赤の誤解
あぁ最悪だ、完璧にアイツのせいでチカに誤解されたよ、アイツは何も悪くない、俺がハッキリ言えなかったのが悪いんだけどタイミングが悪すぎる、チカは早退しちゃって理由は聞いてもらえなかった。
言い訳しに来たわけじゃないけど今はツバサの家の前にいる、チカは確実にココにいるはずだ、二人とも学校休んだし、俺は今日いてもたってもいられずに早退してココにいる、インターホンを押そうとしてる手は震えてる、チカを傷付けた自分が何より許せなかった、震える手で無理矢理押した
“ピンポーン”
ハァ、押しちゃった、この先どうなるか分からない、最悪な結果が待ってるかもしれないけど違うかもしれない、案外早くドアが開くとそこにはツバサがいた
「……………カイっち」
「ツバサ、チカは……………!?チカ、話があるんだ!あれは誤解なんだよ」
ツバサの後ろで両耳を手の平で押さえて目を瞑ってるチカがいた、力なくその場に座りこんでる、顔色も悪い、俺のせいだよな、全部俺が
「辞めて!帰って!今はカイの顔も見たくない、話たくない!」
チカの言葉で目の前が歪んだ、頬を熱いものがつたって下に落ちた、俺は絶望感にさいなまれる
「チカ……、明日学校に来てくれ、話したい事があるんだ」
俺はそれだけ言って帰る事にした、涙がとめどなく流れてきて胸が苦しい、チカという存在が目の前から消えていく、チカは本気で俺を拒絶してた、電話の電源も切ってるし、チカまで失っちゃうのかな俺。
家に帰るとそのままコガネから借りてる部屋に入って泣いた、唯一無二の存在に拒絶された悲しみ、たった一人にすら信じてもらえない悲しみ、音をたてて崩れ落ちる幸せを繋ぎ止めておけない悲しみ、チカがいない生活なら無くてもいい、チカがいない世界なら俺は生きたくない、チカ、俺を一人にしないでくれよ
“ガチャン!”
コガネが帰って来た、今日は部活があるはずなのに早いな、しかも一人じゃない、もう一人誰かいる、こんな姿コガネにも見られたくないのに、その二人は躊躇なく俺の部屋に入って来た
「カイ、ゴメンね」
そこにはこの事件の根源がいた、俺が見たこともない暗い顔で俺の事を見てる、コガネは近くにあった椅子に座った、あの女はテーブルを挟んで反対側に座った
「カイ、悪い、どうしてもって言うから連れて来た」
「カイ、私のせいよね?ゴメンね、私も潤間さんに説明するから」
「全部俺が悪いんだよ、説明出来なかったのも、誤解を産んだのも全部俺のせいだ」
「カイはいつもそう!全部自分でしょいこんで、誰も頼ろうとしない!私そんなカイは嫌い」
確かにそうだな、でもこれは俺の問題だ、少なからず他人が原因だったとしても俺の力不足
「おいカイ、カイとこの人はどういう関係なんだよ?」
コガネは背持たれに持たれて腕を組みながら言った、ってかコガネは訳の分からない奴を家に入れたのかよ、その他大勢の女子だったらどうするんだよ
「コイツか?コイツは俺の姉貴」
「はぁ!!?」
「カイの一つ上の蒼海、よろしくね」
アオミはコガネに笑いかけた、アオミは小さい頃から自己紹介だけはどんな時でも笑顔なんだよな、そのせいで何回か誤解をうんだけど
「この人はカイのお姉ちゃん!?でもカイは親に捨てられたんだよな?ならアオミさんは?」
「アオミは高校に上がる時に家出してそれ以来音信不通。そういえばいくら持っていったんだよ?」
「3000万」
『3000万!?』
俺もビックリした、アオミは家に《これで勘弁してやる》とそれだけ残して家出した、親父は通帳を見て笑ってたんだよな
「あのクソジジイにはこれくらい端金でしょ、私はこれであの家とは縁を切ったのよ」
「大胆なお姉ちゃんだな」
「困ってたよ」
会うと抱きつくのもクセだ、中学校でも会う度に抱きついてきたから慣れたけど、その慣れのせいで誤解されたんだよな
「ならチカちゃんに説明すれば済むだろ?」
「チカは俺と話たく無いって」
再び空気が重くなった、少しでも話してくれれば誤解は解けるのにそれすら出来ない、今の俺は最高に無力だ
「やっぱり私のせいだよね?」
「それだけじゃない、ビックリしてチカの事を忘れてた俺も悪かった、でもあの言い回しは最悪だけど」
「だって私のカイなんだもん」
でたよブラコン、アオミは極度の弟好きなんだよな、夜這いしかけられたこともあったっけ
「カイ、アオミさんに手出してないよな?」
「そんな趣味は無いから、アオミは無理矢理色んな事仕掛けて来たけど」
「だってカイが弟じゃなかったら全部を捧げたいくらいよ、そこら辺にいる男よりカッコイイし強いし優しい、だからちょっと潤間さんに嫉妬したのもあるんだ」
アオミは半端な事はしないからな、一番ヤバかったのは裸で風呂に入られた時だったかな、いつの間にか添い寝してるのは日常茶飯事だし、今考えるとかなりヤバい姉貴だな
「とりあえず明日だ、明日チカと話さえすれば何とかなる」
「そうだな、チカちゃんも分かってくれるだろ」
「じゃあ私は帰るわよ、カイ、明日は私も事情を説明する、だから一人でしょいこまないで、私達姉弟なんだから」
アオミは帰って行った、少なからずアオミが帰って来てくれたお陰で楽になったな、急に現れて台風起こして行ったけど、目があるのも台風だからな、目を抜けたら逆サイドの台風が待ってる、弱まってる事だけしか祈れないな、雨をしのぐ事ばっかり考えてたら鼬ごっこだ、雨を降らせないように俺はなる。
今日はチカが学校に来てるって噂を聞いた、俺は授業に身が入らないから屋上でサボってる、コガネも今回は俺を一人にしてくれた、今は誰とも会いたくない、自分の気持ちに整理がつかないし万が一の事を考えたら怖い、でも今のままの方がもっと怖い。
昼休み、俺は4時間目が終る前にチカの教室の前に立ってた、終わって先生が教室の前のドアから出てくるのと同時に俺は後ろのドアから入った、周りは気にしないでチカの前に立ってチカの腕を掴んだ
「チカ、話がある」
チカは何も言わずに俺の腕をふりほどいて俺の後ろをついてきた、途中でアオミも連れて人気の無い学校の花壇の所で止まった、沈黙は暫く続いて俺は口を開いた
「チカ、とりあえず誤解をうんだ事を謝る、ゴメン」
「誤解ってこの人はカイの何なの?元カノとか?」
やっぱりそっち方面の誤解か、元カノに抱きつかせる程未練がましい男じゃないよ
「コイツ、……アオミは俺の姉貴だよ」
「潤間さん、ゴメンね誤解するような事行っちゃって」
チカは俺とアオミの顔を見て険しい顔をした、チカはさっきの疲れた顔から怒りの表情に変わった
「アタシがそんな嘘信じるとでも思ったの?もっとマシな嘘付いてよ!」
そりゃ嘘っぽいよな、ココにいる人が僕の生き別れのお姉ちゃんです、なんて信じろって方が無理だよ、でもそれを信じてもらうタメにアオミを呼んだんだけど
「アオミ、身分証明書出して」
アオミは生徒手帳の中から学校で配布されるカード型の身分証明書をだした、髪は黒いけどこれならいける
「はい」
「…………四色蒼海?」
「そう、それでも信じられないなら、ほれ」
俺はアオミの前髪を上げた、アオミは四色の遺伝から嫌ってたからいつも黒染めしてたんだよな、だから姉弟って見られない事もしばしば、でも普通の奴らが茶髪にして時間がたつとプリンになる、あれと同じような事が起こるんだよ
「生え際が、青い」
「こんな事が出来るのは俺か、俺と同じ様な遺伝子の奴だけ、これで信じてもらえたか?」
チカの顔が悲しみに変わって行った、今日はチカを疲れさせちゃったな、まだ体力が回復してないハズだ(俺のせいで)、無理させたくないんだよな
「じゃあ枕元で囁いたのは?」
「ガキの戯言、それか無理矢理言わされたか」
「じゃあ抱きついて来たのは」
「アオミは極度の弟Loveだから、一種のクセだよ」
「ゴメンね潤間さん、貴方とカイは恋人同士、私とカイは姉弟、だから私は貴方のお姉ちゃんって事」
「おい、アオミ!」
アオミの奴いきなり変な事言いやがって、顔が熱い、茹でられたタコってこんな感じなのかな?チカも顔が真っ赤だし、でも笑ってる、チカが笑ってくれた
「あら二人とも、可愛い」
「からかうな」
「…………カイ!」
今度はチカが抱きついてきた、俺は倒れないように抱き寄せた、隣でアオミはクスクス笑ってるし、別にアオミの前ならこれくらいは良いだろ
「お姉さん、カイを頂きます!」
「お姉さんって、…………それに頂きますって表現的に良くないだろ」
「たまには私にも味見させてね、潤間さん」
「アオミ!」
「良いですよ、それとチカって呼んでください」
そういえばチカが敬語使ってるよ、一つ上なら躊躇なくタメグチでいくチカが敬語を使ってる、新鮮だな、俺がそんな事を考えてると左にチカ、右にアオミがいた、二人の唇がいつの間にか俺の頬に当たってる
「チカはともかく何でアオミまで!?」
「良いじゃないほっぺにチューくらい、それともお姉ちゃんにチューされて興奮しちゃった?」
「しねぇよ!」
「じゃあアタシのキスで興奮した?」
誰かこの二人から俺を助けだしてくれ、チカの誤解が解けたのは良いんだけどこれは困る、しかもチカがアオミの事お姉さんだって、なんか現実味がありすぎて怖い、チカとは仲直り出来たし、アオミは帰って来たし、一件落着ってか。