準決勝
1話からは一気に日にちが変わっています。次の日ではないです!サッカーシーンは特に気合を入れました! 毎日投稿は厳しくなってきたので出来るだけ早めに投稿します!
「………………………………! ………………………!!!」
「…………………………………………! ……………………………………!!!」
二人の男女が傷だらけになりながら何かを叫んでいる。女の人は涙を流し、男の人は決意を固めるような顔で。何故だか俺は、他人事のようには思えなかった。
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「……………………さ………、………き………………い………」
「起……な……い、……き…………い諒!」
誰かが俺を呼んでいるような…………?
「諒、起きなさい。今日はサッカーの試合でしょ? 遅刻するわよ」
サッカー……の、しあ……い……?
俺は、数秒の間、眠たくてウトウトしていたが、だんだん意識がはっきりしてくると、今日がどれだけ大事な日なのかを理解した。
「そうだ!今日は準決勝の日だ!」
ベッドから大急ぎで出ると、顔を洗って、歯を磨き、寝癖を直して、パジャマから、試合のユニフォームに着替えた。この間5分である。
いつも時間ギリギリに起きている為、朝起きてからの身支度がとても早くなっていた。響にこのことを自慢したら「いや、お前はもっと早く起きて遅刻をなくせ」と、完全論破されたことは記憶に新しい。
「お弁当とドリンク、カラリィメイトとウォダーは入れたし、着替えとスパイク、レガースも準備オッケー!」
「よろしい。では気を付けて行ってくること!」
「ラジャー。行ってきます!」
「父さんも後から観に行くからな~! 頑張ってこい!」
俺は、父にグッジョブのサインを送って家を出た。外に出ると、玄関の前で響が、待ちくたびれたかのような顔で、俺を見ていた。どうやら、約束の時間より遅くなってしまったことに対して少し怒っているようだ。
「りょ~う~? どんだけ待たせんだよ! せっかく俺が家まで来てやったってのに……。ちょっとは早めに起きて支度するとかできねぇのか?」」
「ご、ごめん……。早めに起きれるように目覚ましはいつもセットしてるんだけど、朝が苦手なもので……」
「まぁ、寝坊はいつものことだから良いけどよぉ。今日みたいな大事な日に遅刻して試合に出れないとか勘弁してくれよ? 準決勝は俺もすげぇ楽しみにしてるんだからな! お前が出れねぇせいで負けちまったりなんかしたら許さねぇぞ?」
「う、うん。集合時間までまだ少しあるよね? 小走りで行けば間に合うはずだから急ごう!」
何だかんだでいつも世話を焼いてくれる響の為にも今日は絶対勝たなくちゃな。
準決勝の相手は去年二位だった優聖中学だ。言わずと知れた強豪校で一年前にも、うちの学校と当たったことがある。結果は2-1で惜しくも敗れてしまった。
「お前、去年のこと引きずってないよな? あれはしゃーねぇんだからお前が気負いする必要はねぇんだからな」
響が走りながら、そんなことを言ってきた。
俺は一年前、優聖中学との試合で後半から足の負傷をした先輩と交代で出ていた。試合は1-1の接戦でアディショナルタイム残り3分を迎えた。相手のファールでフリーキックになり、その時に蹴ったのは俺だったのだが、俺の蹴ったボールは相手のゴールポストに直撃、そこから一気に攻め込まれて点を決められてしまったのだ。
「今はもうそこまで気にしてないから大丈夫。俺だって猛特訓したんだから! もしまた俺がフリーキックを蹴ることになっても必ず決めてみせるよ!」
「あの日からお前、めっちゃフリーキックとかの練習してたもんな。台風が接近して、自宅で安静にしてなきゃいけない時にも、練習するんだ~! とか言ってたし」
そんなこともあったっけ、少し恥ずかしいな。あの時の俺は、自分のせいで負けたことが悔しくてしょうがなかった。次は絶対外さないようにって、シュート練習ばかりするようになったらいつの間にかチームの中で誰よりも上手いストライカーになっていた。
「じゃー約束な。もしフリーキックを蹴ることになっても、お前が必ず蹴ってゴールを決めるんだ」
「あはは、なんだよそれ~。でも分かった! 絶対に俺が蹴ってゴールを決める。約束」
響と話しているとそれだけで力が湧いてくる。俺は響と親友同士の約束をしたのだった。
響とそんな話を続けているうちに試合会場へ着いた。一旦、響とは別れて、集合場所へ行くと、チームメンバーは俺以外集まっていた。
「お、流石に今日は遅刻してこなかったか」
「先輩いつも遅いですもんね。そろそろ試合開始なのに来てなかったので、正直ドキドキしましたよ」
「今日はお前がいなきゃ勝てないんだからな? 点取りは任せたぞ!」
「今日は絶対に勝たなきゃだからね! 期待してて」
俺がチームの皆と会話していると、監督がやってきた。監督は全員の顔を一瞥すると、試合の選抜を決める為に全員を呼びかけた。
「皆、集まってるな~? スタメン発表するから選ばれたやつ返事な。ゴールキーパーは乾、センターバックは岡田と森脇、左サイドバックが佐々木、右サイドバックが木村」
「はい!」
呼ばれた5人は順番に返事をする。
「ボランチは吉野と宮下。左サイドハーフと右サイドハーフは百田と黒瀬」
「「「「はい!(うーい)」」」」
次に呼ばれた四人は一斉に返事をした。変な返事の人もいるがいつものことなのでスルーだ。
「トップ下は海藤、フォワードは睦月、以上」
「はい!」
海藤と俺は順番に返事をした。
ダブルボランチでディフェンスが4枚なのは、守りを意識しており、4-3-2-1のこのフォーメーションは、プロでもよく使われている。このフォーメーションの利点はワントップである分、守備に人数を多くかける事が出来る所だ。だが、フォワードが一人なだけにマークをされやすく、単調な攻めになりやすいという所もあり、なかなかに難しい。
「相手の攻めは激しいが守りは浅い。今回は守りを固めて、中盤またはサイドからのオーバーラップで一気に相手の陣地に切り込む。結構な走量が必要になると思うが、頑張ってくれ。じゃあ行ってこい」
「「「「「「はい!!!」」」」」
監督の指示に一斉が返事をし、ピッチに向かった。
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「はぁはぁ、まだ切り崩せないのか……?」
「いや、マジきつすぎんよ……」
試合は0-0のまま後半に突入していた。優聖中学は去年よりも更に攻めの激しさが増しており、守りを固めていても凌ぎ切れずにシュートを打たれることが何度もあった。それでも点を決められていないのは、ひとえにゴールキーパーの乾のお陰なのだが。
「ここで反撃できなきゃもう後がないぞ。次のカウンターで一気に攻める! 見たところ、相手の右サイドの守りが甘い。ここから切り崩せれば……! 佐々木、百田、ちょっときついがここが踏ん張りどころだ。オーバーラップで攻めあがるぞ!」
「オーケー、キャプテン。なんとかやってみせるわ」
「お前……。後で焼き肉おごりな?」
キャプテンの海藤が佐々木と百田に最後の指示を出す。残り時間は後10分だ。
敵が仕掛けてきた。4番の選手が左サイドからセンタリングを上げる。逆サイドの味方へ向けたファーへのクロスだ。
「絶対にマークを外すなよ!」
「おい、7番のマーク付けって!」
「そっち行ったぞ!!!」
皆の怒号交じりの指示が飛び交う中、弧を描くボールは相手の10番の頭にドンピシャに合わさった。
ボールはヘディングにより、ゴールの右側にいる乾とは逆方向に的確に飛んでいく。
マズい。マズい。マズい。マズい。
この時、誰しもが点を決められたと思った。だがその時、誰も予測していない人物が守りに戻ってきていた。そう俺、睦月 諒がすんでのところでクリアをする為に足を出していたのである。
「んんんんっしゃおらぁああ!!!!!!」
俺はアドレナリンが分泌されまくっているせいで普段の俺では考えられないほど猛々しい声をあげて、ボールを蹴り返した。自分でもポジションを離れ何故ゴールまで戻ってきたのかは分からない。完全に反射的に体が動いたんだと思う。
ボールは蹴り返されたことによって、ピッチの外に出た。
「ナイッッッス!!!マジでお前が蹴り返してなきゃ点取られてたわ!」
「なんでお前がいんのか分かんねぇけど、とにかく助かったわ!」
「まだ相手ボールでスローインがあるから気を抜くなよ! 諒、持ち場についてくれ。俺たちが必ずボールを奪って、お前に繋げてみせる!!!」
「わかった!待ってるからね!」
仲間達が俺に賛辞の言葉を贈る中、俺とキャプテンとは勝利を目指す為の言葉を交わした。
仲間を信じよう。今までだってそうやって勝ってきたんだから!
そして試合が再開する。
「諒が繋げてくれたこのチャンス、絶対に切らすなよ!!!」
「「「おう!!!」」」
相手の6番がスローイン。またもセンタリングを上げる為に、4番へ回すつもりだ。
「そうはさせるか!」
ボランチの宮下がこれを防いだ。その後逆サイドから攻めあがる為に、海藤、吉田、百田へとパスを回す。
「ここから何とか諒に回すぞ!」
「おう!」
相手の7番が何とか百田からボールを奪おうとするも、佐々木のオーバーラップで簡単に突破されてしまう。佐々木はそこから相手の3番を抜いて、センタリングを上げる。狙うはもちろん俺だ。
きた……!!!
佐々木からのボールをダイレクトで蹴れば絶対に入るセンタリングからのボレーシュートは何度も練習した。絶対に勝てる。俺がそう確信して弧を描くボールを的確に自身の足に合わせた時。
「やらさんっ!!!」
「ッ!!!!!!」
相手の10番が俺の左腿を狙って思いっきり蹴った。俺はバランスを崩して後ろから倒れた。完全に故意の攻撃だった。
ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!
レフェリーの笛が鳴る。誰がどう見ても悪質な行為だ。相手の10番は即退場のレッドカードだ。ギリギリ、ペナルティエリア外を狙ってきた為に、判定はPKではなくフリーキックだった。
「諒!大丈夫か?」
チームメンバー全員が俺に駆け寄ってくる。俺は手で大丈夫のサインを送り、フリーキックは自分が蹴りたいという旨を話した。
「ケガは大丈夫なのか? 無理せず交代しても良いんだぞ?」
「俺に、やらせてほしい! お願い!」
「分かった。お前に託そう。バシッと決めてこい」
「キャプテン……。ありがとう!」
俺は足の痛みに耐えながらも、ボールをセットする。その時、去年の記憶がフラッシュバックのように蘇った。
ここで外せば、もう勝利はない。そう考えると足の震えが止まらない。やはり、ほかの人に代わってもらうか? 考えれば考えるほど、どんどんマイナスな方へいってしまう。キャプテンに交代を申し出ようと思ったその時、どこかから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「諒!蹴れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
「ひ、響……?」
「お前言ってただろ! 次フリーキックを蹴ることになっても必ず決めてみせるって! お前が蹴らなきゃ意味がねぇんだよ! あんだけ練習してただろ! お前ならいける!」
響との約束が脳裏に蘇ってくる。
そうだ。俺は失敗を克服するためにあれだけ頑張ってきたんだ。
俺がここで逃げたら今までの努力が無駄になる。それに響と約束したんだ。
『じゃー約束な。もしフリーキックを蹴ることになっても、お前が必ず蹴ってゴールを決めるんだ』
『あはは、なんだよそれ~。でも分かった! 絶対に俺が蹴ってゴールを決める。約束』
親友との約束を破りかけるなんて俺は本当にダメな奴だな。
俺はフリーキックを蹴るために、ボールから数歩後ろに下がって狙いを定めた。
不思議と緊張はしなかった。一年前の俺とはえらい違いだ。
「……よし」
俺は毎日のようにやっていたシュート練習の時と同じように、落ち着き払った表情でボールを蹴った。
「諒、決めてこい!」
俺の蹴ったボールは、大きな弧を描きながら回転し、相手のゴールキーパーの手の届かない四隅の右端へ吸い込まれるように飛んでいった。
数秒の静寂。
それを打破するかのように大きな歓声が沸き起こった。
諒と響の関係性を意識しました。ちなみに私はカラリィメイトはフルーツ味で、ウォダーはプロテイン味が好きです笑