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劔の記憶  作者: はじめ
第1章
6/129

名前

10/28改稿


2023/8/20

追記更新

Sランクというのは本当のようでアジトで鉢合わせた相手はレオンがラルクを抱えたまま()()()()無力化していった。

そのままアジトを抜け出し仕方なくレオンの後に続いて走っていた。

 今は時間にして深夜0時あたりだろうか。ローレンスの店からアジトまで大体2時間かかったので着くのは深夜2時あたりになりそうだ。

 子供たちは流石に疲れもあってアジトを出てすぐに寝てしまった。

 マルクを抱えているレオンに私は何故か話しかけていた。


「なぜ協力してくれるの?」


「言っただろう?あんたに惚れたって」


「バカじゃないの?」


過去にも求婚してくる相手はいなかった訳じゃない。

大概は私の強さを知って諦めていく。

過去の主達にしたって絆こそあれどそういった関係になったことなどない。

それなのにこの男は…


私は軽く首をふりこの事を考えるのをやめた。


「それに味方に敵対していいの?仲間なんでしょ?」


「なんだ、あんたは子供には向かってくるものには大人しくやられろって教える主義なのか、味方だろうが俺は向かってくるものは全滅させろって主義だが」


「……」


 私は黙ってしまう。

確かに今の時代では向かってくるものを生かしていては後々やっかいなのでその考え方も間違ってはいない。

現にローレンスの店の前では私に向かってきたものは全滅させている。

私が黙っていると、


「この坊主は少なくともその嬢ちゃんを守ろうと身を呈して俺たちに抵抗の意思を見せたんだ。勝てるわけないがそんくらいの覚悟はもう持っているだろ」


「でも……まだこんなに小さいのに」


 この男に会ってから、私の中で何かが起きていた。

主以外の人間などこれほど気にもかけた事などなかったと言うのに。

 マルクを助けにきたのも言ってしまえば、過去の主の言葉がフィードバックしてその主が取るであろう行動をなぞっていると言っても嘘ではない。だから、私の行動が矛盾している事もある。

 しかし、今はまるで剣である私が人間の心を理解しようとしているかのように考えることがある。


 アリエナイ、ワタシハタダノヘイキ


 私は私のありえない考えをやめそれ以上喋るのをやめた。


「あー、その、なんだ?あんたがマフィアのアジトにまで人助けにくるそこそこ強いお人好しなのはわかるんだが考えすぎんなよ」


 メンタル繊細なくせに励ましてくるレオンに私は面食らって思わず笑ってしまう。


「ふふっ」


「なんだ、あんたいい顔で笑えるじゃねぇか」


「あんたやてめぇじゃない、リーゼロッテよ」


自然にそう答えていた。


「あぁ?」


「二度は言わないわ」


 この街に来て初めてオリジナルの名前を人に教えた。

ありえない行動に自分自身で驚く。


「聞こえてるさ、リーゼ」


「ふんっ」


 私はそっぽを向き、子供みたいな反応をしていた。

 それからしばらく、リーゼリーゼとうるさいアホを放置して走っていると

 おんぶしているイーナが、んんっと言う声とともに動いた。

 私は立ち止まり、イーナを正面に向かい入れるように抱きしめ、笑顔を送った。


「起こしちゃった?大丈夫?」


 今度は私の目をしっかり見据え、安心したように自分から抱きつく力を強くして


「ママ…」


 今にも消えそうな声でそう言い、また眠りについた。私はイーナの言葉に驚き硬直してしまう。


「どうした、リーゼ?大丈夫か?」


「あなたが五月蝿いから起きたのよ」


 私はイーナをおんぶの体勢に戻しまた走り出す。


「後、30分も走ればマルクの家につくわ。早くいきましょう」


「ママねぇ」


 この地獄耳が。


マルクやイーナがいなかったらぶちのめしていたのに。


 ニヤニヤしているレオンを無視して私は実力的にできないことを考えていた。





 ローレンスの店のあたりにつくと深夜2時頃だと言うのに少しばかり人だかりができていた。

 自警団らしき人物を中心に何かを片付けた後のようだ。


「何があったんだ?」


 レオンはちょうど近くを歩いていた自警団らしき男にぶっきらぼうに声をかけた。レオンと私が背負っている子供を見ると自警団らしき男は、


「あぁ、大量殺人さ。見るも無残な首なしの仏さんが18人。ひどいもんさ。あんたらも夜中に子供を連れてないで気をつけて帰りなよ」


 そう言うと自分の仕事に戻って言った。

 レオンが何か言いたげに私を見ていたが無視して歩みを進め、ローレンスの店の前にローレンス夫妻が自警団らしき別の男に事情を聞かれているのが見つける。


「ローレンスさん、アンナさん」


 私は2人に声をかけると、


「あぁ、あなたは戻ってこないから殺されたのかと心配して…」


「ラルクッ!」


 ローレンスより早く気づいたアンナがラルクをおんぶしているレオンに駆け寄ろうとしたが、途中で止まった。

 レオンは特に何もしていなかったがその風貌だ。一般人には立っているだけで恐怖だろう。

そんな男がラルクを抱えているのだ立ち止まっても仕方ない。ちなみにローレンスは顔を青くしてその場で立ちすくんでいる。


「あぁ?坊主の両親か。ほら、もう目をはなすんじゃねぇぞ」


 アンナは目を丸くしてラルクを抱きしめるようにうけとる。

 レオンは渡し側にラルクの頭をそっと撫で


「坊主は強い子だ。しっかり育ててやりな」


 はっとローレンスとアンナは我に返りレオンと私に何度も何度も頭を下げ礼を言った。

ローレンスから何かお礼をと言われ私は断ろうとしたのだが不躾な男が


「なら飯でも貰おうか。中で待たせてもらうぞ」


 夫妻の了承もなしに中に入っていく。


「すみませんがあなたも中で待っていてください。背中の子も疲れているでしょう。こちらはまだ自警団の方達と話がありますので…」


 ローレンスはラルクを抱いたアンナにも中で待っているように伝えアンナは私を促すように中に入っていった。


「では、お言葉に甘えて失礼します」


 ローレンスにそう言うと私もアンナの後に続いた。


 中に入るとレオンはカウンターの中から酒瓶を取りカウンターに座って瓶ごと酒を煽る。

 アンナは特に咎めることはせずカウンター奥から二階に上がっていった。

 私はカウンターに向かわずテーブル席に向かい、イーナをソファーに寝かせようとして髪の色が目に入り驚いたが、服を握った手をどうしても離せず服を乱しながらイーナを抱っこし、ソファーに座ることにした。


「随分と懐かれたもんだな」


 酒を煽りながら話しかけてくる。


「母親と勘違いしてるのよ、この子の髪の色私と同じでしょ」


 私はイーナの頭を撫でながら、


「アジトと外じゃ暗くてよくわからなかったから金髪かと思ってたけど今時珍しいのよ、私みたいな髪の色の人間は。だから攫われたのかも」


「確かに俺みたいな赤毛か坊主の栗毛色、金髪が普通だな。遠い血縁者じゃないのか?」


 適当な事を言って酒を煽る。

 剣である私に血縁者がいない事は当たり前なのでレオンの言葉を否定する。考えられる理由は1つ。

 この子は魔法が使える。それもかなり強力な。

髪が青みがかった白髪になるのは魔力による干渉であり、大気中の魔素を取り込んでいるからで大魔法使いはみな青みがかった白髪だった。

可視化の領域で懐かしい感触を感じた原因はこれだった。

 ただ大昔の時代の話で魔法が失われた世界では知る者はいないので、見世物として攫われたと言うのが真相だろう。


「リーゼはこれからどうする?俺の妻になるならリーゼもお嬢ちゃんも俺が守るぞ」


「ありえないわね」


「頑なだねぇ」


「あなたこそ何でオーケーをもらえると思っているのよ」


「なんだよ、気づいてないのか?」


「何をよ?」


「名前を呼ぶたびに嬉しそうな顔してるぜ」


「…」


 鏡を見たら顔が真っ赤になっている事だろう。

 私は絶句して私の顔を手で触ろうとしてずり落ちそうになったイーナを慌てて支える。


「くっくっくっ」


 レオンは楽しそうに笑った。


 こいつに名前を教えたのは間違いだったわね。


 唇を噛み締めレオンを睨んだ。

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