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青と風邪

あぁ情けねぇ、『彼女とゴンドラに閉じ込められて風邪ひきました』って何してたんだ?って話だろ、まぁ俺が先へ先へって感じで考えてるからそう思うのかもしれないけど、絶対誰か思ってるよ、チカ一人で学校大丈夫かな。

ダメだ、頭使うとフラフラする、大人しくしてよう。

“ピンポ〜ン”

誰だよこんな昼間に、まぁいいや、シカトシカト。

“ピンポ〜ン”

うるせぇ。

“ピンポ〜ン”

分かったよ、うるせぇな、出るから黙ってろ、ってなんでインターホンにキレてるんだろ。

“ピンポ〜”

「うるさい!」

ドアを開けるとそこにはチカが立ってた、ビックリして泣きそうになってるし、タイミングわる奴だな。

「ゴメン、どうした?」

「アタシのせいで風邪ひかしちゃったからお見舞い」

「うつっても知らないぞ」

「うん!」

チカは喜んで家の中に入ってきた、嬉しいんだけど僕フラフラです、もうかなりヤバい、何もする気がしないな。

「カイ、大丈夫か?」

「ヤバめかな、それより学校は?」

「カイが心配で早退してきた」

「ホントにそれだけ?」

チカはばつが悪そうな顔をしてる、予感的中な予感、ってどんだけアバウトなんだよ俺。

「みんな何があったかうるさいから、『四色と潤間が観覧車でヤッた』って噂になってる」

やっぱりな、何でそういう噂が好きかね。

俺はチカの頭に手を置いて今出来る精一杯の笑顔を作った、そうでもしないと可哀想だろ、俺らは必死にやり過ごしたのに何も知らない奴らにそんな事言われたら。

「大丈夫だよ、明日は俺も学校に行くから」

「ありがとう、アタシカイに助けられてばっかりだな」

「チカを助けるために俺がいるんだから、それくらい当たり前だよ」

「腕の一本や二本くれてやる?」

何でチカがその事知ってるんだよ、何か前に同じような事言ったような気がするけど、チカにその事は言って無いよな、もしかして。

「コガネかコテツに聞いた?」

「昨日ね、でもそれはアタシが許さないよ、カイと同じくらいアタシも辛いんだから」

でも抑えきれない衝動というか、俺の本能というか、とりあえずチカを守りたいんだよね、これはただの自己満足だげど。

「カイ、ご飯食べてないだろ?アタシが作ってやるよ」

「良いのか?」

「せめてもの恩返し、アタシにもそれくらいさせろよ」

「分かった、頼んだよ」

チカはキッチンに走って行った、気になるけどちょっと体力がもたないんだよな、ココでジッと待ってるか。

何か俺が学校休むたびにチカに苦しい思いさせてるんだよな、コテツかコガネが同じクラスなら俺も安心出来るんだけど、まぁ休まなきゃ良いだけか。




チカはお盆の上に鍋を乗せて持ってきた、なんか看病されてるって感じだな、こんな事初めてで新鮮。

「お粥だけど良いよな?」

「ありがとう」

チカはお粥をレンゲで取って冷ましてる、コレってもしかして夢のワンシーン?誰もが憧れるあの………。

「カイ、口開けて」

「マジで?」

「マジマジ、はい、あ〜ん」

うわぁ、何かしちゃってるよ俺ら、でそのままされちゃってるよ俺、最高の彼女だな。

「美味しい?」

「あぁ、かなり美味い」

チカの顔がパァっと明るくなった、そこまで喜ぶ事か?いや、喜ぶ事かも、チカの料理を遊園地の弁当以外に食った事がないんだよな俺。

「アタシだって料理出来るんだぞ、カイの方が美味しいだけで」

「そうだな、たまにはチカにも弁当作ってもらおうかな」

「それは無理!」

「何で?」

「朝は苦手なんだ、だから弁当だけは勘弁して」

そういえばそうだな、ユキとかと住んでた時は一番起きるの遅かったんだよな、俺が爺みたいに朝が強いってのもあるんだけど。

なんだかんだ言って全部チカに食べさせてもらった、言い訳をさせてもらうとチカが言うことを聞かなくて、無理矢理食わされた。

「少し寝ろよ、弱ってるんだから」

「そうさせてもらうよ」

俺は目を瞑って寝ようとした、でも何故かチカがいると思うと寝れない。

「カイ、目を瞑ったまま答えて」

「何で?」

「良いから」

「分かったよ」

微妙に鼻声だな、もしかして泣いてるとか。

「カイはアタシの事好き?」

「当たり前じゃん、何でそんな当たり前の事聞くんだよ?」

「時々不安になるんだ、もしかしたらカイはアタシ以外を好きになるんじゃないのかって、ツバサはまだ我慢出来る、でもヒノリと楽しそうに話してると不安になる、ヒノリにヤキモチやいてるんだ、嫌な奴だよな」

そんな事考えてたのか、全く気付かなかった、確かにあの中だとヒノリが一番うまがあうけど、それまでだ。

「カイもヒノリもタダの友達だってのは分かってる、でも嫌なんだ、ヒノリと笑ってるカイが遠くにいるみたいで、アタシの知らないカイがそこにいるみたいで嫌なんだ」

チカは後半から泣き出してる、俺とヒノリはチカにはそういう風に見えてたんだ、確かに友達の中ではヒノリといる時間は長い、でもヒノリも俺も大切な人がいる、そこに誰かが入る隙は無いと思ってる。

「じゃあどうすれば満足?ヒノリとは今後話さないようにする?」

「それじゃあダメ、居心地が悪くなる、だから分からないの」

「俺にはチカしかいないようにヒノリにはコガネしかいない、お互いに大切な人がいるから笑って話せるんだ、そこに引け目を感じる恋心があったら逆に話さないよ、だから笑って話してるのは安心の裏返し、そう思ってくれないか、じゃないと俺はヒノリと喋れなくなる」

俺が話してる途中で更に強く泣きだした、俺はヒノリとチカの仲が悪くなってほしくない、だから二人の仲が保たれるなら俺は犠牲になる。

チカは大きな声で泣き出すと、俺の上に乗ってきた、なんでチカが弱ってるんだよ。

「ゴメンなカイ、ゴメンなヒノリ、アタシ嫌な女だよな?」

もう目を開けても良いよな、俺は目を開けてチカの頭を撫でた。

「大丈夫だよ、誰もチカをせめない、多分コガネも口には出さないだけで同じ気持ちだと思う、だから我慢しろとは言わない、でも溜め込まないでくれ、俺を信じて何でも言ってくれ、俺はチカに嘘はつかないから」

「ゴメン!ゴメンなカイ!アタシ、カイの事が好き過ぎて不安なんだ、だから嫌いにならないで」

サラッと凄い事いってるな、俺はチカの事を信じてる、いや、信じる事しか出来ないのかも、チカを信じる事しか出来ないから疑えない、だからチカの小さな事にも気付けない、疑う事は必ずしも悪い事じゃない、信じることは必ずしも良い事じゃない、信じるのと疑うのは表裏一体なんだよな、五分五分だから丁度良いんだ。

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