行方
10/28改稿
2023/8/20
追記更新
時刻は朝9時過ぎ、ベットから上半身を起こし脇にあるカーテンを開けると陽の光が差し込み部屋の中を照らす。
「んー…」
陽の光に反応してイーナが身をよじる。カーテンを再び閉めると私はベットから立ち上がりイーナを寝かせたまま一階に降りる事にした。
「おはようございます」
「おはようございます。昨日は本当にありがとうございました」
「お気になさらず、マルクは大丈夫そうですか?」
ローレンスとアンナは深々と頭を下げる。私はカウンターに移動しながら、店内を確認すると客はいない。レオンがソファーで寝ているだけだった。
「マルクはまだ寝ています。傷の手当ては済ませましたが、まだ疲れているのでしょう」
アンナは紅茶を差し出して、カウンター奥に戻っていく。
「いただきます。今後の件ですが…」
「この店は閉めて別の場所か街で暮らした方がいいだろうな」
食器入れから素早くナイフを取り出し後ろを向かず後ろに突き刺した。
突き刺したナイフはいつの間にか後ろに立っていたレオンの指の間で受け止められ奪われる。
私の隣に座るとナイフを食器入れに戻し、アンナにコーヒーを頼む。
「朝から元気だな」
「朝から気持ち悪いのよ」
「ふっ。俺はもうそんな言葉じゃへこまないぜ。リーゼ?」
ふんぞり返り、そう答える。
本当に腹立たしい。
「リーゼさんと言うのですね、名前を聞きそびれていたので」
アンナがレオンにコーヒーを差し出しながら、私の名前を嬉しそうに呼ぶ。
「いえ、申し遅れましたリーゼロッテです」
「こちらこそすみません、恩人の名前を今更聞くのも失礼かと思いまして、しかし愛称で呼ばれるとはレオンさんとは仲が良いのですね」
「何せ俺の妻になる女だからな」
あらまぁとトレーで口元を隠し、私とアホを交互に見やるアンナ。ローレンスまで暖かな眼差しを向ける。
片手で頭痛などしないはずの頭を抑え、私は溜息をつく。
「このアホの発言は無視してください。話を戻しますよ」
穏やかな空気が流れていた店内を無理矢理変えると話を続けた。
「ローレンスさん、約束通りラルクくんは見つけましたがこの後どうするつもりですか?」
「そうですね。ラルクがどこで見つかったかは聞いてもよろしいですか、リーゼロッテさん?」
おおよその見当はついているだろうがローレンスは聞いてきた。
「マフィアのアジトよ」
「やはり…そうですか…」
ローレンスは深く息を吐きアンナと向き合った。
「アンナ、すまないがこの店を閉めて違う街で新しく店を始めよう。粘ってもこの地区の開発はこの街の政策の一部なんだ。それにラルクをこれ以上危険に晒すわけにはいかない」
「そうね、仕方がないわよね…」
アンナは店内を見渡し、涙を流す。
ローレンスはアンナを抱きしめる。
「それで、リーゼはお嬢ちゃんをどうするんだ?この街の施設に連れていくか?」
イーナは何処から攫われたかわからないし、ローレンス夫妻に引き取ってもらうわけにもいかないだろう。何よりあの姿だ。また良からぬ連中に利用されかねない。
レオンの問いに私が考え込んでいると、店の扉が開かれた。
「お客様、すみませんが本日は休業でして」
慌てた様子で入ってきた男にローレンスは声をかけるが、男は息を整えるとローレンスを無視して私に声をかけてきた。
「姉さん!大変っす!」
「誰が姉さんよ」
振り返ると慌てた様子のクライスが
いた。私の言葉を無視して
「姉さんの相棒がマフィアのアジトから帰ってこないんっすよ!」
「おい、ガキ!」
レオンが突然立ち上がり
「相棒ってなんだ。あぁ?」
無駄に覇気を漂わせ、クライスを威嚇しローレンス夫妻は顔を青くする。クライスはアホの存在に声がかけられてから気付き、驚愕の顔を青白く変化させていた。
「こ……孤高の死神……」
レオンの2つ名らしい言葉を吐き、今にも倒れそうなクライス。私に言い寄ってくる姿からは考えられない2つ名だ。
私は手にしたフォークでレオンの二の腕を刺し、覇気を霧散させる。
「なんだよリーゼ。こいつとはどういう仲なんだ?」
「少なくともあなたより親しい間柄ね」
えっ?とクライスは目を丸くし、ほぉっと指を鳴らすレオン。
「ローレンスすまないな。店をたたむ前に潰しちまうかもしれない」
「ね……姉さん!何いってんすか。俺と会うのは初めてっすよ!?」
フェリクスの姿では会っているので、つい親しい間柄といってしまったが確かにそうだ。
「フェリクスから話は聞いているわ。正確な情報が売りの情報屋さんね」
それからクライスは周りに自己紹介をし、先程の話をしようとしたが、
「フェリクスなら心配ないわ。今頃何処かの土の中よ」
レオン以外は頭に?を浮かべ、アホは憮然とした顔をしていた。
「フェリクスさんというのはその……」
「あぁ、昨日ここにきたマフィアを始末した人っす」
アホは興味深く話を聞き、ローレンスはあぁっとうなだれた。
「私はなんという事を……助けてくれた方に化け物などと……」
「気にしないでください。お伝えしなかった私が悪いので」
しかし、とうなだれるローレンスの肩をアンナが支える。
「一度殺りあってみてぇな」
拳と拳を胸の前でぶつけ、物騒なこと言う。
私用が多分に入った言葉を無視して私は冷めてしまった紅茶を見つめた。