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足りない僕らが歩む道 ~感覚の共有能力で僕が勇者になるまで~  作者: DTスナギツネ
第3章 にせものの証明
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第26話 答え

「「信念なんて」」



耳の奥で、恐ろしく低い音が二重に重なって響いた。その声の一つが、自分のものであることに気がつくのに、そう時間はかからなかった。

足りなかったピースがハマったような気がした。ようやく、一枚の絵が完成する。

本当は、ずっと分かっていた。答えなどとうに知っていた。


ただ、何も言わずに立ち上がった。

そして、黒い穴を目指して歩き出す。


餌は美味しいか?

人の心は、信念は。

何倍にも増幅された感情が、あの穴を呼んだ。まだ、大きくなる。何人も食って、いずれ取り返しのつかないことになる。


まだ、殺意の集合体が小さいうちに。

既に、足元に少女が転がっていた。

ちょうど、ララメと同じぐらいの大きさだった。

見下ろしながら、無感情に剣を振り上げ、切っ先で空を指す。


ああ、そうだよ。みんな、いらないんだ。

ようやく楽になれる。そうして、剣を振りかぶった。


あっけなく、甲高い音が響いた。


剣の先が地面にぶつかってなった音なんかじゃなかった。あまりにたやすく折れた僕の剣身が足元に転がった。


バクンと、光が跳ねた。


「大丈夫だ」


僕を見つめるクシュージャさんの目は、どこまでも優しい。冬の暖炉に灯る、温かい炎のように赤い瞳がゆらゆらと揺れて僕を包む。


「ああ、嗚呼ァッ……いやだ、いやだいやだいやだ」


耳をふさいで、目を閉じた。小さく丸くなって、自分を守った。

逃げ出してしまいたかった。光が、僕の中でどんどん大きくなってその脈動が体を震わせる。それが、怖かった。


感情が、信念が。


痛いんだ。もう、傷つきたくないんだ。これ以上は耐えられない。

また、大丈夫って声がした。

体が暖かくて、僕をそっと抱きしめると、額の髪をかきあげて、キスをした。

目を開けると、クシュージャさんが僕に笑いかけた。その顔は、どこか懐かしい。

立ち上がって、リダを抱きしめると僕たちの前へ出て、背を向けた。


「大丈夫だ。お前なら、きっと」


まっすぐと、強い言葉だった。

雲が割れ、一片の光が差し込んだ。

それはクシュージャさんを照らし、オレンジの髪を脈々と燃やす。

溢れる涙を抑えることができない。彼を止めたかった。それなのに、伸ばした手を彼には届かない。


その背中は、既に覚悟を決めていた。

光が、鼓動を早め、心臓を飲み込んだ。

体中を、温かい体温が満たしてゆく。


「なんでっっ! 復讐するんだろっっっっ!!!」


悲鳴を上げていた。誰かに、助けてほしかった。声は確かにクシュージャさんに届いて、黒い穴に向かって走り出していた。


リダが、僕の手を引いた。

無数の腕が、四方からクシュージャさんに迫った。彼は腰の剣を抜いて、すべてを切り刻んだ。

僕は、引かれるまま走った。

抱きしめてくれた体温がまだ残ってて、耳の奥で優しい声が響いていた。



復讐を果たすために、始めた旅だった。

町の中で、わけもわからず泣きわめくガキを拾った。道中、泥まみれになった小汚い少女を拾った。森で、もっと小さい少女を拾った。ようやく、仇の正体までもが分かった。


未だ、渦巻く憎悪が怒りが抑えきれない。


殺してやりたい。


それでも、楽しかった。

共に過ごした数日間、俺は確かに幸せだった。


そうだ。

俺は、生きていた。

クソネズミだとかどうだっていい。


あの人たちの弟だ。

だから、あいつらを助けたい。

それだけで、十分だ。



「俺の名前はっっっ! リーフ・クシュージャだっっっ!」



光の奥で、最後にクシュージャさんの背中が見えた。

とても大きく、温かい。光は霞のようにぼやけていって、やがて消えて見えなくなった。

なんか思ってたより短かったでござる

もうしわけない


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