No.88 ノート探検隊~秘境・深霊禁山の真実を暴け!~③
(´・ω・`)おはようゲリラ
「うわぉ、ここも凄いな」
「だろ?」
そこは結晶群に浸食されたような狭めの洞窟。屈まないといけないほど狭くはないが、天井からも結晶が突き出ているせいで心なしか身を屈めてしまうので更に天井が低く、狭く感じるのだ。
品種改良されすぎて懐中電灯ばりに光る苔のランプを取り出し、ノート一行は洞窟を進んでいく。
結構蛇行していたが、その道を抜けた先は一気に開けた空間になっていた。その代わり、そこには先客もいた。
それはまるで巨大なダイヤモンドから削りだして作り上げたような1.2m大のヘラクレスオオカブト。天上からポタポタと垂れる水滴が溜まった水たまりから謎の液体を啜っていた。
そいつは自分のテリトリーへの侵入者を察知し、槍のような恐ろしく鋭利な角をノート達の方へ向ける。
結晶ヘラクレスオオカブトが攻撃体勢に移るより早く攻撃を開始したのは、スピリタスとトン2。2人は示し合わせた様に同時に槍を投擲。槍は風を切りヘラクレスオオカブトの顔をしっかりと捉える。だが、進化したゴヴニュが丹精込めて鍛えた槍ですらその装甲に弾かれた。
「うわ~かったいね~……」
「人形兵器並みに硬ぇんじゃねぇかこれ?」
ただ、装甲に弾かれてもノーダメージとはいかなかったらしい。少しのぞけって攻撃に移るのが一拍遅れた。
しかし攻撃自体が完全に中断されたわけではない。飛び立つためかヘラクレスオオカブトは身を少し屈める。
その時、この暗がりの中でノートがその後ろ脚をハッキリと見ることができたのは非常にラッキーだった。
「全員散開!!」
洞窟に響き渡るノートの鋭い声。ユリン達はその声に条件反射で飛びのき、案の定反応が遅れたネオンはノートが突き飛ばしてフォローする。かなり手荒だったが、それがネオンを救った。
キラッと光を反射する影がネオンのいた場所を通過し、そのすぐ後には水晶が大きく砕ける音が響き渡る。
なぜノートが警告を出したのか。それは結晶の壁に頭から突き刺さりヘラクレスオオカブトがこちらに背を向けていることでユリン達にもわかった。
この狭い空間では飛ぶ能力がいらなかったのだろう。本来は羽のある背中はガッチリと一つの装甲に変化している。その代わり、一番後ろの足がバッタのように発達していたのだ。
ノートにはその足が弓を引き絞るようにグググっと折りたたまれるのが突進の瞬間に見えていたのだ。
「だ、大丈夫かネオン?頭打ってないよな?」
「ひゃ、ふぁいッ!」
咄嗟に結構な勢いで突き飛ばしたのでノートは慌ててネオンを心配するが、ノートに覆いかぶさられるような状態になったネオンは別の意味で大丈夫じゃなかった。
ノートはサッと立ち上がり周囲をサッと確認。やるべきことを秒で考える。
「よし、試してみるか。メギド、〔コロージョンアーマー〕使って攻撃」
ノートが一番最初に動かしたのはメギド。ヘラクレスオオカブトは自分の速度のせいで壁に刺さりっぱなし、なんてギャグマンガの様なこともなく即座に体勢を立て直し、一方でメギドは進化したことで解放されたスキルを使用。
メギドが手に持つハルバードが怪しく発光。紫色のヘドロが混ざった様な黒い光がメギドの武器から体までを覆う。
『GRRRRRRRRRRRAAA!!』
続けてヘイトを集中させるスキルを発動。ヘラクレスオオカブトの標的は完全にメギドに。
メギドが走り出し更に攻撃スキルを発動する一方で、ヘラクレスオオカブトも足に力を籠める。
振りかぶられる狂気纏うメギドのハルバード、引き絞られるヘラクレスの両脚。どちらもノートにはブレて見えるほどのスピードだったが、お互いの姿が交差した次の瞬間には硬い金属同士がぶつかるけたたましい音が響き、続けて石同士の衝突音がする。
勝利したのは今も吼えているメギド。ヘラクレスオオカブトがメギドを貫くよりも速く、その横っ面をメギドのハルバードが捕らえたのだ。
壁に強く打ち付けられ、ヘラクレスはひっくり返ってもがいている。尋常ではない硬さらしくハルバードで斬られても壁にぶつかってもその身体には微かにヒビが入る程度だ。
だが、それだけで十分だった。ヘラクレスはメギドに触れてはならなかったのだ。
メギドの新しいスキル〔コロージョンアーマー〕。これは触れた物を否応無しに腐食させる恐ろしいスキルであり、耐性が無ければその身をどんどん侵されていく。
ヘラクレスのハルバードが触れたところのはメギドに纏わりつく紫色のヘドロの様な黒い光が付着し、その身体からは煙が上がっていた。
コロージョンアーマーによる攻撃は相手の部位が破壊されているほど効果を発揮する。限定的ではあるが、先程の攻撃でヘラクレスの自慢の甲殻にはヒビが入っておりその隙間からより凶悪にスキルは効果を発揮する。
ここで普通の悪役ならば、ざまあ見ろとヘラクレスが苦しむ姿を眺めていただろう。だが相手はメギドだった。
メギドは跳躍するとハルバードを大きく振りかぶり、ヘラクレスが体勢を立て直すよりも速くそのガラ空きの腹部にスキルを併用しつつ振り下ろす。
バキィ!!と思わず耳を塞ぎたくなる破壊音。弱点の腹部への強烈な一撃により致命的なヒビがその身に走る。
だが、ヘラクレスも負けてはいなかった。その目に瞋恚の光を宿し一矢報いてやろうと凶悪なスキルを発動しようとする。
そのスキルは自爆。自らの硬い身体を爆散させて周囲に欠片を撒き散らす凶悪な攻撃だ。
しかしそれは間に合わない。ハルバードによって切り裂かれた腹に、更に情け容赦なくメギドの槍が刺しこまれハルバードと槍をググググッと左右へ引っ張る。
メキメキと音を立てて壊れていくヘラクレスの身体。ブチリと何かの切れる音。ヘラクレスが最後の抵抗するよりも早くその身は上と下で強引に分たれてポリゴン片となった。
『Grrrrrrrrrrooooooo!!!』
メギドは敵を討ち果たし歓喜の咆哮を上げるが、ノートはあまりのメギドのパワーにポカーンとしてしまった。
「ウッソだろおい。進化するとここまで変わるのか、戦闘型は」
今しがたメギドが惨殺した結晶状ヘラクレスはノートの鑑定を一部弾いているので明らかに格上だ。その上物理攻撃に対して非常に強いことは見てとれた。
それをスキルを使っていたと言えほぼタイマンで撃破。しかも相手にとっては有利な物理攻撃で屠って見せたのだ。
変化はそれだけに及ばない。先程ノートが出した指示は〔コロージョンアーマー〕を使用しての攻撃だけだ。
その後メギドが使用したスキルはノートは指示していないのでメギド自身が発動させた物で間違いない。しかし選ばれたスキルはノートから見てもどれも無駄がなく洗練されていた。そう、進化した事でメギドの動きが、思考レベルが上昇している様に見えるのだ。
メギドは今までヌコォやノートの指示を受けて数々の戦いを生き抜いてきた。その戦闘データは少しずつメギドの中で蓄積されていた。それが進化を経て熟成され遂に開花したのだ。
ALLFOの成長はただ平等に与えられる物ではない。魔法一つとっても、火の魔法を鍛えれば更に強い火の魔法を習得できるし、一方で水の魔法を蔑ろにすれば幾ら強くなろうとも水の魔法は一向に育たない。
使った物ほど着実に成長するのだ。
使い魔や従魔、ノートの死霊の成長も原則は同じだ。しかしそこにプレイヤーと違って普段の動きに応じて思考ルーチンが強化される。
その点、メギドはほぼベストなレベルで運用されていた。周りにはデータとしては最高クラスの戦闘の天才共がいた。
そんなメギドが進化してそれまでの情報を元に思考ルーチンの強化が起きればどうなるのか。これがその答えだ。
無論、先程の攻撃になんのデメリットも無いかと言われればNOとしか言えない。力と速度自慢の格上の敵を真っ向から吹き飛ばすには勿論カラクリが存在した。
それが〔コロージョンアーマー〕と復讐者の能力だ。
〔コロージョンアーマー〕はヘラクレスに的確なダメージを与えたが、あの時ダメージを受けていたのはヘラクレスだけでない。その凶悪な力はメギド自身をも蝕んでいた。
だがメギドはダメージを喰らうほど自身を強化できる。その潜在能力は研ぎ澄まされていく。更に相手が格上で有ればメギドは更なる潜在能力を引き出せる。
その状態でシールドバッシュ系のスキルを併用。斬撃よりも吹き飛ばすことを優先した攻撃を行うことで格上のヘラクレスオオカブトを一方的に倒すことができたのだ。
しかしそんなメギドのダメージも、グレゴリが回復魔法を使えば癒せる程度だ。メギドよりも格段に賢いのか、ノートが指示を出さなくてもグレゴリは即座にメギドのダメージを回復してくれた。
そんなメギドとグレゴリは褒めて欲しそうにノートに詰め寄ってきた。見た目は明らかに邪神の尖兵達だがノートからすれば優秀な仲間に違いない。
メギドには虫の唐揚げを、グレゴリにはジュース(劇薬)をご褒美として渡して褒める。
「お前たち、期待を遥かに上回るほど良くできてるな。ただメギドの〔コロージョンアーマー〕の自傷ダメージが予想より大きいからもう少し格上相手に使う事にしよう。
グレゴリに関しては索敵、探知優先だな。回復に関しては今回はネオンに任せることにする」
ノートが新しく指示を与えるとわかってるんだが分かってないんだがメギドは『Grrrr』と短く唸り、グレゴリは心外そうに目をパチパチする。
『我、回復、不要、?〔悲しい〕、〔疑問〕』
グレゴリからくるメッセージ。そこには文章と共に涙を流すスタンプと顎に手をあてて何かを考える人のスタンプが押されていた。
「あー、お前の回復はとっても有難いよ。ただ今回のステージはネオンが攻撃に回ることは難しそうだし、MP残量やMP回復速度という点から見てもこういう落ち着いて回復できる時はネオンに任せたほうが確実だ。だから今回は索敵を優先してほしいというわけだ」
『了解、〔オッケー〕』
ノートが視線を送れば、先程までまだドギマギしていたネオンも困った様な顔で微笑みコクリと頷く。
『祭り拍子』の単純最大火力は満場一致でネオンだ。攻撃力も範囲も桁違いだ。なんせ普通の魔法使いの切り札級の更に数段階上の攻撃がデフォルト攻撃なのだから。
しかしそれがこの洞窟の様な狭い空間では使い物にならない。下手にネオンが攻撃魔法を使えば洞窟は崩落してもおかしく無いだろう。
勿論、ネオンの魔法の手持ちにも範囲を絞った魔法もなくは無いのだが普段あまり使わないせいで熟練度が全く溜まっておらず使いこなせるかは微妙なラインだった。
ネオン自身も自分の戦闘センスの限界は把握しているのでぶっつけ本番でチャレンジしようなどとは露ほども思わない。
なのでノートに回復に専念する様に暗に頼まれてもすんなりと受け入れていた。
「しかし困ったな。最大火力を封じられた上でここの探索をしなきゃならないわけだ。その上、今はゴヴニュに預けてるから装備は型落ちときてる。どうする?引き返すか?」
ノートは一応皆に問いかけるが、その解答は皆一様だった。
「いこうよノート兄!超楽しそうじゃん!」
「全てを調べなくても費やしたリソース分の資源の回収くらいは行うべき」
「せっかく面白くなったところだぜ!引き返してどうすんだよ!」
「スピちゃんに同感だね〜。今はガッツリ暴れたい気分だよ〜」
「私も縛りプレイは嫌いじゃ無いわ。ランクが上がって習得したスキルも試してみたいし」
「私も……探索、して、みたいです」
先程のヘラクレスオオカブトを見ても誰一人として物怖じしていない。それどころか先へ挑もうとしている。
最高のパーティーだ。
ノートはニヤリと笑い指示を出す。
「そういう事なら問題ない。いくぞ!」
そしてノート達は遂に深霊禁山の隠しエリアへと足を踏み出した。
(´・ω・`)タイトル変えました




