多色の遊園地
今回は女の子目線で話を進めていきます。
ご飯食べ終ったから今はみんなバラバラ、僕達は絶叫マシーン巡り、コガネんが嫌がるから行きたい所に行けなかったんだよね、だから二人の時くらい思いっきり絶叫させてよ。
僕とコガネは椅子に座って塔みたいのを上下するやつ、あれ怖そうで楽しそうなんだよね、コガネんがこんなのに乗ったら死んじゃうよ、チカチカも危なそうだけど。
「ツバサ、何か緊張するな」
「そうだね、一気に上がるんだよ」
「おっ、もう始まるで」
スタートと同時に上にビューンって上昇した、今までので一番怖いけど一番楽しい。
コテツからの色々な提案が出たけどやっぱりこの遊園地に来たんだからお化け屋敷でしょ、出てくるのに何十分もかかるんだって、怖いよコテツとか言いながら抱きついちゃったりとかして、僕って策士〜。
でもさっきからコテツの顔が真っ青なんだよね、もしかしてコテツってお化け屋敷苦手なの?
「コテツ、怖い?」
「だ、大丈夫やで!」
「じゃあ行こうか」
「ちょっと待て!やっぱり怖い」
コテツって強いのにお化けは怖いんだ、あんなに怖いお父さんよりも怖いんだ、何だか意外。
コテツは入ると意地で僕の前を歩いてるけど、かなりビクビクしてるよ、チョットした音だけでビックリしてるんだもん。
「コテツ………」
「わっ!な、何や!?」
「いや、呼んだだけ」
「脅かすな」
いや、脅かしてないんだけど、でもこんなコテツも可愛いな、弱い部分って初めてみたんだもん、頼れる人でも弱いところが無いと人形みたいだもんね。
恐る恐る進んでると目の前からお化け役の人が脅かしてきた、コテツはビックリして…………、ビックリして殴って気絶させちゃった。
「あかん!怖い!」
「コテツ!大丈夫、………じゃないけど気絶してるよ」
「ホンマや」
可哀想なお化け役の人、その後もコテツはビックリして5人くらい気絶させちゃった、その度に怒られて、謝って、お化けの人が一番怖い思いしたよね。
恋人達の遊園地といえば観覧車でしょ、僕達も観覧車に乗った、密室に男の子と二人きり、僕みたいなか弱い女の子は襲われちゃうよ、ってか襲って。
観覧車はゆっくり回ってのどかだな、コテツもしんみりと外見てるし、隣に行ったら何かされちゃうかな?
「何や?」
「良いじゃん、二人だけなんだからナニしてもバレないよ」
「‘ナニ’やない‘何’や」
「細かい事気にしない!」
「いや、かなり大きな事やろ」
何だよコテツは堅いな、僕の周りには硬派な人しかいないんだね、お兄ちゃんも頭が堅いんだよね。
「じゃあ何かしてほしいんか?」
「そりゃもう、あんな事やこんな事………」
「……はせぇへんけど、これくらいならええで」
コテツの顔が急に目の前にきたと思ったらコテツの唇が僕の唇に当たった、僕達、今観覧車の中でキスしてる、僕はいつの間にかコテツの首に腕を回してた、どれくらいの間したか分からないけど、僕には全てが止まってたよ。
コガネを見直しちゃった、私の作ったモノ全部当てちゃうんだもん、横顔が少し逞しく見えるのは気のせいかな?
コガネは二人になった途端に私の手を掴んできた、いつも腕を抱いてるのにコガネから握られるとドキドキする、コガネの手は暖かい、心までポカポカする。
「ヒノ、顔真っ赤だぞ、熱でもあるのか?」
「…………大丈夫」
鈍感なんだから、女の子の心には時に痛手なんだから、でもそれが良いときもあるんだよね。
私達はお化け屋敷に入る事にした、ココのお化け屋敷って緊急避難通路があるくらい怖いんだって、私はこういうのは怖くないんだけど、ココは女の子らしく演技しよ。
コガネは私の前を快調に歩いて行く、私は怖いふりをしてコガネの後ろにしがみついてる。
「コガネ、大丈夫?何もいない?」
「何がそんなに怖いんだよ?相手は人間だぞ」
「だけど暗いしいきなりくるから、……キャー!!」
お化けに驚いたふりをしてコガネの背中に抱きついた、コガネは振り向いて頭を撫でてくれてる、優しいんだ、コガネは少しも驚いてないし、高い所はダメなくせに怖いのは全然大丈夫なんだね、平地にいれば頼りになる。
「そんなに抱きつかれたら歩き難い」
「でも怖いんだもん、早く出たい」
「ならチャッチャと出るぞ、つまらない」
コガネは私の事を抱き上げた、これってもしかして、俗に言うお姫様抱っこ?そうだよね、棚ぼただよ、私は驚かされる度にコガネに抱きついた、コガネの顔は暗がりでも分かるくらい真っ赤になってる、可愛い。
私とコガネは観覧車に乗る事にした、今までなら観覧車すら乗らなかったけど、あれだけ怖い思いしたから大丈夫になったのかな?
観覧車はゆっくりとジラすように回ってる、でもこの密閉空間に二人でいると少し期待しちゃうんだよね、女の子もそういうモノなのよ。
「ハックション!」
「寒いのか?」
「少しね」
「これ着ろよ」
コガネは私に上着をかけてくれた、でもこれじゃあコガネが寒いよね、大丈夫なのかな?
「コガネは寒くないの?」
「ヒノが寒くなければ良いよ」
「ダメだよ、一緒に入ろう」
「どうやって?」
私とした事が盲点だった、一つの上着に二人入れるわけないよね、毛布じゃないんだから。
「なら抱き締めて」
「別にいいよ、俺は大丈夫だから」
「私の事嫌いなの?」
私は得意な演技で少し目をうるうるさせてみた、コガネはすこし焦ったような感じで立ち上がり、私の隣に座って抱き締めてくれた、ドキドキが聞こえなければ良いんだけどな、静かだから聞こえてるよね。
「コガネ、私の心臓の音聞こえる?」
「聞こえるわけ無いだろ」
「ほら、こんなにドキドキしてるんだよ」
コガネの手を掴んで私の胸に手を置いた、コガネは焦ってるけど、私も何でこんな事したんだろ。
「分かった?」
「ご、ゴメン、分からなかった」
「私の胸が大きいから?」
「ち、違うから、………俺もドキドキしてるからだよ」
コガネの顔が真っ赤になった、多分嘘じゃないんだろうな、いつかコガネも積極的になってほしい、好きなのかたまに不安になるんだよね。
やっとカイと二人きりだ、みんなでワイワイしてるのも楽しいけどやっぱりカイと二人きりの方が楽しい。
絶叫マシーンとか本当はもの凄く怖いんだよ、ってか怖いもの全般が無理、無理して乗ってたけどどれもフラフラ、だけどカイが手を握っててくれると不思議と安心するんだよね、やっぱりカイは凄いよな。
でもカイを誉めたアタシが馬鹿だったね、カイがお化け屋敷に入りたいとか言ってる、アタシは怖いよ、でもカイが楽しみにしてるから断りきれない、大丈夫!きっとカイが守ってくれる、……きっと。
お化け屋敷暗い、狭い、どんよりしてる、長い、不満しかでてこないよ。
「キャー!」
後ろから脅かされた、アタシの心臓が弱かったらしんでるよ、お化け屋敷は殺人マシーンだな。
アタシはもうカイから離れられなくなった、カイの背中にずっとしがみついて顔を埋めてる、もう怖くて怖くて死にそう、カイも少しビックリしてるけど笑ってる、何が楽しいのかアタシには理解出来ない。
「キャーー!」
あぁ、もう怖い、あれ?立てない、怖くて腰が抜けちゃった。
「チカ、どうした?」
「こ、腰が」
「腰が抜けたの?」
アタシは無言で頷くとカイは大爆笑しはじめた、酷い、でもその前に助けて。
「ほら、乗れよ」
「重くない?」
「チカくらい軽いよ、それにその体の何処に重い要素が入ってる?」
お言葉に甘えてカイの背中に乗せて貰った、カイの背中は大きくってあったかいな、なんなら帰るまでこのままでも良いかも。
アタシはお化け屋敷はずっとカイの肩に顔を埋めてやり過ごした、全然ゴールが見えなくて怖すぎ。
そしてメインイベントかどうかは知らないけど観覧車、こんな密室にいたらカイに襲われちゃうよ、……多分無いと思うけど、理性の塊みたいな人だからね、でも一回理性が飛ぶと何をしでかすか分からないんだよな。
ゆっくりと回るゴンドラ、これ止まらないよね、止まるわけ無いか、あんまりニュースで聞かないもんな。
「カイ、どうしたの?」
「いや、帰ったらコガネに謝ろう」
「何で?」
「集合時間過ぎちゃった」
「ホントだ」
コガネは誰よりも時間にうるさいからな、5分前行動とか小学生並だよ、遅刻の常習犯はコテツだけどね。
「チカ、外見てみろよ」
カイが外を指指すと夜景が広がってる、今は丁度頂上付近だから最高に綺麗に見える、凄いなぁ。
“ガタンっ!”
「「えっ?」」
今ガタンとかいった、しかもゴンドラが動いてない、もしかしてこれって事故?
「ヤバいな、係員の人が焦ってる」
「止まったの?」
「みたいだな」
どうしよう、こういうのって長いんだよね、最悪だよ、でもカイと密室にいれるのは最高かも、いや、こんな時に不謹慎だよな。
「今ならチカに色んな事出来るよな」
「えっ?」
「冗談だよ、そんなに顔真っ赤にするな」
カイの嘘は見破れないんだよ、一寸の濁りの無い目で言ってくるんだもん。
寒いな、もう夜だしこんな鉄の檻に入れられてたら寒いよ。
「チカ、寒いのか?」
「少しね」
「なら、…………乗れよ」
カイは下に降りてあぐらをして乗れだって、アタシ抱かれちゃう、今の表現はおかしいよね。
「良いの?」
「俺も寒いから、こういう時は二人で寄り添った方が暖かいんだよ、本当は裸がベストなんだけどね」
「馬鹿!」
怒りながらもカイの膝の上に乗った、カイは大きな体でアタシの事を包んでくれる、心まで暖まるってこの事だね。
「チカあったかい」
「なに子供みたいな事言ってるの?」
「俺はこのまま永遠に二人だけになっても良いよ」
カイとならアタシも大丈夫、カイはこんなに暖かくアタシを包んでくれるんだもん。
「チカを絶対に離さない、俺チカが離れたいって言ったら離すつもりだった、でもそれは俺に嘘をついてる、チカが離れたいなら俺は更に良い男になってチカが離れたくない男になる、チカは俺だけのモノだ」
何だか独占欲が強いけど嬉しい、アタシから離れるなんて有り得ないけど、そこまでアタシの事を思ってるって事だよな、アタシも同じだよ。
「やっぱりチカ寒いだろ、これも着ろよ」
「それじゃカイが寒いだろ?」
「大丈夫、風邪ひかないので有名だから」
カイはアタシに無理矢理上着を着せてきた、確かにまだ寒かったけどカイが風邪引いちゃうよ、カイが風邪ひいたらもともこもないのに。
どれくらい止まったかな、1時間は経ったと思う、何かアタシもカイもグッタリしてきた、疲れたよ。
「チカ、大丈夫か?」
「アタシは大丈夫だよ、でもカイがキツそうだよ」
カイの息遣いが荒い、やっぱり風邪引いちゃったんだよ、アタシのせいだよな、アタシが上着をとらなかったら。
「俺は大丈夫だよ」
「ホントに?ちょっとおでこ貸して」
「ちゃんと返せよ」
それだけの事言えれば大丈夫だと思うけど、アタシはカイの額にアタシの額を当てた、嘘?凄く熱い、これ絶対に熱があるよ。
「カイ熱酷いよ!」
「大丈夫、微熱だよ微熱」
「嘘!かなり辛いでしょ?」
「怒るな、正直フラフラだね」
“ガタンっ!”
今動いた、観覧車が動きだした、これでカイを外に出してあげれる。
アタシはカイの上着を返した、虚ろな目をしてて何処を見てるのか分からない。
下に降りるとコガネとコテツがカイを出してくれた、アタシは泣かないように頑張ってたけどヒノリとツバサの前で泣いちゃった、カイに泣いてるところ見せると心配しちゃうから、カイにはバレないように。
カイはコガネの背中で寝てる、多分疲れとか風邪でダウンしたんだろうな。
「チカちゃんは大丈夫か?」
「アタシは元気」
「なら良かった、カイは例え話で『チカが無事なら腕の一本や二本くれてやる』って言ってたんだ、カイはどんな怪我するよりチカちゃんが無事ならそれで良いんだとよ」
でもそれじゃあアタシの不安が溜まる一方だよ、アタシだってカイが元気じゃなきゃ嫌なんだから。