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足りない僕らが歩む道 ~感覚の共有能力で僕が勇者になるまで~  作者: DTスナギツネ
第4章足りない僕らが歩んだ道
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エピローグ 足りない僕らが歩む道

「本当に、行くのか?」

「はいっ、お世話になりました」


厳粛な顔をした男がコーヒーを一啜りし、机に置いて言った。

それに返し、頭を下げて、部屋から出ようとドアに手をかけた。その時、後ろから「またいつでも帰ってこい」と声がかかった。


「はいっ」


振り返り、もう一度答えると、今度こそ部屋を出た。すると、見慣れた顔が声をかけてきた。コルクボードの前で、少しボロいお古の装備を身に着ける十代前半ぐらいの少年らが、貼り付けられている紙を見て、何やら話し合っている。まだ、朝だというのにジョッキを片手にビールを煽っている者も何人かいる。

そんな憎めない彼らと軽く挨拶を交わして、建物を後にする。最後に一度振り返ると、冒険者ギルドと武骨な文字で書かれた看板が目に映る。


「おう、ボンタのあんちゃん! こないだは助かったぜ、これ持っていきな」

腕がパツパツのシャツを着て、似合わないエプロンをかけた男がそう言って、並べられた果物を一つ手に取った。

放り投げられたリンゴを、うまく受け取れず両手でお手玉のようにポンポンと何度か宙に上げて、ようやくキャッチし、一齧り。


みずみずしくて、蜜たっぷりのさわやかな甘さが口の中に広がった。

ガタイが良く、片目を縦に割る切り傷をつけたその残忍な顔。それに似合わず、ここの果物はいつも絶品だ。


「あっ、おはようございますボンタさん! これ、この前のお礼です!」


「あら、ボンちゃんお出かけかい? これ持っていきない」


「おいっボンタ! 余りだからよっ、もってけ」


町の中を歩いて、いつの間にか両手に収まらないぐらいのお裾分けをもらった。朝の涼しげな気持ちのいい風が吹いて、すこし目に染みる。

ドンっ、と足に軽い衝撃が走った。

両手の荷物を咄嗟に真上に放り投げると、倒れる体を支えてあげる。


「おうっ! ありがとう。ボン兄!」


ニシシとちょっと小生意気に少年が笑って、落ちてきた荷物をキャッチする。

母親らしき女性が「コラっ」と軽く叱りつけ、今度はしっかりと手を引いて、会釈をして歩いて行った。


ああ、平和だ。


あの後、王都では結構な騒ぎになった。

当然と言えば当然なんだけど。


他宗教によるテロだ、とか他国の侵略行為だとか。でも、奇跡的に死傷者はいなくて、そんな話はすぐにどこかに消えて行った。


むしろ、人々の間では勇者様、はたまた女神さまの話で持ち切りだったんですよ。


突如、人々を襲った赤黒い感情、引き起こされたおぞましい行為。僅かな目撃情報によると、それを止めて回った美少女がいたですって。

それからしばらくたって、空から温かい光の雪が降って、人々の体に落ちると傷を癒していったそうです。

人の噂は七十五日とはよく言ったもので、結局真相はわからないまま、気がつけば王とは煌びやかな姿を取り戻し、何事もなかったかのように元通りになりました。


僕たちは、旅に出たんです。


大変だったんですよ。

リダは「早くでて、誰も事件のことを知らない町に行こう」ってうるさかったし。実際、変装しながら過ごすのは大変そうだったけど。


それから、いろいろなことがありました。

やっぱり、僕たち二人はまだまだ未熟で、実際何度かドジって死にかけたりとか。それでも、楽しいんです。まだ、きっと僕たち自身がすべてを飲み込めてなくって、たまに色んなことを思い出して辛くなることもある。それでも、もう大丈夫です。


魔物の群れに追っかけられて、泥だらけで走り回った夜も、食べ物が切れて、川に裸で潜って魚を取った昼下がりも、テントが壊れて木の葉からこぼれ落ちた朝露に起こされた朝だって、今となってはそれも楽しかった思い出です。


「やっぱり、ここにいたんだ」


振り返ると、あの頃と比べて少し大人びたリダが立っていた。背が少し伸びて、体つきに丸みが帯びてきた。動きやすいように、短く切った青い髪は時々綺麗なうなじを露出させて、ふとした瞬間にドキッとしてしまう。


その両手には、花束が握られていて、僕の横にまで歩いてくると、土に立てつけられた長方形の石の版の前に置いた。

可愛らしい形の花びらは、どこか懐かしさを覚えた。暖かくて優しくて強い、あの人の髪と同じ色。


「いこっか」


目を閉じて、少しするとリダはそういった。きっと、お別れの挨拶を交わしたんだと思う。

石碑をあとにして、僕たちは歩き出した。


春の悪戯な風が吹いて、ふと、振り向いていた。


花びらが風に攫われて、空に立ち上っていく。その姿はどこか、僕たちを見送ってくれているようで。


「またいつか」


そう言っているような気がした。


いつも共にあれるように、見慣れた剣が埋め込まれたその石碑には、こう刻まれていた。


英雄 リーフ・クシュージャ ここに眠る。


「「行ってきます」」


リダが髪の毛を抑えて、僕の目を見て頷いた。もう振り返ることはしなかった。


いつか、両親のように、ララメのように、町を救った、あなたのように。



僕たちはまた一歩、歩き出した。




ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

10万文字ちょっとと短めな小説にはなりましたが楽しんでいただけたのなら光栄です。

今読み返してみると拙い部分が多く、まだまだ納得のいく出来じゃないなと思いました。

全然小説読んでないって感じの文が多かった気がします・・・

今回の悪かった点など反省しつつ、新たな作品作りに取り組んでいけたらと思っています。

まだまだ未熟ではありますが、コメントや評価などで応援いただけたらとても励みになります!!!


これからまた、1~3ヶ月お気に10万文字程度の小説を更新していきたいと思っています。

基本的には単発で、もし人気が出たら続編も書くかもです。

現在は、恋愛モノを書いていると中です。これはあと1~2ヶ月程度かかりそう。

また、後日お会いできたらうれしいです!

それではまたどこかで!

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