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No.126 かき氷機

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽地の文だらけでゴメンよ

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽正直読み飛ばしていいレベル




 まず考えるべきは、本当にメダルが鍵なのか。という事だ。


 もし鍵がメダルであるならば、ネオンに話しかけた声の主もフワッとした言い方をせずにメダルが鍵だと断言すればいい。そうでなければあまりに意地悪なミッションである。

 そう、謎の声はメダルの中から鍵を探し出せとは一言も言ってない。


 そもそも何故メダルがこんなに集められているのか。

 安直に考えれば、メダルを掻き集めて鍵となる正解のメダルを探しだそうとした人達がいたのだろう。

 だが、その場合だとその人達は鍵探しに失敗している可能性が高い。

 現に今のところ噴水は噴水のまま。コインロッカーに例えるなら、この噴水はメダルの入れ口しか無いので、仕掛けを開く事でしか鍵を回収できない構造と予測できる。

 

 無論、用済みになったから回収したメダルは放棄した、とも考えられるが、実際に声が聞こえて結界らしきものが機能している辺り、噴水が隠している“重要な何か”は取り出されていないと考えることができる。

 つまり、正解となるメダルは回収されていないのだ。


 更に理屈っぽく考えるなら、もしメダルが鍵ならそのメダルに恨みを込めて傷をつけるだろうか?鍵を壊したら開かなくなるに決まってる。

 しかしノートがどのメダルを手に取っても同じテキストばかりが表示される。恨みを込めて傷がつけられているとテキストは告げる。


 例外があるとすれば、蜘蛛糸立体迷宮の最後の番人だったアラクネ・ラミア連合から回収できたメダルだったが、アレは恨みが無かっただけでそれ以上のテキストはなかった。


 1番考えたく無いパターンは、そもそもメダルで噴水を開けようとした連中がその前段階である模様のパズルで挫折した、という情けなさ過ぎる事態だ。

 模様のパズルが解けなければ鍵穴も現れない。鍵穴がなければそもそもメダルを入れようとする事すら出来ない。


 結果としてイライラしてメダルに当たり散らしたので恨みのこもった傷が出来てしまった。

 ――――途端にシリアスな展開がアニメのコミカルな悪役の失敗劇に変わってしまう。


 それは流石に無いだろう、とノートは信じたい。


 実はこれにはある程度ノートの願望以外の根拠もある。

 というのも、模様のパズルを解かない限り鍵穴は現れないし、もし鍵がメダルだとして、それをこじ開けようとした連中がいるなら、そもそも鍵がメダルであると知っていなければならない。

 そんな連中がその前段階となる模様のパズルの解き方もわからない状態でこんな量のメダルを集めるだろうか? これだけのメダルを集めるにはそれ相応の労力と時間がかかっているはずであり、相当開ける自信があったのではないかと思う。でなければ誰も協力などしないだろう。


 加えて、根本的な話として、どんなメダルを入れてもとりあえず入れられるならまだしも、正解ではない限りブロックされる仕組みになっているように思われる。つまり、鍵となるメダルの持ち主は非常に限られていたのではないかという可能性がある。

 そしてこんな仕掛けを動かせる特殊なメダルを一般市民が持ってるはずもない。

 また、メダルがこれだけ集められているという事はある程度の数の人々には噴水の仕掛けの開錠方法が漠然と共有されていた可能性がある。

 そもそもこの場所は街の北側のほぼ真ん中にある噴水なのだ。厳重に人払いしない限り噴水の仕掛けをガチャガチャ動かしていたら周囲の人から目立つだろうし、人払いするくらい隠したいならそもそももっと別の場所に厳重に隠せとツッコミを入れたくなる。


 これらの推測や噴水の模様、この地の番人であったボスなどから更に分析するに、この噴水は街の人々にとっても重要な宗教的な何かだったのではないかと予想できる。


 よって、万が一メダルがカギだとして、この噴水の鍵を解くメダルを持っていた人物は特別な人物なのではないかと予想できる。ならば、持ち主は一般市民にもある程度絞れるはずだ。

 つまりこんな大量にメダルをかき集める必要はない。持ち主がある程度予想できるならそいつを見つけ出してメダルを奪えば済む話である。

 その推測を後押しするのがメダルの材質やデザイン。特に材質に関しては遠目から見ても木か石か金属かどうかなんてサルでもわかる。なのにそれを同じようにかき集めて同じ箱に雑多に放り込んでる時点でなんだかチグハグだ。


 では、仮定として、メダルを鍵でないとしよう。

 ノートは考える。この説を補強する根拠はなんだ、と。

 どうやらグレゴリの能力が限界に達したようで敵がワラワラと押し寄せて大変なことになってきたが、思考を深く沈めているノートは取り敢えず死霊を召喚してお茶を濁し更に思考を深く沈める。周囲から救いを求める声と怒号と悲鳴が聞こえるが気にしない。


 根拠其の一。ALLFO開発陣営から垣間見える根性曲がりな性質。

 初期限定特典、初見殺し仕様、トラップコンボフィールド、かゆいところにわざと手を届かせないような仕様。そんな物を平気な顔して用意する開発陣営だからこそ、数万枚のメダルの中に本当に1つだけ正解をいれておくなんて鬼畜の所業をしそうなものだが、逆にとことんそう思わせておいて実は全然違うなんて線も十二分にあり得る。

 

 まず『感覚惑乱』で一筋縄ではいかないことを印象付けて、次に立体迷路で更なる嫌がらせ。

 それを抜けた先には厄介なコンビタイプのボス、天使、そしてその強化個体(ノート達は気づいてないが、予告なしの時間制限付きという凶悪なおまけつき)。

 そんな場所をようやくクリアしても、なんらかのフラグを回収してなければ何も起きない(ノート達は強引に突破したが)。


 そんな馬鹿なと万が一なんらかの開通フラグを回収できたとして、次に待ち構えているのはこの怪しげなフィールドにランクを実質2以上さげてくる『不繋圏外』なんてとんでもない状態異常を発生させるギミック、更にいきなり襲い来るクソモブ黒騎士。


 今までいい子ちゃんのふりをしていたALLFOが徹底的に牙を剥くことで、プレイヤーの固定観念が破壊されてしまう。その状態でこのように誘導をかけられたら『もしかするとありえるかも』と普通ならあり得ないことでも信じてしまうのだ。

 メダルがわざわざ一枚一枚さぞかし重要なアイテムのように凝っているのも逆に罠のようにノートには感じられた。

  

 其の二。極端なメダルの多さ。

 例えばメダルの数が100枚だとしよう。おそらくこの程度だと場合によっては普通に試すし、確率的に100枚すべてを試行する前にだいたいあたりのメダルを見つけられるだろう。

 これが敵に囲まれた状態で、数万単位になってくると、試行する時間が足りなくなってくるし、偶然早い段階であたりのメダルを見つける確率も下がっていく。となるとプレイヤーの心理的にもあてずっぽうで挑むのはなかなか難しい。


 簡単にあたりメダルを見つけさせないために多くのメダルを用意した。そう思いたくなるが、疑い始めるとそれすら誘導されてるように感じる。

 

 では、よしんばメダルの中に鍵となるメダルがあったとして、如何にそれを見つけ出すのか。


 例えば、この赤い月の都を探索をしているうちに何らかの手記を見つけ、そこからヒントを得るかもしれない。安直だが王道で不自然さは少ない。ただ、ヒントがでてもこれだけ分母が多いと探すのはやはり手間だ。

 ではあたりのメダルだけに反応するセンサー付きの機械のような物があるとする。これならば万単位のメダルがあっても探すのは多少楽になるはずだ。

 ―――となると、だったらそれを最初から使えよ、という話になってしまう。そもそもそんな当たりメダルだけを見つけ出す都合のいいアイテムがあるのか、そんなもの誰が作るのか、なぜ作ったのか、と色々疑問が噴出するだろう。

 『あたりのメダルと他のメダルがごちゃまぜになってしまう』なんてなかなか難しいシチュエーションにならない限り無用の長物となり、かき氷機と同じくいつのまにか倉庫の隅で埃かぶってそうな道具枠になりそうだ。

 今までのALLFOの感じからして、興ざめになりそうなそんな都合のいいアイテムをわざわざ作るだろうか?ノートはそうは思えなかった。

 ノートはクオリティに関してはいい意味でも悪い意味でも開発陣営を信用していたのだ。


 其の三、謎の声からのヒントと思しき『虚を見よ』という言葉。

 何を言ってるかさっぱりわからないが、この言葉を単純に言い換えると『実を見るな』とも解釈できる。

 虚を見よ、などとちょっと厨二がかった言い回しをされても、そもそもこのフィールド自体が座標ずれ時間ずれ疑惑大アリのフィールド、存在そのものが虚構に近いように思える。


 このフィールドの表面が“実”であるとするなら、“虚”とはなんだろうか。


 俯いて頭をフル回転させるノート。その視線の先にグレゴリが出現した。どうやら敵から逃げるためにノートの影に〔影渡り〕をおこなったらしい。逃走に関してはやはり異常なほどズルい能力だ。フィールド全体の状態異常のせいかグレゴリ曰く〈影渡り〉がやり難いとのことだが、こうして実際に使っているのを見るとそうは感じない。

 そんなグレゴリを見てノートはふと思う。

 

 影?


 影ってなんだ?


 冷静に考えて、対象の影に転移する能力とはなんだろうか、と。

 影に必要なのは明かりだ。明かりなくして影はない。その影に転移するのが〈影渡り〉。以前、ノートはグレゴリと2人きりで会話した時に、〈影渡り〉のコツを聞いたことがある。実際、それを聞いていたからノートも女王蟻戦でスムーズに〈影渡り〉ができた。

 グレゴリ曰く、イメージとしては自分の影と、対象の影に『扉』を開くイメージ、なのだとか。しかも面白いことに、非生物より生物相手の方が格段に〈影渡り〉はやりやすいとのこと。普通は逆に感じるが、実際生物の影を経由した方が〈影渡り〉による消耗が少ないという面白いデータが取れている。


 つまり、ALLFOは『影』に関してもなんらかの絡繰りを仕込んでいてもおかしくない。

 もし、その『影』を作り出す『光源』までもが“虚”だとしたら?


 この地を照らす巨大な赤い月。

 太陽の様にこの月だけが絶対的な光源として世界を赤く染める。

 この光が偽物ならば、影も偽物となる。しかしそれならばグレゴリの〈影渡り〉は発動しないか、あるいは視界内全てで転移可能になるはず。

 だがしかし、月は最初からずっと動いている様にも見えないし、数日間、ゲーム内時間では既に1週間以上経過しているはずなのにいつ見ても満月である。

 

「(グレゴリの影渡りが難しい理由って他にもあるのか?)」


 手を翳して影を見る。

 月の位置と影の位置に不自然な点は無い。

 ベタなヤツだと、実は月とは別に本当の光源があって、影の出来方で本当の光源の位置がわかる、なんてトリックが多いが、そんな事は無いようだ。


 はてさて、虚とは何か。

 ノートはもう一度思考を巡らせる。

 何か今までの中で違和感のある出来事はなかっただろうか。不自然な点はなかっただろうか。それを結びつける何かを見落としていないだろうか。


 ノートは鍵穴を見つめて、ふと思う。

 


「(なるほど?もしかして)」

 


 ノートは迫り来る魔物共をなんとか凌ぎ疲れ果てているユリン達をよそに、マイペースに動き続ける。恨めしそうな視線が突き刺さっているのは分かっているが、それ以上に謎が解けてきている興奮が勝っていた。

 すぐさまアテナに死霊術師の能力で通信。再召喚で噴水の元に喚び出した。

 

 餅は餅屋へ。この原則は変わらない。

 ならば、絡繰は絡繰のプロに任せてみるべきだ。

 もっと早く気付くべきだと深く後悔したが今は引きづらない。


「お呼びくださりありがとうございマス、御主人サマ。此方が例の絡繰でしょうカ?」


「そう。魔法的な要素が強いかもしれないが、アテナの能力で確認してもらえるか?」


「お任せ下さいマセ」


 アテナは絡繰の天才たるアラクネレイス系列の死霊であり、アンデッド故にスキルや魔法的な成長は一般的な魔物から見れば微々たる物だ。

 しかし彼女は眠る必要も無く、疲労も無い。その持ちうる時間のほぼ全てを自分の趣味に費やせる。


 タナトスを見れば分かるが、成長と知識の会得(料理のレパートリーなど)は別の話。

 今のアテナの絡繰に関する知識量はオーバーテクノロジーの領域に踏み込み始めている。


 それらの濃縮された経験が、進化によりアテナに大きな力を齎した。死霊は成長性が非常に低い反面、進化時の条件が厳しい代わりにより大きな力を得ることができる。

 アテナの進化時には罠に絡繰に役立ちそうな様々な魂を継ぎ込んだ。プレイヤーからドロップした貴重な品を惜しげもなく生贄として捧げた。結果、今のアテナは魔法や付与、錬金といったアプローチからでも絡繰の作成が可能となっている。

 今のアテナはバルバリッチャなどの例外を除き、ノートの死霊の中では最も様々な知識を蓄えていると言っても過言でない。  


 そんなアテナの進化後の初の大仕事。

 仕えし主からの直接の指示。ネモ同様に目を爛々と輝かせ噴水の解析を始める。


༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽ノートの理屈っぽい思考回路が如実に出ている自問自答パートです

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽明日も更新アルヨ

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽ちなみに仕様に関する重要な情報が出てきます

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽どうでもいい話なんですけど

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽家にあるけど使ってない物といえば皆さん何を思い浮かべます?

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽私は実家のかき氷機です

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― 新着の感想 ―
[一言] 鑑定で手に入る情報すら変わるのか……検証班が憤死しそう うちはタコ焼き機とマッサージチェアはあまり使ってないですね
[一言] たこ焼き器かな 近所に美味しい店があるし自分で作るのはめんどすぎる
[良い点] 更新多くてうれすい
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