9話 『失敗は成功で母なる大地へ』
前回のあらすじ。クレアがやっちゃったぞ。
「主催も喜んでたし、盛り上がったんだからいいじゃん」
「でも」
沈んだクレア。これがおおよそ平常だったりする。
(また戻っちゃった。最近調子良かったんだけどなぁ)
今日は定休日、久しぶりにお出かけしようか。
【明るい世界へ】
「姉貴、どうせ休みなんだし、ちょっと付き合ってよ」
「私、受注残ってるから」
「気分乗らないでしょ」
「でも」
「何? 可愛い妹の頼みが聞けねぇの?」
「太陽が」
「そう言うのはスナ嬢に任せなよ――あの人全然そう言うのないけど」
【職人気質】
「そうやって引きこもってるから暗くなるんじゃねぇの」
「職業柄。仕方ない」
「仕事なくても出て来ねぇじゃん!」
「趣味で」
「何してんの」
「――武器開発」
「仕事じゃん!」
【ついでに】
準備完了。
「よーし行こう」
「どこに?」
「薬草採りに」
「それ、メディのお仕事」
「そうそう。姉貴には仕事ついでにいいもの見せてあげる」
「いいもの?」
「そのついでに荷物持ちになってもらう」
(え?)
【流石は我が社の商品だ】
暫く山を登る姉妹。
「どう? 澄んでるでしょ。ここの空気」
「うっ、すい」
「あんな重いもの担いで跳んでた割には体力ねぇよな」
「いつもない」
「姉貴、普段どうしてんの」
目をそらすクレア。
「ポーションをお借りして」
「商品に手を出してんじゃねぇよ!」
【見知らぬ土地ではご用心】
山頂にて。
「着いたぁ。大丈夫? 姉貴ぃ」
クレア息切れ中。
「ちょっと、休憩」
「お疲れぇ。あれに座ったら?」
岩に腰掛けるクレア――岩じゃなかった。
「ああ、わりぃ。この辺りモンスターいるんだった」
【お約束】
慌てて武器を取り出すクレア。構えたころには遠ざかっていた。
「ここのモンスターは草食だから滅多に襲ってこないよ」
「――そう」
「びっくりだよなぁ」
「ここ、よく来るの?」
「ん? うん、ポーションの材料あるし」
「モンスター、知ってた?」
メディの瞳が逃げ場を探して泳いでいる。
【ポーションですが】
クレアも大分順応してきた。
「場所移動しよっか」
「まだ、歩く。そう」
「ここでもいいんだけどざ、質悪いし量が足りない訳よ。群生地に行くよ」
「モンスターが食べに集まる気が」
「毒持ってるから大丈夫」
「何作る気?」
【花畑】
目的地、白い花が一面に広がっている。
「きれい」
「どう、気に入った?」
(これを見せたかったのかな)
「よーしっ、じゃあ根こそぎ持って帰るぞぉ」
(雰囲気台無し……)
【必要な分】
籠一杯に花を摘み取るメディ。
「これ持ってて」
「うん」
(これで何本作れるんだろう)
「後二本分は欲しいなぁ。もう一つ籠一杯にするかぁ」
(籠一つで二本分! それなのに私――)
(そう聞かせとけば無駄遣いも減るでしょ)
低級ポーションは、花一本で三つできます。
【お仕事おしまい】
「終わったぁ」
「籠持つ?」
「ううん。片方は自分で持ってく」
「そう」
「んでさ、そろそろ行こっか」
「うん」
来た道を引き返すクレア。
「どこ行く気」
「さっき帰るって」
「行こって言ったし、まだ見せてないじゃん?」
(あ、ここじゃないんだ――確かにいきなり荒れ地にはしないか)
【日頃の行い】
また登り始めたメディ。
「待って」
「こっちこっち」
追うクレア。ふと顔を上げると崖だけ見えた。
「え! 落ちた?」
「勝手に落とすな」
いつの間にか後ろにいた。
「不満があるなら口で言って」
「落とさねぇよ! こっから横に行くから待ってたのにひどい解釈されたんですけど」
【最高の眺め】
横道にそれると人が二畳程度の出っ張りがあった。
「ほら手貸して」
姉妹そろって立ち、崖側を向いた。
「――すごい」
「だよなだよな! 見ろよ姉貴、あたしらの町。ちっちゃいのな」
嬉しそうにはしゃぐメディ。
「こどもみたい」
「姉貴の顔見たらそうなるって」
「ばか。景色見なよ」
【塞翁が馬】
下山してきました。
「なんか店に人が集まってる。閉めて行ったのに」
彼女たちに気付いた客が駆け寄ってくる。
「おお、大会の人戻って来たぞ」
「クレアさん! 僕にもあれ作って下さい」
「うちで扱いたいんだ。話がしたい」
宣伝効果抜群でした。
「あたしの店、雑貨メインなんですけどぉ!」
【ちゃんと元通り】
すっかり調子の上がったクレア。
「よし、完成」
「姉貴ぃ、切り上げてお昼にしよう」
昼時を少し過ぎた客足の減る時間帯、姉妹の昼休憩の時間だ。
「安心した」
「ごめん」
「その方がいいよ。でも、ちょっと疲れてる?」
「急に依頼が増えたから」
「じゃあ一緒にポーション飲む?」
「遠慮する。貴重だから」
「前まで飲んでたじゃん。こんなの薬草の一つもあれば――あっ……」




