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王族直属教育係に任命されました。  作者: 銀朱
第四章 魔法使いと二つの鏡
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 むかしむかし、あるところにひとりの男の子がいました。

 男の子には両親も兄弟もいませんでした。生まれて間もなくして家族がいなくなってしまったのです。家族がどこに行ってしまったのか、男の子にはわかりません。

 男の子はしばらくして親戚のおじさんとおばさんのお家にひきとられました。お家に住むかわりに、そうじやせんたく、家のお手伝いをたくさんしました。おじさんとおばさんのめいわくにならないように、いっしょうけんめいお手伝いをしました。

 だけど、おじさんとおばさんは男の子に優しいことばもかけず、にこりとも笑いませんでした。

 身寄りのない男の子のゆいいつの親戚だっただけで、おじさんとおばさんは男の子の世話などしたくなかったのです。

 優しくしないどころか、ふたりはついに男の子を怒ったり、なぐったりするようになりました。


「おまえがいるから、わたしたちは不幸になるんだ」

「隣の家になんていわれているかしっているかい。あの家はどこの子かもしらない子をひきとったんだってさ」

「おまえはわたしのこどもなんかじゃない」

「はたらけるようになったら、さっさと出ていくんだね」


 男の子は深く傷つきました。

 好きでこんな家にいるわけじゃないのに、どうしてそんなひどいことをいわれるんだろう。何も悪いことなんてしていないのに。

 だけど男の子は泣きませんでした。いつかきっと、幸せになる日を夢見て。

 そして男の子は一人ではたらけるほどに大きくなりました。おじさんとおばさんの約束どおり、家も出ていきました。

 男の子には自分の家も、お金もありません。

 はたらける場所を探しても、身寄りもない男の子をやとってくれる人はいませんでした。みんな、口をそろえてはいうのです。


「どこのこどもだかもしらない相手を、やとうほどよゆうはないんだ」

「まさか、ひとごろしでもしてきたんじゃないだろうね」

「どこのこかもいえないようじゃ、しんようできないよ」

「さっさと家に帰りなさい」


 だれも、男の子をしんじてはくれませんでした。

 それから何度も何度も、他の店をあたってはやとってもらえるようにおねがいしましたが、だれも相手にしてくれません。

 そうしていつしか、お金も、食べるものもなくなった男の子は、ものをぬすむようになりました。

 このまましんでしまってもいいけれど、だれもがそれをのぞんでいるように感じて、こわくなったのです。

 自分はいらない存在で、みんなからしんでしまうことをのぞまれているなんて、考えただけでふるえあがりました。

 だから、いままでたまっていたものをはきだすように、男の子はぬすみをはじめました。

 食べものをぬすみ、服をぬすみ、いきるために必要なものをつぎつぎうばっていきました。

 とうぜん、ぬすまれたひとたちは怒りました。


「この、こそどろめ!」

「おまえなんか、おしろのへいしにつかまってしまえ!」


 わるいことをしたひとは、おしろのへいしにつかまってしまいます。それからどうなってしまうのか、男の子はしりません。でも、そうぞうはできます。

 きっと、わるいことをすると罰をうけるのです。わるいことによって、罰もそれぞれあたえられます。

 ぬすみをはたらいたくらいで罰としてころされることはありませんが、いつしか男の子は、おしろに興味をもつようになりました。

 おしろのなかは、どうなっているんだろう?

 うまれてからずっとちいさな家ですごしてきた男の子には、おしろにだれが住んでいて、どんなせいかつをしているのか、わかりません。

 ただ、おしろにはたくさんの食べものと、お金があることだけしっています。

 そこにいけば、おいしいものを食べられるかもしれない。だけど、国のひとたちはかってにおしろにははいれません。

 だから男の子は、ぬすみをつづけました。そうして、へいしがつかまえにきてくれるのを待っていました。

 男の子のねがいはかなって、へいしが男の子をつかまえました。


 男の子はろうやにいれられました。

 ろうやは、せまくてくらくてじめじめとしていました。なかには何もなく、おしろのろうかとくぎるようにさくがはりめぐらされています。

 おしろのなかは、おもっていたものとずいぶんちがいました。

 食べものをもらうこともできましたが、パンがひとつと水がついているだけ。これではおなかもみたせません。

 男の子はとうとう、つかまることの大変さを理解しました。

 このおしろも、男の子をうけいれてはくれないのだと。

 これだったら、しんだほうがまだましだったかもしれない。そうおもうようになりました。

 しばらくして、男の子はろうやからそとに出してもらえました。

 つれてこられたのは、おうさまのいるお部屋でした。

 きれいな服をきて、きれいなかみをしているおうさまは、きれいないすに座りながら男の子にはなしかけました。


「おまえはどうして悪さばかりする?」

「だって、はたらかせてくれないんだ」

「どうしてはたらかせてもらえない?」

「だって、しんようしてくれないんだ」

「どうして、しんようしてくれない?」

「だって、かぞくもいえもないんだ」


 男の子ははじめて、いままでいえなかったほんとうの気持ちを伝えました。

 おうさまはそんな男の子をあわれにおもったのか、おしろでつかえるようにめいれいしました。そのことがうれしくて、男の子はうなずきました。

 そうしておしろではたらくことになって、すこしずつ、いろいろなことを学んでいきました。

 このくにはせかいのなかのちいさな場所で、さまざまなくにがあること。くにによって、それぞれ違ったほうりつがあること。悪いことをすれば、ほうりつによって罰をうけること。

 そして、このせかいにはまほうがあることをしりました。まほうはつかえるひととつかえないひとがいて、おなじまほうをつかえるひとはいないことも。

 男の子はまほうがつかえました。いままできづかなかったけれど、まなんだことでそれにきづくことができました。

 おしろではたらくようになって、男の子はこのくにのおうじさまの存在をしりました。

 おうじさまは、おうさまのこどもです。うまれてからずっと、ふじゆうなくいきてきました。ほしいものはすぐに手にはいりました。そんなおうじさまが、男の子はうらやましいとおもいました。

 おうじさまはまほうがつかえました。そのまほうをつかって、何かをつれてこようとしていました。

 だけど、おうじさまのまほうはいつもしっぱいしてしまいます。そのかわりに、とおいせかいからきた人間をつれてきていました。

 とおいせかいからきた人間は、せいかつもぶんかもこのせかいのひとたちとはちがいました。このせかいととおいせかいは、つながっていないようなのです。

 おうじさまがまたとおいせかいの人間をつれてきたとき、男の子はおどろきました。

 そこにいたのは、もうひとりの男の子だったのです。

 男の子は、もうひとりの男の子にいいました。


「きみはぼくなのかい?」

「わからないよ。きみはぼくなのかい?」

「わからないよ。とおいせかいのぼくは、なにをしていたの? 家族は? 兄弟は?」

「いるよ。いるから、はやくもとのせかいにもどりたいんだ」

「もとのせかいには、どうやってもどるんだい?」

「わからないよ。でも、ぼくはこのおしろにつかまってしまった。もどりかたをさがすこともできない」


 もうひとりの男の子は、ずいぶんとかなしそうでした。

 男の子は、そんなもうひとりの男の子を助けてあげたくなりました。いきなりしらないせかいにやってきたもうひとりの男の子が、むかしの男の子とひどく似ていたのです。


「わかった、ぼくがきみを助けてあげる」

「ほんとうかい? もとのせかいにもどれるんだね?」

「きっと、もどるほうほうを見つけるさ」


 男の子は、ちからづよくうなずきました。

 もちろん、とおいせかいへもどすほうほうなんて、おもいつきません。おうじさまもつれてきた人間をもどすほうほうをしらないようでした。

 だけど、つれてこられた以上、もどるほうほうはきっとあります。

 そこで男の子は、あるていあんをしました。

 それは、男の子が―――――となり、もうひとりの男の子が――――――――する、というものでした。

 ―――――――したもうひとりの男の子は、男の子から――――――や――――――を―――――で、――――――――――ました。

 ――――――したもうひとりの男の子は、いつしかおもうようになりました。ほんとうにもとのせかいにもどるほうほうなんてあるんだろうか。

 もし、もどれなかったらどうしよう。

 そのときは、いっしょうこのくにで、このせかいでいけなければいけないのだろうか。

 あいする家族にもあえず、いっしょうをここですごすなんてたえられません。

 だからきめたのです。

 このせかいともとのせかいを、――――――してしまおうと。


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