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穢れなの天使  作者: 二ト
7/12

しらせたくない

十二 不思議は少女

夜の公園。近くのベンチに真ん中に私、右にルタ、左に彼女の順番に座った。

「私、ハイネ・フランクヴァイス。今十三歳で、『T・M』に所属してるの。黒猫ちゃんは?」

「・・・私はラジャット・ネルバ・ラシマーテ。この間十一になった。・・・所属は『B・B』。で、こっちは私の相棒の・・・。」

「パーレン・ガスルタ・スターク。今十九で、所属は同じ。」

・・・ん?

「今、T・Mって言ったか?」

「うん。言ったよ。」

「っ!T・Mって!」

ルタがガタッと立ち上がる。

『T・M』とは『Trick Moon』という義賊組織の略称。『幻術の月』という呼び名もある。義賊組織だが暗殺業もやっていて、『B・B』こと『Blood Bird』とは時々敵対していて、何年か前から拮抗状態にある。

「・・・敵、だよな。」

「うん、そうだよ?」

「んじゃ、なんでここにいるんだよ!」

「黒猫ちゃんに会いたかったから♪」

「んな理由で敵に会いに来るのかよ!」

「うん、そうだよ。」

「上に怒られるだろ!」

「大丈夫、私偉いから。」

「そういう問題じゃねーだろ!」

「そうなの?」

「敵に会いに来たとか、仲間とかボスに知られたら不味いだろ!」

「そうだろうね~。」

「んじゃ何で来たんだよ!」

「黒猫ちゃんに会いたかったから♪」

「っ、お前な~!」

「少し落ち着け、ルタ。話が堂々巡りになってるぞ。」

全く、この子は何者なんだ?

「君も煽ってくれるな。面倒臭くなる。」

「まぁ、黒猫ちゃんがそういうなら。」

「・・・君のコードネームは?私のは知っているらしいが。」

「あ、そっか。私はね、『ホワイト・フォックス』だよ。『白狐』って意味ね。」

「そうか。・・・一応だが、私は『ブラック・キャット』。『黒猫』だ。で、こいつは『ホーク・アイ』。『鷹の目』と呼ぶときもあるが、『ホーク・アイ』が主流だな。」

「そうなんだ!二人とも、よろしくね!」

「君のことはなんて呼べばいい?」

「うーんとね、愛称はないことはないんだけど・・・なんでもいいや!」

「そうか。じゃあ、ハイネと呼ばせてもらおう。」

「いきなり呼び捨て?」

「嫌だったか?」

「ううん!なんかドキドキしちゃう!」

「そ、そうか・・・。」

何と言うか、不思議な子だ。

「黒猫ちゃんの子とは何て呼べばいい?」

「私か?・・・いつもはランって呼ばれてるが・・・。」

「ラン?」

「そうだが。」

一瞬ハイネの表情が無になった。それがパッと笑顔になる。

「じゃ、ランちゃんで!」

「ど、どっちでも、好きなように。」

・・・見間違いか?

「そういえば、パーレン君だっけ?」

「・・・何だよ。」

「長いし、ルタって呼ばれてるから、ルタでいいよね!」

「いいけど・・・って、俺だけ強制かよ!」

「いーじゃん。それとも、他に希望があるの?」

「・・・ねーけど。」

「じゃ、決定!」

「ったく・・・」

・・・何か、仲良いな・・・。

「そういえばランちゃん、誕生日プレゼント届いた?」

「・・・誕生日プレゼント?」

「うん!リボン届かなかった?『H・F』って。」

「ああ、あれか。」

私はポケットからリボンを取り出す。何に使うか分からなかったから、取り敢えず携帯していた。

「・・・H・Fってハイネの事だったのか?」

確かに、ハイネ・フランクヴァイスのイニシャルはH・Fだ。

「うん、そうだよ。」

「ということは、あの黒い薔薇も。」

「うん。お見舞いの品で。」

「そうか。ありがとな。」

「どういたしまして!そうだ、そのリボン貸して。」

「ん?ああ。」

リボンを渡すと、手慣れた様子で私の髪を結び出す。

「ちょ、何を・・・!」

「動かないで。・・・はい、出来た!」

「・・・ラン、可愛いな。」

「は?」

「その髪型。いつも下ろしてるから。」

いじられた髪の毛を気にしていると、ハイネにストップをかけられる。

「ちょっとランちゃん!いじっちゃダメだよ!リボンが取れちゃう。」

「そう言われてもな・・・これ、どうなってるんだ?」

「ハーフアップにしただけだよ。」

「・・・はーふあっぷ?」

「知らないの?!髪長いのに!」

「いや、いつもはそのまま放置してるからな。」

「本当?!え~っと、ハーフアップって言うのはね、その~、ん~・・・説明しにくい!ようするに、一種の髪型だよ。」

「・・・よく分からんが、おしゃれの一部か?」

「そうそう!そんな感じ。」

「それは・・・どうもありがとう。」

「そのリボン、大切にしてね。」

「え?あ、ああ。」

「約束だよ。」

「ああ。」

真剣な顔が、一瞬にして笑顔になる。

「じゃあそろそろ行くね!早く帰らないと怒られちゃう。」

「ああ。」

「バイバイ、ランちゃん!」

ハイネは私に投げキッスを送る。ザァッと風が吹き、ハイネの姿が見えなくなった。

「・・・」

「不思議な奴だな、あいつ。」

「ああ。」

「俺らも帰るか!」

「ああ。」

「・・・どうした?」

「いや、投げキスをされたな、と。」

「!!」

「女子は初めてだな、と。」

「女子は?『は』って事は、男子はあるのかよ。」

「さぁな。」

私はルタを置いて歩き出す。

「ちょ、待てよラン!」

「早く来い。置いてくぞ。」


十三 苦手な事

「ラン、大丈夫か?」

「・・・」

現在私は机と睨めっこしている。ただし、勉強ではない。今の私の敵は・・・

『清算報告書』

『殺害報告書』

『被害報告書』

『器物破損報告書』   エトセトラ、エトセトラ。

つまりは、書類仕事である。基本的に仕事は好きだが、書類仕事は大嫌いだ。

「おーい、ラン。これ、計算間違ってるぞ。」

「あ?」

「ほら、これ。」

ルタは私に一枚の紙を差し出す。

「・・・。」

「俺が直しとくから、他のやってろよ。」

「悪いな。」

「いいって。ランはこういうの苦手だしな。」

「というか、何で私が書かなきゃいけないんだ?」

「仕方ねーだろ。ボスに書けって言われたんだし。」

「そうだが・・・いつもなら、作戦報告書だけだろ。何で今になって・・・。」

「いーんじゃね?これでランが慣れればいいんだし。」

「う~・・・。」

思わず机に顔を突っ伏すと、ルタに笑われた。

「なんか、最近表情突くようになったな。」

「ん?」

「いや、この前までずっと無だったし。・・・まぁ、今でもましになった程度だけどな。」

「そうか?」

「うん。なんかそんな気がする。」

「フーン。・・・ま、それは置いといて、さっさとこの山を片付けるか。」

「だな!」

気合を入れ直したその時、窓がバンッと開いた。風が吹き込んできて、書類が飛ばされる。

・・・・・・・

「ヤッホーランちゃん!遊びに来たよ!」

窓に、ハイネの姿。

「あれ?何か、部屋散らかってるね。ちゃんと整理整頓しなきゃダメだよ?」

「・・・ハイネ、窓を閉めてくれ。」

「ん?りょーかい。」

窓枠から降り、窓の鍵を閉める。

フー・・・。散らかった部屋を眺め、一息つく。

「・・・片付けよう、ルタ。」

私は取り敢えず書類を集めていく。

「あ、私も手伝う~。」

ハイネはスキップしながら書類を集める。

「凄いね~、ランちゃん。こんなに書いてるの?」

「・・・ああ。」

「書き終わってないのもあるね。進んでる?」

「・・・ああ。」

「よしっと。これで全部?」

「ああ。ありがとう。」

私は再び机に向かい、書類を書く。

「そう言えばハイネ、君も暗殺者何だよな?」

「うん、そうだよ~。」

「えっ、マジで?!」

「マジ、マジ~。」

「ルタ、気付いてなかったのか?」

「・・・ランはいつ知った?」

「会った時から。気配が同じような気がしてな。」

「は~。」

「そういえばハイネ、何か用か?」

「ううん!遊びに来ただけ~。」

「あ、遊びにってな・・・。」

「ランちゃん、今暇?」

「・・・書類仕事中だが。」

「じゃあ、それが終わるまで待ってるね!・・・ルタは何してんの?」

「俺?ランの手伝い。」

「フーン。暇そうだね。」

「暇じゃねーよ!ランが書いた書類の確認とか、記入漏れがないか見てんだよ!」

「ええ~・・・」

ハイネはベッドの上に転がった。

「あ~、暇~!暇暇暇暇ひ~ま~!」

「だー、うっせぇ!ハイネ!人んちまで勝手に遊びに来て暇暇言うな!」

「だって暇なんだもーん。」

「ハイネも仕事あるだろ?」

「無いよ~。」

「私の所にはよく来るんだが・・・。」

「私、弱い奴嫌いなの。だから調べてみて、弱そうだったら行くのやめるんだ。まあまあ強そうなら殺しに行くけど。」

「そ、そういうものなのか?」

「私の場合、そこらへんは結構自由にさせてもらってるよ。ランちゃんと会う前に出たのは港での仕事かな。ほら、ランちゃんが病院に行く前の。」

「・・・あの中にいたのか?」

「外から少し見てたよ。ほぼほぼ見てただけだから何もしてないけど。あ、死体を動かしたくらい?」

死体を、動かした・・・?」

「それって、何故かいきなり消えていた男二人の死体か?」

「そうそう!あれ、私~。」

「そうだったのか・・・。ありがとう。あれがあったから助かった。」

「いえいえ~。」

  トントン

ルタが机の上で書類を整える音が響いた。

「あ、仕事終わった?」

「おう。あとはランがサインするだけ。ここ、置いとくな。」

「ああ、悪いな。」

「良いって。」

ルタはその場で背伸びをした。

「くっ、く~!終わった~!」

「じゃあ、三人で遊びに行かない?」

「あ?」

「仕事が終わったんなら、良いよね!」

「終わったのは俺だけだっつーの。ランはこの大量の書類にサインを・・・。」

「良いよね、ランちゃん!」

「いや、まだ仕事が・・・。」

「人の話を聞けって!」

ハイネは窓に手をかけ、こちらを振り向く。

「裏口で集合ね!二人とも、絶対に来てね!」

そう言って飛び降りる。再び窓から風が入ってきて、書類が飛んでいく。

「・・・これ、どうするよ?」

「・・・帰って来てからやるか。」

「・・・だな。」

ハイネが悪い奴じゃないのは分かっている。

だが・・・。頼むから、お願いだから、人の話を聞いてほしい。

私達が裏口につくと、ハイネは楽しそうに先を歩いて行く。

「ハイネ、どこに行くんだ?」

「聞こえてねーぞ、あの様子じゃ。」

ルタは軽く溜息をつく。私達はスキップしつつ鼻歌を歌いながら少し先を歩くハイネの後ろをついて行く。確かに、聞こえてはなさそうだ。

「そういえば、ハイネ。」

「ん?何?」

「君は何故あの夜、あそこに行くんだ?」

「あの取引、うちの下っ端が勝手にやっててさ。麻薬の取引がちょっと最近活発になっていて、うちの組織に迷惑掛かってて、切り捨ててい良いって言われたんだ。でも弱いし面倒臭いから、どうせならランちゃんに頼んでそこで会いたいな~って思って依頼したんだ。あと、ちょっと君たち巻きこんじゃったし、お詫びも兼ねて、ね。」

「・・・巻き込んだ?」

「ほら、拉致られた事件あったでしょ?麻薬がなんちゃらっていうのはあいつらがTMとBBを混同しちゃってたんだよ。だから、罪滅ぼしの意味も込めて。」

「ああ・・・」

あいつらが言っていたのは、そういうことだったのか。ようやく、腑に落ちた。

「で、どこに行くんだ?」

「ここ!」

ハイネは目の前にある高いビルを指さす。

「ここ、甘いもので有名なカフェなの。ボスに食べ放題のチケット貰ったから、ランちゃんたちを誘おうと思って。

「甘いもの・・・。」

「ラン、目ぇ輝いてんぞ。」

そうルタに言われ、軽く咳払いしてそっぽを向く。

「ランちゃん、甘いもの好きなの?」

「・・・ああ。」

「へ~え。」

ハイネはニヤッと笑う。

「・・・なんだ、その顔。」

「じゃあ、甘いものとルタだったら?」

「甘いもの。」

「即答かよ!」

「当たり前だ。」

「マジか・・・。」

「かわいそ~、ルタ。」

「ほんとだよな・・・。」

落ち込むルタを見て、思わず笑ってしまう。

「じゃあ、行こう!」

「ああ。」

その一日、とても楽しかった。

こんなに楽しくていいのかと思うほどに。


十四 秘密と真実の二重奏

誰にだって、知られたくない過去がある。

俺にだって、ランにすら言えない大事な事がある。多分、言ったら嫌われる。

俺は、幼いころに両親を殺した。スラムで育った俺は、特に悪さをするような子でもなく、どちらかと言えば大人しかった。・・・いや、大人しいと言うより、今思えば残酷だった。蛙を捕まえて、ガラス片で少しずつ痛めつけて殺していたりした。

そんな俺は、両親から殴られたり、食事を抜かされたりするのは日常茶飯事だった。その行為に俺の感情は限界を達し、ゴミ捨て場に落ちていたナイフを手に入れ、その夜親が寝ているところを襲った。

そして今いるB・Bに入り、襲撃任務を主に活動した。その中でスナイパーの素質を買われ、、『ホーク・アイ』のコードネームをもらい、その道で仕事をした。襲撃任務は街を襲い、そこにいる人間を皆殺しにするという任務だ。ガスを使ったり、銃撃だったり、手段は様々だ。

うちの組織は二人一組で行動するのが基本だが、俺のパートナーはひっきりなしに変わった。大体死んだり、負傷したり、辞めたりと。

長い間俺一人の時もあった。ランと会ったのはそんな時だ。

上司からランを紹介された時は驚いた。

大人のような、かっこいい口調。死んだ魚すら逃げ出すような濁った眼。それから、小さな体に不釣り合いな、大の大人を圧倒する気迫。

一応はパートナーとなり、一緒に仕事をしてからランの強さが良く分かった。それと同時に、ランは単独行動が多いのが分かった。人と関わるのが苦手だってことも。

だから俺は自分の性格を変え、ランが信頼しても良いと思うような大人になるように努力した。表面上良い奴を演じても、ランにはすぐ演じていることがバレてしまったからだ。

ランの方も、最近は俺のことを認めてくれたらしく、少しずつ心を開いてくれたらしく、何を考えているのか少し分かってきた。

・・・戦闘じゃ少し怖いけど。

ランを気に掛けるあまり、ランの近くに来る人間を観察する癖がついた。そのおかげで気が付いたことがある。

ハイネは時々、凄く冷たい目でランを見ることがある。そこから一瞬で笑顔になったり、違和感の塊だ。

ハイネと出会ったその夜、帰った後こっそり抜け出してハイネと落ち合った。昼間にハイネを呼び出してたから当たり前だけど、来てくれてよかった。

・・・来ないことも考えてたし。ハイネだったら、

「ごめーん!忘れてた!って言うか聞いてなかった!」とか言いそうだし。

「やっほー、ルタ。」

「来てくれて良かった。」

「まーね。とにかく座る?」

「あー、俺はいいや。」

「あ、そう?」

そう言うと、ハイネは近くのベンチに腰を下ろした。

「で?話って何?」

「ん~・・・」

「言いにくい?」

「いや、何て聞いて良いか分かんねぇ。」

「話したい事があったんなら、それを言えばいいじゃん。」

「そーなんだけどなぁ。」

「まぁ、待つよ。」

「悪い。」

話しの主題なぁ・・・。沢山あるっちゃあるんだけど・・・。やっぱ、ズバリ聞くのが一番だよな。

「時々、ランの事冷たい目で見てるけど、何でだ?」

「・・・」

スッと表情がなくなる。静かな・・・冷たい目で見返してくる。

そう、その目だ。俺はその目をじっと見つめる。

立っている俺と、座っているハイネの間に風が通りすぎていく。ハイネはフッと笑って立ち上がった。

「・・・私ね、小さい頃にはここに住んでなかったんだ。もうちょい田舎に住んでたの。みんな仲良く暮らしてて、その日もいつもと変わらなかった。でもある日の夜・・・私の両親も、友達も、殺された。」

「殺された?誰に。」

「・・・分からない。殺人ガスを撒かれて、街のほとんどの人が死んだ。」

「んじゃ、何でハイネは生きてんだ?」

「分からない・・・。でも、なんか私が街を離れているときに起こってて・・・家に駆け込んだら父親も母親も床に倒れてた。一番の友達・・・リンネって言うんだけど。リンネも地面に倒れてて・・・今でも思い出す。」

「そっか、それで、あんな目を・・・。」

きっと、心の傷がそうさせるんだろうな・・・。

「悪い、嫌な事思い出させちまった。」

「ううん、良いよ、別に。」

「呼び出して悪いけど、俺もう行かなきゃ。」

「そっか。じゃね、また。」

「ハイネは?」

「私はまだいるよ。門限とか特にないし。」

「ん。分かった。じゃあな。」

俺はハイネに背を向け、公園を出て行く。

ーー

私は公園を出て行くルタの背中を見送る。ルタが振り向き、手を振った。それにこたえるように手を振り返し、笑顔を見せる。背中が見えなくなってから、私は手を下ろし、笑顔を消した。

「・・・何で。」


十五 知っていること

「ラン、ちょっといいか?」

「ん?」

朝食を食べていると、スタナに声をかけられた。凄く暗い顔をしている。

「どうしたー、スタナ?」

「悪い、ルタ。先にランだけに話したいんだ。」

「・・・そっかあ。」

「急ぎか?今食ってるところなんだが。」

「大事な事なんだ。」

「・・・分かった。すまない、ルタ。食べ終わったら先に部屋に戻ってて良いからな。」

「おう。」

「じゃ、ついてきて。」

スタナの言葉に従い、食堂から出る。ロビーの隅にあるテーブルの所で腰を落ち着けた。

「で、何だ?」

「・・・ランの父親って、どこにいるんだ?」

「・・・何だ、いきなり。」

「いや、ちょっと。」

「・・・私の記憶の中にはない。母親から死んだという話は聞いてないから、捨てられたんだろ。」

「会いたいか?」

「いや、別にどっちでも。・・・一体、何なんだ?」

「実は・・・これなんだ。」

神妙な面持ちで差し出されたのは、一枚の紙。裏替えされていて、内容は読めない。

「・・・何だ、これ。」

「見てみろ。」

「・・・」

紙を表に返し、内容を読む。

『Blood Bird

  ラジャット。ネルバ・ラシマーテを返せ。

 Rampant Substance 頭首 ケビン・ラシマーテ』

ラシマーテ・・・?私の名字じゃないか。

パッとスタナの方を見ると、溜息をついた。

「そいつ、ランの父親だろ。同じ名字だし・・・。しかもご丁寧に、DNAが一致したっていう手紙までつけやがった。」

そう言いつつ、もう一枚の紙を差し出す。そこには、DNA鑑定の結果が書かれていた。

『この二人は親子関係である。』

「親子関係、か・・・。それより、RS?聞いたことないが・・・。」

「『蔓延る者』って意味だって。チンピラとか、下級のどこにも所属してないヤクザを集めた組織だ。BBと張り合える組織じゃねーはずだけど・・・。父親の親権?みたいなのがあるからか?」

「・・・親権か・・・。で、何故私に見せる?これと同時にこいつの暗殺依頼でも来たのか?」

「・・・いや、違う・・・。ランの母親がBBの人間だったこと、知ってるよな?で、チンピラに殺されたことも。」

「ああ。だってその場にいたんだからな。」

「・・・そのチンピラがいたのがこのRSだったんだ。これが最近分かって、それと同じ時にこれが来たから・・・。」

「・・・来たから?」

「上の奴らが、お前にこいつの暗殺を頼みたいって。」

「・・・ほう、実の親を殺せと。」

「一回会えって事だろ?だけどノコノコ行かせるわけにも行かねーから、殺してこいってこった。元BBのエースも殺されてるわけだし。」

「・・・分かった。いつも通り、ルタも一緒で良いんだろ?」

「おう。話しても大丈夫だ。ランがそれで良ければ。」

「ああ。」

私は立ち上がり、エレベーターへと向かう。

部屋に戻ると、そこにはルタがいた。

「・・・部屋に戻っていいって言ったのに。」

「部屋だろ?」

「私のな。」

「誰のって言われてなかったし。で、さっきの話は何だったんだ?」

「・・・私の両親について、知ってるか?」

「ランの?確か母親はチンピラ・・・?に殺されて、父親はよくわからない・・・じゃなかったっけ?」

「よく知ってるな。」

「いや、ランとパートナーになるとき、幹部の奴らが教えてくれた。元はすっげーやり手だって。」

「・・・そうか。」

「で、その両親がどうかしたのか?母親が死んでなかったとか?」

「・・・いや、違う。・・・父親がな・・・見つかったんだ。」

「おー、良かったじゃん。」

「・・・だが、父親はRSの頭首。母親を殺したチンピラが、そこに所属してたんだ。」

「っ・・・。」

「つまり母親は父親のいる組織の人間に殺されたんだ。・・・当時父親が頭首だったかどうかは知らない。しかも今更・・・。」

私は懐に入れておいた紙を一枚取り出す。さっきスタナにもらった紙だ。

「見ていいのか?」

「ああ。」

目を通していくルタの表情が、段々と重くなっていく。

「それから、もう一枚。」

DNA鑑定結果の髪を差し出す。その紙を受け取り、最後の方に目線が移っていく。一通り読み終わり、紙を置いて溜息をついた。

「・・・成る程なぁ・・・。父親、か・・・。」

「で、上の奴らが言うには、党首を暗殺しろ、だと。」

「子供になんつーことさせようとしてんだ・・・。」

「今更私を子供扱いか?」

「そうじゃなくて。・・・どんだけ記憶が無くても、父親だぞ?赤の他人じゃないんだから、子供に父親殺しをさせるなんて・・・。」

「生物学上父親ってだけだからな。記憶もないし、思い出もない。赤の他人と一緒だろ。」

「うーん・・・」

「それに、母親を殺したのも父親じゃないんだろうし、当時は頭首も違っただろうしな。」

「・・・いや、確かあそこの頭首って十年くらい変わってなかったはずだから・・・。」

「・・・要は、父親が殺した・・・ってことか?」

「・・・そういうことになるな・・・。」

「・・・まぁ、どっちでもいい。仕事だから、殺す。仕事には私情は持ち込まない。」

「・・・。」

「で、今回も協力頼むぞ、ルタ。」

「・・・おう。そーいや、返せって書いてあるけど、迎えに来るのか?それとも、こっちから来いって事なのか?」

「どうなんだろうな。だが、殺せという命令が下されている以上、既に返答はしてるんじゃないか?」

「ランの心は無視、か・・・。」

「別にいい。例え組織の頭首じゃなくてもついて行く気はない。それに上の者にとって、こいつは邪魔だったんだろ。なら殺す。父親が当時頭首だろうが、なかろうが。・・・というかルタ、よくRSの事知ってたな。私は一度も聞いたことなかった。」

「あぁ。前に聞いたことがあって。チンピラ共を集めてるだなんてろくな組織じゃないんだろうなって思ってたんだよ。時々新聞にも載ってるぜ。」

「そうなのか?・・・私は、最近新聞を読まないからな。それで知らないって事もあるかもしれない。」

「かもな。そーいや、俺の方っつーか。ラン込みで来てた依頼があったんだけど、行くか?」

「行く。折角来てるんだからな。」

「よし、んじゃ行こう。」

「今すぐなのか?」

「いや、ちょっと遠いいから。」

「成る程。」

ーー

そして、夜。ロビーにいると、フロントの人に声をかけられた。

「ラジャット様、お電話です。」

「ああ、ありがとう。」

電話を受け取り、受話器に耳をあてる。

「・・・もしもし。」

『黒猫様ですか?』

「そうだが。・・・何の用だ。」

『私はRSの者です。頭首が会いたいと。手紙は届いていますよね?』

「あぁ。・・・だが、今からか?」

『ええ。夜遅くなるかもしれないので失礼かもしれませんが・・・。』

「構わない。私は黒猫だ。猫は夜行性だからな。」

『そういって頂けるとありがたいです。では、ローアルホテルまでの迎えがもうついている頃だと思うので、黒の車に乗ってください。』

「・・・そこから出掛けることは?」

『ありません・・・多分。』

「多分じゃ困る。夜も遅いのでな。そこから出ないと約束してくれ。」

『・・・少々お待ち下さい。』

暫しの沈黙。その間に、近くの髪にホテル名を書く。ローアルホテルは、ここら辺に住んでいれば全員知っているようなところだ。

『もしもし。』

「どうだ?」

『上の者に確認して、ホテルからでることはないと約束するそうです。』

「分かった。直ぐにいく。では。」

『お待ちしております。』

電話を切り、急いで部屋に戻る。チェストの上に置いてあるナイフと拳銃を持ち、下に戻る。

フロントにいる人に声をかけた。

「すまない、もし私を探す人がいたらこの紙を渡してくれ。」

「探す方・・・ですか?」

「ああ。パーレンとか、ピューロリスタとか。」

「分かりました。・・・お気つけて。」

「ああ。」

ホテルを出ると、正面に黒い車があった。人が出てきて手招きされたから、多分あの車であっているのだろう。

乗り込むとすぐに発信され、中には運転手と、助手席にいる二人しかいなかった。手招きしたのは男。しかし、運転手は女だった。

「夜分にすみません。頭首が電話するのを凄く渋ってまして・・・。」

「・・・構わない。」

「そう言って頂けると嬉しいです。二十分くらいでつきますから。」

「ああ。」

運転手の女が気さくに声をかけてくる。二人とも、殺気や狂気は感じ取れない。・・・というか、逆にピンク色の気配が漂っているんだが・・・恋人か?

そんな事を考えていると、あっという間にホテルに着いた。ドアを開けて外に出る。ドアを開けたまま、中に声をかけた。

「安全運転ありがとう。では。」

その場を離れ、中へと入っていく。中はとてもキラキラしていた。フロントの女性に声をかける。

「先ほど呼ばれた黒猫だ。」

「こんばんは、黒猫さん。夜分遅くのお伝は失礼しました。」

「ああ。」

声で、電話の相手だと分かった。

「案内致しますので、こちらへどうぞ。」

案内されるままついて行く。連れて行かれたのは最上階だった。

「この中にいらっしゃいます。」

「ありがとう。」

「いえ、それでは。」

スッと頭を下げられる。私は、ドアノブにかけた手に力を入れ、ガチャッとドアを開けた。

正面にはテーブルと四つの椅子。その向こうのデスクの所に、四十代くらいの男性がいた。

「久しぶり、ラジャット。」

「・・・初めまして。」


続く

「H・F」・・・彼女は、ハイネ・フランクヴァイスです!!

とってもいいキャラなので、愛してあげてください!

そして、ルタのちょっと暗い過去、ランちゃんのお父さんの話が出てきます。


次回も、お父さんが出てきます。

彼ら彼女たちの事をもっと知ってほしいです!知ってもらえる二話になってもらえると嬉しいです!


次回もお楽しみに!


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