青への疑惑
今回もチカ目線で話を進めていきます
カイは最近やっと怪我が完治した、部活も出てるし元気も戻って来てるそんな今日この頃、外は寒くなってきてもうそろそろ秋も終りそう、今頃島の山とか綺麗な紅葉なんだろうな、東京は木が少ないからわざわざ見に行かないとダメなんだよね、でもわざわざ葉っぱを見に行くのも馬鹿馬鹿しいよな。
昼休み、アタシとカイはデザートを買いに購買にいた、残り物には福がある、生徒が退いた後に残った物でもたまには美味しい物があるんだよね、今日もそんな収穫があった
「これ美味しそう!」
「…………抹茶プリン?なんかオヤジっぽい」
「うるさい、アタシの勘は外れないからね。おばちゃん、これ頂戴!」
アタシは抹茶プリンを、カイはソーダーゼリーを買って屋上に向かってた、一階の廊下を歩いてる時だった、遠くの方からスカート振り乱しながら走って来る女の人、あんなに走ったらパンツ見えちゃうけど良いのかな?そんな事を考えてるとアタシは気付いた、あの人カイに向かって走って来てる、そしてそのまま飛び付いた
「カイ〜〜〜〜〜!!」
「うわっ!何だよ!?」
女の人はカイの首に腕を回して上目使いでカイを見てる、ってか顔近いよ、カイは女の人をぼーっと見てる
「………………はぁ!?何でお前がココにいるんだよ!?」
「何でって、ほら」
女の人は自分の制服をカイに見せた、当然の事ながらうちの学校だ、それにしてもあの女の人綺麗だな、綺麗な髪の毛には今流行りのウェーブがはいってるし、顔はパーツ単位で綺麗、アタシなんて足下にも及ばないくらいだよ、それにさっきからカイの首に腕を回してるからパンツが丸見えだし、ってかカイはアタシの彼氏なんだけど、カイも少しは嫌がってよ
「お前ココの生徒だったのかよ?」
「そうよ。カイも大人っぽくなったわね、それに髪も伸びたわね」
最後は若干飽きれ気味に言った
「伸ばしてるんだよ」
「カイ、この人誰?」
アタシは思わず横から口を挟んでた、別にアタシがカイの彼女なんだから遠慮すること無いよな、むしろ突き飛ばすくらいの事はしても良いと思う、でも、カイが嫌がって無いのを見るとアタシの方が邪魔してるように思えてくる、カイは女の人に簡単に気を許すような性格じゃないのは知ってる、しかもアタシ以外の人が意図的に触れようとすると怒るし、そんなカイが何で?
「コイツは……………」
「えぇと、カイの彼女の潤間さんだっけ?」
「はい」
「カイがお世話になってます」
「別にお世話なんてしてません」
アタシと話してる時も女の人はカイから離れない、アタシは思わず目線を反らしながら話してた、カイは離すどころか倒れないように支えてる、カイに裏切られた気分だった
「カイと貴方はどういう関係なんですか?」
「少なくとも今の潤間さんとカイよりは深い関係だったわよ」
もしかして元カノ?でも元カノだったら振りほどいても良いのに
「毎朝手を繋いで登校してたし、枕元で好きって囁いてくれた事も何度もあっわね、少なくとも潤間さんよりはカイの事は深く知ってるわよ」
アタシはめまいがした、カイはアタシに嘘をついてたんだ、それにこの人の自信、もしかしてカイはまだこの人の事好きなのかな?それはそうだよね、あれだけ愛し合ったんだから、簡単に別れるなんて無理だよね
「……………カイ」
「チカ、誤解だって」
「じゃあ何?この人の言った事が嘘だったっていうの!?」
「それは…………」
「否定出来ないんだろ!?最低!!」
アタシは泣きながら走ってた、カイは追ってこない、カイは何も否定しなかった、やっぱりあの人の言ってる事は全部本当だったんだ、あれだけ綺麗な人に勝てる訳ないだろ、カイの馬鹿。
アタシはその日そのまま早退した、ツバサの家に戻って涙が枯れるまで、声が出なくなるまで泣き続けた、カイからの電話がうるさいから携帯の電源は切ってある。
次の日も学校に行く気にはなれなくて休んだ、皆勤賞狙ってたのに、今日はツバサも休んでくれた、アタシは断ったんだけどツバサは一度言い出したら聞かない性格だから
「で、何があったの?僕で良ければ相談にのるよ」
「カイの元カノが来て、しかもカイは抱きつかれても嫌がらないんだ、それどころか転ばないように支えてたんだよ」
「カイっち最低!」
ツバサが怒ってる、アタシは怒る気力も残ってないよ、カイは浮気なんてしないって信じてたのに、浮気じゃなくてもあんなの見せられたら信じられないよ
「でもチカチカがファーストキスの相手なんでしょ?」
「それが嘘かもしれないの」
「嘘!?」
ツバサは机を強く叩いて身を乗り出してきた、アタシは思わずのけぞってそのままツバサを押し返した、ツバサを落ち着かせて自分の心も落ち着かせる
「女の人が言うには、…………………何回も枕元で好きって囁いてたらしい」
「それってもしかして?」
「カイは女の人を抱いたんだよ」
ツバサは顔を真っ赤にしてフリーズした、アタシもこんな話をしてるせいか顔が熱い。
カイとアタシが初めてキスをした時、あれだけあっさりといきなり出来たのはそのせいかな?だとしたらアタシは遊ばれてたの
「でも僕にはカイっちがそういう事するようには思えないんだけど」
「アタシもだよ、でもカイはアタシが逃げても追って来なかったんだよ、アタシの事が大事なら追ってくるでしょ?女の人の方が大事だったんだよ」
アタシは自分で言って泣けてきた、アタシがまた泣き始めるとツバサはタオルでアタシの涙を拭いてくれた、アタシはツバサの手を掴みながら泣いてた。
泣き終わった頃には昼を回ってた、でも何も食べる気がしない、多分今食べても喉を通らないと思う
「大丈夫チカチカ?なんだかグッタリしてるけど」
「肉体的には大丈夫だと思う、でも精神的にキツイ。ツバサ、これって失恋だよね?」
ツバサは目を反らしたまま何も言ってくれない、カイの本当の気持ちを聞く事も出来る、でもそれを聞いたら今以上に立ち直れなくなりそうで怖い、学校で会ったらどうしよう、顔も見れないな
「チカチカ、大丈夫だよ、カイっちを信じよう」
「無理だよ、今のアタシにカイは信じられない」
「チカチカ…………」
“ピンポ〜ン”
家のチャイムが鳴った、ツバサは玄関の方に歩いて行く、アタシは少し後ろを歩いて部屋に入ろうとした、でも来訪者を見てアタシはその場に崩れ落ちる
「…………カイっち」
「ツバサ、チカは………!チカ!話があるんだ」
玄関にはカイがいた、アタシはその場に崩れ落ちて耳を塞いで目を閉じた、今はカイの顔を見たくない、声も聞きたくない
「辞めて!帰って!今は何も話す事は無い!」
「チカ聞いてくれ!ホントにあれは誤解なんだって!」
「嫌だ!何も聞きたくないの!お願いだから、…………帰って」
アタシは力なく腕を床に落とした、自分でも分かる、今のアタシは抜け殻みたい
「チカ、ちゃんと話がしたいんだ、明日、学校に来てくれ」
それだけ言ってカイは帰って行った、ツバサはアタシの肩にそっと手を置いて優しい声で話しかけてくれた
「カイっち、泣いてたよ。明日はちゃんと話を聞いてあげな、これは僕からのお願い」
アタシは頷く事しかできなかった、今日一日はカイとの全てを絶った、電話の電源も切りっぱなし、アタシは心の整理がつかないまま次の日を待った