表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/880

No.144 本当に申し訳ない

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽全ては自分の最高の利益の為に




「で、何が大人しくしてるだって?バレるリスクがあるから慎重に、だぁ?テメェが1番暴走してんじゃねぇかっ!」


「おっしゃる通りで。本当に申し訳ない」


 ノートの起こした一大ムーブメントがきっかけになったかは分からないが、あの後30分も経たずに異様な勢いでプレイヤーの数が上昇。既定の人数が到着した事がアナウンスされた。

 いよいよ初の大規模ボス戦が始まる運びとなったが、いきなり始まるわけではないらしく、ここからまた1日猶予があるようだ。

 どうやらアメリカや中国勢からのプレイヤーの意見を受けてスタート方法に少し修正があったらしい。


 そのワールドアナウンスにプレイヤー達は一気に盛り上がり、ノート達はその熱狂に紛れて再び姿を変えて、魔法などを色々と駆使してキャンプ地から姿を眩ました。

 そして打ち合わせ通りキャンプ地の外で待っていた偵察組と合流したのだが、あれだけ騒げば当然何をしていたが大体バレるわけで、特に目立つからという理由で偵察組に回されたスピリタスはお冠だ。

 

 一緒にいて酷使されたトン2達も今回の騒ぎは流石にフォローできる言葉が全く見つからなかった。

 1番リスクがどうのこうのと悩んでいたくせにいざ動き出せば異常に生き生きと暴れていたのだ。特命を受けて蚊帳の外に置かれたユリン達が拗ねてしまうのも理解ができる。


 スピリタス達に詰め寄られてノートは地面に正座して見事な土下座をしていた。そこには数千人単位のプレイヤーを手のひらの上で転がし嘲笑っていた邪悪な男の影は欠片もない。


「まぁ、俺たちじゃ入手困難なアイテムや情報を大量に仕入れたからそれで許してもらえませんか」


 土下座しつつも情状酌量を求めるノート。

 言い訳、結果論でしかないのだが、ノートの言うように今回の交易でノートは大量の情報と新規アイテムの入手に成功していた。

 種や植物関係はネモに任せれば喜んで育ててくれるし、品種改良にも使える。大胆な者は食用の虫を持ち込み(しかもキワモノばかり)交渉してきたが、ノートはレア物に限り交渉を受け入れて虫籠ごと確保してきた。

 これでアグラットから提供される謎肉、謎魚肉が増えるだろう。


 その他にも自分達じゃ使い道のわからないアイテムを売る者もいたし、珍しい魔物や魔法、スキルなどの情報の提供もあったし、特定の植物の育て方やNPCに関する情報を齎した者も居た。

 特に爆弾情報を投下してきたのがスレにも出没しないタイプの検証厨グループ。なかなか興味深い情報を提供してくれたのでこれは適正価格よりも割高で買っておいた。


 ノートは性根は捻じ曲がっているが、リスペクトできる者を扱き下ろす趣味は無い。本当に意味のある情報を齎してくれた者にはノートもそれ相応の対応をする。

 貴方達が密かに行っている事は、非常に価値のある事なのだとノートは認めてその背中を押した。

 この点がノートがクズになり切ってない部分の一つである。

 


「んで、一応聞くけどよ、最近ちゃんと寝てるか?なんかテンションが寝不足気味の時に近いぞ?」


「よくわかったなスピリタス。絶賛寝不足だぞ」


 今まで怒っていた様に振る舞っているが、実際のところそこまで怒っている訳でもない。感情的な様でいて根底には冷静さがあるからこそスピリタスは強い。そのスピリタスはノートの異常を見抜き、心配そうに顔を覗いた。

 それに対して、ノートはやたらギラギラした目でにっこり笑った。


 ノートはあれこれと言い訳を並べたてるが、スピリタスも一応その言い分は聞く。無論、ノート以外なら鉄拳制裁で終わっているが、ノート相手なので特別にその言い分を聞いていた。

 そしてその話し方でとある違和感を覚えて指摘すると、ノートはやたらギラギラした目で頷いた。


 ノートが専門とするカウンセリング相手は学生である。中には学業にはあまり影響を出したくないので、などという理由で遅い時間帯のカウンセリングを希望する場合も多い。

 そしてノートもノートで、割と熱が入れば区切りのいいところまでしっかり対応するので(それが固定客の獲得や高評価に繋がってもいる)気付くとかなり遅い時間まで仕事をしている場合もままある。

 

 そんな時には色々とスケジュール調整をして誤魔化すのだが、今回はパーティーメンバー全員で元から指定してたスケジュールなのでちょっと無理をしてログインした。

 因みに今カウンセリングしている相手が中々厄介な人ばかりで連日予定外の寝不足が続いており、今のノートはドリンク剤でガンギマリ徹夜明けフィーバー状態だった。


 結局、その徹夜状態が発覚した事でスピリタス達も責めるに責められず、追及作業は後回しにさせる事に成功。ノートはグレゴリに騙し絵結界を展開させて周囲から姿を消し、キサラギ馬車を召喚。入手したアイテムを馬車のインベントリに入れてアイテムを整理する。

 帰ってからの整理が大変だと思いつつも後の祭り。今は深く考えない事にして、まだ興奮冷めぬキャンプ地に戻るとひっそりと空いたスペースに再度テントを設置する。


 場所はボス戦のエントリー場所から比較的近いPKプレイヤーが多く集まっている場所。ノートの影響で人の流れが変わったおかげで比較的良い場所を取り直すことができた。

 多くのプレイヤーが跡形もなく消えたノート達を色々な思惑で探し回っていたが、ノート達は既に名前も姿も変えてしまった。幾ら探しても見つからないだろう。


「結果オーライだな、うん」


 一応そういう意図もあったのだが、ここまで上手くいくとはノートも思ってなかった。

 どうやらMON以外の利益が即座に得られる情報屋というのが多くのプレイヤーには新鮮に見えたらしい。というより、そもそも情報屋があるなんてことを知らないプレイヤーや、スレの存在をよくわかってないようなプレイヤーの数がノートの予想を遥かに超えていたのだ。


 よく考えなくてもそれは不思議ではなかった。

 日本サーバーのプレイヤー数は50万を軽く上回っている。そのプレイヤーの大半が有効的にスレを活用し始めたらスレの流れはとんでもないスピードになるし色々とスレが乱立しすぎて訳の分からない事になるだろう。


 ALLFOから初めてMMO始めたというプレイヤーも数多く、スレを積極的に利用するのは結局他のゲームでスレに触れた事のある連中ばかりというのが事実だった。

 なので有用な情報を持ってても言う機会がないプレイヤーが少なく無い数いたのだ。

 かと言ってわざわざ情報屋を見つけてタレコミをするプレイヤーは多くない。少ないMONで買い叩かれる事を警戒していたプレイヤーもいたが、ノートは非常にオープンな環境で、しかも相手のプレイヤーが欲しいものをきちんと渡すように取り計らったので今まで口を噤んでいた者の口も緩んだのである。


 そしてその色々と得た情報からノートはとある作戦を決行する事にした。


「本当に大丈夫なのかしら?変に足を引っ張られるリスクがあるかもしれないわよ?」


「でもフルメンバー報酬とキャリー報酬が美味しそうだしなぁ。キャンプ地にいる程度のプレイヤー12人程度の補正が掛かってももはや誤差だろ」


「反船イベントで平均ランクは上がったらしいけど〜それ以上に私達は成長しているからね〜、だよね〜」


 心配する鎌鼬を他所にノートは気楽な態度、トン2も同意見だ。

 現在のノート達の平均ランクは17。反船イベントを超えて、結晶洞窟で奮闘し、その後に深霊禁山と立体迷路を踏破して3連ボス撃破。

 ランクダウンの制限がかかった状態で赤月の都にてパニックホラーレベルで押し寄せる敵を何度も捌いてきた。

 

 周囲のプレイヤー、特にガチガチに既にメンバーを選抜してるガチ勢を除いた一般的なプレイヤーとは15近くランク差があると考えると、ノートの言う通りやはり誤差でしかない。

 ではなぜそんなプレイヤー達の事が話題に上がったかというと、これから始まるボス戦に関わってくるからだ。


 ボス戦へのメンバーエントリーには主に3つ方法がある。

 1つは指定メンバー参加。他のゲームだと鍵部屋などとも言われる方法だ。

 まず代表者がエントリーし、パスワードを設定する。そのエントリーにはパスワードを知ってる者しか参加できないので、一緒に攻略をしたい人とだけボス戦が可能になる。

 今回のボス戦は数が多ければいい、と言うわけではないので、イレギュラー参加が逆にボスを強化してしまう可能性がある。よって開始前からメンバー厳選をして作戦もしっかり立ててるような者達はこのエントリー方法を選ぶ。


 2つ目は募集式。

 代表となるグループがエントリーして、もっとメンバーが欲しい時にこのエントリーをする。この場合では参加するメンバーの人数を10人単位で指定可能で、募集時には欲しいポジションの指定もできる。

 今回のボス戦の攻略推奨人数は50前後だが、50人を集めるのはなかなか難しい。よって仲の良いパーティー3組ぐらいでエントリーして、足りない場合をこの募集で補う訳だ。

 多くのプレイヤーにとってはこの方法が1番一般的なやり方になるだろう。


 ただし、募集者と応募者の反りが合うかどうかは蓋を開けてみなければ分からないし、報酬や作戦に関してもその場でサッと決める必要があるので鍵部屋勢からすると少し不利な点もあるだろう。


 そして、恐らく応募しても弾かれるレベルのプレイヤーや、誰かに扱き使われたくない硬派な奴、遊びで参加したり参加賞が欲しいだけの奴らがエントリーする3つ目の方式がランダムマッチングエントリーだ。


 1人からでもエントリー可能で、パーティーならパーティー単位で、エントリーしているプレイヤー達をAIが自動でマッチングさせる。

 非常にギャンブル性が高いし、他2つのエントリー方式と違いリーダーグループが不在になるので作戦立案は非常に難しくなる。


 こう言う場所にエントリーするのは他のプレイヤーと縁がない駆け出しとかが多い。例えばノートが最初に話しかけた2人組のプレイヤーはその最たる例だ。

 人数合わせの為に攻略組にキャリーされてきたような少人数のグループで、尚且つ弱い部類に入るプレイヤーだと、2つ目の方式で応募しても弾かれて終わる確率の方が多いし、参加したとて活躍できず足を引っ張るだけなら針の筵。報酬もまともに貰えないだろう。


 そんな事になるくらいなら、などと考えるプレイヤーの最後の手段がこのランダムマッチエントリーだ。

 ランダムなのでどんなプレイヤーが来ても恨みっこ無し。報酬もAIが功績に応じて自動で割り振るので争いも無い。

 ボスを倒せる確率は1番低いが上手く噛み合えば勝てない事もない無いかもしれない。そんなギャンブルに夢見て駆け出しの多くがランダムマッチでエントリーをする。


 さて、ではノート達はどの方法を選択する事にしたのか。普通なら固定メンバーがいるし戦力的にも枠的にも鍵部屋エントリーが順当だろう。

 だが、ノートは敢えてランダムマッチエントリーを提案した。


 今回のシナリオボスは通常とは異なり、参加したプレイヤーの人数、ランクなどで強化される仕様となっている。

 つまりノート達が相対するであろうボスは他のプレイヤーの前に現れる物とは想像を絶するほどの能力を持った真の怪物となる可能性が非常に高い。


 しかしノートは狂気を孕んだ目で宣った。

 どうせやるなら上限最大でやってやろう、と。


 100人フルメンバーは公式でさえもやんわりと止めるように忠告している。実際、物量で押し切るスタイルの中国勢はフルメンバーエントリーで大変な事になったらしい。

 しかもフルメンバーエントリーだとボスに通常とは異なるバフがかかるらしく、結局日本から先行してボス戦に挑んだアメリカ、中国共にフルメンバー状態のボス個体撃破報告は一つも上がらなかった。


 であるならば、俺達が1番槍となってやろうとノートは言った。

 ――――これは開発からの挑戦状だ。上等だよ。恐らくそのフルメンバー状態のボスが本来開発が望んだボス本来の姿なんだろう?だから、俺達が其奴を真っ向から叩き潰す。その代わり報酬は期待させてもらう。


 故に敢えてのランダムマッチ。エントリーするプレイヤーが駆け出しの確率が非常に高い事もノート達には都合が良かった。

 残り12人を駆け出しで埋める。その為にノートは都合の良さそうな噂を既に幾つもプレイヤー達に流した。


 仕込みは全て整った。


 装備良し、アイテム良し、気合良し。

 1日明けて、遂にボス戦のエントリーが開始した。



 



 


༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽ メ ○ ル マ ン


༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽コイツ寝不足にしたらダメなヤツ


(´・ω・`)ちなみに前回に続けてゲロっちゃうけど最序盤で世界観に関する超重要なヒントは出してるんやで

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 寝不足からのハイテンションってなんかブレーキがぶっ壊れて色々忘れちゃうんですよね。でもこれはやり過ぎでは…? やり過ぎと言えばノートって肉体関係どうなってるのか気になる。いやユリンが邪魔して…
[一言] PL嘘留征恵波(うるせえな) PL墮馬霊(黙れ) PL爺無黃狗(ヤンキー) PL皇華婆無(スケバン)
[一言] 12人の尊い生贄に幸あれ でもね、100/100って多分ドロップで 出てはいけないモノが確実に出ると思いますw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ