No.Ex 第4章余話/СакураФубуки
(´・ω・`)いつの間に7777を超えたんだ………………
(記念に欲しい小話が有れば感想まで。1つだけ採用します。気力が有れば2つ)
『はーいテステース。見えてまァすかー?』
「見えてるぞ」
ホログラム上の画面に映し出されるのはプラチナブロンドの髪色に碧眼の見た目のクールビューティーな美女。見るからに顔の造形は日本人ではないが、翻訳機を利用せずとも流暢に日本語を話している。
格好はノーブラ状態のキャミソールの上から薄手のパーカーを羽織っており、既に酒がはいってるのかすっぴんの顔は軽く赤らみ非常に扇情的な状態だ。まかり間違っても異性に気軽に見せてよい姿ではない。完全に気を許した者に見せる姿だ。
黙っていれば間違いなくクールで冷徹な美人なのだが、ノリは完全に酔っ払いのソレに近かった。
『見えてるって、胸が?えッちだー』
「そっちは見えん」
『大きくはないけど形の良イ自慢の胸見る?』
「間に合ってる。てか十分見たことあるだろ」
『さいテーだなぁこの女たらし。もげちまェー!』
初っ端から下ネタ方面に走ってるあたりやはり酔ってると判断したノートはまともにとりあわず、キンキンに冷やした500ml容量の金属製のコップをなみなみと満たしたトマトの香りが際立つ赤色の液体をゴクゴクと飲み干す。
『なにのんでるン?』
「胡椒とレモン風味を加えた炭酸強めのレッドアイ。めっちゃ飲みやすいしトマトはいってるから健康にいい」
『ビール入ってるからどうなんそれェ?』
「オールグリーンだ」
レッドアイはビールのトマトジュース割だ。ビール独特の苦みをトマトのフルーティーな香りがつつみ、ビールが苦手な人でもかなり飲みやすいカクテルとなっている。
そこに胡椒で軽く香りづけ、レモンでキレを増して、炭酸を強めてのど越しの刺激を高める。これがノートの最も好きな酒の飲み方だ。
塩味、甘味、辛み、と様々な料理にも合うその汎用性の高さもノートは好きだった。
「そっちはなに呑んでんの?」
『ウォッカ割り増しタバスコIN“ブラッディ・メアリー”。トマト入ってるからきっと体にイい』
「天丼やめーや。ウォッカ割り増しだしよ」
ブラッディ・メアリーはウォッカのトマトジュース割りだ。様々な派生があり、タバスコは全体的なキレを増してくれる。トマトとタバスコは相性もいいので意外性のある旨さがある。
トマトが大好きな彼女がこの酒をチョイスすることに不自然さはないのだが、面白がるような表情は明らかになんらかの意図を含ませていた。
とどのつまり、当てつけである。
ノートもそれを理解しているので敢えて触れずにスルーする。思考回路がよく似ている相手なのだ。反応すればどうなるかなど簡単に予測できる。
「ツマミは?」
『サラダ枠でオリヴィエ。メインでレンチンのビーフストロガノフ、ピロシキ。あとハ日本から取り寄せした焼き鳥と餃子、カレーかな。そっちは~?』
「相変わらずめちゃくちゃよく食うなオイ。俺はメンマと納豆冷ややっこ。ジアみたいにばかすか食ってるとこっちは太る年齢になっちまったよ」
『冷ややっこ美味しいよね。あと私が太らないのは遺伝だからねェ~。私の家系は基本的にヨく食べるけど太ってる人いないし』
これ見よがしに旨そうなタレ皮の焼き鳥にかじりつく女性、ジア。本名はジアーナ。ジアは愛称だ。
ノートは実に旨そうに焼き鳥を食べるジアを恨めしそうな目で見つつ、冷ややっこを一口、レッドアイで飲み込む。
酒を飲みつつしばし雑談。適度に煽り合い、会話がよく弾む。
因みにジアのいる場所との時差を考えると、ジアは昼間から酒を飲んでいることになるのだが酔いつぶれてるところを見たことないほど酒にも強いのでノートは特に何も言わない。
肝機能が人間離れしてるスピリタスの領域までは達してないが、ジアも割と大概なのだ。ジアの場合は酒の強さだけでなく食欲も凄まじいのが特徴だ。
そんな調子でスイスイと酒を飲み、十分に出来上がったところでノートは本題に入る。
「そんで、そっちはどうよ?」
『上々かナ。例のバウンティーハンターのユニーククエスト踏破して、上位層のほぼすべてと顔つなぎはできたし、生産組の上位勢や腕利きの情報屋ヲ抱き込めたよ。最近こっちでもシナリオボスが見つかってさァ、今は作戦会議中なんだよね。まあ人数が集まるのにまだ時間かかりそうだからのんびりやってるよォ〜』
飲むたびに最近話題に上がるのはALLFOのことばかり。ノートとジアは共犯者であり、ジアから齎される一般プレイヤー側の視点はノートにとって非常に役立っているし、ジアはノートから齎された情報をうまく活用して力を効率よく獲得し、情報を元手に人脈を拡大し、一つの国のサーバーの中で瞬く間にトップ層に躍り出ている。
『ところで、また暴レたんだって?ニュースも見たし、レンカとかロナっちから聞いたよ~。いいなァ~』
「だってあんな場を用意されたら活用するにきまってんだろ」
『アグちゃんの変装ブレスレットがチートすぎるんだよねェ。AIびいきひどくなァい?こっちも墓荒らし試したイけど、今やってるロールプレイ的になかなか難しいんだよねェ』
「AI贔屓は否定できんな。ぶっちゃけバルちゃんやアグちゃん無くして俺達はここまで自由に動けないし、恵まれすぎてると思うぜ」
シナリオボスにまつわる情報戦に於いてアグラットの存在は必要不可欠だった。ノート達の成長を重んじるバルバリッチャに対して、アグラットは最初の印象からは打って変わってかなりノート達に、というよりノートのオーダーに対して甘いのはなんとなくノートも実感していた。
『いいなァ、私もそっち行キたい』
「たぶん国家間の開通イベントはどっかの段階であると思うけどな。でなきゃ国ごとに別々のフィールドやシナリオボスを用意しないだろう。ただ、1章ボスを倒してワールドイベントが進んでも特に何も起きてないからなぁ。一応なんか怪しい場所の心当たりはあるが、現段階の突破は無理だな。あの番人、シナリオボスより普通に強かったし」
『強いからこそ、そイつが守ってるものに重要な価値があるッてことだね』
「そゆこと」
ジアの頭の回転力はノートに匹敵する。思考回路も似ているのでノートとジアの会話はテンポが異常に早い。
「まあ、とりあえずはロシアサーバー側の管理は頼んだぜ。そのための協力はいくらでもするからよ」
『簡単ニ言ってくれるよねェ。完璧超人聖人君子のフリし続けんのかなリつらイんだよ?おかげで性質ダダ上がりで変なユニーククエスト発生しまくッてるしさァ』
ジアの本質はノートと同じ救いようのない刹那的快楽主義のド外道だ。鎌鼬経由でノートと知り合い、『桜吹雪』としてPKプレイヤー側に骨の髄までどっぷりつかっていた女性である。だが、今回はノートに情報提供するためにいい子ちゃんのフリをして一般プレイヤー側に溶け込んでいるのだ。
その献身が誰の為なのかなど言うまでもない。無論、多くのプレイヤーを惑わせて楽しんでいる節が大いにあるが、目的の為に一番の大好物であるPKを封じているのだ。
『見返りは期待シてるよ~。第一希望はプロポーズかな。シてくれたら全部投げ出して日本にいく準備が当方にはあるよ。そもそもこっちは遠恋でもよかッたのにさァ』
「……その話は勘弁してくださいませジア様」
酔ってくると毎回ジアが持ち出す話。ノートとしては持ち出されると非常につらい話ですぐに白旗を挙げるしかない。
仲がこじれて破局したわけではない。依然としてノートとジアの関係は非常に良好だ。だが、ジアが日本を離れるにあたりノートと別れた。もともと付き合う前にもジアが日本にいるまで、という約束ではあったが、当然ジアはゴネた。全力で泣いたし、全力でノートを言いくるめたしそのまま日本の大学に通いたいと主張した。
だが、最終的に親と話し合い親と一緒に本国ロシアへ帰国をした。
色恋沙汰だけで安易に人生を決めるな、一度離れて頭を冷やせ。それでも愛してると言い切るのなら何も言わない。
ジアの両親はただ自分の意見を押し通すために厳しい言葉を告げたわけではない。ジアの今後を考えた上での発言だ。
父の仕事の都合上、ジアは色々な国を転々としており、それがジアの負担になることも承知していた。故に、両親は基本的にジアのやることは何でも応援したし、かなり自由にさせていた。
その両親が真剣な目で反対しただけに、ジアも最後は両親の意見を受け入れた。
だが、距離を離されれば逆にその想いは強く燃え上がった。親の意見をうけて頭を冷やし、冷静に周囲の男性にも目を向けてみた。それを踏まえて、やはり自分はノートが好きだという事を強く自覚するだけだった。
自分とノートの思考回路はよく似ている。故にノートへの最良のアプローチ方法もジアはよく心得ている。ジアは欠片もノートを逃がす気はなかった。自分が心から価値を認めたものは手放せないという性質はジアも持ち合わせているのだ。
『ショうがないなァ、今度そっち行ったとき3泊4日くらイのデートしてくれたらちょっとは許シたげる。行きたイ場所はいっぱいあるんだよねェ。てか、そろそろ行くからよろしくね』
「………了解。予定が決まりそうなら知らせてくれ。こっちも調整する」
『Я обожаю тебя』
「ん」
『イま照れたね』
「…………うるせぇ」
ノートのツボを熟知しているジアはノートの顔を見て嬉しそうに笑う。自分への思いを全く割り切れてないノートを見て愉悦に浸る。
『とりあえず今日はここで勘弁シてあげるね。当面はシナリオ進めつつ私は神寵故遺器だっけ?それを探そうかな。性能を聞くニ初期限定特典に匹敵するし、神寵故遺器を個人所有出来たら肩をならべラれそうだからねェ』
「OK、健闘を祈る」
『期待シてまってろー!どでかイ手土産持ってってやっからよー!ロシアサーバーがひっくり返っても知らないもんねェ〜!』
こうして数時間にわたる元カノとの密会は終わった。
て事で名前だけ出てた桜吹雪です。
鎌鼬と桜吹雪が仲良くなったのはロシア繋がりです。(鎌鼬は父親がロシア人のハーフで桜吹雪はロシア人とイギリス人(ロシア育ち)のハーフ。桜吹雪は英語もロシア語も日本語も(スペイン語も少しだけ)話せるトリリンガル)
滅多に誰かと遊ばない鎌鼬とやたら仲良い男子の存在に興味が湧いてオンラインゲームに参加。鎌鼬経由でノートと知り合いに。
色々あってユリン、トン2、鎌鼬(+他数人)を相手取りノートを勝ち取った怪物です




