表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

234/880

No.Ex 外伝/それ逝毛!主任マン〜魔法少女きえた⭐︎マジカ〜⑤

これはブクマ8000人記念であってゲリラではない




「クソっ!!バウンティハンターの強さは絶対じゃなかったのか!?」


 ダンっと強く台パンして頭を抱える主任。

 彼の見ていた映像にはイベント発生直前、バウンティハンターからなんとか逃げおおせたノートが映っており、納得がいかないと唸っていた。


 主任はバウンティハンター関連のユニーククエスト関連のテスターをして彼らの恐ろしさをよく知っている。アレは逃げきれるとかそういう代物ではない。ランク10の差に加え、最強級のAIが積んであるのだ。人間でどうにかできる代物ではないはずなのだ。


「絶対、でした。ですが彼らの動力源はシティ周辺に張り巡らされたシティの結界とも結びついていますので、その結界を壊されたとなれば彼らの性能は落ちます。そういう設定なので」


「設定、設定、ALLFOはどうしてこんなに設定が多い!?いや、それはいい。それでも普通はプレイヤーの保護が優先じゃないのか!?なんでそんな仕様突っ込んだ!?今こそ活躍の時じゃないか!?」 


「俺に言われましても」


 猛る主任に対して冷静に答えるT君。彼はもう色々なことを見すぎて一周回ってノート達のやることを冷静に見れていた。

 そのT君としても、確かにバウンティハンターの性能が落ちすぎな気がしたが、思い当たる原因があるとすれば動力源のダメージくらい。

 あとは現在進行形で暴れている大悪魔くらいだろうか。


 バルバリッチャはバランスブレイカーだが、なにか制約でもあるのかノート達に積極的に手を貸そうとしないことはずっと見ていたT君も知っていた。だが、今回のバルバリッチャはやたら能動的に動いている。

 しかもこれはバルバリッチャメインで本来進行するイベント。彼女がなにかしていても不思議ではなかった。


 そのT君の読みは実は大当たりだった。

 聖女リナは早期の段階でバウンティハンターを放ち結界修復の時間を稼ごうとしたが、バルバリッチャもそれを察知して結界修復を邪魔しバウンティハンターへのエネルギー供給を妨害していたのだ。


 こうしてまんまとノート達がバウンティハンターから逃げおおせたことで、止められるかもしれなかった反船は引き起こされる。運営すら既に手綱が握れないスピードで状況が目まぐるしく動いていく。


「本当に…………対応、可能、なのか?」


「…………資料を読む限りでは」


 主任とT君が見ているシティ周辺のリアルタイムマップが真っ赤に染まっていく。それは敵MOBの出現を表すアイコン。プレイヤーを表す青アイコンを飲み込むように赤い光の波がシティに一気に押し寄せ始め、5分も立たないうちにシティ周辺の7割が赤い光で埋め尽くされた。

 あっという間に飲み込まれる青アイコン。しかし赤い波の中でも点々と空白地帯がある。


「化物がッ」

「そういう存在ですので」


 それは当然ながら『祭り拍子』の連中。墓地の境界が消滅しアンデッドであふれかえった世界の中でも飲み込まれることなく動き続けている。


 特にネオンとアグラットの広域超火力コンビが攻撃を行うたびにリアルタイムマップの赤い光が一気にごっそりと削れるのを見ると、火力特化の初期限定特典と魔王の恐ろしさがよくわかる。しかも魔王からすれば鼻をほじるより少ない労力しか払ってないのだから、如何にバランスブレイカーなのか理解できる。


 そしてもう一人。わかりやすいように青ではなく黒点で表された点がプレイヤーとは思えぬ凄まじい速度で動き、赤い光の波が裂けていった。


「なんなんだアレ、本当に」


「あの馬車って死霊の中でも極めて特殊な存在なんですよね。というか彼が乗っ取った馬車自体が教会からしか貸し出されていない特殊な代物なので…………」


「でた、また設定だよ。なんで覚えてられるんだ?」


「監視する都合上一通りの情報は頭に入れてありますが。というかそういう指示を出したのは主任本人だった記憶が」

 ノートがゲラゲラ笑いながらぶっ飛ばしアンデッド達を轢き潰している幽霊馬車は、馬とそれに繋がれていた馬車を中核とした死霊である。

 ノートが商人NPCから分捕った時はノートもALLFOについてあまりよく知らなかったので反応しなかったが、例の馬車は極めて特殊な馬車だったのだ。

 

 ALLFOの世界観の都合上、世界の開拓は殆ど進んでいない。つまり、彼らにとって街の外に出るという事はかなり大きなリスクがあるのだ。そのため商人ギルドが非常に丈夫で運搬に特化した馬車を商人に貸し出しているののだが、その馬車を製作しているのは教会なのだ。

 この馬車の一番重要な機能は『アイテムボックス』。ノート達は何気なく使っているが、これは実質外付けの“インベントリ”だ。時空を無視することのできるアイテムは通常では出現しない。それを司っているからこそ教会は強大な力を持っており、馬以上にこの馬車自体のレアリティが非常に高く、馬車は極めて特殊なアイテムの扱いとなっているのだ。


 そしてこの馬車、実はプレイヤー相手のレンタルは殆ど行われておらず、シナリオが進むと課金することで利用できるようになるかなりズルいお助けアイテム枠となっている。後続組へのテコ入れの一種というわけだ。しかもMONを費やす事で更にアイテムボックスの性能を拡張可能だ。

 この要素を兼ね備えている馬車だからこそ、進化にリアルマネーを要求するなどと言う一風変わった特性を兼ね備えており、アイテムボックスを始めとした時空間への干渉能力と合わせてランダム進化技能に【占星】などというぶっ飛んだ能力を獲得するに至ったのだ。

 馬車の空間体積の拡張や物と物の間をすり抜ける完全透過などの能力の発現も馬車に兼ね備えられた時空間への干渉能力が起因しているのだ。故に幽霊馬車は一般からは逸脱したタナトスたちと比べても少し逸脱した存在となっている。


 ALLFOはゲームだと当たり前にスルーしがちな要素に面倒な設定を平気でねじ込んでくる。これを見落とすと強くなることもあれば取り返しのつかない事態を引き起こすこともある。

 そして今回の幽霊馬車に関しては、完全に大当たりだった。

 幽霊馬車のタフネスは森のボスを一撃で轢き殺すほどの性能を誇る。基本的に脆いアンデッドの群れなど敵ではない。まるで無双ゲーか何かのように暴れ回る。


 同時に幽霊馬車のアンデッド誘引効果に影響され更に死霊どもが集まり、密度が過密を超えたことでアンデッド共はお互いを攻撃し始め、蟲毒が始まる。

 ALLFOの敵性MOBは基本的にMOB同士で敵対していないように見えるがそうではない。プレイヤーに対するヘイトが高すぎてプレイヤー目線だと争っているところを殆ど見ないだけで、普通に生態系があり争うこともある。

 アンデッドの場合は生者へのヘイトが高すぎて普通ではアンデッド同士で争うことはない。しかし、過密状態になり故意でなくても突飛ばしたりしてアンデッドが他のアンデッドにダメージを与えてしまった場合、意識が薄弱なアンデッドは即座に反撃する。するとそのアンデッドもまた反撃する。その時過密状態だと他のアンデッドも巻き込まれる。

 こうなってしまうと大混戦だ。


 門の中から青い光のアイコンが大量に出てきて赤い光の波を押し返してゆくが、同時に赤い波自体も揺らいで勝手に数を減らしていく。

 アンデッドの減少は一見いいことのように思えるがむしろその逆。アンデッド同士で殺し合うことでより強大なアンデッドが現在進行形で増えているのだ。そしてこの強いアンデッドが増加するほどフィールド属性は『死』に傾いていく。そうなるとアンデッドが活性化され湧き率が上昇し強化されてしまう。より強いアンデッドが湧くようになってしまう。


 急いでくれ、早く立て直してくれ。

 必死に祈れども彼らの思いは届かず、運営達は手をきつく握りしめ悔しさをこらえながらその様子も見ているしかないのだ。

 プレイヤーも、NPC達でさえも、一丸となって事態の鎮静化に動いている。冒険者ギルドが主導し、生産ギルドが動いて物資を回し始める。しかしそれでは足りない。もっと抜本的で根本的な対処が必要なのだ。

 このイベントは単なる蟲毒の壺を作り上げるのではなく、更に其の壺の質を勝手に向上させてしまうから恐ろしいのだ。


 だが、そんな彼らを慰めるようにイベントが発生する。


【天宝・十二天の祈り・聖女の加護】


 アンデッドの活性率低下。及び、プレイヤーに対するアンデッド特攻付与。赤い波の増え方が露骨に下がり、一気に青い波が赤い波を押し返し始める。大きな歓声が運営であがる。


 しかし、唯一人愚直にノートの動きだけを見ていたT君だけは何も言えなかった。

 聖女たちが祈りを捧げるその少し前に、中級死霊6体の同時運用などという本来であればこの段階では決してできないはずの外法を男が誰にも邪魔されずやってのけてしまった瞬間を見ていた。その死霊が瞬く間に成長していく様を見ていた。


 ノートのいるエリアは幽霊馬車に引っ掻き回されたせいで蟲毒が進み既にプレイヤー一人では倒せない様なアンデッドが多数出現していた。そのアンデッドを一気に喰らった中級死霊達は当然凄まじい勢いで強くなり、フィールド属性を更に傾けていく。

 そこでフィールド情報が更新され、聖女たちの加護が発動する数秒前に新たなアンデッドが大量に出現した。


『全体のアンデッド進行率が上昇しました。イレギュラーイベント『反転スル天祀ノ結界・開錠セシ不浄ノ門・来タルハ冥途ノ渡シ船』が2ndステージに突入します』

『2ndステージ突入により、アンデッドの活性率が上昇します。出現するアンデッドの上位個体が多く出現するようになります』

『上位個体が多数出現したことにより異常個体(イレギュラーワン)が出現しました。全体のアンデッドの活性率が上昇します』 


 【天宝・十二天の祈り・聖女の加護】のアナウンスに割り込まれて遅れたが、実際は2nd突入の方が実質的に先。聖女達の祈りはほんのわずかに遅れていたのだ。


 そして彼女たちの祈りによるアンデッド弱体化の効果はノート達の死霊には影響を及ぼさない。

 ネクロノミコンに守られたノート達の死霊は全く気にした様子もなく暴れるどころか、むしろアンデッド()が弱体化してくれたおかげで食べるペースが上がっていた。

 

 弱体化したと言っても餌としての質が下がったわけではない。例えるなら、味付けが悪くなっただけで栄養素は変わってないのだ。

 こうなるともはや止められない。プレイヤー達がシティ付近でせめぎ合っているうちに、ノート達の死霊はプレイヤー達の手の届かない森の近縁でどんどん力を増していく。

 聖女達の祈りなど無駄だと嘲笑うように中級死霊達の強化でフィールド属性は元に戻され、アンデッドは逆に勢いを増す。

 アナウンスの順序が逆だったせいでプレイヤー達のメンタル方面にもダメージが入ったのも運が悪すぎた。赤い波は最初よりも少ないがそれよりはるかに強い勢いで青い波を食い破っていく。


「なんで…………」

「ああああああああああ」

「ちくしょう!どうしてこんな!!」


 プレイヤー達以上に悲鳴をあげて頭を抱える運営陣。先ほどの歓声はなんだったのか。もはや通夜を通り越し敗戦直後のような憤りと悲壮に塗れた空気が充満している。


 そんなことはいざ知らず非常にいい笑顔で暴れるノート達。運営の悲鳴など知ったことかと言わんばかりに中級死霊達が上位(グレーター)化したのを見て、T君も思わず天を仰いだ。


って事でキサラギ馬車の謎ポイント補足

時空干渉系は非常にレアで通常では発現しません。

因みに今のミニホームを生贄に捧げて死霊召喚するとヤバいもんができます。ヤッタネ(やらないけど)



以下致命判定に関する補足


Q.致命判定を回避するスキルなどは存在するのか?


A.ギガスピで配布された称号、【枯樹生華】と【十死一生】が正にそれ。プレイヤーが考えてるよりこの称号滅茶苦茶強力です。致命判定発生確率を下げる効果があります。因みに取得難度も本来凄まじく高いです。

あとノートがぶん取った

特殊称号:英雄之片鱗

特殊称号:聖者之片鱗

特殊称号:王者之片鱗

これら全てにも大幅な致命判定補正効果がありマス

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あの時空系が特殊ならMONを消費してアイテムを作り出す販売機って贄にしたら何ができるんですか…? 贄って何を対象に出来るかよくわからないんですよね。そこら辺のモンスター捕らえて檻に入れたり…
[良い点] 馬車をはじめとして、NPCがシティから出ることのハードルが見えるようになると普通に思っていたことが不思議に思えてしかたなくなってしまう [一言] この前の返信でバルちゃんを滅ぼし切らなかっ…
[一言] つまりノートの片鱗シリーズのやつは物語の主人公補正のような死ににくさを致死判定の低下(場合によっては相手の致死判定の上昇)をシステムがやってくれるってことなのか ………システムがノートを個人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ