No.1 神ゲー()の始まり
誤字脱字が多くてすみません。
ブクマ・感想・レビュー・評価点をいただけると非常にうれしいです。
先に言っておきますが、主人公たちは結構ゲスです
毎度前振り長くてすみません
(´・ω・`)説明が長いので序盤は読み飛ばしてもOKです
※感想クレクレ妖怪なのでリアタイじゃなくても感想は大歓迎!質問があればできるだけお答えします
※誤字脱字報告は明らかな誤りだった時のみでお願いします
アルルフルードオデッセイ
それは第7世代のVR機器対応初のVRMMORPG。
21世紀前半の第1世代型は視覚や聴覚の問題をクリアし、ARの技術と複合させ全身に感応機器を対応することでゲームの中の挙動をより自由な物とした。
21世紀中期に誕生した第2世代型は、実際に身体を動かさずとも脳波のみでゲーム内の自由な挙動を可能にし、より精細かつ立体的な視覚・聴覚効果を可能にした。また触覚を誤認させることで実際に触れているような感覚を再現することに成功した。
しかしながら、ここからは途轍もない変化はなかった。その後に発表された第3世代・第4世代は前2世代ほどのインパクトはなく、実質的には企業が宣言しただけではないかと批判されるほどだった。
そんなVRの停滞期と言われた時代を経た21世紀後半、満を持して発表された第5世代は世界を熱狂させた。
夢物語かつ創作の域を出なかった完全没入型のVR機器が完成したのだ。つまり、人類は人間という種の五感全てをコントロールすることに成功したのである。
しかし世界的にもあまりに影響が大きい技術革新だったので、当然ながら一般に使用は許可されず多くの不満が世界的に生まれた。
そんな不満を受けて世界中の技術者達がその全てを注ぎ込んで作り上げたのが第6世代機器である。VRとしての性能は少々上昇した程度だが、最も重要なのはそのセキュリティレベル。実際の動物実験で、VR技術が生物を狂わせるだけの性能がある(設定を弄り強烈な痛みを与えるなど)―――――――つまり下手に誰かが他人のVR機器に干渉すれば殺害さえできることが判明しており、第6世代はその後顧の憂いを完全に断つ事に成功した。
もはや技術者を拷問しようと何しようと関係ない。
第6世代型用に開発されたAIには、単純な情報戦では人間では勝利することは不可能。厳重なセキュリティの構築と宇宙科学の応用による肉体保全はVRという夢の技術を一般市民でも扱える次元まで到達させた―――――筈が、いかんせんその技術力などを加味すると一般市民に手が届く値段ではなくなった。
21世紀初期を基準にわかりやすく例えるなら、プライベート用のジェット機を所有するレベル。世界の富豪達や、世界一の某夢の国、政令指定都市が試験的に、という形でしか広まらず、悔し涙を飲むしか無かった。
そして22世紀に、漸く人類の悲願は達成された。第7世代機器の登場である。
VR機器が一般市民でも購入可能な領域に漸く到達したのだ。そこには資源の再利用やエネルギー資源の利用に関する革命的な技術革新があったことも留意すべきだが、大正期における白黒テレビ程度の扱いにはなったのだ。
つまりは高額、だが先進国における各家庭の第7世代VR機器の所有率は80%を突破。2、3つ持つ家も特段珍しくは無かった。
だがこれだけの高度な機器に対応するゲーム、市場が納得するゲームの開発は非常に困難だった。21世紀初期にはスマートフォンが世界的に広まり無料の追加コンテンツが当たり前のような風潮があったが、それも100年経てば常識外れ。
ことVRに関しては追加コンテンツを気軽に導入できるわけもなく、それに対応できるシステムを作り上げるのには今までのゲーム制作では考えられないほどの苦労(それと膨大なまでの開発費用)があった。
そしてもはや国家レベルの熾烈な争いを制し、世界に勝鬨の咆哮を轟かせたのは日中米にまたがる世界的企業『Golden Pear』。第7世代VR機器を開発したのもこの会社なので出来レースな部分もあったが、それでも凄いことに変わりはない。
第7世代VR機器初対応のMMORPG『ALLFO』。
中世から近世の西洋を基本とした古き良きファンタジーな世界。22の言語に対応したリアルタイム翻訳機能は当然の如く、AIによる十億単位のNPCの制御、自動発生のクエストやイベント。電脳擬似空間の広さは初期の時点でユーラシア大陸に匹敵するという広大さ。
異常な自由度を実現したまさしくVRといえる世界を構築した。
当然の如く、開発の成功は世界に大きな衝撃を与え、販売は国単位の抽選となった。
22世紀には実際のところ“カセット”などないので売り切れという概念はないが、流石に世界規模で一斉にプレイヤーが生まれたら運営側の管理が追いつかない。AIの補助があろうとも、最終的にはまだ人間が管理しているのでこの点はどうしようもなかったのだ。
よって人数を分けての順次発売となり、特に第1期の当選結果はニュースでわざわざ報道するほど。
これにより幸運な2000万人のプレイヤーが第一期プレイヤーとして選ばれた。
と言っても国ごとにざっくりとサーバーは分かれており、また当選者の振り分けも開発に成功したアメリカ、日本、中国に大きく割り振られており、日本では50万人の枠が与えられていた。
日本に於けるレーティングはB+と言う今迄にない基準で、15歳未満はプレイ不可。若い世代では高校では学年に5人程度、大学では10人程度当選しているかいないか。
よって親しい知り合い同士で当選している確率など 異常なまでに低くなっている。
「…………筈だったが、当選したな」
『うん、ボクも当選した!やった!やったよ!これで一緒にプレイできるね!』
テンションが上がりすぎて逆に静かになるタイプの男の耳に聞こえるのは、自分とは打って変わってその感情を前面に出したハイテンションで甲高い声。完全に女の声にしか聞こえないが、その声の主は男である。
『しかもねぇ、当たったんだよ!初期限定特典!』
「はっ?マジで?」
『Golden Pear』社はプレミア感を出すために、初期生産の内たった1万人のみ初期段階で特殊な特典を贈呈すると公表していた。勿論、それであまりに差ができても白けるのでデメリットも多く、権利破棄も可能だが予告通りやはり強力には変わりはなかった。
「…………それで、何が貰えた?」
『んっとねぇ、固有種族【堕天使】だって。なんかねぇ、ヘイトが集まりやすいとか色々な制限がかかりまくるけど超強いよ!あっ、でも街とかの主要な場所に基本的に出入りできないらしいし、兄ぃの足引っ張りそうだから…………いらないや』
途中までは我が世の春といわんばかりに、あるいは子犬が嬉し気に跳ねるようなテンションで彼は説明をしていたが、その途中でだんだんと冷静さを取り戻していき徐々に声が萎んでいく。だがそこに待ったがかかった。
「いや、実はだな、俺も黙ってたんだが初期限定特典が当選してるんだよ」
『えっ!?えええ!?マジぃ!?』
「そうそう。だけどな…………【禁忌書杖・ネクロノミコン】っつう耐久値無限・強化可能値無限なアホ強力な武器なんだが…………その、デメリットが凄まじいんだ。装備しなくても所持してるだけでヘイト値が超上昇して街などはほぼ出入りできず、しかも破棄することも譲渡することもできない、完全に呪いの武器でさ。お前の性格的に、『そんなの捨てちゃダメだよ!ボクも一緒にいるから大丈夫!』なんて自分を顧みずに言いそうだから黙ってたんだが…………もしかして、俺たちの特典相性が良さげ?」
『え、え、あ、えええ、ええっと……本当に?』
「マジで。完全悪役プレイ出来そうな能力で器用貧乏になりがちだけど、滅茶苦茶強いと思うぞ。ま、もし2人して特典選べば2人ぼっち確定だけ『いいよ、それでいい!むしろ2人きりがいい!!もう特典とった!』っておい!?早すぎるだろ。…………ま、いっか。ダメなら買い直せばいいし。よし俺も取ったぞ」
一気にテンションが元通りになると同時に、彼はすぐさま初期限定特典の取得を報告する。相変わらず少し強引な弟分に、男は思わず苦笑するのだった。
◆
「(何はともあれキャラメイクか…………)」
ログインしてみるとそこは真っ暗な空間で、男の目の前にはその男を鏡に映したような姿形そっくりのアバターが宙に浮いていた。もちろん全裸ではない。最低限真っ白い麻の服のようなものを着させられている。しかしそれが見方によっては死に装束にも見える。
「(自分の死体を見てるようで気持ち悪いなぁ…………。あれ?この『???』項目は…………あ、【禁忌書杖・ネクロノミコン】を正式に装備しないと選択できないのね)」
兄ぃと呼ばれた彼が目の前に表示された仮想画面を操作すると、画面が真っ赤に点滅し『本当に装備しますか?』と3回も繰り返し、まるでホラーゲームで致命的選択をしようとする前の如く念を押すように問われる。だが弟分は絶対に初期限定特典を迷いなく取得していると確信していた彼は、その警告を無視して迷いなくその呪われた武器を装備した。
それと同時にアバターの正面に現れたのは、装丁から全てに至るまで漆黒で厚さ50㎝ほどのどこか不気味な書籍。装丁の皮は一体なんの皮を使っているのか、絶叫する人間が何千と浮き出て見える悍ましい見た目だ。もしリアルでみたら即刻SAN値チェックものであるのは間違いない。
虚空に現れたその本は、そのままアバターの中に勝手にずぶずぶと入っていく。すると、ただ浮いていたアバターがドクンっと擬音が付きそうな不気味な動きをする。それと同時にアバターの腕に黒い血管が浮き上がり、指先から心臓にかけて地獄から這い出ようとする亡者の刺青がびっしりと刻まれる。
変化はそれだけにとどまらない。手の平には不気味な幾何学模様、その幾何学模様の真ん中には杖と髑髏を模った様な奇妙な記号が現れたのだ。厨二病全開でもここまでいかないだろう…………と男は顔をしかめ、これをデザインした人はかなり病んでるだろうなぁ、と根拠のない確信を抱く。
そんな男の推察をよそに『【禁忌書杖・ネクロノミコン】を装備しました』という通知。その後に選択できなかった物が選択できるようになった。
「(なになに…………“怨醒の瞳”は……基本カラーと別に戦闘時だけ目の白い部分が黒くなるのか。完全に厨二じゃねえか。うーん、ここは赤、いや白か……?)」
どうやらネクロノミコンを装備することで、目や髪の色などのカスタムパーツが色々と増えたようだ。男はそれらの限定パーツを使って色々試行錯誤してみたが、1番怖かったのは瞳の基本カラーが黒の時。それを適応すると真っ黒な瞳になって超絶ホラーなのだ。
「(どうせ悪役だし、悪役やるなら怖い方が雰囲気出ていいよな。リンもこういうホラー系が大好きだし)」
少々時間がかかったが、男は満足そうにできあがったホラーテイスト全開の自分のアバターを眺める。
髪……黒
目……怨醒の瞳/黒(戦闘時強膜が黒に)
肌……狂踊血/白(戦闘時黒い血管が全身に浮き上がる)
(顔のパーツ変更上記以外無し)
アクセサリ……怨霊集舞(赤と黒の多数の怨霊のエフェクトが付く・オンオフ可能/ネクロノミコンによる特殊エフェクト)
VRは基本的に骨格(体型や顔のパーツの位置関係)は変更できないようにできている。理由としては現実世界での感覚が狂ってしまうから、とされている。だが声やパーツ自体はある程度いじることは可能なので身バレは少ないと公式でも保障されていた。
それでもある程度はリアルの外見に似通った部分はあるので見る人が見ればわからなくもない。しかしこの時代の人々はそういったことに対する忌避感は昔に比べて大きく減少していた。
もちろんインターネットが普及しだして100年前とは人々の感覚は大いに変遷しているというのも理由の一つである。しかしそれ以上に、22世紀のこの時世、AIを搭載したパトロールロボットが常に巡回する監視社会に犯罪を個人規模で起こせる者など存在しなくなった、という根本的な理由もあるが。
アバターの容姿が完成した後は当然次は“中身”の作成だ。
容姿はステータス決定後でも変更できるので、あまり迷わず約5分程度で終わったが、ステータスはその何倍も時間がかかった。だが最終的に納得のいくものができて、男は嬉しそうに頷く。
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名前:NOTO
種族:秘忌人(【ネクロノミコンによる固定】)
ランク:1
性質:極悪(【ネクロノミコンによる固定】)
正職業
❶死霊術師・特(【ネクロノミコンによる固定】):Ⅰ
❷魔法使い:Ⅰ
❸
副職業
❶鑑定士:I
HP:10/10
MP:10/10
筋力:Ⅰ
体力:Ⅰ
敏捷:Ⅰ
器用:Ⅰ
物耐:Ⅰ
魔耐:Ⅰ
精神:Ⅰ
称号
・【禁忌書杖・ネクロノミコン】所有者
・忌むべき者
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ALLFOでは、レベル制の亜種であるランク制が導入されており、下からI、H~C、B、A、Sの10段階評価。数値のみを突き詰めると初心者との開きができる配慮なのだとか。
評価が上昇せずとも条件を満たすことで新しいスキルや魔法の取得が可能であり、そこも初心者には嬉しい点だろう。
また、レベル制ではないので基本的にボーっと突っ立ってない限りどんな行動をしてもステータスは成長していく。
これは従来のゲームのようにいきなり数値が上がると身体がついていかないので、徐々に上げるために打ち出された策である。簡単に言えば、雑魚モンスターを一匹倒すだけでも能力は即座に上昇するのだ。(その分緩やかに上昇するので実感しにくいという弱点も抱えている。だがVRの世界で身体能力の向上を実感するほどに変化すると実生活に支障をきたしかねないのだ。このバランス調整は『Golden Pear』も非常に悩んだポイントである)。
問題となるのは性質―――――――性質は極善・善人・中立(白・青・無・橙・赤)・悪人・極悪の9つに分かれており、スタートは中立・無。ここからPLやNPCの救出や支援を率先して行うと青、続いて白と上昇していき、NPCの挙動が変化する。最初こそ些細な変化ではあるが、性質が善人になればほとんどのNPCは目に見えて協力的になる。ただし極善になるにはそれはもう聖人君子のようなプレイでもしない限りなれず、運営もただ一応作っておきました状態。だが極善状態になると特殊なイベントは起こし放題になると公式でも予告されていた。
逆にPLやNPCを害すると橙。殺害などをすれば赤。悪人まで達するには結構難しいが、なってしまえばほぼ全てのNPCが敵対的になる。ただ、かなり厳しい条件と対価を要求されるが特定のクエストをこなせば中立に戻れる救済措置があることも告知されている。
問題は極悪。ここまでくると友好的なNPCを見つけるのはほぼ不可能なまでに敵対される。加えて街の出入りは不可能になる。超高難度のクエストをソロでクリアしない限り悪人にすら戻れない至上最高級の外道である。
そして男、プレイヤーネーム『ノート』の性質はスタート時点から極悪なのである。
その代わりに魔法使いの上級職・死霊術師を最初から保持できている。
ノートはそれからいくつかの項目の設定をして、課金。初期装備を整える。
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【基本装備】
・禁忌書杖ネクロノミコン
・庶民の服
・呪われた深緑のローブ/古(物耐魔耐大上昇・武器破損率大上昇)
・襲縋の靴(移動速度上昇・ヘイト上昇)
【アクセサリー】
・呪いのロケット(自動HP回復・自動MP回復・性質下降大・武器耐久値減少)
【アイテム】
・テント
・寝袋
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本来ならば忌むべき呪いの効果の付いた装備だが、ネクロノミコンを持つノートにとっては関係ない。5000円も課金したが、ノートは満足だった。
そしてノートはついにキャラメイクを完了し、ALLFOの世界へと飛び立つためのボタンを押した。
Q:課金要素あるの?
A:あります。ただし課金厨最強にならないシビアな調整が施されています。加えて1か月で課金できる最大金額(PLの年齢で若干変化するがどんな条件でも最大5万円)なども設定されており、金をつぎ込んだもん勝ちというシステムにはなっていません。
どちらかといえば忙しい社会人のための措置で、使い魔の卵の羽化までの時間を短縮する、など時間短縮系の課金要素が多めです
Q:最初から課金できるの?差がつかない?
A:これは初期限定特典取得組のみの要素です。街に入れない鬼畜縛りなので取られた処置です。購入できるアイテムは普通にゲームを進めていればあまり時間がかからずにSHOPで買えるようになるので、買ったところで街に入れないのでそもそもSHOPが使えない初期特典組にしか大きなメリットにはなりません