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8話 『とりあえず廃工場へ行こう』

 トリガーたちが町に滞在して三日。

「暇なのです!」

 旅をして回っていたトリガーには少し退屈な様子。

「ストック! どうにかするので――どうしたのです。サイト」

「……」

「おお、このクエストは!」

 一波乱の予感。


【イメージ】

 サイトの見せたチラシに食いつくトリガー。

「ストックぅ。これ行くのです」

「どれですか?」

 討伐クエスト。廃工場で大会を催します。住み着いたモンスターを一番多く倒した人が優勝です。個々の順位に応じてお食事券を配布。協力や妨害ありのお祭りイベントです。ふるってご参加ください。

「妨害あり、ですか」

「全員倒すのです!」

(自分への被害は考えないのでしょうか)


【旅は道連れ】

「みんなで参加するのです」

「サイトちゃんは一人で戦えませんよ?」

「……」

「ウィールねえに任せるのです」

「カノンさんたちも来ますの?」

「聞いてないのです。でも絶対に来るのです」

「どうして」

「賞品はお食事券なのです!」

「ああ、来ますね。巻き込まれて」


【やることやってから】

「ところでリッピーはどこなのです?」

「……」

「え! まだやってるのです?」

「まだ?」

「あ、いやその」

 トリガーが後ずさり、誰かにぶつかった。

「クエスト放り出して遊びに行くとは、自分は感心しませんが」

「リ、リッピー……」

「トリガーちゃん?」

「と、とぉ、と、ときに落ち着くのです!」


【受注できるだけ受けとく奴】

「まだ五つもあるんですか?」

「ひどいときは、日に二、三種受けてたようで」

「トリガーちゃん」

 腰を椅子に、顎を机に、足をぶらぶらむくれ顔。

「暇だったのです。でももういいのです。溜まったうずうずをモンスターで発散なのです!」

「その前に残ったクエストを消化してくれないかと」

「リッピーがやってくれなのです」

「ではこちらのクエストは破棄してきますね」

「わー! 分かったのです、やるのです! ちゃんとやるからやめろなのです!」

 この後ちゃんと――トリガーは一つだけ――片付けました。


【CM入ります】

 大会当日。

「さぁ、やって参りました。廃工場モンスター大討伐祭! 司会進行を務めさせていただくのは私、皆様のモチベーションのためアクティベーションをモットーに、ポーションからローションまであらゆるクエスチョンにオプション増し増しセレクション! アイテムショップ、アットマートのメディでございます。皆々様ご贔屓によろしくお願いいたします!」

「メディ、時間ない」

「じゃあ実況と解説はこの三人です。はい」

「俺たちの説明雑過ぎやしないか⁉」


【前振り】

「あー、改めまして。実況は俺に知らねぇ面はねぇ、洋食屋フォールハートの店長。解説にはウィールさんとサイトさんをお迎えしております」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「ウィールさんはこの大会どう見ますか?」

「そうだね。今回は……」

「さぁ開幕だぁ! ルールは簡単、たくさん倒せ! ソロでもグルでも大乱闘、とにかくぶっ倒せぇ!」

「それ言うなら始めてから聞いて?」


【言い方】

「ではマイクを切り替えましょう」

 実況席に参加者の様子が映像でつながる。

「改めてウィールちゃんはどう思う」

「今回は個人で競い合うルールを主軸に置いているから、参加者全員が何かしらの攻撃手段を持っているはず。単なる討伐だったら問題ないけど、対人となればどうだろうか。普段支援ありきで活動している冒険者の動きに期待かな」

「他力本願勢が一人じゃ何もできないのか否かと」

「言葉選んでね?」


【適材適所?】

「ところでサイトちゃん、良かったの? みんなと参加しなくって。別に攻撃技がなくてもルール上大丈夫だけど」

「……」

「それもそうか。確かに一人もいないね、そう言う人。みんな協力する気ないのかな」

「……。……」

「その発想は考えてなかったね。なるほど、裏切りか。そうなると対策し難い支援組はどの道序盤で弾かれる訳だね」

「……――」

「二人ともちょっといいかい? スタッフー! 拡声器持って来て、すんごい出力出る奴ぅ!」


【問題はその点】

 大会が進むにつれてモンスターの数が減っていく。

「現在トップはトリガー選手、身軽さを活かした小回りで他の選手の得物が残っていません」

「獣人特有の機動力だね。飛ばし過ぎにも感じるけど、体力は残ってるかなぁ」

『本大会では対人は負けた相手のポイントの半分の値が勝者に加算されます。敗退した時点のポイントから減少はしませんが、退場になってしまします。そのことを考えると、もう少し慎重な立ち回りが要求されますね』

「ウィールちゃん」

「はい?」

「この子こんなに喋るの?」

「普段からこんなものだよ」


【やることは一つ】

「おっとこれは予想通りの展開だぁ! トリガー選手が囲まれている。工場内のモンスターは狩り尽したかぁ?」

「最初に勝負して勝った選手にのみポイントが加算されますから一斉に狙われるかな」

『いえ、おそらくは半数でしょう。ポイントが増した後の選手を倒した方が多くのポイントが入ります。現状の持ち点が少ない場合はともかくとして、最後に最もポイントの高い一人を倒せば十分に優勝が狙えるでしょう』

「あーっと! ここで動いたぁ! 数人がトリガー選手に飛び掛かるぅ」

 不敵な笑みのトリガー。

「――雑魚は大人しく寄越せなのです」

「回転斬りで全員持っていかれたぁ!」

『極論、最後まで負けなかった選手がほぼ優勝でしょう』


【いつもの癖かも】

「現在トップは依然としてトリガー選手。いや強すぎるでしょう! 何さらっと二十人抜きしてんのあの子」

『この町で遠征経験のある冒険者は数が少ないでしょうから、直感的センスに差が生まれているはずです』

「だね。現に他の上位はストック選手にグリップ選手みたい。ストック選手が地面から操る巨大なツルは攻撃よりの拘束、グリップ選手は鎧のおかげで勝てずとも負けない戦法だね」

『時間を掛けて確実にポイントを稼いでいますね』

「時間を掛けるのはいいだけどよ、何か」

 疲弊した選手を辻斬りめいて錆にしていくトリガー。

「ほぼチーム戦になってるぞ」


【シカイ外】

 残り九人。

「ここでまた一人倒れたぁ! トリガー選手強し。いや、チームトリガー強し! この三人がトップスリーだぁ!」

『完全にサポート側に見えたお二人も、鞭に剣にと申し分ない攻めですね』

「あー、またもや奇襲を鮮やかに撃墜。挟み撃ちを狙った見事な作戦でしたが、これは相手が悪かった」

「今ので残りが六人になったね。あと残っているのはあの三人と、カノン選手、フューズ選手、スナッファー選手、クレア選――え、一人多くない?」


【攻撃は最大の】

「それにしても良く残ってたな」

「みんなトリガー選手めがけて飛んで行ったから、戦闘がなかったのかな」

『ですが、代わりとしてポイントが低いですね。残っていた順ではなく、あくまでポイントの高さが順位になりますので、ここからの逆転は難しいかと』

「と、ここでトリガー選手走り出したぞ?」

 カノンを見つけて跳躍接近。

「見ーつーけーたーのーでーす! 覚悟ー」

「はいドーン!」

(一撃で落としたぁ!)

『興奮のあまりまるで防御していませんでしたね』


【サイトの極論】

 トリガーを追ってきたストックとグリップ、カノンの後を追ってきたフューズとスナッファー。

「遂に激突! 最終決戦に五人が並び立つぅ!」

『盛り上がりますねぇ』

「でも、見てる限りだと上位の二人が有利だね。対抗できてるのはスナッファー選手くらいかなぁ。そう言えばもう一人いなかったっけ」

 様々な攻防が入り交じる中、せめぎ合う中心に一人の女性が飛び落ちてきた。

「お?」

『え?』

「あ」

 フューズに当て身、彼女以外に各一本ずつ刃を振るう――全員ダウン。

「各種族特攻のブレード、少し重い。改良しないと」

(美味しいとこ試運転で持ってったぁ! えぇ……)

「姉貴ぃ! まだ終わってないよ! まだ五分あるってぇ!」

 クレア、不参加妨害により退場。優勝、カノン。準優勝、トリガー。三位、グリップ。四位、ストック。五位、スナッファー。


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