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第17話 温もり

「おねぇちゃーん! 絵本読んでー!」

「ふふふっ ***は絵本が大好きなのね」


声が聞こえた。優しい木の香と一緒になって、すこしカビっぽい匂いが鼻をくすぐる。

優しく笑うとおねえちゃんは頭をなでてくれた。すこし乾燥して、ひび割れた手。その手が大好きだった。柔らかくてあたたかい。


おねえちゃんは絵本を持つと座って、絵本のタイトルを読み上げると一ページ目を開く。

何度聞いても飽きない、とってもかっこよくてワクワクするお話。

もちろん大好きなのは皆もおんなじで、次第にお姉ちゃんの周りに輪ができていく。


あちこちが切れ、薄汚れて茶色の服。ボサボサの髪の毛、痩せた体。ここのみんなのおんなじ特徴。それでもみんな笑顔で、目を輝かせておねえちゃんを見つめるの。

本当に何にもなくて、町の人は可愛そうって言った。でも違うの。何もなくなんてない。だってみんながいるから。家族がいるから。だからうんと楽しくて、とっても幸せ。


「僕は……。生きる。生きなくちゃいけないんだっ! 僕には感情が、信念がある。未だ消えることはなく、鼓動を続け脈々と燃え続けている。だから死ぬわけには行かないっ!」


ゴクリ

大きく喉が鳴る音が聞こえた。いつも賑やかな部屋は静まり返って、みんなの目がおねえちゃんに向かっている。それを遠くで楽しそうにお兄ちゃんたちが見てた。

溜めて、お姉ちゃんが高々と言った。


「どんなに醜く汚れたって、足掻いて生き抜いてみせる!」


お姉ちゃんは目をつぶり、胸に手を当てて立ち上がった。何度も聞いた。何度も見た。それでもやっぱり目が話せない。


「だって僕はっっっ!」


ガチャリ

音がした。勇ましい表情をしていたお姉ちゃんの顔が途端にやさしくなった。


「おかえりーおじーちゃん!」


誰かが大きな声でそう言って、みんなが玄関に向かって走った。おじーちゃんはパンパンになったボロのバッグを握っていた。


「今日のごはんなにー?」

「みんなの大好物、今日はシチューだよ」


いつの間にか、絵本のことも忘れて別のことが気になっていたの。だっておじいちゃんがバッグをいっぱいにするとき、いつも美味しいご飯が待ってたから。

シチューって声を聞いてとってもうれしくなったの。暖かくて、とってもおいしくて。それなのに。


「おじいさん……お金、大丈夫なんですか……」


なんでかお姉ちゃんがうれしそうじゃなくて、申し訳なさそうに俯いて聞いた。そんな姿を見て「大丈夫、心配しないで良いよ」っておじいちゃんは頭を撫でてあげていた。

お姉ちゃんの不安そうな表情が溶けて、いつもの幸せそうな優しい笑顔にもどった。

そんなお姉ちゃんを見て、なんだかとってもうれしくなった。


「***ねっ! 頑張ってお手伝いするよっ!」


もっと、お姉ちゃんにも喜んでほしかった。おじいちゃんに喜んでほしかった。

そう言うと、おじいちゃんは「いつもありがとう」って言って頭を撫でてくれた。ガサガサで、とっても大きくて、とっても暖かい。みんなが大好きなおじいちゃんの手。


とっても、とっても幸せ。



ああ……本当に幸せで……。


短くてすみません

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