青と四色
ビッグイベントも終わって只今冬休み歐歌中、歐歌って言ってもただたんに家でダラダラしてるだけだけどね、たまには家にいないと流石の高校生でも疲れるって。
俺が家にいるとアオミも何故か家にいる、友達がいない訳じゃないと思う、何回も電話がかかって来て断ってるから。
いつもの事だけど家にいると俺の腕にしがみついてる、最初の一週間は拒んだよ、でもアオミに拒否は無意味だからな、完璧に諦めたよ。
「なぁ、夜何食う?」
「寒いから鍋やろ」
「鍋か、何鍋が良い?」
「チゲ鍋!」
「OK。なら買い出し行ってくるから鍋出しといて」
「は〜い」
ってか二人で鍋って悲しい、俺の真相心理の中で鍋は大勢ワイワイのイメージがあるからな。
最近は暗くなるが早いな、買い物終わって帰るだけで夜道になる。
今日の帰り道も辺りは真っ暗だ、寒さも体に響くし早く帰ろう。
でもそんな俺の気持ちを知ってか知らずか携帯が鳴り響く、携帯をポケットから取り出し開いてみると知らない番号だった、たまに番号とか登録しない事があるからその類の奴だと思って普通にでた。
「もしもし」
“若者か?”
若者?俺をそんな呼び方したのは、記憶の中で一人だけだ。
「ママさん?」
“おう、悪いな、ツバサから番号聞いた”
「そうですか、それでどうしたんですか?」
“ちょっと話がある、今から来れるか?”
何かいつになく真剣な口調だな、それとも酒で酔っててあんなだったのかな
「今から?姉貴を待たせてるんですけど」
“ちょうどいい、若者の姉も連れて来い。話はそれからだ”
「何処に行けば良いんですか?」
“それはメールで送る、じゃあな。プツッ”
切れた、かなり強引な人だな、それにアオミまで連れてこいって、どんな話なんだろ。
その後すぐにメールが来た、俺が知る限り指定された場所はバーだ、もしかして酒飲ませるために呼んだとか?
いろいろ不安があったけどアオミを連れて指定場所の前まで行った、細い階段を地下に下りた所にある。
中は薄暗くてカウンターの向こうには沢山の瓶が棚の上にのってる、そのカウンターの真ん中にグラスを持ったママさんがいる、俺は真っ直ぐママさんの隣に座った。
「話って?」
「まぁその前に何か頼め」
「俺未成年だから適当にジュースを」
「私はグレープフルーツの入った何か無いですか?」
「ありますよ」
店員らしきオッサンはシェイカーを振りながら応えた、この人俺らが未成年って分かってて酒飲ませるの?何か怪しい店だろ。
「ってかアオミ飲むの?」
「お酒の一つや二つ飲めなきゃ女としてやっていけないわよ」
「分かってるじゃねぇかブラコン」
あんたも親ならせめて一言くらいは制止しろよ、まぁ俺らをココに呼んだ時点で大きく間違ってるけどな、それに今…………。
「何でアオミがブラコンだって気付いたんですか?」
「そりゃ入ってきた時から腕抱いて、今も腕を離さないじゃないか、誰でも分かるって」
「何かカッコイイですね、姉御って呼んで良いですか!?」
「好きに呼べ」
「じゃあ私の事もアオミって呼んでください」
この二人の板挟みって怖いかも、まぁアオミが自分から話しかけた人だ、悪い人じゃないでしょ、アオミは人を見る目はありすぎるくらいだからな。
「それよりココに呼んだ理由は何ですか?わざわざアオミまでも」
「酒を一人で飲んでもつまんないから」
やっぱりかよ、この人は未成年に酒を率先して飲ませるつもりかよ。
「嘘よ、酒は一人でたしなむものだからな」
「姉御カッコイイです!」
アオミガッツキ過ぎだよ。
「ツバサの事なんだけどな」
「ツバサの事ならコテツに話せば良いじゃないですか」
「いや、その類じゃない、ツバサの親の事だ」
「ツバサって誰?」
「ツバサはママさんの娘で俺の親友のうちの一人、チカが間借りしてるのもママさんの家。ちなみにママさんはシングルマザーだから」
アオミの目が子供のようにキラキラ光始めた、何となくアオミが進もうとしてる路線が見えて来たかも。
「やっぱり姉御はカッコ良すぎです!」
「アオミは話が早くて楽だな、シングルマザーって言うとみんな一歩退くのに」
「女は男なしで生きていけますから」
「その話はココで終り、話が進まない。それでツバサの親がどうかしたんですか」
アオミを止めて話を元に戻した、二人で話してると本題に入る前に酔いつぶれそうだからな。
「そうだそうだ、ツバサの親は当時ホストをやってた奴で、私はその男に入り浸ってた。馬鹿だろ、ホストにハマるなんて」
「度合いによりますけどね」
何か場がしんみりし始めた、今考えると俺達にツバサの親の事を話すのも筋違いだと思うけど、この際どうでも良いや。
「それで私は付き合ってるとてっきり思い込んでた、それがホストの営業の一貫だとは知らずにな。まだガキだった私はその男に始めてとい始めてを全て捧げた、男のタメに体を売りかけた事もあったな」
ママさんの話を聞いてて怒りを抑えるので精一杯だった、まだガキだったママさんにそんな事をするクソホストが許せなかった。
「そんなある日ついに来なかったんだよ、生理って奴が。
言ってる事分かるよな、私は妊娠してた、まだ高校一年の15歳の私はガキなりに幸せを感じてた、これであのホストと一緒になれると本気で思ってた。
でもそこはホストだよ、妊娠の二文字を聞いた途端、札束目の前に出して無かった事にしろだとよ、私はその時やっと気付いたんだよ、遊ばれるだけの女だってね。
親の金に手をつけて、学校にも行かないでひたすらバイトして、結果は子供一人と札束置いてさようなら。
でもそこで私が自暴自棄に走ったらお腹にいる子供はどうなるって思ったんだよな、だから子供を育てる事で過去を正当化しようとしたんだ、この子のタメに私は産まれてきて、馬鹿したんだってね」
怒りの矛先が向けられない俺の感情は悲しみに変わってた、涙は何とか堪えた、隣でアオミが泣いて俺も泣いたら話辛いだろ。
「ココからが本題だ、私はこんな昔話なんて高校生のガキに聞かせて楽になる程馬鹿じゃない、そのホストの事だ。ホストの名前は‘四色真人’」
俺の頭はオーバーヒート寸前で、悲しみが再び怒りへと変わってカウンターを思いっきり叩いてた、アオミにいたってはショックを隠しきれないみたいだ。
「ママさん、俺らの親も四色真人っていうんだけど」
「四色なんて日本にはそんないないだろうからな、もしかしたら若者達の一族だけかもしれない。率直に言う、若者とツバサは異母兄妹だ」
嘘だろ、俺とツバサは全く似てないし、でも俺もアオミも母親似なんだよな、それに四色だけで信憑性は限り無く100に近いし、否定の余地がない。
「偽名でたまたまとかは?」
「免許証を盗み見したときの名前だから間違いは無い」
「カイ、私一回だけ聞いた事ある、ジジイが今の仕事をする前にホストをやってたって事」
「何でだよ!!?」
俺は机を両手で叩いて顔を埋めてた、俺が産まれた頃にアイツは平気で女と遊んでたのかよ、自分には子供がいるのに平気で。
「何でアイツは家族だけじゃなくて、他人にまで迷惑をかけるんだよ」
「過ぎた事だ、私は気にしてない、ツバサもホストの子供だってのは知ってるが、問題は血縁だな。ツバサは3月産まれだから若者……、カイが兄なのは確実なんだよな」
ツバサはどんな顔するのかな、親友が兄でしたなんてシャレになんないって、ってか急に兄妹なんて言われても無理だって。
「とりあえず…………………。ツバサ?今からいつものバーに来て、…………いや、チカは無しで、今すぐだからな」
ママさんはあっという間に電話してツバサを呼んだ、ココからなら10分もかからないだろ。
ていうことはママさんは母親に近い存在になるって事?ややこしいな。
「姉御は私のママ?」
「知らないが、位置的にはそんな感じじゃないのか、別に友達感覚でも良いけど」
「なんか俺の人生メチャクチャだよ、親に捨てられ、島で新しい家族見つけて、義兄は死んで、家出した姉はいきなり現れて、次は親友が妹ですだ?家族何人だよ?」
「何かカイの人生もヤバそうだな」
俺は一応ママさんに俺の人生談を話した、四色に関わるとマシな人生を歩めないな、ちょっと意味深に言うと呪われた一族、そんなカッコイイもんじゃないけどね。
三人のしんみり?した空気に割って入って来たツバサ、俺とアオミがいることにとりあえずビックリしてるらしい、ツバサは困惑気味にママさんの隣に座った。
「とりあえず、ツバサ、この二人はツバサのお兄ちゃんとお姉ちゃんだ」
「えっ?」
「いやママさん、何段飛ばしの説明なんですか?」
ママさんはめんどくさそうに頭を掻いてタバコに火を付けた、左手でタバコを持って右手で酒を飲んだ。
「お前の父親がホストってのは言ったよな?」
ツバサは無言で頷いた。
「そのホストは四色真人、カイの父親だ。ココまで言えば馬鹿のお前でも分かるだろ」
「え〜と、カイっちのパパと僕のパパが同じって事は血が繋がってる、血が繋がってるってことは家族、パパが一緒で家族って事はカイっちと僕は兄妹!?僕は遅産まれだからカイっちはお兄ちゃん、その隣は噂に聞くカイっちの美人お姉ちゃん、カイっちのお姉ちゃんは僕のお姉ちゃん、ってこと」
全員で頷いた、数式を解くみたいに解釈するんだな、まぁ軽いパニックを起こしてるけど分かったみたいで良かった。
「はじめまして、姉のアオミよ」
「僕はツバサ、僕にこんな綺麗なお姉ちゃんがいるなんて」
「姉御とは正反対だけど可愛い妹がいたなんて」
アオミの順応の速さにもビックリだよ、こういう時って男って弱いよな、むしろココにいる奴らが速すぎなんだろ、俺は普通だよ、そう信じたい。
「何だかよく分かんないけど、よろしくね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ちょっと待て、アオミはともかく俺にお兄ちゃんは馴染まないって、今まで親友でしか無かったんだぞ」
「でもお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん、僕お兄ちゃんが欲しかったんだよね」
「歳は変わんないんじゃん」
何かコテツに言いづらいんだよな、ってかみんなに言いづらいし、受け入れざるおえないけど、ブラコンの姉に続きうるさい妹かよ。
「でもお兄ちゃんはお兄ちゃんだよ、僕のカッコイイお兄ちゃんと綺麗なお姉ちゃん」
ツバサは俺とアオミの腕を掴んで両方を笑顔で見た、妹と思うと違った意味で可愛く見える。
「カイ〜〜、この子めちゃめちゃ可愛い!」
「お姉ちゃんもめちゃめちゃ綺麗!」
「ツバサ〜〜!」
「お姉ちゃん〜〜!」
感動の再開みたいに抱き合ってる、始めて会ったのにココまで馴染むとは、恐るべし血縁。
「お兄ちゃんもシラケてないで」
「だからお兄ちゃんって呼ぶな!」
「でもお兄ちゃんにカイっちはダメでしょ、それに僕はお兄ちゃんって響きが気に入ってるんだけどな」
「じゃああれだ、せめて学校にいる時だけはお兄ちゃんって呼ぶな、それ以外なら良いから」
「は〜い」
「実は妹萌えとかしてるんじゃないの?」
「しないしない、数十分前までは親友だったんだぞ、多少は違うけどそんなマニア向けの感情はないから」
みんなにどう説明すれば良いんだよ、特にコテツには申し訳なくてしょうがない。
俺の人生なのに俺に関係なく激変する人生、これ以上の変化には耐えられないだろうな。
「もう帰って良いぞ」
「ママさんは飲むんですか?」
「飲む。それとそのママさんも辞めろ、なんか他人行儀過ぎて嫌だ」
「じゃあ何て呼べば良いんですか?」
ママさんは明後日の方向を見て考えてる、流石に親への昇格は順応出来ないから無理だな。
「弥生って名前だからヤヨイで良いよ」
「じゃあヤヨイさんで」
俺がバーを出ようとしたらツバサもついてきた、でもアオミは座ったまま。
「アオミは帰んないの?」
「私は姉御と語り明かす。良いでしょ?」
「私と語のには酒が要り用だよ、潰れない自信はある?」
「バカルディーまでならいけますから」
「流石にこんな所に無いから……、ウォッカ二つ頂戴」
どんだけハードボイルドな姉なんだよ、ってかバカルディーは通じるんだろうか、どこで飲んだのかも知りたいし。
俺とツバサは二人で帰り道を歩いてる、血は争えないらしい、ツバサはさっきから俺の腕にしがみついてる。
「なぁ、それは流石にヤバいだろ」
「何で?お兄ちゃんと腕組んで何がいけないの?チカチカにもしてるのに」
「俺は男だぞ、それに親友の方がまだ強いし」
「堅いなぁ、前は前、今は今でしょ、お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから」
ため息しか出ないよ、何で四色の女は腕を組みたがる、呪われた一族の七不思議ってか。
「ツバサは飯食ったの?」
「あっ!そうだ、チカチカと作る予定だったのに」
「チカは家にいるの?」
「いるよ」
俺は携帯を取り出してアドレス帳を開いた、チカの番号にかけるとすぐに出た。
“もしもし”
「チカ、飯食った?」
“食べてないよ”
「作ってあるの?」
“まだ、何で?”
「俺んち来いよ、鍋やるし俺も一人しかいないからさ」
“分かった、でも家知らないんだけど”
「じゃあコンビニまで来て」
“分かった、プツッ”
俺とツバサの家の中間にあるコンビニで待っててもらう事にした、勝手に家に入れちゃヤバいかな、でもアオミなら許してくれるよな。