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劔の記憶  作者: はじめ
第1章
4/129

化け物

残酷な描写があるので苦手な方はご注意を。


10/28改稿


2023/8/20

追記更新

「クライスの言う通りだったか」


 キメラのアジトに向かう前にローレンスの店に戻ると周りは如何にも物騒な集団が辺りを取り囲んでいた。

 街灯は少なく何人が取り囲んでいるかわからないが、何人かは閉ざされた扉に向かって怒声をあげている。


「悪いがそこを通してもらえるか?」


 私は集団に向かって歩きながらすでに展開していた可視化の領域で集団の人数をや位置を把握しつつ声をかける。集団は私を見ると取り囲む様に移動し、集団のリーダーであろう男から声がかかる。


「傭兵ごときがなんのようだ」


「この店の紅茶が美味しいので飲みに来ただけだ。傭兵ではないがな」


 とりあえず適当に答える


「なら運が悪かったな、この店はもう金輪際開店しない」


 じりじりと周りの男たちが近づいてくる


「それは困るな。この店の紅茶はまだ飲み足りないんだ。悪い事は言わないからこのまま集団を引き上げてくれないか?」


「なめてんじゃねえぞ、テメェ!!」


 私がそう答えると周りを囲っていた男が怒声をあげながら刀を振り上げ迫ってくる。


 ザンッ!


 私は私を引き抜き、振り上げた両腕ごと迫って来た男の首をはねる。

一瞬の出来事に呆気にとられる集団だったが仲間がやられたとわかると表情を怒りに任せて歪め襲いかかってきた。


「学習しない奴らだな」


 私は迫りくる刃をかわし一振りで首を刎ねていく。可視化の領域内では有効範囲のみ相手の行動が手に取るようにわかる。

 圧倒だった。

 囲っていた十数名を切り捨て、残り1人となった状況を静観し立ち尽くしていたリーダーの首筋に私を充てがう。


「短期は損気とはこう言うことを言うんだな。」


「ば…化け物か…」


 リーダーの表情は恐怖に歪み、歯をくいしばる。


「1つだけ質問がある、マルクと言う子供を攫ったのはお前達か?」


「…答えると思ったのか」


「なら生かしておく理由はないな」


 私は私を振り抜き、リーダーの命を奪った。


今の時代人の命は軽い。


自治機構が厳格な時代ならともかくこういった連中なら気を遣う必要もない。

 情報屋の話からマルクがこの場にいないことを見みるとアジトに囚われているのだろう。

 私は私を振るい付着した血を落とすと鞘に納める。

 ふとローレンスの店から視線を感じ、扉を目にやるとローレンスが扉の間から顔をだし店の前の凄惨たる状況に顔を歪め、小さな悲鳴をあげた。

 そしてその場にいた私を恐怖で彩られた顔で


「ばっ…化け物!!」


 そう叫び扉を勢いよく閉めた。

 やり過ぎたかと思ったが、私はあくまで兵器なのだ。向かってくる相手にいちいち遠慮はしていられない。


「こりゃ驚いたっす、兄さんどんだけ強いんっすか」


「お前は化け物とは言わないんだな」


 可視化の領域で気づいてはいたが、状況がおさまった途端近づいて来ていたクライスに自嘲気味にそう言った。


「傭兵ギルドの連中と連んでると、こんな状況によく出くわすっすよ、今更驚かないっす」


 クライスは視線をローレンスの店に一度向け、私に視線を戻すと


「だけど頼って来た相手にあの態度はないっすね」


そうはいうが知らぬ男が十数人相手に殺傷沙汰だ。

ローレンスがそういうのも無理はないだろう。


「一般人なら仕方ないさ」


 肩を竦め、


「それより、何か用があるんじゃないか?」


 話を進めることにした。


「あぁ、兄さんと別れた後にちょっと調べ直してみたんっすけど、物凄く強い用心棒ってのがSランクらいしんですが、兄さんの実力なら大丈夫っすね」


 クライスのちょっとが気になるが情報収集能力は高いようだ。傭兵ギルドで聞いた話もあっていたし、クライスはかなり優秀なのかもしれない。


 しかし、Sランクか…


 本当にSランクならば、主がいれば負けはしないだろうが、私1人では確実に負ける。


「正直なところSランクには敵わないな、ローレンス夫妻の相談に乗った以上ラルクを助けに行くことに変わりはないが」


 私が正直に答えると、クライスは驚いた様で、


「兄さんでも敵わないっすか?Sランクってのは本物の化け物なんっすね。けどそれならラルクを見捨ててもいいんじゃないっすか?」


「言っただろう。それに相談に乗った以上に自分ですると決めたことはやる主義なんだ」


「だったら、連れの女性の力をかりるとか…」


 それができたら苦労はしない。生憎私が二人になって行動する魔法などはないのだ。

 私は苦笑しながら、クライスの肩に手を置き言葉を遮る


「今度は何があっても付いてくるなよ。Sランク相手じゃ何かあっても助けられないからな」


 クライスが頷くのを確認してから私は踵を返し、キメラのアジトに向かうため歩みを進める。

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