10話 『しっぽに肌白く翼を持った愛娘』
本日は町外れのとある豪邸よりお届け。
「ほぇ~。初めて来たよぉ」
「僕も初めてだね」
「私は前にお邪魔してるわね」
着飾った三人が待つ中、その娘が庭へ、そして門まで来ていつもの面々がそろった。
「さぁ、いらしてください。皆さま、お集まりですわ」
スナッファー宅にてパーティが催された。
【パーティと言えば】
右には見知らぬ富豪、左にはギルド連合のトップ、そして中央にはここの主が。
「皆様、宴の準備が整いました。ではこれより乾杯に移らせていただきます。どうぞお手元のグラスをお持ちください」
カノンたちにもドリンクが回ってくる。
「この時間が有意義なご歓談の場となることを望みます。それでは、乾杯」
「ごちそうは?」
「もう少し声が大きかったら遠慮なく殴ってたわ」
【いつもと違う雰囲気】
トリガーたちも招待されていた。
「ストックさんたちも来てたんですね」
「あら、こんにちわ」
カノンたち同様、美しく装った面々。
「誰の御縁かな?」
「自分と」
「私です」
「へぇ、グリップさんとトリガーちゃ――」
(え? トリガーちゃんが? て言うか口癖がない!)
【関係性】
「ちなみに誰?」
「あちらでスナッファーちゃんのご両親と会談なさっているお二人です」
「人間の、男の人と」
「あの人って妖狐の?」
いかにも騎士団長な風貌の男性の横に、着物に身を包んだ九尾の獣人の女性がいた。
「ええ、あちらの男性は自分がお世話になったギルドの団長でして」
「私の両親です」
「へぇ、トリガーちゃんの。え?」
「両親⁉」
【ある種のクエスト】
トリガーの母が近付いてきた。
「トリガー、皆さまにご挨拶なさい」
「はい。母上」
一緒になって離れて行く。
「母上ってなんか、侍? 武士っぽいね」
「では、わたくしもそろそろ」
スナッファーも行ってしまった。
「二人とも大変そうだね」
「いや、僕たちも人ごとじゃないかな」
他の招待客が接近中。
【場数の差】
「あら、お上手ですね」
片や、ストック。
「それは流石に。団長らしいと言いましょうか」
片や、グリップ。
「二人とも慣れてるねぇ」
「そうね。でも――」
「ほう、ではあなた方がお嬢さまの」
「ええ」
「詳しいお話を……」
(言ってる場合じゃないわ)
【デリカシー】
「女性で冒険者とは珍しい」
「え、ええ」
「エルフは魔法が達者であるとお伺いしておりますが」
「まぁ、確かに"通常"エルフは魔法が得意ですね」
「その歳でご立派に……」
「――スナッファーさまとは"同年"として親しくしていただいております」
「失礼ですが、お嬢さまとはどのようにお知り合いに?」
(本当に失礼だなこいつら!)
【聞こえないから】
一人悪戦苦闘のサイト。
「……。……」
「――困りましたね」
「……!」
「失礼いたします。彼女は少々物静かな娘にございまして、わたくしでよろしければ代わりを務めましょう」
「いえ、では後ほど」
ウィールの参入で危機は去った。
「……」
「うん。いくら敬語でもあれだけ暴言吐いてたらオブラート溶けちゃうよ」
【うらやましいとは思わない】
ようやく食事が運ばれてきた。
じっと見る。
そっと取って、ちょっと食べる。
(うわ。微っ妙ー)
金額と味はいつも比例するとは限らない。
【やっぱこれだね】
宴もたけなわ? そろそろお開きの時間。主人の挨拶を合図に動きが変わる。徐々に静けさを増す会場。
「トリガー、妾は先に戻ります。粗相のないよう」
「母上もお気をつけて」
スナッファーの両親に一礼し、トリガー母は帰って行った。
「――がぁ! やっと終わったのだー!」
「あ、戻った」
「せめて自分たち以外の全員が帰ってからの方がよろしかったかと」
最後に残っていた一人、トリガー父が苦笑い。
【遺伝ってそう言うもの】
「パパなら分かれなのです!」
「そこは父上じゃないんだ」
頭を抱えるトリガー父。
「――そうだな。トリガーの気持ちは分かるよ。わざわざ反対を押し切ってまで冒険者になったんだ。そういう奴らをまとめている身としては少し複雑だが」
「パパ」
「そんなところも、いいと思うぞ」
「母上の前でも言ってやるのです」
「どうしてそんなところばかり似たんだい」
父からは奔放さを、母からは気の強さを。
【どっちも思ってる】
「では俺も……あぁ、いや。私もこれで失礼するよ。妻も待たせている」
「ああ、楽しかった。よろしく伝えてくれ」
「またお待ちしております」
トリガー父の帰りの挨拶。
「ストックさん、娘をお願いします」
「いつものように、任されました」
「グリップ!」
「はっ!」
「お前頼むぞ」
「はい!」
「無理せず命懸けてくれ」
「ぜ、善処します」
【流儀】
大人の時間はお仕舞い。
「さぁみんな疲れただろう。食事も口に合うものばかりではなかったはず。仕切り直そう。自由にしてくれ」
「わっはーい!」
「なのです!」
広い会場で思う存分遊ぶ。その前に並んだ好物で腹ごしらえ。
「どっちが早く食べられるか勝負なのです!」
「食事って言うのはね? ゆっくりと味わって、最後にどれだけ満足できるか、余韻に幸せを感じるかがねぇ……」
「始め!」
「でも負けはしない!」
「あら、楽しんでいるようですね」
「助かるよストック君。うちのシェフではこうはいかない」
【温かい】
「皆さん、少しはしゃぎ過ぎですわよ」
「構わん。若い者は気が余る。使える時間、使える場所で好きに動くべきだ」
「お父様は変わりませんわね」
「スナッファーは明るくなったが、大人しいままだな」
「あなたが豪快過ぎたのではありませんか」
「お母様の言う通りかも知れませんわね」
「む、んー」
仲睦まじい親子の図。
「スナッファーのとこって貴族っぽくないよね」
「家族って感、じ……」
「フューズ、恥ずかしがるなら言わなくていいよ」
【微意識】
「フューズ君」
「はい?」
野試合を始めたカノンらを置いて、足を運ぶフューズ。
「どうしました?」
「いや何。いつも娘がお世話になっているからね」
「いえ、私なんてそんな」
「全く。君が婿に来てくれたら実に安心だ」
「ふぇ?」
呆けるフューズに真っ赤なスナッファー。
「お父様、急に何を言い出しますの!」
「あら、恥ずかしがっちゃって。血までいただいたのに」
「お母様まで……。それに血ではなく魔力ですわ!」
(ああ、お世話ってそう言うこと)
「そう言えば、スナッファー。私以外に」
「できる訳ありませんわ! あんな恥ずかしいこと」
(その言い方だとご両親の言葉に説得力が……)




