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No.107 虚旧ノ守人 ルーナウラ・ソーラシル

(´・ω・`)新作書いて軽いリハビリ済んだからアップします

 戦端が開かれると同時にまず動いたのはネオン。打ち合わせ通り発動待機状態にしていた火属性の魔法をブッ放す。

 目の前にいるアラクネとラミアのボスを僧侶型と呼称しよう。その僧侶型は間違いなくアラクネとラミアの上位個体ではあるが、アラクネとラミアであるという原則からは逃げられていない。

 つまり通常個体が苦手である火属性攻撃が僧侶型の弱点である可能性は高い。

 ネオンの魔法は強いがフレンドリーファイアに常に気を付けなければならないほどに範囲が広い。効果範囲に入ってしまった時点で回避はほぼ不可能。


 ネオンの手から放たれる漆黒の業火。頭上を通り抜けたが一瞬でも焼けつくほどの熱を感じる凶悪な魔法がアラクネとラミアの僧侶型の両方に着弾し爆発が起きる。

 続いて「やったか!?」などと言う目玉焼きに醤油レベルのお約束の確認もせず追撃の矢を飛ばす鎌鼬とヌコォ。ノートも死霊を召喚して援護しようとしたところで爆炎が消え、目を見開く。


「おいおい嘘だろ?何だよそれは!」


 消えた爆炎の先にいたのは無傷の僧侶型。アラクネが構える杖が発光し、その先に展開された白い光の障壁が全ての攻撃をガードしていたのだ。


「作戦変更!ダウン取れるまで大技無し!死霊で探るから行動パターンが読めるまで分回パターンだ!」


 ノートの指示を受けて『祭り拍子』は即座に散開する。分回パターンは前衛後衛セットで3組に分かれて分析と回避に比重を置いて動く安全重視の作戦だ。

 まず動いたのはノート。ゴースト型の死霊を召喚して襲撃させ僧侶型の性質を探ると同時にネオンに集まっているヘイトを分散する。

 

 使うのはアテナ系列のアラクネレイス。糸を放ちヘイトを集め易い拘束系攻撃をするが、僧侶型アラクネの展開した障壁に触れると消滅してしまう。


「反霊性質ってことは、やはり聖属性タイプか」


「ネオンの魔法が完全ガードできるって事は、その可能性が高いんじゃないかなぁ?」

 

 ネオンの魔法は生半可な防御では耐えられない。ましてや完封されるなど今まで経験したことが無い。

 と言う事はあの障壁に対してネオンの魔法の相性が悪い可能性が浮上する。ネオンの魔法は火だろうが水だろうが種族的効果で常に闇属性が付属している。もし展開された障壁が光・聖属性ならかなり相性は悪い。

 そこで反霊性質が無いと干渉不可能な糸を作成できるアテナ系列の死霊を使ってみたが、物理的な干渉では断ち切れない糸が障壁に触れただけで消えた。先程の反応で障壁の属性はほぼ確定したと言えるだろう。


 だがノート達が彼女達を分析している間に彼女達がのんびり待っているわけも無い。僧侶型ラミアが鎌を振りかぶるその身に似合わない俊敏さでネオンのいるグループに迫る。

 ネオンを守るはスピリタス。ネオンの魔法の発動は間に合わず、スピリタスは獰猛な笑みを浮かべて身構える。


 発光する大鎌。その鎌を振りあげるスピードを見てスピリタスは嫌な予感がした。


「ネオン!伏せろ!〔金剛頑強〕!!」


 次の瞬間、大鎌がブレて青い光が弧を描き、スピリタスは5mほど吹き飛ばされた。


「大丈夫か!?」


「あーっ!クソ!どんな威力してやがる!?受け流したのに吹っ飛ばしやがったッ!オレとトン2以外なら即死攻撃だぞ!」


 吹き飛ばされたにしては鎌とガントレットがかち合った金属音が殆ど聞こえなかった。スピリタスが攻撃の軌道を予測して目視出来るかも怪しい一撃を手の甲で受け流して見せたのだ。

 

 大鎌という武器ははっきり言って非常に使いづらい武器であり、ファンタジーならまだしも実戦登用するなら正気を疑うレベルだ。だが振りかぶられた鎌の先端が帯びるパワーは凄まじい。それをまともに受けるなど愚の骨頂。

 本来なら避けたいところだが、自分の後ろにはネオンがいる。

 故にスピリタスは回避せず、受け流すという本来無謀な選択をした。


 初撃すら確認できていなので速度もタイミングも把握できておらずできるかどうかは賭けに近い。一応保険でユニークスキルで防御力をあげておくがどこまで通用する物か。

 その上、普段は武器として振るわれることもない大鎌だ。スピリタスは様々な武器使いとGBHWで一通り戦っているが鎌を使っている奴はついぞ見なかった。  

 振り上げたフォームから軌道を予測。受け流すことを前提とした姿勢にチェンジ。絶妙な角度で鎌の先端の腹を受けて衝撃を殺すが、殺しきれなかったエネルギーと風圧だけで体を浮かされたのだ。

 おかげで即座にしゃがんだネオンは無傷だったが、不幸中の幸いといった程度で戦況が好転したわけではない。ほとんど通常攻撃の様な一撃をスピリタスが全力を尽くしてようやく対応できる程度など、想定外としか言い様が無い。


「これボス個体だけレベチにもほどがあるんじゃない!?」


「何かを余程隠したいみてぇだなぁ、胡散臭さ教会!」


 どう考えても殺しに来てるとしか思えない防御力に威力。おまけに属性的な相性が悪いときて戦線崩壊までの片道切符が特売価格。

 今回は強引に突破したが、悪辣なフィールドギミックを突破し、更にゴール手前で全力で妨害してくるメイド・僧侶・騎士上位個体連合を何とか倒し、その先にいるのがそれを鼻で嗤うレベルのボス個体が2体。

 正直一体だけでもお腹いっぱいなのにそこにタイプの違うボスが追加。二郎系ラーメンを全マシ大盛で提供されているような頭のワルイ感じのボスである。

 製作者が明らかにこのエリアの攻略を試みたプレイヤーの心を折るどころかミキサーにかけて粉砕処理する気にしか思えない。

 

 実際のところ、数値のスペックだけを見るなら一体だけで十分このエリアのボスとしての役目を果たせる、というよりは少々優しめだが適正の範囲に収まっている。

 しかしタイプの違うボスが二体、戦うエリアも限定されている状況であり、ノート御得意の仕様の穴を突いたような(結界ギリギリバトル、闘技場悪魔ランク上げ、パンジャンドラムなど)裏技の様な手は打てない。

 要求されるのは完全なガチンコバトル、というには些か卑怯ではないかと思うほどのボス。主砲を防ぐ盾に盾を強引に貫く鉾ときた。


「ラミアから潰す?」


「そうだな」


 3グループの内の1つ、ノートとユリンが相談していると、それを見越したかのように僧侶型アラクネの体から白い光が立ち上り、杖を天に掲げると体の周りに白い火の玉が20個ほど浮かび上がる。


「おいおい…………ちょっと多くないか?」


 振り下ろされる杖。白い火の玉が2mほどの大きさに膨張し子供が走っている程度のゆっくりとしたスピードで飛んでくる。方向は大体3グループにそれぞれ均等な数、ヘイト集中率はあまり関係ないようだ。

 ノート達は飛んでくる火の玉の射線から移動していくが、途中で異変に気付く。


「これ追尾型か。厄介だな。全員右周りで回避行動に移れ!」


 ほとんどの攻撃魔法の軌道は拡散か直線のどちらかに限られており、途中の軌道調整に関しては今のところできないとされている。もしかしたらできるのかもしれないが、プレイヤーの中ではその方法を発見できていない。

 その点、僧侶型アラクネが使った白い火の玉はゆっくりでよけやすい。しかし追尾してくるとなると話が変わってくる。僧侶型アラクネと広いフィールドで戦うならこの魔法はそこまで厄介ではない。しかし今はフィールドの広さが限定されており、おまけに通常攻撃で確殺してくる僧侶型ラミアがいる。逃げるコースを間違えたら一発でアウトだ。


 ノートは即座に死霊を召喚し、僧侶型ラミアを足止めすると同時に追尾型火の玉の射線上に召喚して相殺できる魔法は相殺していく。

 全弾相殺してもよかったのだが、最近死霊を大盤振る舞いしたばかりなので精神的にも今は節約していきたいところ。負担の無い範囲で避けられるならそれに越したことはない。

 だがよけられた魔法が地面に着弾したところでノートは自分の判断ミスを悟る。


「チッ、着弾した火が地面に残るのか。めんどくせぇな」


 20発以上あった火の玉はゾンビ型の死霊をぶつけて5発程度までに減らした。それを右回りに動くことで振り切ったのだが、地面に着弾した火の玉がそのまま着火して地面に残っているのだ。当たったら当たったでダメージ量が多そうなのに避けたら避けたで実質的にエリアを狭めてくる攻撃。厄介としか言い様が無い。


 徹底的に厄介さを煮詰めたようなボス戦にノート達は歯噛みした。


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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。 目玉焼きには塩胡椒だと思います
[気になる点] デス数2桁行くかな?(勝つ前提) [一言] 資格どうでしたか?
[一言] これやばすぎじゃないですか? とりあえず目玉焼きにはソース派です
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