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穢れなの天使  作者: 二ト
3/12

誕生日

五 拉致された「ラン」

ロビーの近くに飛び込むと、近くの椅子にスタナが座っていた。

「スタナ!何があった?」

「ラン、ルタ!無事だったか!」

「どうした?」

「さっきお前らの行った店が襲撃されたって聞いたんだ。」

「結構危なかったけどな。・・・それで、何かあったのか?襲撃されたくらいで俺らを呼び出したわけじゃねーだろ?」

「それなんだが……」

「?」

「ランが拉致られた。」

私とルタは顔を見合わせて、お互いの頭の上に出ているハテナマークを眺めた。

「ランって……私の事か?」

「あ、悪い。ラン……ラジャットじゃなくて、俺の妹のことだ。」

「妹?」

「ああ。ランって名前なんだ。俺と九つ違いの妹だ。」

「……なんで拉致られたんだ?」

「お前らが出かけた後にランから連絡があって、街に出かけたんだ。少し席を外して戻って来たときにはもういなくなってて・・・。こっちに来てるのかと思って戻ってきたら電話が来て、男の声でこういったんだ。『ブラック・キャットは預かった。返してほしければ夜十時、メゾナ港まで来い。ああ、残念だがあのパートナーを使おうと思っても無駄だぞ。今頃は重体か、もう死んでるかもしれないからな。』って。ブラック・キャットっていうからラジャットの事かと思って連絡したんだ。安否確認も兼ねてな。そしたら今、普通に戻って来たんだ。」

話しを聞いて、何となく状況を理解した。ダンッと机を蹴る。

「そういうことか・・・クソ!」

「今の説明で分かったのか?」

「ああ、なんとなくならな。」

「えっと・・・教えてもらってもいいか?」

「スタナの妹は、今何歳だ?」

「えっと、十五だ。」

「拉致った奴らは、ブラック・キャットを拉致ったと言っていた。私の事をどこまで知っているかは分からんが、スタナ・・・二代目ボスと一緒に歩いている少女、そしてランと呼んでいたら、私の事だと思う奴らもいるだろう。」

「いや、でも敵側が、ランの名前知ってるか?」

「・・・ルタがよく私の名前を呼んでるだろ。コードネームすら使わずに。」

「そうでした・・・。」

「そして襲撃されたのがルタのいた店。話の内容を考えても、あの襲撃はルタを狙ったことは間違いない。」

「じゃあ、なんで俺一人だけ狙わなかったんだ?あんなんだと俺に当たんねーかもしんねーのに。それにランの事だって、俺らの事知ってんなら、こいつの妹と間違えるわけねーだろ。」

「そこなんだ。私も考えたんだが、作戦を立てた奴と実行した奴を一緒に考えるからごちゃごちゃになるんじゃないか、と。」

「・・・」

「・・・?」

「分かるか?」

「・・・そういうことか・・・。」

「スタナ、今ので分かんのかよ!俺全然わかんねーや。」

「作戦を立てた奴は、俺らの顔を知っている奴。そいつが実行した、俺らの顔を知らねー人間に頼めば、命令だってあやふやになるだろうし、勘違いだってするだろ。例えばボスが知ってても、部下が知らなかったら同じ組織でもそういうことは起こるだろうしな。俺らみたいにそういう仕事の専門じゃなさそうだし。」

「そんなバカみたいな事が起きんのかよ・・・。」

「実際に起きているんだ。そして、私たちに被害が出ている・・・存外、馬鹿にできないぞ。」

「俺らのことを知っている組織・・・あ~クソッ!いっぱいいすぎて考えても行き詰っちまうし、時間は刻一刻と迫って来てるし、ランの安否も分かんねーし・・・どうすりゃいいんだ!

そういって、スタナは頭をグシャグシャと掻いた。

「・・・スタナ、私が行こう。」

「・・・えっ?」

「本物が出て行った方がいいだろう。」

「でも・・・!」

「そうだな。俺も行くわ。・・・パートナーは死んじゃいねぇぞっていうのを見せてやる。」

「ルタ・・・!」

「襲撃には奇襲で対応してやろうじゃないか。」

「だな!」

ルタと二人で一致団結していると、スタナが立ち上がった。

「俺も、ついて行っていいか?」

「・・・何でだ?」

「俺の妹っていうのもあるし、それに半分身内みたいなお前らに全部頼むっていうのもあれだし、な。」

「まぁ、俺はいいぜ。スタナだって実力は一応あるわけだし?」

「一応って・・・お前なぁ!」

「事実だろ?お前、暗殺の方の仕事全然してねーし。元々俺らよりも弱かったし。」

「っ・・・!」

ルタの言葉にゔっと詰まるスタナ。私はそれを見つつ、パンパンと手を叩いた。二人の視線が私の方を向く。

「そうと決まったら、とりあえず休んどけ。メゾナ港か・・・一時間前にはここを出る。その十分前にはここで集合だ。」

「分かった。」

「オッケー。」

「よし、解散。」

そういって、私は立ち去ろうとする。

取り敢えず、この格好から着替えなくては。

「あ、ちょっと待ってくれ、ラン。」

「ん?なんだ。」

二人に「椅子に座って。」というような目でしぶしぶ座る。

「ほら、これ。」

と、スタナから紫色の箱を渡された。

「・・・なんだ、これは。」

思わず癖で、爆発物かどうかを耳に当てて確認する。

「大丈夫だ。怪しいもんじゃねーよ。つーか、仲間にそんなもん渡さねーよ。」

「じゃあ、なんだ。」

「誕生日プレゼントだよ。」

「・・・誕生日?」

「ハッピーバースデー。」

「・・・今日だったけな?」

「もしかして、忘れてたのか?」

「ああ。すっかりな。」

「そっか・・・だからテンション低かったのか。」

「だから、と言うわけじゃないんだが・・・?それに、これはいつものことだからな。」

「今日くらいはゆっくりしてもらおうと思ってたんだけどな。」

「ああ、それで今朝ごちゃごちゃやってたのか。」

「そういうこと。ほら、開けてみろよ。」

言われた通り、紫色の包みを開けていく。中から、薄紫色のカーディガンが出てきた。

「これは・・・?」

「仕事用でも、休日用にでも、好きなように使ってくれ。内側に拳銃が入るようにしてもらった。」

「・・・ありがとう。」

「俺からは、これ。」

ルタからは、四角い赤い箱を渡された。ずっしりと重く、なんとなく持ちなれている気がする重さ。

「これは・・・?」

開けてみると、銀色に光る拳銃が入っていた。

「ハッピーバースデー。」

持ってみると、やはり重い。見た目的に、オートのやつだろう。

「デザートイーグルってやつだ。女子供が使うと肩が外れるっていう話だけど、ランなら上手く使うと思って、な。」

「ありがとう。」

何であれ、武器はあるとありがたい。拳銃でオートは基本使わないが、少し使ってみようか。折角もらったものだからな。

「これ、フルオートか?」

「ああ。一回引くだけで連射できる優れものだ。オーダーメイドで作ってもらったんだ。ちゃんとランの名前も掘ってもらってるぞ。」

「ありがとう、二人とも。・・・じゃあ、また後でな。」

私は、今度こそ自室に戻る。

自室について買ったものを脱ぎ、いつもの服に着替える。ただし、ルタにもらったネックレスはつけたままにしておく。長いと邪魔になると思ったのか、短いタイプのものにしておいてくれたらしい。

鷹のチャームが揺れる。チャームは冷たいはずなのに、とても暖かく感じた。

ルタにもらったオートの拳銃を箱の中から取り出す。グリップの下の部分からマガジンを入れる。

ガシャンと気持ちのいい音がした。

上の部分を引いてから発射するのか。・・・今使っているのとあまり変わらんな。

予備のマガジンは十個入っていた。一発撃つだけで、銃弾の中に入っている三つの小さい弾丸が発射されるという優れもの。

少し考え、箱の中から五つのマガジンを取り出す。

スタナからもらった上着に、デザートイーグルと呼びのマガジンをしまう。それをハンガーにかけ、タンスをかけておく。

後は着て出かけるだけの状態にして、ベッドに横になった。

残り時間、何をしようか・・・。

ふと、風呂に入ろうと思い、シャワールームに向かう。

長い髪が邪魔だな・・・。

一瞬切ってしまおうかと考える。その時、ルタが頭を横切った。

あいつは、どっちが好きなんだろう・・・。

パッと我に返り、頭をブンブンと横に振る。

どうだっていいだろ、あいつのことは!

兎に角シャワールームで髪と体を洗う。タオルで髪を拭きつつ、外へ出る。

いつ頃からいたのか、ルタがベッドの上でくつろいでいた。

「来ていたのか。」

「邪魔してるぜ。」

フーとため息をつきつつ、冷蔵庫からペットボトルの水を二本取り出し、一本をルタに放った。

「サンキュ。」

軽く頷きつつ蓋を開けて、飲む。

・・・やはり水は美味いな。

「それにしても珍しいな、ラン。お前が人助けするなんて。」

「人助け?フン、そんなお綺麗なもんじゃない。」

「でも、スタナの妹を助けに行くって・・・。」

「・・・ただ単に、スタナが困ってたのと、私と間違って連れていかれたって事だから、それで死んだら寝覚めが悪いからな。」

「そっか、そっか~。」

ニヤニヤ笑いながら、ベッドの上でユラユラ揺れ始めた。

「そんな目で見るな。・・・人助けなんて御免だ。こっちに利益がなければ絶対にやらない。そもそも興味ないからな。」

「・・・俺がそうなっても、そう考えるか?」

「そうなってもって?」

「俺が拉致されて、死にそうな状況?」

「さあ、どうだろうな。まずその前に自力で脱出しろというかもな。」

「そうか・・・俺だったら、すぐ助けに行く。」

「その前に自分で逃げる。」

「っ・・・。たまには人を頼れ。」

「時々、な。」

なんとなく、沈黙が生まれる。

「そういえばスタナって、俺らとこういう仕事したことってあったか?」

「ないはずだ。あいつも一応上の人間だからな。事務系の仕事が回されるんだろ。」

「そうだった。大丈夫なのかなー。足手纏いになんねーかな。」

「さぁな。だが、大丈夫じゃないのか?実力はあるだろうからな。心配なのは私の方だ・・・。」

「ランが?!なんでだ?」

「銃とナイフ取られたら、危ない気がしてな。」

「それこそ大丈夫じゃねーの?ラン、俺を投げられるくれー強いんだし。」

「ならいいんだがな・・・。」

気が付くと、もう約束の時間だった。

「そろそろ行くか。」

「おう!」

ハンガーにかけた上着を羽織りつつ、外に出る。自室の鍵を閉め、エレベーターに乗って下へ降りる。

少ししてからスタナが来た。

「悪い!待ったか?」

「いや、俺らも今来たし、大丈夫だ。」

「そっか・・・んじゃ、行くか?」

「ああ。車は駐車場に止めてあるからな。」

「そーそ。赤いやつな~。」

「・・・運転は?」

「いつも私がやってるんだが・・・スタナ、頼めるか?」

「え?ああ、いいけど。」

「よし、少し決めたいことがあるんだが。敵がスタナの妹を私だと思っているなら、そのまま私をスタナの妹と思わせよう。で、ルタが付き人。」

「まて!なんで妹がいるんだってことになるだろ!」

「私と妹を交換させればいい。それくらい大事な奴だと思わせる。そのまま交換できればすべて完了。交換できなければ、まぁその場で考えればいいだろ。」

「・・・さっき言ってた奇襲は?」

「考えたんだが、妹がいるならあまり積極的にできないプランだな。」

「で、ランと妹が交換できた場合、ランはどうするんだ?」

「まぁ、何とかなるさ・・・・・・」

言い終わる前に、ルタがダンッと机を叩いた。

「何とかなる?ふざけんな!なるわけねぇだろ!」

「・・・何を怒っている?」

「ランの、自分を大切にしないところについて怒ってんだ!」

「・・・」

「まぁ、ルタ、少し落ち着いて・・・」

「確かにランは強えーよ!でもよ、そういう問題じゃねーだろ!ランが死んで、悲しむ人間がいるとか考えねーのかよ!」

「・・・」

「それともなんだ?自分は死んでもいいとか思ってんのかよ!」

「・・・」

「ふざけんなよ・・・何とか言えよ!」

「・・・」

「なぁ、教えてくれよ・・・ランが何考えてんのか、俺分かんねーよ・・・」

「ルタ・・・」

「落ち着いたようなら、行くぞ。」

「ラン・・・!お前なぁ!」

「ルタが聞いたことは、話せる時が来たら話す。・・・私も、よくわからない。今はそれだけだ。」

私は二人に背を向け、駐車場へ向かう。ルタの事は頭の隅へ押しやった。」

さあ、外道どもを血祭りにあげてやろうじゃないか。



続く


ランちゃんハッピーバースデー!


っていう感じの回です。でもストーリー的には「そんなことしてる場合かぁ!」っていう流れですww


妹ちゃんの説明ちょっと難しかったかなって自分でも思ってます。しっかり伝わってほしいです。

それから、ルタが怒りました。彼なりに、ランちゃんの事を思ってのことです。多分。


次は妹ちゃんがでてきます!

同じ名前なので、見分けつかなかったらごめんなさい。

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