金と銀
今は男三人で暑苦しく買い物してます、それもこれも、今日は12月18日、超ビッグイベントを一週間後に控えて気付いた俺達。
去年と被るのは極力避けたい、それにチカの場合誕生もあるんだよな、だから迷ってんだよ、ネックレスと何かが良いんだけど、その何かが思い浮かばない
「コガネ、何か無いの?」
「俺に聞くな、ヒノの趣味は分かってもチカちゃんの趣味は分からないもんで」
「確かに。コテツは……………、パスだな」
「何でやねん!」
「だってツバサと趣味が同じとは思えないから」
『確かに』
あぁ悩む、こんなにチカにあげる物で悩むなんて思わなかった、何か無いのかよ…………………、あ、そうだ、そういえばチカ髪留めが壊れたとか言って安いやつ買ってたな、二つ目はこれに決まりだな。
俺達は一通り買って飯を食いにファミレスに入った、商品が運ばれて来て食べながら男の会話というか、女の子がいる前では話せない話というか、ちなみにあっち系の話じゃないから、まぁそんな話をしてた
「ねぇ、コガネはんはヒノリはんと付き合ってるん?」
「分からないけど、告白はどっちもしてない」
「いつも俺らに見えないように手を繋いでるくせに?」
「ブッ!」
食ってたパスタを多少吐き出した、俺とコテツは笑いながらパスタを片付ける、コガネは物凄い勢いで水を飲む
「ハァハァ、知ってたの?」
「それはなぁ………」
「気付くな言う方が無理やで」
「で、最初はどっちから握ったんだよ?」
コガネは母親の血が濃くでた真っ白な肌を真っ赤にして、頬を人指し指で掻いてる、耳まで全部真っ赤
「ひ、ヒノから」
「ヒノリからねぇ」
「コガネはんも腰抜やな、ここはコガネはんからいかなあかんやろ」
「いや、いきなりだったし」
「ならキスくらいはコガネからしてやれよ」
コガネが茹で蛸みたいに真っ赤になった、元が真っ白だから赤さが目立つ。
ヒノリもかなり積極的だな、喋らない分行動で示す男みたいなタイプとか、それともコガネに呆れて
「でもどうやれば?」
「俺はノリというか、勢いというか」
「コテツは?」
「それがさんざん言っときながらわいもまだやねん、ツバサもあんなさかい、タイミングが無くてな」
コテツがまだ何て以外だな、まぁ二人でいるとずっと騒いでるからタイミングが無いのか、ホントに以外
「その前にコガネは自分の気持ちを伝えろ、十中八九ヒノリはコガネの事が好きだよ」
「どうやって?」
コガネのその言葉を聞くと、コテツはコガネの隣に行って肩を組んだ、コテツはコガネの顔を自分に向けた
「ヒノリ、めっちゃ好きやで。…………みたいな感じや!」
周りの人がみんな見てるよ、ホモに見えてるんだろうな、俺はそれを客観的に見て楽しんでる、それにコガネは気付いてコテツをの腕をどけた、コガネはコテツに周りを見るように合図を送る
「ちょっとやりすぎたみたいやな」
コテツはそのまま自分の席に戻った、コガネは恥ずかしいのかまた顔を真っ赤にしてる
「コガネは奥手過ぎるんだよ、たまには自分の欲に溺れてみれば」
「それが出来れば苦労しないって」
「コガネはヒノリが他の男に持ってかれるとか思った事は無いの?ちんたらしてたら足下すくわれるぞ」
「幼稚園入る前から一緒にいると、相手の一挙一動で分かっちゃうんだよね、相手が何を思ってるのかが、だから男が来ても全く興味がないのも分かる、だからヒノが誰かを好きになるなんて思った事も無かった、当然俺にも」
そっか、コガネにとってヒノリは誰よりも自分を知ってる人間だもな、コガネはヒノリの事なら誰よりも知ってる、だから分かっちゃうんだな、でも自分に対しての気持ちは気付かなかったと
「ココからは俺の推測に過ぎないけど、ヒノリはコガネの事をずっと好きだったんだと思う、でもコガネはヒノリの‘好き’って部分だけは客観的に見る機会が無かった、だから‘嫌い’とか‘ウザイ’には気付いたけど‘好き’だけは常に他人に向けられ無かったんだよ、コガネはそれが男に興味が無いのと勘違いしたんじゃないか?ヒノリのコガネに対する接し方が変わった時ってあった」
コガネは顎に手を当てて考えてる、俺の予想だとあるハズだ、ガキの好きと恋愛感情ってのは全く別物だから、気付いた時は絶対に何かが変わるハズ
「多分だけど、中二の頃かな、買い弁だった俺にヒノリが弁当を持ってきたんだ、それからずっと俺に弁当を持ってくるようになった」
「多分それだ、ってかそれなら気付けよ」
「ヒノリはんって良い女やな」
「今までも何回か家に来て作ってもらった事はあったから、なんかそこまで違和感は感じなかった」
静かに進む恋か、良く言えばクールな恋、悪く言えば奥手な恋、ヒノリもコガネと一緒で相手の事を知りすぎてたんだろうな、勇気を出したのはヒノリの方だけど
「コガネにはもったいないくらい良い女だな」
「そ、そうかな?」
「何でコガネはんが照れるんや」
「チカの方が100倍良い女だけどね」
『はぁ〜』
うわぁ、物凄い呆れた顔でため息つかれた、自分の彼女の自慢して何が悪い、自慢出来ない彼女だったら別れてるって。
俺らはファミレスを出て街を歩いてる、早く帰っても良いんだけど、それじゃつまらないから今に至る。
途中で見つけたデカイゲーセンに入った、4階建てで一回はプリクラが占めてる、俺らはとりあえずパンチングマシーンの前に行った
「ビリは一番にジュース奢りやで」
『却下』
「なんでやねん!」
俺とコガネは顔を見合った、当たり前の事だろ、ゴルゴ●3に射撃で勝負を挑んでるようなもんだよ
「なんでわざわざ相手の土俵に入って、賭けをしなきゃいけないんだよ」
「…………確かにそうやな、とりあえずやろか」
「ちょっと待った、俺とカイからやる、コテツからやったら俺らがショボくみえる」
コガネはコテツを押し退けて金を入れた、グローブを左手に着ける、そういえばコガネは左利きなんだよな。
サンドバッグみたいな柱が起き上がって来て、画面にスタートの文字が出た、コガネは軽く助走を付けて二重円の真ん中を殴る、ズドンという音と共に画面に文字が浮かび上がった
《143.3kg》
「中々やるじゃん、コガネ」
「ケンカ慣れかな」
俺はコガネの次にスタンバイした、柱が起き上がり、俺は思いっきり殴った
《144.0kg》
「俺の勝ち」
「別に勝負してないし」
「次はわいやな」
コテツはグローブを着けずに構えた、肩幅に足を開いて体をを少し沈める、息を吐いて柱を見た
「ハッ!」
かけ声と共に殴る、俺達のズドンとは違って、ドスンという重い音が響いた
《163.8kg》
『………………』
俺らは口が空いたまま黙ってしまった、絶対コイツにはケンカ売れない、ってか絶対に殺される
「まぁまぁやな。あれ、どないしたんお二人はん?」
「凄すぎ」
コガネは全く声が出ないらしい、ギャラリーも集まって来たし、俺らだけの記録でも凄いと思うよ、でもコテツのせいでそれが薄れた
「コテツ、コガネ、早く出よう、見られるのは居心地が悪い」
「ホントだ、出るか」
「なんやお二人はん、わいはもうちょい目立ちたいんやけどな」
そんなコテツを置いてギャラリーの中から出た、コテツは暫くしてからギャラリーに愛想振り撒きながら出てきた。
俺らは一つ上の格ゲーのコーナーに行った、これはコガネからのお願い、なんかコガネはゲームしないタイプだと思ったのに、以外だな
「ちょっと見てろよ、ココのレコード全部塗り変えてやるから」
「格闘系のゲームにレコードなんて無いだろ」
「………………まぁ、良いから見てろ」
「馬鹿や、馬鹿やで」
コテツがクスクス笑ってるのを睨みながらゲームを始めた、反対側に人がいて対戦するらしい、素人だから何が凄いのかよく分からないけど、コガネが異常なくらいに強い事は分かる、あっという間に相手が何も出来ないまま終わった
「どう?強くね」
「確かに強いけど、自慢出来る特技じゃないよな」
「そうやな、ゲーム得意言われても引くで」
「うるせぇな」
その後もコガネはゲームをやりつづけた、俺とコテツはついていけずに近くのベンチで休戦、ジュース買ってコガネの方を見てる、コガネの周りにはかなりのギャラリーがいる、今回は男だけじゃなくて何故か女の子も
「コガネはん戻ってこれるん?」
「知らないけど、俺らもハイエナに狙われてるぞ」
コテツに顎で知らせた、少し遠くに女の子がいる、さっきコテツが愛想振り撒いた時に連れた奴らか、コテツはそれに気付いて手を振った
「ねぇ、今私に手を振ったよね?」
「良かったね、私は隣の人の方がタイプだけど」
「もう一人はいなくない?私的にはあの金髪の人が良いのに」
最悪だよ、コテツのせいで3人釣れた、みんな可愛いんだろうけど、全く興味がない、コテツもチラチラ見て遊んでるだけ、最悪な男だな
「女の子で遊ぶな、後でめんどくさい」
「わいは女の子とは見てないで、ただのギャラリーや」
最低、社交的もここまでくると犯罪だよな、しかも彼女持ちだし、ツバサ以外は男も女も関係ないんだろうな、コテツにとっては
「多分真ん中の子は後で来るぞ」
「何で?」
「コテツが遊んでるから」
「しゃあないやん、あっちが見とるんやもん、シカトしたら可哀想やん」
多分これが本心だ、人が良すぎるのも良くないな、頭が悪いからそこまで回らないのか?
コガネがギャラリーの輪から出てくるとオマケも付いてきた、ギャラリーにいた女の子だ、なんでここにいるのかは分からないけど、一気に群がって来た
「コテツ、帰るか」
「そやな」
俺らはあえてコガネを置いて出ようとしたけど、コガネはなんとか追いついた。
ゲーセンを出るまでずっと後ろをつけられる、多分さっきの女の子三人衆だろうな
「コテツ、やっぱり着いてきたぞ」
「あっちゃ〜、やってもうたな」
俺らが出ると檻から放たれたように俺らのところに走って来た
「あのぉ……………」
「なんや?」
「ほら、早く言いなよ」
「そうだよ、帰っちゃうよ」
他の二人が催促してる、コガネは全く理解出来てない、コテツは頭を掻きながらしかめっつらをしてる、コテツに話しかけて来た女の子は顔が真っ赤だ
「これから暇ですか?」
「全然、彼女を待たせてるから、すみまへんな」
「そうですか、すみません」
そのまま三人衆は去って行った、コテツにしては案外あっさりしてるな、しかも嘘ついてるし
「やってもうたな、今度からは考えなあかんな」
「だから言っただろうに」
「あのぉ、さっきから話が掴めないんだけど」
蚊帳の外だったコガネが静かに入って来た、俺とコテツはコガネがゲームしてる時の事を話した、コガネはため息をついて歩き出す
「馬鹿だろ」
「まさかこうなるとは思って無かったんや、ただ見てるから返しただけやで」
「それがいけないんだよ、悪いとは言わないけど、ツバサ君が可哀想だろ」
「……………そやな、今後は注意しときます」
俺らはそのまま家に帰った、今日はチカのだけじゃなくてアオミのも買ってる、だからなるべくアオミには会わずに部屋に行きたいんだよな、いつも帰ると新婚夫婦ばりの勢いで抱きついてくるし。
そんな俺の心を知ってか知らずか、今日、アオミの帰りは遅かった