No.156 美少女ミルフィーユ
(´・ω・`)ゲームでさぁ、百何時間プレイして~とかよく聞くけど、たぶん小説執筆の方がはるかに時間浪費コンテンツだよね。執筆と他趣味を両立できる人マジで凄いと思う(地獄のマウント)
(´༎ຶ ω ༎ຶ`)安〇先生…………ELDEN RINGがしたいです…………CoCがやりたいです…………
(´・ω・`)この作品の読者はみーんなフ□ム&C〇C沼に落ちた方が幸せになれると思うんだ
(´・ω・`)あとシャンフロね。みんな読もうね、漫画版買おうね(ダイマ)
「ダーメだ、勝てねぇ。ツッキーも限界だってよ」
『マジで随分と丁寧な物の扱いをしてくださいますね、このオーナーは…………!きっとオーナーに世話される赤子は強く育つでしね!』
『^^(草)』
『塵玉………ぜってぇいつか分からせてやるでし………』
疲れ切ったような顔つきのノートはフラフラと歩きながらドアを開けると、ツッキーから痛烈な皮肉が飛んでくるがあっさりスルーする。
人も入らぬエリアにポツンと立つログハウス。そのリビングのソファーにボロボロのノートが倒れ込むと、その上にユリンがダイブし、悪乗りしたスピリタスがその上に乗り、ヌコォが乗り、トン2が飛び乗った。
「ぐぇ。痛くなくても普通にぐるじい。あと鎌鼬はなぜ俺の顔を覗き込んでるんだ?」
「特に意味はないわ。いい身分よね、と思っただけよ」
美少女ミルフィーユに加わらなかった鎌鼬はノートが寝転がったソファーの傍らにしゃがみ込み、至近距離で苦しそうな顔をしているノートの顔を眺めていた。やたら綺麗な目で見つめられていたのがかえって怖かった。
因みにその後ろではネオンが顔を赤くして挙動不審な態度になっていた。ミルフィーユに加わればいいのか、ノートを助ければいいのか。結局どっちつかずのままあわあわしてる間にタナトスが労いの為の茶菓子を持ってきた事でミルフィーユは自然分解した。
ボス戦開始から5日、7周目の戦闘で遂にノート達はヒュディに完膚なきまでに敗北してミニホームに帰還した。
1周目はノートが死ぬ結果となったがオリジナルスキル縛りでの攻略に成功。欲しかったものは無事に手に入れたので3周目以降はオリジナルスキルを解禁。周回強化はどれほどの物かと警戒していたが、警戒していたほど法外な強化は施されていたなかった。というより、あるはずのなかった3段階目のせいですべてが霞んでいた。
攻略方法は1周目の時点で大方固まっていた。
初手はまずネオンの魔法でダウン確定。時間を稼いでる間に水分を吸収する石をフィールド中にばら撒く。
これは戦闘しながらちゃっかりノートがゴヴニュに作成を依頼したもので、フィールドで回収したアイテムを錬金術で加工してもらった。
この石をばら撒くことで沼から効率よく水分を奪い取り、地味にヒュディにダメージを与える。ここでダウン中にある程度ダメージを入れたところでスピリタスの1回目の〔戦覇真拳勝負〕で飛び道具をほぼ封印。ヒュディの攻撃を近接寄りに誘導。効率よくダメージを与え続けたところでヒュディの泥津波攻撃のところでどさくさに紛れて他のプレイヤーを排除する。
〔戦覇真拳勝負〕維持中にできるだけダメージを与えるべく、プレイヤーを排除した段階で[神、此処に在らずして、死に給う]とトン2&鎌鼬のオリジナルスキル〔蹂禛僭詆・粛清ノ偽典・天骪無法〕を発動。
攻撃力を下げた段階でフィールドに油の散布を開始。ヒュディに大量に油を吸い込ませ、ダメージが通った段階で必ず使用する【色即是空天変雲泥・燭黒墜】を発動した瞬間に着火。爆破して大ダメージを与えて覚醒ヒュディへ。
ここで〔戦覇真拳勝負〕2回目。覚醒ヒュディの飛び道具の威力を下げて猛攻。ここだけは完全に力押し。
大方このようなやり方でヒュディを討伐していたのだが、7周目からいきなり雲行きが怪しくなった。というのも、いきなりヒュディの周回強化度が跳ね上がったからだ。第二段階を撃破するだけでも精一杯。こうなると、万が一発動した後に敗北するととんでもないデメリットを与えてくる〔蹂禛僭詆・粛清ノ偽典・天骪無法〕を迂闊に使えない。
結局ノートは最後までオリジナルスキルの使用を決心できないまま覚醒ヒュディにより全滅した。
ここでノートはヒュディへの挑戦を切り上げた。今回はグレゴリもネモもゴヴニュも限界まで酷使されて流石に疲労を隠せないでいた。その点も含めて、ノートはボスへの挑戦の断念を決定し。おそらく一番元気なのはメギドだろう。覚醒ヒュディともバチバチに殴り合い戦闘欲を満たしていた。
「まぁ、6周できれば上出来だよな」
「2周目はツッキーもオリスキも無しで超耐久戦仕様のゴリ押しで勝ったしねぇ。死霊達様様だけどさぁ~、なんだけどさ~」
「正直2周目が一番キツかった」
「ヌコォに同じくぅ」
「確かに、あの戦闘が一番弾を使ったわね…………」
「魔法の為に、触媒も、たくさん使っちゃいました」
「あのデカブツとは暫くやりたくね~なっ」
『有給休暇を所望するでごぜぇます』
『(_ _).。o○つかれた』
攻略情報がほとんど割れていたとはいえ、チートアイテムなどの影響を受けて法外な強化を施されたヒュディを相手にチートアイテム無し、オリジナルスキル無しの戦闘は無謀に近かった。だが、ツッキーに煽られまくったノートが本気でヒュディに挑み、全員壊滅ギリギリのレベルで辛勝を捥ぎ取った。バトルジャンキーのスピリタスでさえダレている事がどれほど苦しい戦闘だったかを何より物語っている。
だが、その成果はあった。このボス戦周回だけでノート達は一律2ランクアップしている。
ちなみにその内訳は2周目だけで2ランクアップである。その結果が如何にオリジナルスキルや旗が強力であり、尚且つ成長を妨げる可能性があるという事を如実に示していた。
「海外勢って最大何周だっけ?」
「4周、だったはずです。えっと、あと、日本は私が最後に確認した時だと、まだ、最大で3周目です、ね。でも、全体の平均値は2周目を超えそう、らしいです」
相変わらずソファーに寝ころんだままのノートの呟きに応えるのはネオン。スーパーストイックガールにとってスレの閲覧はもはや日課になっていた。最近は抑えるべきスレも整理されて効率的な情報収集を可能とすらしていた。
「日本サーバーは全体が強化されてるからそうなるか。あとは焦った情報屋が頑張ったかな?」
ノーヒントのヌコォでも気づいたのだ。フィールド周りを探索していたプレイヤーで、一度ヒュディの性能を聞けば油や吸水性の石の利用を思いついてもおかしくはない。そして情報屋はその情報を抱えた可能性がある。上位陣が成果を出したところで中堅あたりにチラつかせれば巻き上げられただろう。
だが、ノートが余計な真似をしたせいで彼らは焦ってしまった。情報の価値の変動。なにより高値で売ろうにも彼らはノートからアイテムなどを買ったせいで元手がない。となれば想定よりも少し安めで情報を売るしかない。
自分たちのイメージを護るための精いっぱいの抵抗の為に誰かが安値でボスの情報を売れば、それが徐々に広がっていく。情報は生ものだ。新鮮なうちに売らないと気づけば価値は大暴落を起こす。それを恐れて他の物も情報を安値覚悟で売り出す。
株価が暴落する時と非常によく似た動きが発生し、プレイヤー達の多くにボスの攻略情報が出回った。
そのお陰でがっぽり稼げたのは生産担当プレイヤーだ。ノートのせいで煮え湯を飲まされた悪徳プレイヤーもいたが、その様なプレイヤーを除いては他のプレイヤーがキャンプ地周辺で回収したアイテム類の加工依頼が殺到した。結果として中堅プレイヤーの多くもヒュディの撃破に成功しており、うまくグループを作れたプレイヤー達は2周目も成功していた。
流石に3周目は簡単にいかないが、2周目通過勢も上澄みの連中が協力体制を築いたり、まだ1周目も通過できてないプレイヤー達を援護する動きも見られ始めていた。
全体の動きが早いおかげでスタンピードも危なげなく対処できているらしい。上位陣も混じり始めたことで、スタンピードで力を積んだ駆け出し勢も今度はヒュディ討伐に参加し、チラホラとヒュディ撃破の報告も上がり始めている。
今の日本サーバーの流れは開発が予想していた中でも一番良い状態。運営達も最初はノート達が乗り込んできたときはどうなることかと怯えていたが、最初こそドでかい騒ぎは起こされたもののそれ以降は素直にボスに挑み続けていたのでほっとしていた(一緒に参加することになった不幸な12人には泣く泣く諦めた)。
だが、運営はまだノートを理解できていなかった。遊び道具がたくさんあるのに、指をくわえてみているような甘い性格をしていたらノートはPKプレイヤーとして数々のゲームで悪名を轟かせていない。
「さーて、後夜祭をおっぱじめるぞ!」
今まで疲れ切ってダレたスライムのようになっていたが、急に活力を取り戻したように目を輝かせて起き上がる。子供のような無邪気な笑みを浮かべてエグイことをしようと誘うノートに、一人は楽しそうに笑みを返し、一人は相変わらず無表情ながら利益を出すための計算を既に始め、一人は何とも言えない感じで、一人は獰猛に、一人は愉快そうに、一人はやれやれといった態度を取りながらも笑みを浮かべた。
極めて順調な日本サーバーの傍らで、ひっそりと悪意が蠢きだしたことなどまだ誰も気づいていないのであった。
(´・ω・`)ボス戦というクソなげぇ前座が終わり、ジェットコースターがようやく天辺に到達しました
(´・ω・`)一気に落ちるぞ




