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赤の幸せ

今、アタシの前で大好きな人、一番大切な人がバットで頭を叩かれて呑み込まれそうな真っ青な髪の毛を真っ赤に染めてる、大好きな人は人形のように倒れた、それと同時にコテツとコガネが入って来た

「カイ?ねぇ、カイ、起きてよ!」

全く動かない、アタシを襲おうとした人はバットを床に投げ捨ててカイの傍に立った、怖い、カイが動かない、アタシの声が届かない、アタシを襲おうとした人はカイを見下ろしてそのままお腹を思いっきり蹴った

「カイ!」

「カイはん!」

「カイ!」

カイは人形の用に転がるだけ、アタシは気付いたらカイに覆い被さってた

「辞めて!もうカイに触らないで!」

「何だよ?お前も死にたいのか?」

この人怖い、アタシは怖いしカイの事が不安で動けなかった

「…………もう辞めろや」

「んだようるせぇな!お前ら!そいつらやっちゃって良いよ」

「お前が来いや!それとも一人じゃ喧嘩の一つもできひんのか?怖いんならバットつこうてもええで」

コテツの目が開いてる、いつもは開いてるか開いてないか分からないくらい細いのに、怒りの矛先がアタシじゃないって分かってても怖い、コガネはうつ向いたまま動かない

「さんざん馬鹿にしやがって!ぶっ殺すぞ!」

リーダーはアタシ達から離れてバットを持ってコテツとコガネを威嚇した、でも二人共に微動だにしない

「他の奴らは逃げてもええで、今は見逃してやるさかいに」

「それはこっちのセリフだ!お前が逃げた方が良いだろ?」

「しゃあないな、…………いてこましたろか?」

コテツの低くてドスの効いた声、怖いなんてものじゃない、でもアタシはさっきからカイが気になってしょうがない、息はしてるけど弱い、アタシの制服はカイの血で真っ赤、それも気にならないくらいに不安だった

「コガネはん、コイツら死にそうになったら止めてな、わいもう理性飛んでもうたわ」

そういって近くにいた不良の人に回し蹴りをした、バキッって鈍い音をたててそのまま飛んでっちゃった、コテツに蹴られた人は腕を押さえながらもがいてる、よく見ると肩から下が変な感じに曲がってる、折れちゃったのかな、コテツはその人に馬乗りになった

「悪いのう、まだ意識あるん?寝てれば痛く無いやろ」

コテツが殴ると泡をふいて気絶しちゃった、他の人がコテツの後ろから蹴ろうとした、でもコガネの膝が顔にめり込む、二人は周りにいた人達をボコボコにしていく、最後に残ったのはバットを持ったリーダーだけ、リーダーはバットを振り上げてコテツに殴りかかった、コテツは片手でバットを止めて殴った、リーダーは頭から倒れた

「まだまだ温いで、これくらいで済むと思うたら大間違いや」

「頼む、待ってくれ!もう何もしないから!」

コテツは馬乗りになって拳の雨を降らせた、リーダーは動かなくなってるけど止まらない、見かねてコガネがコテツをリーダーから遠ざけた、コテツはやっと収まってアタシ達の方に来た

「チカはん、大丈夫でっか?」

「アタシは大丈夫だけどカイが、血が、血が、いっぱい出てきて」

「ちょっと待っててや」

そういってコテツはカイの頭に自分のワイシャツを巻いて傷口を塞いだ、コガネは放心状態のヒノリを抱き抱えて倉庫を出た、それと同時にカイの先生が入って来た

「大丈夫かお前…………、四色!潤間、四色を救急車に運ぶ、お前が付き添っててやれ。烏丸と五百蔵は残れよ」

「やっぱりそうなるん?しゃあないな、チカはん、カイはんを頼んだで」

アタシとカイは病院に向かった、その後、先輩達も搬送された。







あれから3日がたった、カイは動かない、危ない状態らしい、アタシはずっと側にいるけど不安で押し潰されそう、ジョニー達はアタシに全部任してくれた、でも今はアタシ一人だけ、カイの顔に触れても生きてる感じがしない、アタシのせいで付いた頬の傷痕が何でもないように見える頭の包帯、もう辛いよ

「カイ、起きてよ、死んじゃダメだからな」

アタシはどれくらい泣いたか覚えてない、常に泣いてたのかも、泣き疲れては寝て、起きてもカイは動かなくてまた泣いて、それを繰り返してた、いつかはカイは起きるって信じてるけど弱い心臓の音を聞くと心が折れそうになる

「こんなクシャクシャの顔じゃまた寝たくなっちゃうよな、顔あらって来るから待ってて」

そういって立ち上がろうとした時だった、握るなんて強さじゃない、触れる程度の強さでアタシの腕をカイが掴んだ、ビックリしてカイの顔を見ると少しだけど目が開いてる

「カイ!?分かる?アタシだよ?」

「……ち……か………?」

アタシの心に光が差し込んだ、カイの意識が戻ったんだ、今度は不安の涙じゃなくて嬉し涙が溢れ出てきた

「カイ、お、おかえり」

「……チカ、悪いけど、痛い、どいて」

アタシはカイの胸の辺りで泣いてた、確か肋骨が折れてるんだった、でもそんなのどうでもいい、カイがアタシの前でまた喋ってくれた、それだけで満足

「ゴメンな、心配かけて」

カイの大きな手がアタシの頭を非力に撫でる、いつもみたいな力強さは無いけどそれだけでアタシは嬉しかった、待ち望んだカイの温もりがそこにあった

「あれ?みんなは?」

「ジョニー達はアタシがいるから任せてくれた、コテツとコガネは停学中、ツバサとヒノリは二人が停学明けるまで学校には行かないで一緒にいるらしいよ」

カイは僅かに笑った、まだ本調子じゃないらしくたまに苦痛に顔を歪める、アタシはその一つ一つにカイが生きてる事を実感出来て舞い上がった、ゴメンねカイ

「不良は?」

「停学のハズだったけどみんな自主退学した」

「怪我は?」

「一人は肩の骨折、三人は鼻の骨の骨折、後はただの打撲。それとリーダーが顔が少しおかしくなっちゃったらしよ、コテツが殴り過ぎて」

「それヤバくないか?コテツ慰謝料もんだろ?」

カイが本気でコテツの事を気にしてた、みんなカイのせいで停学なのにね

「川上先生のお陰でそれは免れたらしいよ」

「川上?」

「カイとコガネの担任でしょ」

初めて知ったらしい、そういえばいつも担任って言ってたから知らないんだ、今回はその先生のお陰で丸く収まったのに

「最初は不良側の親が騒ぎ出したんだけど、川上先生がカイの方が重傷でその分の慰謝料はいらないからコテツを見逃してくれるように頼んだらしよ、全部ジョニーの了承を得てね」

「アイツが………」

カイは窓の外を見て更けてた、アタシはカイの横顔に幸せを感じた、そしてその横顔が愛しくなってきて気付いたら両頬に手を当ててカイにキスをしてた

“ガラガラ!”

「うわっ!お二人はん、ココは病室やぞ」

「キャー!チカチカ大胆、僕には冷たいのに」

「見舞いに来れば、………もう少し寝てろ」

「…………不純」

最悪のタイミングでみんなが来ちゃった、思いっきりキスしてるところ見られちゃったし、顔が熱い、カイの顔も真っ赤だし何か頭押さえてる

「傷口が開く、最悪のタイミングだし」

「ゴメンね!カイ、大丈夫?」

「元気そうで何よりや、お見舞いに来てやったで」

コテツは大きなビニール袋を高々に上げた、ツバサとヒノリはアタシの隣に椅子置いて座った、コガネは端の方で腕を組んで寄りかかってる、コテツは勢い良くベッドに飛び乗って足元の柵に座った、当然靴は脱いでね

「コテツとかは停学中だろ?バレたらまた長引くぞ」

「それが大丈夫なんや、先生直々に外出の許可が出たんやで!」

「あの担任のお陰で停学で済んだんだしな」

コテツとコガネが笑顔でカイに言う、なんかみんな元気そうだし安心したな、ヒノリもなんとも無いし

「ホンマはわいら退学やったんやで、大半を病院送りにしてもうたからな、せやけど川上先生が頼んで停学に軽減してくれたんや」

「今回はあの担任に頭が上がらないな、カイも早く良くなれよ、チカちゃんを泣かした罰はとくと受けてもらうからな」

「みんなカイのタメにありがとう」

みんなの笑顔がアタシに元気をくれた、カイも笑ってるし、でも何かカイの顔がさっきから晴れない、何かあるのかな?

「でもゴメン、腰から先の感覚が無いんだ、さっきから動かない」

みんなの顔が曇る、アタシは泣きそうだよ、生きてるだけで満足って言ったけど、やっぱり歩けないなんて酷いよ

「なぁ〜んてな!手も足も全部動くよ、ほら、みんなを驚かしたかっただけだよ」

カイは手足をバタバタさせた、嬉しいけど、何かムカつく、コテツとコガネは雰囲気が倉庫に入って来た時みたいになった、当たり前だよ、この状況でその冗談は良くない

「カイはん、それは頂けまへんで」

「なんならもう一本くらい骨折ってやろうか」

「いやだから冗談だって、な?」

「…………酷いよ、カイの馬鹿」

何でだろ、何で泣いちゃうんだろ、悲しくない、嬉しいハズなのに、多分本当に信じちゃったからなのかな、一緒に遊べない事を想像しちゃったからかな

「ちょっとチカ、泣くなよ、頼むから、悪かったって」

いつの間にかカイの胸に抱かれてた、今の心臓はさっきの弱々しいのとは違って凄く速い、アタシと同じスピードで心臓が動いてる、でもみんなの前なんだけど

「キスの次はハグかいな」

「僕のチカチカがぁ」

「ひでぇな」

「…………やっぱり不純」

「うるせぇな!見せ物じゃねぇぞ、…………ッ!」

カイの鼓動が速まった途端に頭を抱えて横になった、興奮しすぎたんだろ、これから一人ぼっちの三日間の穴埋めしてもらわないとな、まだまだ生きてるんだからいっぱいに幸せにしてもらおう。






カイが生きてればアタシはそれだけで満足だから

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