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16話 『仮装集団お菓子町』

 数多くのモンスターを討伐する冒険者にとって、それは一種の供養であり、先立った者たちへの弔いであったのかも知れない。

 ――こんな日には、変わった来客が引きも切りません。

「トリックオアトリートォ!」

 ハロウィーン、始まってます。


【形は残る伝統】

「ハッピーハロウィンだよ!」

「そうね」

「ちょーだい」

「アンタ、この祭り何するか知ってる?」

「お菓子もらって回るんだよ」

「どうして?」

「欲しいじゃん」

「今となっては否定できないところが悩ましいわね」


【どっちも正しい?】

「そもそもハロウィーンは」

「ハロウィンだよ」

「一般にはね。でも読みは伸ばしが正解よ」

「いやハロウィンだよ」

「ハロウィーンよ」

「あいさつしたしたらお菓子もらえて勝ち確定なんだからハロウィンだよ!」

「意味違うわよ!」

「じゃあどういう意味だよ!」

「今それを説明しようとしてたんじゃない!」


【誘惑に負けないように】

「ハロウィーンは元々魔除けの意味が込められているのよ。この時期は家族の霊なんかも来るけど、悪霊まで入り込まないようにしないといけないの。だから惑わされないためにお菓子をあげて帰ってもらうの。子どもたちが仮装して悪霊の代わりをするのよ。みんなと一緒に帰って行くわ。いたずらするとしても子どもたちが代わりになってくれるのよ」

「じゃあいたずらしていい?」

「アンタに真面目に話したのがバカだったわ」


【臨戦態勢】

 結局渡した。

「じゃあ私外行ってくるねぇ」

「騒ぎすぎるんじゃないわよ」

 カノンを見送ったフューズ。扉が閉まると念話を掛け始めた。

「――もしもし? うん。カノンが出た。多分そっち行くと思う――後は、頼んだわよ」


【いたずらしちゃうぞ】

「ごめんくださーい」

 使用人に招かれ奥へ歩むカノン。

「トリックオアトリート」

「あらカノンさん。急ですわね」

「お菓子くれなきゃ、うぇっへっへっへ……」

「せめて何をする気か言ってくださいまし」


【警戒態勢】

「お菓子はありませんが、別の施しなら用意していますわ」

「――わふ?」

 十分後。

「似合っていますわ、カノンさん」

「おお、すごい!」

「ハロウィーンには仮装して参加しませんと」

「本物のドラキュラみたい」

「お菓子が欲しいならストックさんのところへ向かってみては?」

「うん。ありがとう」

 カノンを見送ったスナッファー。

「――もしもしストックさん?」


【お披露目】

 トリガー宅。

「トリックオアトリー……ト?」

「ちょっ、急に開けるなです!」

 化け狐にお着換え中のトリガーと手伝っているストック、ぶかぶかのデュラハンになっているサイトがお出迎え。

「うわぁ可愛い!」

「え? あ、ありがとうなので――」

「サイトちゃんかっこいい! その鎧何?」

「グリップさんのお古を借りたんですよ」

「あ、ストックさん。お菓子くだ――」

「まずは扉を閉めろなのですっ!」


【悪霊がついて来る】

「びっくりしたのです」

「似合ってるよぉ――もぐもぐ」

「カノンに言われても嬉しくないのです!」

「着替えも終わりましたし、二人も行って来たら?」

「ストックは行かないのです?」

「留守番しながらお菓子を配ってるから、そうね。カノンちゃんに保護者をしてもらおうかしら」

「いらねぇです! 行くですよサイト」

「待ってよ二人ともぉ」

(これでカノンちゃんが一緒に遊んでいても問題ありませんね――元から違和感はなかった気もしますが)


【振り返ってみよう】

「お菓子くれなきゃお菓子を奪うぞ」

「選ばせろなのです!」

「うるせぇよバカノン」

 学校の生徒たちも二人も来ていた。魔女と魔法使い。

「おお! ……お? もう一人は?」

「そんな年じゃねぇって断られた」

「大事な行事をなんだと思っているんだ!」

「多分バカノンには言われたかねぇよ」

 仲間が増えた。


【あえて選ぼう】

 ――フォールハート。

「トリックオアトリートォ」

「何! ストリップ?」

「ボケたかおやじさん」

「お菓子くれなきゃ」

「何! おかし――」

「やめとけバカ店主!」

「いたずらしちゃうぞぉ」

「お願いします!」

「店員さーんっ!」


【所詮は建て前】

 かぼちゃのパイをもらいました。

「次だぁ! お菓子を出せぇ」

「なんかもうメルヘンな強盗だよ!」

 ――アットマート。

「いやあるけどさ。なんでカノンちゃんまで――はい」

「保護者だよぉ――パクッ」

「バカノンはほっといて次行こうぜ」

「後はウィールねえのとこなのです」

「んー……、カノンちゃんいらなくない?」


【用意周到】

「お邪魔するですウィールねえ」

「トリックオア、トリート、です」

「いらっしゃい。じゃあこれ」

「可愛い」

「……」

「そう、バケットバッグ。お菓子は中に入ってるから。気に入ってもらえたかな」

「いいんですか?」

「もちろん。今持ってる分も中に入れな」

「ウィール、私の分がないんだけど」

「どうせすぐに食べちゃうでしょ。ほい」

 宙に弧を描くキャンディ。

「よっ。あむっ」

「帰り、気を付けてね」

(慣れてるなぁ)


【お菓子くれなきゃ……】

 お祭りの熱気も夜風に冷めて行く。

「楽しかったねぇ」

「バカノン的にはおいしかった、なんじゃ」

「ところで――」

 歩みを止めるトリガー。

「――まだ一人、お菓子をくれていない奴がいるのです」

「え? ――あぁ」

「ん? みんな私見てどうしたの。え、やめてちょっと」

「トリックオア?」

「トリート、なのです」


【ハロールーズ】

「待って待て待て! 全部食べちゃったからないよぉ!」

「だったら」

「いたずらするのです!」

「ちょ、ちょっと、うひゃっ! くすぐっ――うひ、ちょーい!」

「お前たちもやるです!」

「覚悟バカノン!」

「……、……」

「えっと、ごめんね? カノンちゃん」

「無理無理、四人は無理! 今度あげるから待って! はひゃっ」

「誘惑に負けたのは悪霊のせいなのです」

「安心しろバカノン。ちゃんと討伐してやるさ」

「良くなーい!」


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