青の告白
朝は大体俺が飯を作ってる、アオミが作る事もあるけどアイツ低血圧だから起きないんだよな、酷い時は叩いても起きない、魔法の呪文というか屈辱的一言というか、とりあえず人には言えない一言では物凄い勢いで起きるけど。
今日も布団の中でグズる俺の体を180度回した時だった、隣に見たことある女の子が寝てる、これはアオミじゃなくて妹だ、妹ってツバサだよな……………。
「ツバサ!?」
俺が叫ぶとツバサが眠い目を擦りながら起き上がった、寝起きなのにこの笑顔はなんだよ。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはようじゃねぇよ!何でココで寝てるんだよ!?」
「一人じゃ怖かったから、最初はお兄ちゃんに抱きついてたんだけど、寝てる間に離しちゃったんだね」
「抱きついたのか?」
「うん、お兄ちゃんも抱き締めてくれたよ」
頭が痛い、抱き締めたって、寝てる俺、妹になにしてるんだよ、全身全霊をかけて拒否しろよ。
「キスはしてないよな?」
「おやすみにお兄ちゃんのほっぺたにしたよ」
怖い、妹が怖い、姉妹が揃ったら俺に安息はあるのか?
「チカチカと寝てて良かったね、チカチカと寝てなかったら罪悪感で泣きたくなってたでしょ?」
「そうだな、ホントにチカと寝て…………」
「寝たんだ」
ハマった、完全に誘導尋問にハマった、ツバサのしてやったりの笑が怖い。
「やっぱり退院したときに?」
「そうだよ。アオミには言うなよ」
「何で?姉弟なのに隠し事するの?」
「アイツに言ったら確実に襲われる」
「僕なら良いの?」
「ツバサにはコテツがいるだろ、俺を大事にするのも良いけど、コテツはそれ以上に大事にしろよ」
ツバサの頭を撫でて俺はベッドから立ち上がった、3人分の朝飯作らなきゃいけないし、ツバサの妹就任の記者会見もやらなきゃな、殴られるだけで済めば良いんだけどな。
ツバサも部屋から出てきて、ソファーに座ってテレビを見てる、そんな中インターフォンが鳴る。
「お兄ちゃん、誰かな?」
「分かんない、ツバサでてくれる?」
「は〜い!」
ツバサは走って玄関に向かった、鍵を開ける音が聞こえてドアを開ける音も聞こえた、そして何故かツバサの叫び声も。
俺は慌てて玄関に行くと、倒れたツバサの上にアオミが倒れてた。
「大丈夫かアオミ!?」
「お姉ちゃんお酒臭い」
「酒?」
「かぁい、ただぁいむぁ」
完全に酔ってる、俺はアオミを担いでソファーに座らした、隣ではツバサが支えてるけど、酔ってるアオミはツバサをも押し倒す勢いだ、しかもツバサは嫌がってないし。
俺は水を一杯渡した。
「ゴメン、私寝るぅ」
「分かった、俺は今日出掛けるから昼は適当に食って」
「はぁ〜い」
アオミはそのままフラフラになりながら自分の部屋に入っていった。
俺は出来た料理をテーブルに並べて、アオミの分はラップをかけておいた。
「いただきま〜す」
ツバサは一目散に食べ始めた、一口口に入れるとそのまま止まった、そしてプルプルと震え始める。
「美味しい!」
「何だ、美味いのか」
反応がおかしいから不味いのかと思った、俺の作る飯が不味いわけないもんな、と自惚れてみる。
「お兄ちゃん美味しいよ!」
「そこまで騒ぐ事か?」
「騒ぐ事だよ、こんな美味しい朝御飯始めて食べた、毎日食べたいなぁ」
「ヤヨイさんが帰って来ない時なら良いよ」
「わ〜い」
学校でいる時よりも無邪気だな、少し疲れるけど可愛い妹?慣れるまでは色々苦労しそうだけど、慣れれば可愛い妹になるんだろうな、大人しくしてればの話だけど。
「お姉ちゃんはママと何話してたのかな」
「さぁ、でも久しぶりに楽しそうなアオミを見た」
「どういうこと?」
「アイツって友達を選ぶところがあるんだよね、ツバサと一緒でブラコンだし。だから帰って来ても楽しそうじゃないんだ、でも今日は俺といる時と同じ笑顔で帰って来た。多分女同士でしか話せない事でも話してたんじゃない」
ツバサは納得したように頭を上下させてる、ホントに分かってるのかな、まぁそのうち分かるだろ。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはやっぱり姉弟だね、良く分かってるよ。でも僕なんて……」
「そうか、ツバサの場合寂しかったんだろ、チカが同居してても親友だ、悩みとかあっても話せる限度とかはあるし、親友に甘える事は出来ない。母親がいても男の包容力が欲しい時もあっただろ、そこでお兄ちゃんがくれば甘えたくなるのもしょうがないだろ」
「お兄ちゃん凄い、そこまで分かってたんだ」
「まぁな、ツバサの甘えて来る時の目と、俺が遅く帰って来た時のアオミの目が似てたから、寂しさをぶつける感じかな」
ツバサの目は少しうるんでた、俺とかアオミとは違ってツバサは甘えたいタイプだもんな、女同士の家族には出来ない事もある、それが溜ってたんだろ。
ツバサはチカを連れて帰った、俺も支度しなきゃな、これからコテツに殺されるかもしれないし、気合い入れてこ。
待ち合わせをしてるレストランに行くと、既に全員集合してた、そりゃ重大な話があるって言えば遅刻する奴はいないよな。
コガネとヒノリとコテツの順で椅子に座ってる、奥にツバサがいてその隣にチカ、俺はチカの隣に座った、コテツと調度対角線上になって良いし。
「カイ、重大な話ってなんだよ?」
「そうやで、わいこれから稽古あるんや、早めにお願いしまっせ」
「いや、コテツに一番関係あるんだよね」
「わいに?」
コテツは心当たりが無いか考えてる、分かったらビックリだよ。
あぁ、今になって緊張してきた、ツバサには黙ってろって言ったから何も言わないから良いけど、ツバサは何を口走るか分からないもんな。
「驚くなよ」
「大丈夫やって」
「ツバサと俺は兄妹なんだって」
「「「えぇぇぇぇ!」」」
店内の視線全てが俺らのテーブルに注がれる、とりあえず全員でお辞儀して話を戻した、コガネもヒノリもコテツも理解出来ないらしい。
「冗談やろ?」
「ツバサの父親と俺の父親が一緒らしい」
「でも髪の色が違うじゃん」
「そうやで、カイはんのお姉さんまで青いのにツバサはノーマルやで」
「髪の色は母親の遺伝子」
再びフリーズする、ヒノリは驚いたわりには既に興味がないらしい、全員がヒノリみたいだったら楽なのに。
「俺の親父はホストやってて、その時に手を出して妊娠させたのがツバサの母親、だから俺とツバサは異母兄妹って事」
「ツバサはどう思ってるん?」
「僕は嬉しいよ、お……、カイがお兄ちゃんで」
「血が繋がってるだけならまだマシなんだけど。みんなアオミ見た事あるよな?」
コガネとコテツは顔を見合わせて考えてる、その間もヒノリは椅子に背を預けてアイスティーを飲んでる。
「カイはんにベタベタなんやろ?」
「チカちゃんよりもな」
「ツバサまでああだとしたら?」
「カイはん、もしかしてツバサと手ぇ繋いだんか?」
「ゴメン」
コテツはテーブルを思いっきり叩いて立ち上がった、ヒノリ以外全員に緊張が走る、俺はまともにコテツの顔を見れない。
「まぁ、ええか」
「えっ?」
「だって兄妹なんやろ?それならしゃあない、カイはんはツバサの兄貴なんやろ?」
「そうだよ、僕達はもう親友じゃないよ」
「でも良いのか?カイは昨日までは俺らと同じだったんだぞ、ツバサ君はやり辛くないのか?」
コガネは肘をつきながら、まえのめりになって、ツバサに聞いてる、おれもそれがずっと引っ掛かってたんだけど、ツバサがあんなだから受け入れてるけど。
「でもカイは産まれた時からお兄ちゃんだもん、親友になるずっと前から僕達は繋がってたんだよ、むしろ親友だったのが嘘みたいだよ」
そっかぁ、そうだもんな、俺が産まれた時にアオミが姉貴だったように、ツバサは妹だったんだよな、そう考えれば楽だな。
「チカちゃんは良いのか?親友と彼氏がベタベタしてて」
「最初は嫌だったよ、でもツバサはコテツといる時は愛を受けてる女の顔をしてる、カイといる時は兄貴に頼る子供の顔をしてるんだ、それ見たらアタシと兄貴の事を思い出しちゃって、別に良いかなって」
今はこんなに気丈に振る舞ってるけど、寂しがりやの泣き虫のブラコンだったんだよな、ツバサの気持ちは少し分かるんだろうな。
「コテツは?」
「カイはんは酷い事せぇへんやろ?」
「うん、家族思いの良いお兄ちゃんだよ」
「それならええで。カイはん、妹さんを下さい」
「何それ?プロポーズ?」
コテツは真面目な顔で体をのりだしながら行ってきた、高校生のクセに気が早いな。
「まぁそんなもんやな」
「ってか早く持ってって、アオミとツバサが揃うと疲れそうだから」
「お兄ちゃん酷い!」
「ツバサ、馬鹿!」
ついにコイツやりやがった、折角今まで上手い具合に抑えてたのに、3人の冷ややかな視線が突き刺さる、ヒノリまで興味持ちやがって。
「………お兄ちゃんだって」
「カイはんそんな趣味あったん?」
「ツバサ君が言うとリアルだな」
「アタシはフォローしないよ」
「お兄ちゃんごめんなさい」
ツバサが泣きそうな顔で謝ってきた、ツバサにも見捨てられるし、この調子だと学校中に広まるのも時間の問題だな、コイツらの中では諦めるか。
「ツバサ、別に気にするな」
「ごめんなさい」
「カイが言わせてるの?」
ヒノリがボソッと爆弾発言した、俺にそんな趣味があると思ってるのかな、だとしたら今後の在り方を考えないとな。
「ヒノリはそう思う?」
ヒノリが無言で頷いた。
「そんな訳ないじゃん、ツバサがこうとしか呼ばないから諦めただけだよ」
「コテツ、カイが一線踏み越えるのも時間の問題だぞ」
「それはアカン、そない事したらわいの拳が暴れてまうで」
「それはアタシも許さない」
それは無いと思うけど、手前までなら有り得そうで怖いんだよな、アオミは仕掛けて来てるし。
「大丈夫だよ、始めてはコテツって決めてるから」
「……………不純」
「爆弾発言だろ」
「カイはんええんか、妹あない事言ってるで」
「好きにしろよ」
「お兄ちゃんは僕が大事じゃないの?」
全員笑ってるよ、俺は泣きたい、常に暴走してる妹を誰かに止めて欲しいんだよ。
「でもココまで来るとホントの兄妹みたいだな」
「何言ってるのコガネん、僕とお兄ちゃんは正真正銘兄妹だよ」
「お兄ちゃんはどうなの?」
「コガネの兄貴では無いな。親が言ってるんだから確かなんだろ」
「前々から兄妹だったみたいだな」
確かに、俺もツバサが妹ってのが自然になりつつある、学校も同じだし良く会うから一緒に住む必要は無いけど、むしろ一緒に住まれると困る。
でも、こんなに可愛い妹がいるんだ、毎日がつまんない訳ないよな、俺が言うのもなんだけど綺麗な姉もいるし、俺って馬鹿だよな。