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青とお好み焼き

俺とコガネで俺の引越し、後はチカの引越しを手伝わせた、女の子だけで引越しは出来ないからコテツを付けた、俺のは二人で足りるしそんなに荷物が無いから多いと逆に邪魔だ、引越しは3時くらいに終わって遅い昼飯を食べるためにとりあえずツバサ宅に向かった。


マンションの10階、ファミリー向けの比較的古いマンションだ、その角部屋がツバサの家だ、チャイムを鳴らすと物凄い勢いでコテツが出てきた、俺とコガネに抱きつこうとしてきたけど避けた、勢い余って柵に顔からダイブしたけど無視して家に入った、まだ荷物はごちゃごちゃしてるけどある程度は片付いてる

「昼どうするの?」

入ってそのまま居間にいるチカ達に話しかけた、後ろからのそのそと歩いてきたコテツが俺とコガネの肩に腕をまわしてきた

「わいが作るで」

『コテツが?』

「なんやお二人はん、わいじゃ不安でっか?」

俺とコガネは向き合って暫く沈黙が続いた、そしてコテツの方を向いて頷いた

「酷いなぁ、わいの家は道場だけやないで、お好み焼きが本業や、そやさかいわいが作るお好み焼きは絶品やで。どや?食いたくなったやろ?」

「しょうがない、俺は行くけどみんなはどうする?」

「俺も」

「食べる物無いからアタシも」

「コテツが作るお好み焼きなら僕いくらでも食べれるよ!」

そんでヒノリが無言で頷く、満場一致でコテツのお好み焼きに決まった。

コテツめ、俺に料理自慢をするとは、曙のK―1参戦ばりに無謀だな、思いっきり後悔しとけってな。



《お好み焼き・烏丸》

お店の雰囲気は若干レトロな感じで懐かしさがある、店内は少しソースの匂いが漂ってきて空腹を後押しする、カウンターに座ると厨房にコテツが立つ、大きな業務用の冷蔵庫から食材を取り出して混ぜていく

「わいが作るのは当然大阪風やで、シンプルで美味い、やっぱりお好み焼きは大阪やろ」

話ながらでも手際が良い、慣れた手付きで人数分を仕込んだ、今気づいたけど店には俺らしかいない、外に準備中とか書いてあったような無かったような、俺がボ〜っと考えてるとすでに焼かれていた、コテツはツバサと話しててお好み焼きには目も触れてない

「コテツ、大丈夫か?」

「大丈夫やで、鉄板の細かい温度も焼け時間も全部把握済みや」

多分毎日親の手伝いをしてたんだろ、確実にお駄賃付きで、金目当てで手伝ってたらいつの間にか焼けるようになってたんだろうな、あぁ、でもホントにヤベェ、こんなもんを目の前で見せられたら腹減りで死にそう

「カイ、少し我慢しろよ、後少しだよ」

「あら、バレちゃった?朝飯から何も食って無いからヤバいんだよね、チカは大丈夫なの?」

「アタシは大丈……」

“グゥ〜”

チカの腹が鳴った、お腹を押さえて顔を真っ赤にしながらうつ向いてる、俺はそっと頭に手を置いて顔を覗きこんだ

「大丈夫じゃないな、隠さなくてもいいのに」

「………はい」

周りの奴らは自分達の事で夢中らしく俺らの会話には全く見向きもしなかった、まぁ俺らも同じだけどね。

コテツはお好み焼きを次々にひっくり返していく、かなりのスピードだし正確、焼けた面は良い焦げ色がついていた、そこからすぐに出来てコテツがソース・鰹節・青のり・マヨネーズをこれも慣れた手付きで付ける

「出来たで、みんな食うてや」

『いただきます』

割箸を割ってお好み焼きを一口サイズでとって食う

「うま、コテツめちゃめちゃ美味いよこれ!」

「そやろ、わいの唯一の得意料理やからな、まだまだ作ってるから食うてや!」

俺は一枚は軽々完食した、すぐに二枚目にも手をつけた、他人の飯でこれだけ感動したのは久々だな、チカも腹が減ってたらしく二枚目に取り掛かってた

「美味いな」

「カイの料理の方が美味しいよ」

「やめれ、照れるだろ」

「いくら美味しくても流石に物には限度ってものがあるな、そろそろお腹いっぱいになってきた」

チカの箸が止まった、三分の一くらい残してる、まぁ女の子にしたらよく食べただろ、残すのはコテツに悪いから食べるか

「貰うよ?」

「悪い、ありがとう」

二口くらいで食べる、俺のも同じくらい残ってるけど、割とギリギリなんだよな、でもここで残しちゃ料理人として許せないな、同じく二口で完食する

「スゴ〜イ!全部食べちゃった、頑張った頑張った」

チカが俺の頭を撫でながら笑った、なんだか怒るに怒れないな、しかもチカのこの笑顔を見たらどれくらいでもお好み焼き食べれそうだな、実際は無理だけど。


みんなで話してると奥からガタイの良いおじさんが出てきた、恐らくコテツのお父さんだろう、俺らを見てそのまま視線をコテツに移した、そのままコテツに跳び蹴りをした、だけどコテツは軽々と防いだ、流石空手部の若きエースといったところだ

「何やねん!?人がせっかく楽しく話してたのに!」

「貴様また稽古サボってこないな所で遊んで、真面目に稽古しろや!」

恐らく今日、コテツは稽古をサボって俺らの手伝いをしてたのだろう、でもいきなり跳び蹴りなんてやることが違うな、それを止めるコテツも恐ろしい、この家にいたら命がいくつあっても足りないな

「しょうがないやろ、友達の引越し手伝わなあかんかったんや!それに稽古いうても只のリンチやないか、あれのどこが稽古や!?」

「うっるさ〜い!」

今度は回し蹴りだ、コテツはしゃがんで避けた後に腹を殴った、でも腹筋に力をいれて防がれた、うわぁ、かなり血生臭い家族だな、コテツも強くなるよ

「スゲェ家族だな」

「………」

チカは口を開けて唖然とした表情で二人を見てた、ってか俺もみんなも同じような状態だ

「まぁ今回は友達のタメならしゃあない、でも次逃げたら百人抜きするまで稽古やからな!」

「分かった、次やからな、次だけやからな」

コテツのお父さんは腕を組んで奥に入っていった、その後静寂が訪れた、目の前でジャッキー●ェンも裸足で逃げ出すような親子喧嘩を繰り広げた後だ、無理も無いだろ

「悪いな、うちの馬鹿親父が乱入してもうて」

“誰が馬鹿親父や!?”

「うるさいねん!少し黙れ!」

最高に仲が悪いな、しかも関西弁で喧嘩されると迫力がありすぎて怖い

「コテツの親父さん怖いな」

「ただうるさいだけやで、いつも頭に響くような声で叫ばれたらたまらんわ」

殴られるのに抵抗は感じてないんだ、確かに声はデカイけど殴られる方が問題有りだろ、あえてそこはつっこまないけど。


その日はそれで解散だ、俺とコガネは夕食の買い出しでスーパーにいた、ってか俺とコガネが街を歩いてても目立つのにスーパーにいると目立つなんてものじゃない、おばさんのヒソヒソ話がムカつく、まぁこんな所でババア相手に喧嘩しても待ってるの警察と退学だけだ

「カイ、早く帰ろうぜ、居心地が悪い」

「分かってる、でもコガネんちって何も無いから量が多くなるんだよ」

その後、調味料やら野菜やらを大量に買いこむことにした、コガネの家は生活観の欠片も無いからな。

会計の時だった、俺の携帯が電子音を大きな音で鳴らし始めた、メロディからチカからのメールだな

《かいたすけて、つばさにおそわれる》

スゲェリアル、平仮名だし短いから否定しきれない、コガネはメールを覗いて吹き出した、俺は一応チカに電話した

“プルル………、もしもし!?”

「大丈夫か?」

“助け……!カイっち、なんでも無いから、バイバイ!……プッ”

確実に犯罪の匂いがする、まぁツバサの事だから少しいじるだけだろ、気になるけど押し掛けるほどではないな、俺は気にせずに携帯をしまった

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