11話 『町を離れて航海』
青い海、青い空。照りつける太陽の下、地平線は何処へ。
「風が、波が、私に語り掛ける――更なる財宝の在り処を!」
「アンタの船じゃないし海賊船でもないわよ」
今日は輸送船の護衛をします。
【言いたくなる】
「うーみーはー広いーじゃん、おーきーじゃん?」
「歌いながら聞かないでよ――音外れてるわよ」
「やっほー!」
「それ山よ」
――静寂。
「えーっと」
「ないならやらなくていいわよ――仕事しなさいよ」
【波が来た】
はぎつけに手を突いて海を眺めるカノン。
(やっと仕事する気になったわね)
静かに揺れる船。
(――気持ち悪い)
酔っていた。
【後のことは知らない】
カノン、ギブアップ。青い顔でおねだり。
「フューズぅ。薬ちょうだーい」
「騒ぐからよ。自業自得。はい、酔い止め」
「水は?」
「取りに行ったら?」
「あー……。――海水でいいや」
「遂には吐くわよ」
【どっちも攻撃性高い】
「二人のどっちかと代わって休憩入りな」
「うぇーい」
休憩室に行き扉を開けるカノン。
「こーたーい」
「早くない?」
「酔ったぁ――うぷっ」
「ちょ……!」
ゴォー!
「――スナちゃん、火吐くことないと思う」
「出すなら海にしてくださる?」
【許容範囲】
「お疲れ様ですわ、フューズさん」
「ああ、スナッファー。カノンどうだった」
「今はウィールさんが介抱していますわ」
「そっか。ごめんね、海苦手なのに」
「本当に無理でしたら付いて来ていませんわ。それに――」
船端に寄り、海を見下ろすスナッファー。
「今日の海なら問題ありませんわ」
「あれ、そうなの?」
【こんなヴァンパイアは嫌だ】
「そもそもは海が苦手、ではなく、流水に対して身動きが取れない、と言った方がしっくりきますわね」
「そう言えば温泉も普通に入ってったわよね。それ、何かの体質?」
「吸血鬼――ヴァンパイアの特徴ですわね」
「じゃあ気を付けないとね」
「わたくしの場合、弱点である火も扱える程度の遺伝ですし、万が一にも飛べますから心配には及びませんわ」
「あなたの欠点を教えてください」
【隙あらば】
ウィールが上がってきた。
「フューズ、交代」
「了解。アイツどうだった?」
「すっかり」
「悪いわね、任せちゃって。それじゃあここよろしくね」
フューズ、休憩室へ。
「カノン、大――」
カノン爆睡。
「――丈夫みたいね?」
少しでも心配した自分に苛立つフューズだった。
【あるある】
現在の船上組――。
「ウィールさん」
「ん?」
「先程のお話」
「あぁ、僕とスナの二人だけは珍しいよね」
船が波を掻き分ける音。
「あっ、ごめん。それだけ」
「いえ。気になさらず」
【反応あり】
「モンスター接近中!」
見張り台から警告が飛ぶ。
「ウィールさん、お二人を」
「視認、大ダコ!」
「――必要ないかな」
軽快にきしむ木板。
「食ったらぁ!」
「ほら来た」
【知ってた】
腕をしならせる大ダコ。
「カノン!」
カノン、不動。フューズの魔法剣から斬撃が飛ぶ。弾かれた腕は船から遠ざかった。
「カノン、まさかとは思うけど」
「撃ったら食える部分が減る!」
「でしょうね」
【主戦力組】
「また来た!」
次の標的は――。
「僕か」
構えるウィール。その目の前に、スナッファー。
「ウィールさん、障壁を」
「――了解!」
迫り来るタコの腕を、瞬時に手の甲を打ち込み弾き返すスナッファー。
「楽しそうね、二人」
【くれてやる】
「そろそろじゃれ合いも疲れたわね」
「フューズ情けないぞぉ」
「何もしてないアンタには言われたくないわよ! それにしても大きいわね」
「流石に全部は食べらんないよぉ」
「私だって思ってないわよ――そうか、腕一本取ったらいいのよね」
「なんかそのセリフ悪役っぽいねぇ、え痛たたたた!」
「アンタの腕も逆に曲がるようにしてあげるわ」
【一石二鳥】
「カノン撃って! スナッファー」
カノンに合わせて手をかざすスナッファー。砲弾に炎の魔法を加えて、増した爆発力で腕を切る――はずだったが。
「ゼーローきょーりー、発射ぁ!」
「あ」
甲板に千切れた腕が落ち、大ダコは逃げ帰った。
「調理の手間が省けましたわね」
「食べる側も仕上がったけどね」
【そもそも食用じゃねぇ】
スタッフがおいしくいただいています。
「まじぃ」
「アンタが言ったんだから責任持って処理しなさい」
「あーくーまー!」
「悪魔は今アンタが食べてるでしょうに。仕方ない、手伝うか。後は船員さんも呼んで――」
ふと気が付くとスナッファーとウィールが遠くにいた。
(モンスターを食べるモンスターを見る目をしている!)




