プロローグ
ここはどこだなんだ。
まぶしい光が差し込んでくる。
ぼんやりとしか見えない俺の目に入るのは知らない天井だ。
喉が渇く。
水が欲しい。誰か水を.....。
声が聞こえてきた。泣き声だ。俺の仲間たちに泣き声をあげる奴などいないはずだが.....。
感覚が鈍くなっている。
俺はこんなところで倒れている場合ではないのだ。
仲間を救いに行かなければ.....。
そう思い力を入れておき上がろうとした。しかし、体は起き上がらない。
拘束されているのか、
情報が欲しい。叫ぼうとしても聞こえるのは泣き声だけだ。
だが、どうしてこんなことになった。
俺は敵に捕まったのか....。
まずい、どうにかして脱出せねば。
俺が居ないと軍を動かせる者が居なくなる。
この戦争負けるわけにはいかない。
敵に捕まったとするなら、ここは敵陣か。
いや、敵陣と仮定するならばこの天井は高すぎるし、何より綺麗だ。
急造の陣地と言うよりは、そこそこの地位を持つ者の屋敷の天井に近い。
白い天井には、いくつかの模様が彫刻されており、小さなシャンデリアのようなものまである。
綺麗だ。拷問部屋でもないだろう。
どこなのだろう、早く拘束を解かねば。
「あらあらまーたん、どうしたの?」
優しそうな女性の声が聞こえてきた。
声の主らしき女性が視界に入ってきた。
ぼんやりとしか見えない目でも分かる。美しい。
二十代前半のように見える美しい女性がこっちをのぞき込んでくる。
「ご飯かしら、泣いてるまーたんも可愛いわね。」
そういって視界の女性はくすっと笑う。
この女の人な感じだと、明らかに”まーたん”は俺のことだ。
俺の名前は”まーたん”じゃないんだけどな。
戸惑う俺はしゃべろうとするが、聞こえてきたのは
「あー、あーうー」
という声だった。
まさか、と固まる俺を抱き上げた美しい女性は、俺に乳をくれる。
反射的に飲み込んでしまうが、お腹が空いていたからか止まらない。
やがてお腹いっぱいになった俺は襲い来る眠気に負けて、意識を手放した。
すこしいい思いをしたのは内緒だ。