう。彼女の不幸属性はまだぬぐい切れていなかったのだ。
まさか、客が自分のトラウマの原因である人物であるプレイヤーが所属しているプレイヤー達を追いかけようとしているとも露知らず、[DevilMask]は客が馬に乗ったことを確認すると指示された通り普通の客が頼む方とは真逆の1の森の方面へ出発した。
DevilMaskって誰やねんってなったらNo.51へGo
ランク10とはいえ広大な1の森をトン2と鎌鼬が短時間で踏破できたのはこのようなカラクリがありました




