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初めての転生

ルビを振りなおしました。一部のケータイ以外では反映されていると思います。

「おめでとうございます! ほら、元気な男の子ですよ!」


 俺の意識がはっきりしない中、そんな声が聞こえてきた。男の子? 何のことだろう。俺、何してたんだっけ? と、考えていると、真っ黒闇だった視界から突然、光が差し込んできた。


(ま、眩しい……!)


 突然の眩しさに目を細めながらも光のある方へと目を向けると、そこには白衣の女性が二人と、苦しみに汗をかきながらも、顔がほころんでいる女性がいた。

 この人たちは誰だ? 俺はどうしてこんな所にいるのだろう。そこへ先ほど苦しみに耐えていた女性が、タオルに包まれた俺を優しく抱きながら言った。


「愛する私の子。生まれてきてくれてありがとう」


だんだん意識がはっきりしてきた俺は、何故、自分がこんな場所にいるのかを思い出した。


(そうか。俺は女神様の力で転生させてもらったのか。ということは、この人たちは俺を産んだ母親と看護師さんだな)


身体が変わり、背丈もだいぶ縮んでしまった為、世界がとても大きく見えた。普段、暗い部屋でゲームばかりしていたせいで悪くなっていた視力も大幅に回復しているおかげで、細かいものがよく見える。 世界はこんなにも綺麗なものだったのか。そんなことを思いながら俺は、新しく生まれ変わってからは二度と間違えないように真っ当な人生を送ってやろうと決意するのだった。


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(りょう)、今度の試合絶対観に行くからな~? かっこ悪いところみせんじゃねぇぞ~」

 

「うん。任せてよ!」


 俺はそう答えると、友達と別れ、部活動で疲れ切った身体を引きずりながら、家に帰った。


「母さん、ただいま」


「諒、お帰りなさい。晩御飯出来てるわよ」


「父さん、腹がペコペコだよ。たまには早く帰ってきてもいいんだぞ?」


 いつもの調子で学校から帰ったことを両親に報告すると、両親もいつものように返してくれた。

 俺が、"睦月 諒(むつき りょう)"として生まれてから15年が過ぎていた。その中で、今までずっとコンプレックスだったコミュ障を直そうと必死に努力した結果、親友と呼べるくらい仲の良い友達を作ることに成功していた。

前世では、両親にも心を開くことができなかった為、部屋に引き籠っており、両親からの愛情は皆無となっていた。だが、今回の転生では両親との交流を大事にして生活をしていた為、とても仲の良い一家団欒(いっかだんらん)といえる状態となっていた。 

 

「お父さん、諒は三年生最後の夏の大会に向けて頑張ってるのよ? 部活動に忙しくなって帰りが遅くなるのも仕方のないことじゃない。ねぇ、諒?」


 優しい声色で俺にそう言ってくれたこの人の名前は"睦月 裕子(むつき ゆうこ)"だ。転生後の母親であり、俺のことをとても理解してくれていて、俺がお金のかかる進学校に通いたいと言っても、嫌な顔一つせず、通わせてくれた。

友達からの評価は美人で優しいお姉さんらしい。年齢は四十手前だが、見た目は二十代と言っても疑わないくらい若く見えるのだからお姉さんという評価も納得できる。母は料理教室の先生をやっていることもあって、とても料理が上手だ。 俺も母さんに料理を教えてもらったおかげで、基本的なものであれば作れる。


「あはは、すまなかったな。俺も諒の応援はしているから頑張るんだぞ?」


 そう言って、俺の頭をがしがしと撫でてくれるこの人が"睦月 和昌(むつき かずまさ)"だ。こちらも転生後の俺の父親であり、母親同様に俺のことを可愛がってくれている。顔はかなり貫禄があるヤクザ顔で、初対面の人が見れば卒倒間違いなしなくらいだ。趣味はゴルフと釣りで日曜日は毎週のように連れていかれるのだが、俺はあまり興味がないからやめてほしい。実は大のスイーツ好きで、仕事終わりにはしょっちゅうケーキを買ってきてくれる。かくいう俺もスイーツは好きなほうであり、学校帰りはどんなスイーツを買ってきてくれているのか楽しみにしている。


「うん。俺もここまで勝ち上がったからには全力で臨むつもりだよ」


 俺はサッカー部に所属しており、最初は全くの未経験者だったが、必死に練習を重ねて今では、エースストライカーと呼ばれるほどに上手になっていた。今は三年生最後の大会の準決勝に向けて猛特訓している最中である。ちなみにサッカーを始めたのは、その時にハマっていたサッカーアニメに影響されたのが理由だ。単純とか言うなよ? 


 先ほど別れた友達の名前は"和泉 響(いずみ ひびき)"で、保育園の頃からの幼馴染でもある俺の数少ない大親友だ。俺が保育園に入って早々、友達の作り方に悪戦苦闘していた時に、唯一話しかけてくれたのが、響だった。 小学生の時、グループを作って活動する時にも、率先して俺を輪に入れてくれた。中学生になってからは、俺もだいぶ人に慣れてきていたので、自分から人と接する事が出来る様になった。響のおかげで、今の俺があるといっても過言ではないと思う。 響は所謂(いわゆる)、お調子者であり、おだてられると何でもしてしまうタイプだ。そのせいで無理をしてしまうことがあるから、たまに心配になる。


「にしても、あんなにサッカーが下手だったもう諒が今ではチームのエースストライカーか。何というか、立派になったもんだ。俺も昔はテニス部で頑張っていたが、諒のようにエースとまではいかなかったな。今度の準決勝は有休をとって観に行くからな」


「褒め過ぎ。でも観に来てくれるなら俄然やる気が出るよ! 絶対に勝って決勝戦まで行くから楽しみにしてて!」


「その為にも目一杯飯を食って体力をつけないとな! さぁ飯にするぞ!」


「今日はたくさん作ったから、いっぱいおかわりしていいからね」


「「「いただきます!」」」


 俺は今の生活に満足している。両親との関係は良好だし、難関だった友達作りも響のおかげで出来た。前世でのつらい人生が嘘かのように楽しい日々を送れていると思っている。これも女神様のおかげ……。そういえば、女神様はあれ以来見てないな。いったい何をしてるのだろうか。確か転生には条件があるとか言ってたような? まぁいずれどこかで会えるだろう。今はとにかく準決勝に向けての練習が最優先だ。


 そう心の中で思いながら、俺は深い眠りについた。



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