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将来3人家族になるラブ日常  作者: ネオ・ブリザード
一年生『2月14日~3月30日』編
11/13

第11話 バイオレンス・ホワイトデー


 冬の間に降り積もった雪も、歩道の縁石等にぽつぽつと残る程度に無くなった、春のある日……


 具体的には、三月十四日のホワイトデーの事でした。



 放課後の部室では、将来の夫と将来の妻がチョコのお返しであるクッキーを、交換するところでした。



「……何か、変な感じね」



 将来の妻は、将来の夫の為に用意した手作りクッキーを、両手の平の上に乗せながらぽつりと口を開きます。



「そうかな? バレンタインの時、お互いにチョコを渡したんだから、別に変じゃないと思うけど」



 将来の夫は今日の為に用意した市販のクッキーを、将来の妻から見えないように、後ろで組んだ手の中に隠し持っていました。



「そりゃ、あなたはそうでしょうとも……」



 将来の夫の何時もの態度に、将来の妻は溜め息をつきながら手作りクッキーを左手で掴みます。



「ほら、あなたの為にわざわざ作ったんだから、ちゃんと味わいなさいよ!」



 そして頬を赤く染めながら、そのまま将来の夫の胸元に押し付けました。将来の妻の素直な気持ちと、手作りクッキーを受け取った将来の夫は、素直にお礼の言葉を述べると余計な事を口にします。



「惚れ薬なんか入ってないよね?」



 それを聞いた将来の妻は、手作りクッキーを取り返そうと反射的に右手が動いてしまいます。



「そんなこと言うなら返しなさいよ!」



 ですが将来の夫は意地悪するように、将来の妻の手の届かない高さまで手作りクッキーを上げてしまいます。



「えー? 君がくれたんじゃないかー」



 将来の夫の胸元に寄りかかり、背伸びをしながら懸命に手作りクッキーに手を伸ばす将来の妻。将来の夫は、そんな将来の妻をからかうように、身体を右へ左へと捻り、将来の妻の追撃をかわします。



 それでも手作りクッキーを取り返そうとする将来の妻。頑張るあまり、爪先立ちしたその足をもつれさせてしまいます。



「きゃあ!?」

「わっ!!」



 そして、そのまま将来の夫を押し倒すように床に倒れこんでしまいまいました。



「……い、たくない……」

「……い、痛たた……」



 転ぶ際、将来の妻を護るように抱きしめながら倒れた将来の夫。身体中に痛みが走ります。それを知った将来の妻は、すぐに四つん這いになる様に身体を退けます。



「ご、ご免なさい! 大丈夫!?」



 心配そうに声をかける将来の妻に、将来の夫はこう返します。



「……もうちょっと、乗っててくれてても良かったかな……?」



 その言葉を聞いた瞬間、将来の夫の鳩尾に将来の妻の右拳がめり込みます。呻き声を上げる将来の夫。



「……な、何するの……?」


「……変なこと言うからでしょ……」



 将来の妻はそう言うと、頬を赤らめながら立ち上がり、将来の夫が床に落とした市販のクッキーを拾います。



「……ねぇ。このクッキー、何でわざわざ背中に隠し持っていたの? 私、一度見てるじゃない」



 その質問に、将来の夫は床に倒れたままこう言いました。



「……秘密の贈り物?」


「……何それ、意味わからない」



 将来の妻は、将来の夫の答えに少し呆れながら向かい合わせた机に歩いていくと、とても嬉しそうに鞄の中に貰ったクッキーをしまいます。そして、将来の夫の方を振り向いてお礼を口にしました。



 ……その時です。部室の扉から、将来の夫を呼ぶ優しい声が聴こえたのは。



「ねぇ……? ちょっと良いかな……?」



 その声の正体は、先輩の女子生徒の声でした。



 将来の夫は床から起き上がると、手作りクッキーを右手に持ったまま、扉の前まで歩いて行きます。

 将来の夫と先輩女子生徒の会話を、もやもやした気持ちで見つめる将来の妻……



 しばらくすると、将来の夫は頭をかきながら戻って来ました。



「ねぇ、何を話してたの?」



 将来の妻はすかさず問いただします。



「……え? ああ、何かホワイトデーのクッキーを受け取ってくれって」



 その答えを聞いた瞬間、将来の妻は眉間に皺をよせます。



「それで?」


「勿論、ちゃんと断ったよ。『受け取れない』って。結構、しつこかったから、断るの大変だったけど」


「ふーん……」



 眉間に皺をよせたまま、将来の夫の話を聞いていた将来の妻。徐に左手を差し出し、こう言ってきました。



「ねぇ、さっき渡したクッキー……貸して」


「……何で?」



 今までと違う将来の妻の態度に、何かを感じた将来の夫は理由を尋ねます。すると、将来の妻はこう答えました。



「惚れ薬入れるから」



 その言葉に、将来の妻の可愛さを垣間見てしまった将来の夫は、駄目だと解っていても……失笑してしまいます。



「何で笑うのよ!?」


「ごめん、ごめん……つい」



 笑いを堪えられない将来の夫は、将来の妻に背を向けて必死に気を落ち着けようとしますが、将来の妻は手作りクッキーを奪おうと無理に将来の夫の背中に覆い被さってきます。



「良いからそのクッキー、貸しなさいよ!!」


「えっ!? ちょっと! 危な……!!」



 そして将来夫婦になるふたりは、再び床に仲良く倒れてしまうのでした。



 次回の更新は未定です……


 ……すみません……


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