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将来3人家族になるラブ日常  作者: ネオ・ブリザード
二年生『4月~6月』編
13/13

第13話 バイオレンス新入生・鼓笛ちゃん

 

 それは春の陽気により、何時もの通学路が五分咲きの桜で彩られたある日の事でした……



 放課後、将来の夫は部室を開けるために、何時ものように職員室に足を運びます。



「失礼します」



 扉の前で挨拶した将来の夫は職員室に入って直ぐ左側、壁に取り付けてある小さな鍵保管庫に手をかけ、蓋を開けます。



「……あれ?」



 中を見た将来の夫は首を傾げました。何故なら、その保管庫にあるはずのものが無かったからです。

 将来の夫は、直ぐ近くにいた禿先生に尋ねます。


 ……因みに、将来の妻が書いた恋文を、クラス全員の前で読み上げたのは、この禿先生に他なりませんが、今はどうでも良いことです。



「すみません、先生」


「んー? どうしたー?」


「保管庫に、部室の鍵が入ってないみたいなんですが、先生は何か御存知ですか?」


「あー、何か元気な一年生が借りていったぞ」


「……は?」



 その話を聞いた将来の夫は禿先生にお礼を述べ、職員室を出ると、その足で部室に向かいます。

 そして部室の前に着くと、扉のガラス窓から慎重に中の様子を伺います。



「……やっぱり」



 そこには、ふたつの机を向かい合わせるように並べる鼓笛ちゃんの姿がありました。



「あ! バイオレンス先輩! お疲れ様ですにゃー!」



 将来の夫が扉を開けたのに気付き、鼓笛ちゃんは元気良く挨拶します。



「……何をしているの? 鼓笛ちゃん?」



 将来の夫は若干迷惑そうに話しかけると、鼓笛ちゃんは小走りでわざわざ将来の夫の側まで近付いて行き、こう答えました。



「何してるも何も、この鼓笛、新入部員として先輩方が楽しくいちゃつけ……じゃなかった。快適な空間で部活動出来るよう、机を準備していただけだにゃあ!」


「わあ、有り難迷惑だなあ」



 将来の夫は、ぽろりと本音を漏らしてしまいます。そして、立て続けにこんなことを言いました。



「まだ新入部員でもないのに」


「にゃにゃあー!?」



 泡を食いながら、将来の夫の胸元にしがみつく鼓笛ちゃん。その目には、涙がたまっていました。



「そ、それはどういうことかにゃー!?」


「だって鼓笛ちゃん、まだ入部届け出してないよね?」



 将来の夫の正論に、鼓笛ちゃんは胸ぐらを掴み身体を揺らしながら反論します。



「入部届けなら今出そうとした所だにゃあー! ちょっと順番が前後しただけじゃにゃあかにゃあー! バイオレンス先輩、頭が固すぎだにゃあー!!」


「わ……解った、解ったから。今面接してあげるから……」



 将来の夫は非常に冷静な口調でそう言うと、鼓笛ちゃんは暴れるのを止め、制服の左ポケットから入部届けを出します。



「くすん……」



 その時、鼓笛ちゃんの頬には何か伝うものがありました。が、将来の夫は特に気にする事なく入部届けを受け取ります。



「……えーと、なになに……」



 ゆっくりと入部届けに目を通す将来の夫。何かが気になったのか、ある所に目が止まります。



「えー、鼓笛さん」


「にゃ」



 将来の夫は、入部届けの表側を鼓笛ちゃんに向けると、氏名記入欄を指差して質問します。



「山下さんって、誰?」


「にゃにゃあー!?」



 流石の鼓笛ちゃんも、これには泣き出してしまいました。因みに『山下』というのは、鼓笛ちゃんの本名です。



「うにゃあー! バイオレンス先輩! 何でそんな酷い事いうんだにゃあ!? あんまりだにゃあー!?」



 激昂しながら将来の夫の胸ぐらを掴む鼓笛ちゃん。将来の夫の身体は、まるで波に煽られた船のように前に後ろに激しく揺さぶられます。



「……こ……鼓笛ちゃん……冗談……冗談だから……」



 将来の夫は、何とか鼓笛ちゃんの手を抑え胸元から離すと、お腹の辺りまでゆっくりと下ろします。そして、入部届けを制服のポケットにしまうと、鼓笛ちゃんの頭を優しく撫でました。



「鼓笛ちゃんの入部を歓迎します」


「にゃあ♪」



 笑顔になる鼓笛ちゃん。

 将来の夫は、そんな鼓笛ちゃんの脇を通り部屋の中に入ると、すぐに鼓笛ちゃんの方を振り向き、用意してくれたふたつの机に向かって腕を伸ばしました。



「帰宅部へようこそ、鼓笛ちゃん」


「これから、よろしくお願いしますにゃー♪」



 明るく返事をする鼓笛ちゃん。元気良く将来の夫の前を駆け抜けると、そのままふたつの机を素通りし、窓辺に向かって走って行きます。



「……鼓笛ちゃん?」



 鼓笛ちゃんは窓辺に到達すると窓枠に両手をつき、何を思ったのか右足も窓枠にかけ始めます。



「よいしょっ……と」



 そして左足に力を入れると、鼓笛ちゃんは一旦窓枠をまたぐ様に座り、その状態から軽やかに身体を外に出すと、地面に落下しないように両腕でしっかりと窓枠を掴みます。



「はー……♪ やっぱりここが一番落ち着くにゃあ♪」



 お家にいるような、柔和な表情になる鼓笛ちゃん。


 それを見た将来の夫は、伸ばした腕を思い出したかのように下ろすと、にこりと微笑み、鼓笛ちゃんに向かって歩き始めます。































 ………………それから二分ほど経った頃でしょうか……?


 開けっぱなしの扉の前に、将来の妻が姿を現します。






「え……? ふたりとも……何やってるの……?」







 将来の妻の目に飛び込んできたのは、とても穏やかな表情で鼓笛ちゃんを閉め出そうとする将来の夫と、それに必死に抵抗する鼓笛ちゃんの姿でした。



 ……次回の更新は未定です。

 こんなんで、ごめんなさい……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったですよ。次回の更新を楽しみにしてます。 [気になる点] 可愛い後輩を閉め出すなんてSだね! だが、それがいい!
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