表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/58

黒と手話

フェリーは徐々に減速して着岸の準備に入った、俺とチカは自分達の席に戻って荷物の準備をしてる。

島に着いたらとりあえずマミ姉に会いに行く予定だ、元気だとは思うけど、何か変化があれば儲けもんだろ、そんなに早く治るとは思って無いけど。

乗客は次々に降りて俺らだけになった、船内の客がいなくなったのを見計らって、俺らも船を降りた。

降りてビックリ、ハヤさんとマミ姉がいた、いや、ビックリしたのはそれじゃない。

「マミ姉、その髪の毛どうしたの?」

マミ姉は笑って自分の髪の毛を触った、以前のマミ姉なら髪の毛は指に絡む。

「俺が切ったんだ、可愛く出来てるだろ」

ハヤさんはマミ姉の頭を撫でながら笑った。

マミ姉の髪の毛、夏休みまでは綺麗なロングの黒髪だった、でも今はベリーショート、チカよりも短くて若干はねてる、そこらへんの男よりも短い、でもそれが似合うんだから凄い。

『似合ってる?』

マミ姉は手話で話しかけてきた、夏休み俺らが島を出る前の約束、マミ姉には手話が出来るように、俺とチカは理解出来るようになること。

「凄く似合ってるよ、可愛いし」

「凄い、アタシよりも短い。でもさすがマミ姉だよ、どんな髪型にしても様になる」

『ありがとう』

「なぁなぁ、俺を抜いて話を進めるなよ」

そっか、ハヤさんは分からないんだよな、逐一通訳しながら話せば良いか。

それより何でハヤさんがココにいるんだろ、ついこないだマンションで会ったのに、地味にストーカーとか?

「ハヤさんは何でいるんですか?」

「チカ嬢にこの事聞いていてもたっていられずに、あの後仕事そっちのけできちゃった」

仕事をほったらかしにして来るなんて、かなり無茶苦茶な人だな、でも、マミ姉が心なしか元気そうだし、兄貴様々だな。

「こんな所で立ち話もなんだろ、俺達の家に来なよ」

「じゃあ荷物置いたら行きます」

俺とチカはとりあえず荷物を置きに帰る事にした、マミ姉には色々話したい事があるしな。




俺はチカを迎えに行ってからマミ姉の家に行った、チカの家はマミ姉の家に行くときに、丁度通るからな。

家につくとハヤさんが出てきた、満面の笑で通されると、居間にはマミ姉がこれまた満面の笑で座ってる、笑顔の絶えない良い兄妹だな。

俺らが座るとハヤさんは飲み物をくれた、机を真ん中にしてマミ姉の左にチカ、右にハヤさん、正面が俺だ。

「マミ姉、四色蒼海って覚えてる?」

マミ姉はビックリした表情で頷いた、気付いてると思うんだよな。

「俺の姉貴」

『もしかしたらと思ったけど、ホントにカイ君のお姉ちゃんなんだ』

俺は簡潔に通訳しながら聞いた、ハヤさんのために。

『アオミちゃんって可愛いよね』

「極度のブラコンだけどね」

マミ姉は首を傾げた。

「弟Loveなんだよね」

『そうなんだ、始めて知った』

アオミの事だから無駄に自慢してると思ったけど、軽い罪悪感で話せなかったのかな、俺の事を見捨てたって思ってたらしいし。

「でもさぁマミ姉、カイったらアオミさんと学校で抱き合ってたんだよ」

「あれはアオミが無理矢理抱きついてきたんだよ!」

「学校では浮気って噂されてるんだぞ」

「大丈夫だって、俺にはチカだけだから」

「そんな事言ってもダメ!」

「フフッ」

「「「笑った!?」」」

今マミ姉が笑った、あの声は聞き慣れたあの声だ。

マミ姉は喉を押さえてもう一回声を出そうとした、でも出てくるのは空気だけ、悲しい顔した後にまた満面の笑になった。

「大丈夫だよマミ姉、良くなってる証拠じゃん」

マミ姉は笑顔で頷いた。

「良かったなマミコ」

ハヤさんはマミ姉の頭を撫でて笑ってみせた、マミ姉のこんな子供みたいな笑顔は始めて見た、いつもは大人っぽい笑顔なのに。

「マミコも落ち着いたし東京来るか?」

マミ姉はビックリした顔でハヤさんを見た。

「マミコも落ち着いただろ、それに東京に行けば親友もいるし、チカ嬢やカイ君もいる、なんだったら俺ん所でバイトも出来るし」

マミ姉は悩んでるみたい、そりゃそうだよな、話せないのに東京に行くのはキツイもんな。

「やっぱり嫌か?」

『お兄ちゃんに迷惑がかかるよ』

俺はハヤさんに通訳した、マミ姉らしい理由だな、でもハヤさんなら………。

「俺がそうしたいんだよ、マミコをココに一人で置いておきたく無いんだ、俺と同じ所で仕事すればずっとマミコと一緒にいれるだろ」

『でもお兄ちゃんに迷惑だよ、友達とかもいるでしょ?』

「大丈夫!コウやチカ嬢、カイ君やアオミちゃんっていう親友もいるんだろ、こっちにいるより楽しいだろ」

この人は俺らに相談無しに決めてるよ、まぁ少なくとも俺は大丈夫だな、アオミも喜ぶと思うし、俺は万々歳。

「俺は大丈夫だよ」

「アタシも、兄貴も喜ぶと思うし」

「マミコは?」

マミ姉は笑顔になって頷いた、ハヤさんは喜んでマミ姉の頭を思いっきり撫でてる、頭を撫でるのってハヤさんの癖なのかな。

「じゃあ年明けに戻ろう」

マミ姉はハヤさんに撫でられてるから小さく頷いた。

「じゃあマミ姉に毎日会えるの!?」

「さすがに毎日は会えないだろ」

「何で?」

「マミ姉はハヤさんの所でバイトするんだし、俺らにも学校がある、それにそんな毎日マミ姉に会われたら、俺がマミ姉にヤキモチやくし」

「わぁお、今のコウが聞いたら青筋立ててキレるだろうな」

チカは顔を真っ赤にしてうつ向いてる。

こうやって話してるとハヤさんとユキってホントに似てるな、でもハヤさんには悪いけど、ユキには敵わないんだろうな、まぁハヤさんの存在が治癒に一歩近付いてるのも確かだ。

東京に行って、マミ姉が少しでも言葉を取り戻せば良いんだけどな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ