青の退院
入院生活は面倒な事とかを気にしなくて良いと思ってた、でも最悪だ、自由は無いし飯は不味いし楽しみは誰かが来ないと無いし、後三日で退院だけどいますぐにでも逃げたい、しかも学校の女の子が来て邪魔するだけ邪魔して帰るし、お見舞いに来てくれるのは嬉しいけど周りの患者のタメにも静かにしてほしい、頼みの看護師さん達もやっぱり女だ、高校生にまで狙いを定め始めた
「四色くん、お姉さんが色々教えてあげようか?」
「いや結構です、っていうか拒否します」
ベッドで寝てる俺の枕元に腰掛けて俺の頬に手を置いてきた、普通の高校生なら喜ぶだろうけど俺にとってはいい迷惑だし
「なんならお姉さんが大人にしてあげようか?」
「や、やめて下さい!お願いだからほっといて」
看護師さんは俺の上に乗ってきた、ってか俺は患者でこの人は看護師だよな?キレイなら何しても良いのかよ?看護師さんは段々近付いて来て俺は身動きができなくなった、その時カーテンが開いた
「チカ!良いところに来た、助けてくれよ」
「何してるの?カイ」
「あらお嬢ちゃん、何って、ナニよ」
この看護師さんは本当に雇われてるのか?自称看護師と疑うくらいだぞ、看護師さんが俺の上から降りる時にあえて大胆に降りた、因みに黒でした
「お嬢ちゃん、早くしないと私みたいなのに持ってかれちゃうわよ、こんなに可愛いんだから」
「へ、変な事言わないで下さい」
看護師さんは色気を振り撒いて出ていった、その場に重い空気を残すだけ残して、若干頭が痛むし、興奮した自分に凹む、チカはなんか怒ってるってか怒るよなそれは
「これで何回目?」
「看護師には3回、一般の人とか患者には2回かな」
「残念、看護師はもう一回あるよ、カイが寝てる時に襲われそうになってた」
早く学校に逃げたい、チカにも申し訳無いしキズが治らないだろこれじゃ
「カッコイイ旦那を持つと大変ですね」
「自分で言うことか?それにさっきも看護師さんのパンツ見てたでしょ?」
「いや、あれは男の性っていうか、避けては通れないってか」
チカが怒ってるよ、当たり前だよな、いくら怪我人と言えども無防備にも程があるからな、あと三日は気を引き締めていこ
「あんなおばさんのパンツに興奮したのかよ?」
「さすがに黒じゃ引くよ、……………チカは何色?」
チカならこれで黙るでしょ、もうこの話は終わりにしたいんだよな、俺の汚点を思いっきりついてるから嫌なんだよ
「白だよ」
「へっ?」
「何だよ自分で聞いといて、何らなら今から確かめるか?」
ヤベェ、傷口が痛む、ってかポーカーフェイスでそれ言われたら俺じゃなくても興奮するって、それともマジとか?ココは個室だし……………
「そんな事出来ないくせに」
「アタシも高校生だぞ、……………これくらい」
そういってチカがさっきの看護師さんと同じ事をしてきた、ってか病院なんですけで、まぁチカへの償いか、俺も満更でもないし
「カイ、傷口痛む?」
「かなりね、開かない程度にな」
「うん」
チカとキスをしようとした時だった、廊下の方でうるさい集団が、ってか大きい声に関西弁、もしかして……………
『コテツ達だ!』
チカは急いで降りて俺は布団を、チカは服を直して何事も無かったかのようにする、コテツ達が大きな音をたてて入って来た
「カイはん元気でっか!?」
「頼む、頭に響くから静かにしてくれ」
「何やお二人はん、顔真っ赤やで」
「また看護師さんが来てさ、それでじゃない」
顔真っ赤か、さっきから傷口が痛んでしょうがない、確実に看護師じゃなくてチカのせいでな、そういえば今日はコテツとツバサだけか
「コガネとかは?」
「二人でデートやって」
「コガネもあと少しだな」
「そやな」
俺らが話してる横でチカとツバサはイチャイチャしてる、一方的だけどね、いや一方的ってことを信じたい
「ねぇチカチカ、飲み物買いに行かない?」
「うん良いけど、カイは何が良い?」
「適当に任せるよ」
「行こうチカチカ!」
ツバサがチカの手を引いて走って出ていった、その瞬間コテツがいきなり真剣な顔になってツバサが座ってた椅子に座った、ため息を吐いて俺を見た
「まだ退院できひんのか?」
「あと三日だよ、知ってるだろ」
「どうしてもか?」
「脱走しかないな」
コテツのいつになく真剣な顔が更に険しくなった、俺はその時に始めて目の開いたコテツを見た
「チカはんが可哀想やで」
「チカが?」
「カイはんがいなくなってから他の男子が檻から放たれたようにチカはんに寄ってくるんや、わいらがいるときはどうにか出来るんやけど、一人の時はかなり強引らしいで、不良の件があるお陰で手は出さないけど、弁当の時間も最近はおらへん」
そこまでは予想してなかった、寂しい思いさせてたんだな、情けないな俺、他の男子にもってかれないって自惚れはある、でも笑顔は守れないのか
「…………退院か」
「無理なのは分かっとるで、でも知ってて欲しかっただけや、チカはんは強いから大丈夫やと思うけど、念のためちゅうやつや」
「いや、退院するよ、外にいて、支度するから」
コテツを外に出して着替えた、そんな事聞いて俺が大人しくしてるわけないだろ、ナースコールを押して看護師が来るのを待った。
案外早く来たと思ったら不安そうな顔をしたチカだった、チカは慌てて俺に寄ってきた
「カイ!何してんだよ?」
「退院準備」
「無理だよ!まだ傷が治ってないだろ?」
「傷なんて家にいても治る、それにこんな所にいるよりは早く治るし」
荷物を持って出ようとした時だった、例の看護師さんが残念そうな顔しつ入って来た、半分あんたのせいで退院するんだけどね
「あらぁ、退院しちゃうの?まだ三日もあるのに」
「別に良いだろ、俺は客だ、それくらいの自由はあるだろ」
そういって出ようとした時、やっぱり今後のためにあの看護師さんには注意しとかないとな、俺らに背中を向けてる看護師さんの後ろから耳打ちした
「若い子をおとしたかったら黒じゃなくて白の方が良いよ、黒はガッツキすぎだね、白なら自然さが伝わるから」
「あら、忠告ありがとう、今度から気を付けるわ」
俺はチカの手を引いて病院を出た、医者に止められたけど強攻突破で、怪我人に強く出来ないのが医者の弱味ってか。
コテツとツバサと別れて家路に向かってた、久しぶりの外は気持良いな、もう日が暮れてるしこの時期だと冷えるな、もう少し厚着してくれば良かった
「チカ、寄って行きたい所があるんだけど、良い?」
「良いけど、どこ?」
「お楽しみ」
俺はチカに教えないで歩き続けた、道のりで何となく気付いてると思うけどね、問題はそこまで連れてく事じゃない、それからなんだよな
「カイ、これって?」
「そう、前の家」
一学期まで住んでた家だ、今は空き家だけど所有権はまだこっちにある、一応鍵はいつも持ってるし、夏休みの終わりに来たのが最後だから二ヶ月くらいか、まだ使えるな
「何しにココに?」
「まぁ良いから入って」
無理矢理家に入れた、俺とチカの部屋は殺風景だけど他は変わらない、時間が止まってるみたいだ、俺らはユキの部屋でくつろいだ、チカはベッドに座ってる、俺は丸いテーブルを挟んで反対側だ、先に謝っとく、ゴメンなユキ
「で、何だよ?」
「何色かなぁって思って」
「えっ?」
チカは一瞬で顔を真っ赤にしてうつ向いた、さっきとは全く別人だな
「あんなチカ見たら抑えろっていう方が無理だよ」
「だから、し、白だって」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど……………」
俺はチカの前に立ってそのままベッドに寝かした、チカは思ったより素直に寝てくれた、俺が覆い被さるような状態で上からキスをした
「ヤバかったら言って、俺も分からないからさ」
無言で頷く、チカの制服のボタンを外した、あぁ、俺は何をしてるんだろ、チカを傷付けたらどうしよう
「……ん!」
「大丈夫?」
「………あっ、………大丈夫だよ」
俺はチカを傷付けないよう触れた、ホントは怖かった、自分に従ったのは良いけどそれをチカが望まなかった時が。
チカの肌は小麦色で綺麗だった、多分日焼けだけじゃないと思う、こんなに綺麗な肌をしてるんだから、柔らかくて同じ人間とは思えないくらいだった、全部がいつものチカと違った、うるんだ瞳も、柔らかい唇も、何も着けてない体も。
俺はついにみなまで来ていた、でも最後の決心がつかない、ホントにコレで良いのか?ホントに後悔しないのか?
「カイ、きて大丈夫だよ」
「ヤバかったら言えよ、無理だけはするな」
「大丈夫」
「ゴメンな」
「………………っ!」
俺が心配してチカの顔を見るとチカは笑ってた、俺は決心がついた、傷付けないようやれば良いんだ
「行くよ…………」
「カイ、好きだよ」
「……………分かってるよ」
俺はチカを抱き締めた、いつもより強く、チカの温もりがいつもより強く感じられた、怪我の痛みが感じなくなるくらいに。
「大丈夫だった?」
「うん。……むしろアタシ幸せ、……こんなに幸せなの始めてだった、これも一つの愛のカタチだよね?」
「そうかもな」
俺はチカに軽くキスをして天井を見上げた、でもいきなり天井がチカの顔でいっぱいになってチカの唇が俺の唇と重なった、そしてチカの舌が俺の唇を割って入って来た、俺もそれに応える、最後にチカが強く俺を抱き締めてきた、脇腹の辺りから手を回して、……………脇腹?
「イッテェ!!」
「キャア!大丈夫!?」
今になって思い出した、肋骨折れてたんだ、邪魔だからギブスは外してあるし、チカは慌てて離れたけど俺は引き寄せた
「大丈夫なのか?」
「俺から抱き締める分にはね」
「…………何かズルイ」
俺は暫くの間チカを感じてた、明日からは俺がチカの全部を守るから今だけはわがまま聞いてくれ。
チカ、今日って記念日だよな