No.97 瞋恚に蝕まれし女王と孤独な亡霊~②
(´・ω・`)みにまる春のゲリラ祭り
怒りに吼える女王個体と対峙するノート。空間がビリビリと震え蟻どもが吹き飛ばされてもノートは顔色一つ変えない。
「(現実では河川敷にいる蛇にさえ多少は驚くってのに、ゲームになったとたんに怖くなくなるから不思議なもんだよな)」
それがゲームの中にいる架空の存在であると知っていても、魔物と対峙した時に人は恐怖心を感じる。生物として自分より巨大な物を恐れるのは至極当然であり、その恐怖心に耐えられない者も一定数存在する。
ましてやALLFOは第七世代型のVR機器のゲームであり、従来のゲームとは段違いのリアリティを持つ。ネオンが序盤はゴブリンにさえ怯えていたように、怖いものは怖い。しかしノートの頭は冴えわたり微塵も揺らぐことはない。
「(さぁ、殺し合おうぜ、女王様)」
今度はゴーストタイプの死霊を数体召喚。反船にてボスとして出現した不浄ナル巨賢梟系列の死霊であり、この梟型ゴーストは魔法を得意とする。
ノートの指示で女王個体の頭上を旋回しつつ、その頭部へと魔法で爆撃を行う梟ゴースト。
女王はそこから逃げまどうように『這いずり』を開始。チビ蟻どもを轢き殺して行くが空を飛ぶ梟ゴーストには関係なく、一方的に執拗に頭部への魔法爆撃を繰り返す。
「(物理よりは、多少は魔法系の攻撃の方が効きやすいか?)」
チビ蟻どもを多数屠りながら少しして動きを止める女王個体。
『這いずり』が終わったということは7段階の攻撃が一周したということ。つまり次の攻撃は―――
「(『咆哮』。それがわかってるのなら対処はしやすい)」
梟ゴーストの召喚取り消しからのクリーチャー型の人面芋虫を召喚。
この死霊は腐った森に生息するクリーチャーの1種で、その専門はカウンター。それもメギドのような与えられたダメージを返すようなカウンターではなく、反射系のカウンターだ。
特に物理属性のカウンターに秀でており、ノートはそいつらを数体女王個体を取り囲むように召喚すると、咆哮モーションに入るのを確認しつつカウンター指示。
半透明の紫色がかった障壁が展開されると同時に女王が咆哮し、その衝撃で障壁は砕け散り人面芋虫どもも吹き飛ばされて消滅する。
しかし女王個体も無傷ではない。自分の強烈な咆哮が自分の頭部に反射しその巨体をのけぞらせた。
「(はいOK、もういっちょう!)」
そして流れるようにメギド系列の死霊を召喚し頭部への攻撃。続けて女王個体の脚部の周りに死ぬことで周囲にダメージをまき散らすタイプの死霊を多数召喚。
頭部への強烈な衝撃により再びダウンがはいった女王個体は復帰すると同時に2段階目の攻撃パターンである『地団駄』を行使。その地団駄によってノートの召喚した死霊どもはあっさりと殺されるが、それにより発生するダメージがジリジリと女王個体を蝕む。
これにより『地団駄』が本来より短時間で終わり、その隙にチビ蟻どもが群がってそのダメージを受けた脚部に食らいつく。
だが連続した確かなダメージにより女王個体はようやく真っ先に叩き潰すべき相手を認識したのだろう。チビ蟻どもを振り落とすことなく、その目でノートを睨みつけていた。
「(賢いなこの魔物)」
スーッと息を吸い込むモーションに入る女王個体。『地団駄』の後には再度『咆哮』するのが女王個体の攻撃パターンだ。
「(…………ん?蟻って口呼吸じゃないよな?)」
ここでノートは女王個体の行動に微かな疑問を抱く。
ノートが見る限り女王個体はその大きな口を開けて息を吸い込んでいる。しかし蟻などの昆虫は口で呼吸しない。本来は体の側面に気門と呼ばれる穴がありそこから呼吸しているのだ。
ではどうやって口から空気を吸いこんでいるのか。ゲームの世界の生物にそんな疑問を呈するのは野暮だろうか?
「(まぁ今はどうでいいか)」
息を大きく吸い込んだ女王個体は依然としてノートを見つめている。今までとは違う行動。微かな違和感。ノートは嫌な予感がしてすかさず自分と女王個体の射線を遮るように斜めに座標を指定して人面芋虫を7体召喚。即座に障壁の展開を指示。障壁が展開したと同時に放たれる女王個体の咆哮。その咆哮は今までの拡散型とは違い、確かに指向性を持った攻撃だった。
1匹、2匹、3匹と一瞬で貫かれ、7匹目迄屠ってなおその余波でノートは天井に叩きつけられそうになる。無論、指向性のある強力な攻撃を反射されたことで女王個体もダメージを受けているが、先ほどと違いダウンすることなく相変わらずノートを見つめていた。
「(嘘だろお前、まだ攻撃パターンあったのかよ)」
『KYURRRRRR…………』
もし今射線を遮るように人面芋虫を召喚しておかなかったら、間違いなくノートに衝撃波が襲い掛かり天井に強く叩きつけられて甚大なダメージを受けていただろう。ノートはその光景を想像してゾッとする。
「(てかヘイトが完全にこっちに向いちまったし、【激怒】の状態異常で怯みを回避してるのか。厄介だな)」
攻撃パターンの変化。対象が一人であるが故の狙い撃ち。4段階目の次の攻撃は【特殊攻撃】。4パターンあるうちのどれか一つを放ってくる。予備動作が長い攻撃なら問題ないが、短い場合は即座に召喚を行わないと間に合わない。
「(しかし俺だけを狙い撃ちしたければ…………)」
『咆哮』を終えた女王個体は素早く態勢を整える。だがそれはフェイク。頭が青く発光するのをノートは見逃さない。
「予想通りだ!!」
頭が発光するのは【特殊攻撃】の1つ、『結晶霰』の前兆。これは狙いを定めて対象に結晶の霰を降らせる“魔法”だ。
ノートは自分の真後ろにタナトス系列のスケルトンメイジタイプの死霊を召喚。“自分に向けて”爆風系の魔法を放つように指示。すぐさま発動した魔法の爆風に吹っ飛ばされてノートは女王個体の頭上まで素早く移動する。
そんなノートに対して【結晶霰】の照準を示す魔法陣はノートの上に追尾してくるがそれで構わない。
強く発光する魔法陣。自分の頭上に防御特化の死霊を召喚するノート。そんなノートに向けて大量の結晶の霰が降り注ぐが、死霊がそれを肩代わりをし攻撃が終わると同時に消滅した。
防御特化、特に守護戦士タイプ且つゾンビタイプの死霊は非常にしぶとく、ダメージ量の多い攻撃でも耐えうる。
自分の命と引き換えにその攻撃だけはすべて耐えきる守護戦士のスキル。それがゾンビの死後も行使中の行動が継続される性質と噛み合うことによって使い捨ての盾となる。
もちろん、射線上にいた女王個体自身にもその霰は降り注ぎ、その体にダメージを与える。女王個体は自分にダメージが入るとしてもノートの撃破を優先したのだろうが、ノートは死霊の仕様を利用することによりそのダメージを回避すると同時に女王個体にダメージを与えることに成功した。
人形兵器との戦いと同様に、自分よりはるか格上の相手にダメージを与えるには工夫が必要だ。同じランクの攻撃でないと有効打にならないのならば、そいつ自身の攻撃を利用すればいい。ノートはその理念に基づき的確にカウンターを行っていく。
今までと打って変わった戦い方。しかしこれもまた召喚術師の戦闘方法、むしろ死霊術師としては“正攻法の部類に入る”。
召喚術師というのは特殊な生命体を召喚し使役する職業だ。しかしオンラインゲームでは結構メジャーな職業でありながら、ALLFOに於いてサモナー系の職業は最初から選ぶことはできない。
単純な話、初期職業として選択させるには扱いが難しいというのもあるし、強すぎるというのも理由にある。
微力であろうと数は確かな力だ。テイマーと差別化を行うためにサモナー系の職業を確立しようとするとサモナーの手札は自然と増える。ただし、大量の手札で殴るだけとなってしまわないようにサモナー系の職業には本召喚と簡易召喚という二つの召喚技能が存在する。それはノートの死霊術師も同様だ。
それをリソースの割き方でテイマーと差別化するならば、テイマーが本召喚10割のところを本召喚6割簡易召喚4割くらいの比率でリソースを割いているのがサモナー系の職業だ。
このようにすることで豊富な手札で殴りすぎることを抑え、尚且つお気に入りの子を作りやすくして乱用や粗雑に扱うことを防げる。
だがしかし、サモナー系の職業でありながら死霊術師は例外の中の1つだ。実は死霊術師は普通のサモナー系の職業に対して簡易召喚の方に多くのリソースを割いている。数値化するなら、3:7くらいだろう(ノートはネクロノミコンブーストで5:5くらい)。
そう、死霊は成長性が低いので本来本召喚にはあまり向いておらず、使い捨てしやすいことから簡易召喚の方が向いているのだ。つまりノートの『本召喚を戦闘用として多く召喚せず、簡易召喚で戦う』というプレイスタイルは死霊術師としては至極まっとうな戦い方なのだ。
その使い捨て戦法の極致の1つが、ノートの今しがた行っている『高速召喚切り替え』。死霊を簡易召喚で次々と召喚しその場その場の事態を切り抜けたら即座に放棄する。死霊は基本的に普通の召喚獣などに比べて好感度の変異も微弱であり無茶な命令であろうと遂行しやすい。
もともと召喚した存在にほとんど愛着などわかないような連中が行き着く先が死霊術師という職業だ。死霊と心かわす必要など皆無。ただひたすらに生者に仇なすのが死霊であり、死霊術師だ。
その代わり、死霊術師は少々ペナルティも抱えている。それが継続召喚のMP消費の多さだ。
死霊術師の簡易召喚は同ランクのサモナー系の職業と比較すると圧倒的に強い。しかしそれを使って圧倒的物量でただ押し潰すだけの戦い方をさせないために、継続して召喚し続けるためには召喚の際に消費するMPとは別途でMPを消費することとなる。
これにより脳死物量戦闘を行うことができず、死霊術師はMPの残量を常に気に掛ける必要がでてくる。
斯くいうノートも常にMP残量は気にかけており、その運用にも悩んでいる。
しかしこれが使い捨てとなると状況が一変する。そう、MPの消費コストが召喚時のみにほとんど絞られるのだ。これによりMP残量管理がかなり楽になるだけなく、悪戯にMPを消費することなくなるので死霊術師は長く戦い続けることができる。
もちろんいうほど簡単なことではない。どんな時にどんな死霊を使えるか覚えておく必要があるし、ソロであればなおさらいちいち召喚コストを確認している暇がなくなる。
だが、それを使いこなすだけの技量を持つ者が死霊術師として戦えばその脅威度は一気に跳ね上がる。
あらゆる状況に適応し、近距離から遠距離、攻撃から援護、妨害、防御までこなすのだ。敵からみたら悪夢のような存在だろう。
この戦い方をノートが普段しないのは、単純にそこまで無理しなくても周りが強いというのもあるし、魂のストック数や本召喚へ割くリソースを考えた結果、そこまでうまみが無いことが分かっているからだ。特にノートは通常の死霊術師に比べて本召喚の死霊も性能が高い。ならば魂を取っておくほうが賢いというものだ。
ただし、今は以前と比べて膨大な魂のストックがあり、本召喚の死霊がほとんどすべて第二段階まで進化したことでレパートリーが増えて有用な死霊の数も多くなった。それによりこんな無茶な戦い方をしているのだ。
女王個体に対し的確にカウンターをし続け戦うノート。鉄壁、不落要塞のような堅さを誇った女王個体にも次第に目に見えてダメージが入るようになる。戦闘開始から40分、チビ蟻どもがようやく目減りし始めたころ、遂に状況が大きく動いた。
(´・ω・`)急募。ボス戦終了後に掲示板回があるのでPLネームを募集します。締め切りは2021/3/31まで
(´・ω・`)一人ひとつは採用したいです
(´・ω・`)注意ですが、PLネームを考えてくださる方は、主任ネタはメタ的な意味で、既存のキャラは著作権的な意味合いで採用し辛いことをご了承ください
(´・ω・`)使いきれなかったPLネームはまた別の機会に利用させていただきます
(´・ω・`)よろしければご協力のほどよろしくお願いいたします。
※注意点として、PLの性格はこちらである程度勝手に決めさせていただくこともご了承ください。自分のユーザーネームをそのまま応募する場合は特にお気を付けください。
※早かった順にどんどん採用していきますので遅かった方は別の機会に使わせていただくことをご承知ください。




