世界を喰っても喰われるな
「世界を喰っても喰われるな」…
俺のじいちゃんが死に際に残した言葉だ。
俺はじいちゃんと2人で生活していたが、半年前にじいちゃんが亡くなってから旅をしている。
ガキンッ!
「おおっと、なんだアクア・ボアか…だとしたら水属性だな!」
アクア・ボアは水を纏った巨大なイノシシだ。主な攻撃は突進、水ブレス。
俺は武器、水喰ノ剣【みずくいのつるぎ】を構えた。
「行くぜ、相棒!」
水喰ノ剣は剣身に触れる全ての水を吸収して様々な力に変える、《水を喰う能力-ウォーター・イーター-》を持つ。つまり水属性の敵とは相性抜群なのさ。
「よっと」
俺はアクア・ボアの突進を難なくかわして纏っている水を吸収させ、剣身を伸ばした。
「はぁぁぁぁ!」
通常よりも長い水喰ノ剣はアクア・ボアを一刀両断した。
「あーしまった、今日の晩飯はアクア・ボアの丸焼きにしようとしてたのに、真っ二つにしちまった」
「まいっか、とりあえず焼くとしよう!」
俺は少し歩いた木々が開けたところを拠点にし、火を起こし調理を始めた。
アクア・ボアの肉は焼いても水分が残ったようなそんな食感だ。しかし臭みがなく爽やかな味でなかなかにうまい。
「はぁぁ、食ったら眠くなってきたな、そろそろ寝るか」
明日は何をするか考えながら寝た…
ガサガサガサッ!
「なんだ!?」
目を開けるとそこには巨大な黒いドラゴンが居た。というか大きく口を開いて俺を食べようとしていた。
俺はとっさに能力を発動する。
「バイト!」
俺の能力は《時間を喰う能力-タイム・イーター-》相手の時を奪う能力だ。
バイトは相手の一瞬を奪う。相手からすると一瞬だけ時間が止まるってことだ。
その一瞬でドラゴンから逃げる。
さっきまで俺がいた場所はドラゴンに地面ごと食べられていた。
「なんだこいつ!こんなやつ見たことないぞ!」
「GAAAAAAAAA!!!」
ドラゴンの咆哮に空気が震えるのが肌を伝わってわかる。
「こいつ、かなり強いな…!?」
ドラゴンはいきなりブレスを吐いてきた。
「ふぅ、なんとか避けれそうだ…な!?」
周りを見ると一面炭と化していた。
「ははっ、これは当たるとやばそうだな…」
ドラゴンを見るともう1度ブレスを吐く構えをしていた。
俺はまた能力を使う。
「イート!」
イートはバイトとは違い5秒間時を奪う。
俺は5秒の間にドラゴンの懐に潜り込み、ドラゴンの右の脚を斬る。
5秒経ち、ドラゴンは右脚から崩れるように倒れる。
「スワロー!」
俺の能力には相手の時間を奪うだけでなく、奪った時間で自身を強化することもできる。
それがスワロー。奪った時間だけ強化率は上がる。
俺は自分を強化してドラゴンに向けて駆け出す。
「これでも…くらえぇ!!」
俺は力の限りを込めてドラゴンの斬る。
かなりのダメージを与えてるはずなのにドラゴンは何食わぬ顔で俺に向かって走ってくる。
「なんだこいつ…なんともないのか!?」
「バイト!」
俺はドラゴンの背中に回り込み連続で斬りつける。
「はあぁぁぁぁ!!!」
「グッ!?」
ドラゴンはそんな俺を尻尾でなぎ払いブレスを吐いてきた。
俺はドラゴンのブレスをすんでのところでかわす。そしてまたドラゴンに向かっていき斬りつける。そんな攻防が何時間も続いた時だった。
「はぁ…はぁ…こいつ…まだ倒れないのか?」
俺はブレスのような大きなダメージは受けてはないが小さなダメージが蓄積しもはや立っているのがやっとになっていた。
「ここでブレスをくらうのはさすがに…マズイな…」
「GAAAAAAAAA!!!」
「なんだ!?」
ドラゴンは急に叫んだかと思うと、いきなり飛び立って何処かへ消えていってしまった。
「なんとか…生き残った…か…」
ドサッ…
俺はその場に倒れて意識を失ってしまった。
「…ん…?」
気がつくと辺りは夕焼けに染まり一面赤く染まっていた。
「もう、こんな時間か…グッ…」
まだドラゴンとの戦いのダメージが残ってるようだ。
「いったい、あのドラゴンは何だったんだ…?」
ぐうぅ~~
「まあいっか、とりあえず腹ごしらえだ!」
きっといつかまたあのドラゴンと戦う時が来るのだろう。俺はそんな予感に駆られるながら、アクア・ボアに向かって走り出すのだった。
「はぁぁぁぁ!バイト!」
《完》
読んでいただきありがとうございます。
どうだったでしょうか?
至らぬ点が多々あると思いますが、よければコメントにて感想、アドバイス等を書いていただけると幸いです。
次回作も書き終わり次第投稿します。
よければそちらもよろしくお願いします。