No.103 蜘蛛糸立体迷宮②
(´・ω・`)空を飛べるというのは改めて考えてみてもとんでもないアドバンテージなんですよね
羽ばたく美しき黒い翼。アラクネによる糸やラミアの槍投擲を悉く回避し、あまつさえストックができてきた大量の投げナイフで反撃までこなす。
さらに今回はネモが育成に成功した毒キノコから作り出した毒薬を塗っているので、ただの投げナイフだと侮れない。
糸の道の間を飛んでいき、360度から迫る攻撃を回避して遂に目的の物と思われる樹にたどり着く。
「(えっと、どこにあるのかな?)」
周りの樹が太さ5mを超える一方で、ネオンが指さした樹は10m程度と他の2倍ほど。攻撃にさらされながら進んでいるネオンからでも見えた穴だ。という事はかなり大きいはず。
太い枝を伝い猿のように木の周りを移動すると、ユリンの想定より下の部分にだが確かに大きな穴があった。
「(中継ポイントの前に更に中継ポイント?なにこれ?)」
周りは霧がかり暗く、それにより木の穴も暗いように思えるが、その穴はほのかに明るかった。
穴の中を照らすのは緑色に発光する石。それが照明のように木の壁にいくつも埋め込まれている。
その光に照らされて中心には赤い光を仄かに纏う真っ黒な石が塊で置かれて鎮座している。大きさにして両手でようやく持てる程度のサイズだろうか。それがいくつも山状に積まれている。
その近くには金色の糸の玉と謎の半透明の繊維に木の実に干し肉があり(ユリンにはそれが機械ということしかわからなかったが)糸車も置かれていた。
それらをパッと見てユリンが感じたイメージはアラクネの隠れ家だった。
とりあえず何かに使えそうな物を回収しようとする兄貴分の根性はユリンにも沁みついており、ユリンは慣れた手つきで手早く糸や干し肉を回収し、武器で壁の緑の石をくり抜く。
「わっ!?これ虫ぃ!?」
新しい光源かと思いウキウキでくり抜いたのだが、くり抜いた途端に樹に隠れていた足が蠢いて動き出した。
しかし驚きつつも条件反射で刺し貫いて虫を殺す動きには迷いがない。見た感じは背中がゴツゴツとした大きなテントウムシ。
死体が消えないという事はおそらくは魔物という括りではないのだろう。アラクネたちが気づいてこちらに向かってくる足音を聞きつつも、ユリンは構うことなくいくつかサンプルとしてくり抜いて殺し、インベントリから虫かごを取り出し3体ほど生け捕りにする。
ALLFO7不思議の一つ、便利系アイテム『虫かご』。
このアイテムはギルドなどで購入できる特殊なアイテムで、通常では生き物を生きたままインベントリにしまうことはできないのだが、対象が魔物ではない時に限り虫かごの中に入れることができ、そのままインベントリに入れることができる(ただし稀に死んでしまうことがあるクソ仕様)。
主に虫は色々な物のエサや食料としても優秀であり、『虫かご』がなければ生け捕りにして街まで連れていき繁殖させることは非常に難しかっただろう。
ただし一回使ったら再度使えないという、名前に反して実は消費アイテムという点も含めて変なアイテムである。
因みに虫ハンターたちは嵩張るので使いきりという謎の仕様がどうにかならないかと運営に問い合わせたが、運営からの回答は
『そう言われると思ったから次のアプデ後から販売する課金アイテムの『銀飾虫かご』や『金飾虫かご』を素直に買え( ^∀^)』
というなかなかあくどい物であった。
ユリンが使うのは運営からぶんどった課金ポイントで購入した【虹金飾虫かご】。虫かごの中では最上級の虫かごで、サイズも大きいので一度に入れられる虫も多く、そして中に入れておいた虫は勝手に死んでしまうどころか健康状態を良くしてくれるという機能付き。使用可能回数も1000回とかなり多めだ。
虫を引き付けて沈静化させる機能がある虫取り網とセットでお値段なんとたったの2万円。非常にバカバカしい値段設定であるが、長期路線で考えると銀飾虫かごなどよりは遥かに安上がりというアイテムである。
本当に一部の物好きなプレイヤーか、どうしても昆虫採集が必要なプレイヤーしか買わないアイテムだが、【祭り拍子】では虫を持ち込めばアグラットが育ててくれるので新種の虫は価値が高い。よっていろいろと考えた結果買ってみることにしたのだ。
地味に虫かごというよりはセットでついている虫取り網の方が優秀でノート達は重宝している。
虫を確保しユリンは最後に仄かに赤く光る黒い石も持っていこうとするが、それに触れた所で驚き思わず手を離す。
「(なんかあったかい?火傷はしなそうだけど)」
一体この石はなんなのか。よくわからないがこれも一応回収しておく。
そうこうしているうちに遂にアラクネがユリンのいる穴へ殺到する。すかさず一番威力のあるスキルを発動しアラクネたちを吹き飛ばすと、ユリンはすかさず飛び立ちまんまと逃げおおせるのだった。
◆
「ただいま!」
「おう、おかえり。どうだった?」
空から飛んできてアラクネやラミアを撃退しつつノートの横に綺麗に着地するユリン。ノートの問いかけに対して笑顔でピースする。
「ばっちり!なんかアラクネの住処みたいになってて、アイテムとか発光する虫とか確保できたよ!ネオン、ナイスだったよ!」
「おお、マジか!だったら見つけ次第確保していった方が良さそうだな。本当にナイスだネオン!」
「あ、ありがとうございます」
ユリンとノートに褒められて嬉しそうに、恥ずかし気に俯くネオン。それでも魔法を使って敵を次々と倒しているあたり慣れとは怖い物である。
「住居という事は、魔物としてただ生きているわけではなく一応知的生命体のような活動ができるという事かしら?」
「さあな?実物を見てないからなんとも。ただこれだけ立派な道を作ってまで2つの種族が共存しているあたりなんらかの隠し設定はありそうだが」
よく考えてみれば、アラクネもラミアもどうやら出現エリアは限られているようだ。ノートとユリンが最初に襲われた時と同じように、彼女らが最初に『祭り拍子』を襲ってきた場所も座標的には近しい場所だった。
そして出現した時のシチュエーションも少し特殊だった。
他のエリアでは見られない【感覚惑乱】という謎の状態異常。ランクもあれから随分とあがり、状態異常耐性は随分上がっているはずなのだがまったくレジストできていない。
アラクネやラミアたちが他の強敵から身を護るためにこの地に巨大な巣を作り上げたのか、それともアラクネやラミアたちがこの状態異常を引き起こせる何らかの能力を持っているのか。
前者でも後者でも問題は大きく、ノートは色々と戦いながらどちらかを探っていた。
ただ、後者に関しては可能性は薄いとノートは考えていた。
なぜならノートはアラクネやラミアの持っている能力に関して詳しく把握できているからだ。
ノートは本召喚として死霊を召喚する際に、その候補の死霊の能力を閲覧できる。鑑定士の能力を併用すればその死霊が持っているポテンシャルまで含めてより多くの能力を閲覧することができるのだ。
実は死霊術師にはこのような裏技的な活かし方も有るのだ。
その系列の死霊が召喚候補にいればその死霊に関する詳しい情報を閲覧でき、その情報や持っている能力から所持している能力の傾向を分析することもできてしまう。
そしてノートはアテナというアラクネ系列の死霊と、召喚して死んだっきり再召喚はしていないがラミア系列の本召喚の死霊がいる。
故にノートはアラクネとラミアの能力に関しては割と細かく把握しているのだが、彼女たちの能力から予測するに超広範囲に及ぶ状態異常を発生させるようなものを持っている節はない。
ではそのボス格のような存在ならそのような能力をもっているのでは?と考えても、何をどう強引に解釈してもその能力の派生元になりそうなものも見当たらない。
という事はフィールドに基づいた状態異常の可能性が高いのだが、自然現象としてあのようなことになるとは思えないし、それにこのエリアだけ霧が深い理由もよくわからない。
なにか厄介なギミックがあるような気がしながらも、ノート達は侵攻を続けるのだった。
(´・ω・`)鶏が先か卵が先か(ちょっと意味違うけど)




